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SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。 SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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カシオ計算機は、全事業分野および世界中の拠点にERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)とSCM(サプライチェーン・マネジメント)のシステムを一斉に導入した。そのねらいは、生産から販売に至るプロセスを再構築し、ビジネス・スピードと意思決定のスピードを飛躍的に向上させることにある。 1997年4月にスタートした同社のERP/SCM導入プロジェクトは、2000年3月に世界中の拠点への導入を終え、いよいよ本格的な運用フェーズへと突入する。

世界規模の取り組み
ERP/SCMシステムの自力導入という「海図なき航海」に挑み、その航海を成功へと導いた業務開発部の部長、今村氏   業務開発部の矢澤氏。同氏によれば、全体最適に向けたシステムでは、ERPによるIT基盤の標準化がキーポイントとなったようだ
 カシオ計算機(以下、カシオ)については、あらためて説明する必要もないだろう。周知のとおり、カシオは世界屈指の電子機器メーカーであり、電卓や電子手帳、携帯型個人情報端末(PDAおよび携帯型PC)、電子時計、カーナビ、デジタル・カメラ、液晶TV、携帯電話、PHS、電子デバイス(液晶デバイス)など、多岐にわたる製品の製造・販売を手がけている。ただし、その多くは企画生産型のコンシューマー商品であり、そのライフ・サイクルは短い。ゆえに、製品の企画から設計、製造、販売、物流に至る一連の流れをいかにスピードアップするかが同社にとって大きな課題となる。また、企業顧客を対象とする受注生産型の電子デバイス事業についても、顧客の要求に応じて生産指示や物流の手配をダイナミックに行わなければならない。

 したがって、カシオがERP/SCMシステムによるビジネス・スピードの向上を目指したことは、当然の成り行きであったと言えなくもない。

 もっとも、ひと口にビジネスのスピードアップを図ると言っても、カシオの場合、その活動範囲は全世界に及んでおり、生産拠点だけでも国内の甲府、山形、愛知に加えて、香港、米国、韓国など、複数の国と地域にまたがっている。販売拠点も米国や欧州諸国に広がり、物流拠点も香港、シンガポール、ベルギー、マレーシアなど各国に分散している。

 そのため、カシオにおけるERP/SCMのプロジェクトでは、各国の拠点を横断するグローバルな仕組み作りが要求された。しかも、同社がERP/SCMのプロジェクトを始動させたころは、西暦2000年問題(以下、Y2K問題)が頭をもたげてきた時期でもあった。

 そうした厳しい条件下にありながら、同社は世界規模での新システムの導入を短期間のうちに完了させた。

 果たして、その背後には、いかなる努力、プロセスがあったのだろうか。

Y2Kがプロジェクト発進の引き金
 同社のERP/SCMプロジェクトがスタートを切ったのは1997年のことだ。その時期、カシオではY2K問題の対策を練っていたが、最終的にメインフレーム・コンピュータ上の既存の基幹システムを抜本的に改変するという結論に達した。というのも、柔軟性や拡張性という点で従来システムに限界が見えていたからだ。この点について、同社の業務開発部企画グループ・グループリーダー、矢澤篤志氏は以下のように説明する。

 「これまでの基幹システムは、いわば『つぎはぎ』だらけのものだった。なぜならば、過去10年近くもの間、システム変更や機能追加の要求があるたびに手作業でプログラムを改変してきたからだ。その結果、システムは変化に対応しにくいものとなっていた」 こうしたことから、カシオはY2Kをシステム刷新のターニング・ポイントと位置づけ、新システムの構築に乗り出した。

 その際、システムの目標として設定されたのが「意思決定のスピードアップ」と「変化への対応」、そして「グローバリゼーションへの対応」の3つだ。カシオの業務開発部・部長、今村宏氏はこの目標設定について、次のような説明を加える。

 「当社では、1996年からグループウェアによる全社的な目標管理の基盤が構築されており、各事業部や部門の長がどのような目標を掲げ、何を問題視しているかが分かるようになっている。それを通じて、意思決定のスピードアップと変化への柔軟な対応、そしてグローバリゼーションが全社に共通した課題であることが理解できた」

 つまり、上述した新基幹システムの目標は、各部門が抱える課題を集約した結果であるというわけだ。

システム導入のプロセス
 こうした経緯の下、新基幹システムのコアとしてERPパッケージが採用され、それを土台にSCMシステムが構築されることになった。その際のキーワードが「全体最適」である。同社では従来、ユーザー部門の個々の要望に応じて情報化を進めてきた。それはいわば部門最適(つまり部分最適)を図る作業であった。そのため、生産や販売のシステムが個別に運用されており、たとえそのデータを組み合わせたにしても、全社的な活動をリアルタイムに把握することは困難であった。

 そこで同社は、IT基盤に対する従来の発想を転換し、部分最適ではなく全体最適に重点を置くことにした。その帰結として、ERPやSCMシステムの導入があったのである。

 ならば、そうした新システムの導入作業は具体的にどのようなプロセスによって実現されたのだろうか。

 同社はまず、1997年上半期にシステムの基本構想を策定し、利用するパッケージ・ソフトウェアを選定した。また、同年下半期には選定したソフトウェア・パッケージをベースにモデル・プランを作成、その機能検証とギャップ分析を行い、1998年上半期には「標準システム(コモン・システム)」を構築した。

 さらに、同年下半期には4カ所の「モデル拠点」に新システムを導入し、システムのブラッシュアップを行った。そこから得た成果を基に、他の拠点へのシステム導入を順次進展させ、2000年3月に全事業分野、全拠点へのシステム導入を終えたのである。現在、全世界1,500人のユーザーを対象にしたシステムの本格運用がスタートしている。

 なお、同社が採用したERPパッケージは米国ジェイ・ディ・エドワーズの「World Software」である。同製品を選定した理由は、カシオの海外子会社の多くがIBMの「AS/400」を利用しており、AS/400対応のWorldSoftwareが世界一斉導入というカシオの計画に合致したからだ。加えてカシオは、i2テクノロジーズのSCMソフト「RHYTHM」の需要予測モジュール「De mand Planner(DP)」やサプライチェーン計画立案モジュール「Supply Chain Planner(SCP)」を導入。さらに、電子デバイス事業向けにIBM製のSCMソフト「PRM」も採用している。

全体最適に根ざした体制作り
 一方、カシオのERP/SCMプロジェクトは、その推進体制も全体最適を前提とした構成になっている。

 同社は、同プロジェクトを推進する組織として、電卓事業部長や時計事業部長など各製品事業部長を責任者とする体制を築いた。またそれと併せて、全社的な事業計画を担当する事業開発部長、調達や製造に責任を持つ生産統括部長、さらには情報システムや物流を担当する物流・情報システム部長を、この体制に参画させた。この仕組みによって、計画、設計、調達、製造、物流、情報システムといった各業務プロセスの改革案が、各事業部の視点と全社的な視点の双方から練られていったのだ。これにより、全体最適のシステム構築作業がスムーズに進められたのである。

 とはいえ、今回のプロジェクトは何の問題もなく進行したわけではない。 例えば、分析や構想立案のフェーズでは、各事業部のトップやプロジェクト・メンバーらの話がかみ合わず、会議が紛糾することもあったという。また、せっかく策定した構想がSCMソフトにうまく適合せず、再度構想を練り直す場面もあったようだ。こうした段階を経たのちに、同社は、先に触れたコモン・システムを作り上げたのである。

 コモン・システムとは、その名のとおり、あらゆる拠点に対応した基本システムを指す。この土台の上に、各国の商習慣や法律などに合わせた機能部分が加えられるわけだ。ちなみに、このコモン・システムは以下の目標に基づいて構築されている。

  ●取引ルールや勘定コードの統一など会計基準の統一
  ●調達・製造・在庫・販売に関する業務手順の共通化
  ●経営管理・生産管理・販売管理に関する管理方法の共通化
  ●製品・部品コードなどデータ項目の統一化

 前述したとおり、こうして出来上がったコモン・システムは、モデル拠点(工場)にまず導入された。そして、ブラッシュアップが施されたのちに、他の拠点へ導入されていったのである。

 ちなみに、i2テクノロジーのSCMソフトは1999年9月から稼働している。このシステムも、流通拠点の場合で60日間、製造拠点で80日間という短期間のうちに立ち上がったようだ。もちろん、その背景にはコモン・システムの存在があったことは言うまでもない。要するに、事前の準備や標準化された仕組みづくりが功を奏したわけである。

 なお、システム導入の前準備という意味では、新システムに対する現場の理解を深めておくことも大切だが、カシオの業務開発部ではその努力も怠っていない。矢澤氏は語る。

 「全体最適を目指した場合、特定部門に向けたシステムの機能の一部が犠牲になることがある。そこでわれわれは、経営トップや現場のトップにそのことを事前に認識してもらい、現場の理解が得られるよう協力を求めた。ERPシステムについては、よく『業務効率を飛躍的に向上させるもの』とされるが、われわれのケースでは、こうした表現が現場の誤解を招くおそれがあったのだ」

「海図なき航海」を乗り切る
 ところで、同社のプロジェクトにはもう1つ注目すべき点がある。それは、外部のシステム・インテグレーター(SI)の手を借りずに、システムが導入されたことだ。同社がプロジェクトを立ち上げた当時、日本にはERPのコンサルティング・ノウハウを持つSIが少なかった。そのため同社は、自力でERPおよびSCMの導入を進めなければならなかったのである。

 今村氏はそれを称して、「海図なき航海」としているが、そのあまりの苦労から挫折しそうになったこともあるという。そのようなときには、他のユーザーの体験談が大きな助けになったようだ。

 ともあれ、新システムの導入作業を一段落させたいま、同社は実需要に基づいた需要予測の迅速な立案と、それを生産・販売に即座に反映させていくための仕組み作りを進めている。また、システムのデータ精度の向上にも力を注いでいる。そして2001年3月までには、製品のリードタイムを従来の4カ月から10 週間へと短縮させ、在庫期間を1.7カ月から0.5カ月に削減させる計画だ。

 さらに、同社は社外の部品ベンダーや顧客・販売代理店などをも包含したサプライチェーンの全体最適化にも取り組んでいく構えである。
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