SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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SCMとは直接関係ないのですが、非常に面白いと思い載せます。
中で紹介されているBlogは必見ですよ!!
ブログ・マーケティングで、顧客との接点をつくる
岡本の経営革新プロジェクトを実務面でリードする3人の執行役員。(左から)業務推進・監査担当の吉原剛氏、マーケティング戦略・社長室担当の椿野泉氏、生産本部担当の河野文明氏は、互いに連携をとりながら、モノづくりとマーケティングを融合させた経営革新を進めている。 photo by Keiji Kaneda
とある閑静な住宅街で、ベランダに干してある靴下が次々と切り刻まれるという連続事件が発生。刑事が捕まえた犯人は、なんと常連客から足が臭いとバカにされていた居酒屋の店員だった!──これは、靴下メーカーの岡本が運営するブログ・サイト「今日もガンバレ! 足クサ男」に掲載されている人気連載の1場面である。企業が運営するサイトとしては、かなり“異色”なこのブログ。実は、同社が製造・販売する高機能靴下「SUPER SOX」の販売促進を目的とした、立派な“マーケティング・ツール”なのである。
サイトには、プロの作家とイラストレーターに制作を依頼しているというこのコメディ・タッチの連載に加え、足を清潔に保つためのワン・ポイント講座、消費者からの自由な投稿を受け付ける専用コーナーなど、「足」をテーマにした多彩なコンテンツがそろっている。読者ターゲットとして想定しているのは、毎日靴下を履くビジネスマンと、その妻たちである。
「足のムレ、ニオイ」という、なかなか大っぴらにしにくいテーマをあえて取り上げることで、消費者に楽しみながら靴下の機能を見直してもらいたい──このブログには、靴下づくりにこだわる岡本のそんな思いが込められている。
インターネットの世界において、すでに主要なコミュニケーション・ツールとしての地位を確立したブログだが、その存在は今、マーケティング戦略の強化を図る企業からも注目されている。コメント、トラックバックといった機能によって読み手が自由にフィードバックを行えるため、従来までの一方通行の情報提供にとどまらない双方向による顧客とのコミュニケーションが期待できるというのが、その理由だ。岡本はそんな“ブログ・マーケティング”の可能性に早くから着目した企業の1社なのだ。
同社の執行役員でマーケティング戦略を統括する椿野泉氏は、ブログに代表されるWebマーケティングの可能性についてこう語る。
「顧客満足を起点にした商品展開を志向する当社にとって、店頭でなかなか出会えないお客様とダイレクトにつながることができるWeb環境は非常に貴重な存在だ。特にテキストという身近なコミュニケーション手段で表現されるブログは、忘れられがちな靴下の役割を市場に知らしめるうえで利用価値が大きいメディアだと考えている」
オープンからほぼ1年。同社のブログの認知度は着実に高まっており、現在は月間1万件のページビューを誇るまでになった。
奈良県に本社を構え、それまで“知る人ぞ知る”存在だった同社にとって、ブログは、市場(消費者)との接点を切り開くという重要な役割を担っているのだ。
R&Dの強化が実を結んだヒット商品
岡本が運営するブログ・サイト「今日もガンバレ!足クサ男」(http://ashikusa.jp)。大っぴらに話題にしにくい足のムレ・ニオイをテーマにしたコンテンツをそろえ、消費者に楽しんでもらいつつ靴下の機能を訴求することを目指している。
そのほか、供給システムにまつわる部分で岡本が推進した取り組みに、研究開発(R&D)の強化がある。まず、OEMビジネスを展開する中で一度は消滅していたR&D部を岡本氏が社長就任後に復活させた。以後、主に高付加価値商品の開発に資金を投じてきたのである。
現在、同社のR&D部は、靴下の原料となる天然繊維の改良や新素材の開発を手がける「ファイバー課」、高付加価値商品を生産するための編み機の開発・研究を手がける「メカトロ課」、人体の形状や生理機構、歩行理論などを研究しながら、未来型の靴下の開発を進める「ボディサイエンス課」から成り、各課が協調し合いながら商品開発に取り組んでいる。
この施策によって生まれた代表的な成果が、冒頭でも紹介した新素材靴下のSUPER SOXだ。同商品は、天然のウールに独自の加工を施した独自開発の新素材「BREATHE FIBER」を使用し、足のムレとニオイを防ぐという機能にフォーカスして開発された看板商品である。抗菌剤・消臭剤を付着させた一般の商品とは異なり、効果が高く持続性に優れているとあって、2004年の発売から2年で150万足以上を売り上げるヒット商品となった。
「開発段階で消費者に対して実施したアンケートでも、足のムレとニオイが、靴下に関する悩みの1位と2位に挙げられていた。そうした消費者の率直な声を起点に開発したことが高く評価された」と、椿野氏もこの成果には大きな手ごたえを感じている。
また、人の歩き方に着目し、つま先付近、土踏まず、かかとといった足裏の部位によって生地の厚みを変えることで、足への負担を減らすことに重点を置いた「CROSS PRO」も、着実に主力ブランドに育っている。これは、ボディサイエンス課とメカトロ課が手を組み、専用の編み機まで開発するという、同社のこだわりによって生まれた商品だ。
自社ブランドの確立へ向けた挑戦
岡本が素材から見直して商品化したヒット商品「SUPER SOX」。吸湿性と放湿性に優れ、足のムレとニオイを気にするビジネスマンに愛用されている。
時代の先端を行くかのような岡本のブログ・マーケティングだが、実は、この施策は、1997年に社長に就任した岡本哲治氏のリーダーシップの下で進められている大規模な経営革新プロジェクトと深いかかわりを持つ。法人設立50周年に当たる1998年を「第2の創業元年」と位置づけた同社は、「世界に通用するマーケティング力の優れたソックス・メーカー」を目指すべく、企画、生産、調達、販売といったあらゆる業務プロセス、ならびに商品戦略の抜本的な見直しを図ってきたのだ。
「OKAMOTO Renaissance(岡本ルネサンス)」と銘打たれたこの経営革新プロジェクトにおいて、中心テーマの1つに掲げられたのが、自社ブランドの確立であった。
それまでの岡本のビジネス・モデルはと言えば、ライセンス・ブランド商品、量販店からの依頼に基づいて生産するプライベート・ブランド商品の主に2種類の商品によって成り立っていた。これは、岡本に限らず、世界中の靴下メーカーに共通した特徴である。言ってみれば、靴を履く人であればだれもが必要とする最寄り品を扱いながら、一般消費者に対しては長らく“顔の見えない”ビジネスを展開してきたのである。
「大量生産・大量消費の時代はそれでよかったかもしれないが、消費者の嗜好が多様化したことで、今では他社との明確な差別化が求められるようになってきた。また、生産コストの安い中国のメーカーが世界的に台頭してきたという事情もある。当社が自社ブランド商品を手がけようとした背景には、こうした市場環境の中で強力な武器を手にしたいとの思いがあった」(椿野氏)
アパレル・メーカーや量販店のニーズを起点としたOEMモデルから、消費者のニーズを起点とした自社ブランド・モデルへの転換──岡本にとって、ここ数年間は、この創業以来とも言える挑戦の歴史だったのである。
マーケティングと“モノづくり”をITでつなぐ
「製造業としての基本のプロセスに磨きをかけないかぎり、どんなマーケティング戦略も効力を持たない」と力説する椿野氏。 photo by Keiji Kaneda
靴下づくりのノウハウはすでにある。であれば、あとは「岡本」の名を市場に浸透させるためのマーケティングに注力すればいい──自社ブランドを新たに展開すると聞けば、すぐにこんなストーリーが思い浮かぶだろう。
だが、同社が自社ブランド商品を展開するうえで最初に手をつけたのは、実は、商品を企画し、生産し、それを店舗に届けるという“供給システム”の再構築のほうであった。1998年からの最初の6年間で実施された「OKAMOTO RenaissanceフェーズI」では、むしろこちらのほうに圧倒的に重点が置かれたのである。これは、「製造業としての基本プロセスに磨きをかけないかぎり、どんなマーケティング戦略も効力を発揮できない」(椿野氏)という考えによるものだ。
事実、同社の経営革新プロジェクトでは、「供給システム」と「マーケティング」が両輪として位置づけられており、その2つが相乗効果を生むことによって消費者の満足度を高めていくというビジョンがしっかりと描かれている。椿野氏は続ける。
「社長のビジョンは明快だ。我々の本業はあくまでもモノづくりであり、そのプロセスを強化することなくして、魅力的な商品は生みだせない。だが、そればかりを追求していると、結果として、今度は消費者に対して自分たちの商品を“押しつける”ことになってしまうおそれがある。そこで、そのバランスをとるために、供給システムとマーケティングを連携させようというわけだ」
モノづくりとマーケティングをつなぐ──これを実現するためのカギとして、岡本がきわめて重視しているもの、それはもちろんITである。
同社の業務推進担当執行役員で、情報システム部門を統括する吉原剛氏は、次のように強調する。
「良いモノを迅速に作り、それを消費者に効果的に訴求する──そう言うと当たり前の取り組みに聞こえるかもしれないが、それは、業務の中で生まれる情報を高いレベルで共有することができて初めて実現できるものだ。その意味で、ハードルは高いが、挑戦しがいのあるテーマだと言える」
生産プロセスを革新する
生産プロセスの改革を手がけた河野氏は、「かつての内職頼みの生産プロセスでは、消費者からのニーズに迅速に対応できないと考えた」と述懐する。 photo by Keiji Kaneda
それでは、岡本はどのようにして供給システムの再構築を進めてきたかのであろうか。それは、端的に言えば、大量生産・大量消費を前提とした“作り置き型”の見込み生産から、市場の需要に応じて生産量を細かく調節する“多品種少量型”の生産スタイルへの転換であった。SCM(Supply Chain Management)の実践と言いかえることもできる。
業種を問わず、製造業にとって共通のテーマとなっているSCMだが、岡本のような靴下メーカーにとっては、その実践は他の業種よりもさらに困難であった。というのも、靴下の生産プロセスは伝統的に内職によって支えられており、プロセスが細かく分断されていたからである。そのため、同社ではまず、生産現場(工場)の改革から手をつけなければならなかった。
生産本部担当の執行役員である河野文明氏は、工場のライン化は時代の要請にこたえるために不可欠な取り組みだったと語る。
「内職を当てにした生産プロセスでは、仕上がりの時期が読めないうえに、品質を向上させることも難しい。高付加価値のビジネスを目指すのであれば、こうしたプロセスを改め、工場内のラインで工程を一本化する“1枚流し”を早期に実現することが大きな命題だった」(河野氏)
本社に併設された工場に入ると、大型の編み機によって自動的に作られる生地が、工場内に張り巡らされたパイプを通り、スタッフの手作業を介しながら次第に靴下の形を成していく光景を目にすることができる。これは、経営革新プロジェクトがスタートした1998年から整備に着手し、その後も少しずつ改良を重ねてきた同社自慢の設備だ。現在、この工場は24時間稼働を実現しており、5秒に1足というハイ・ペースで靴下が生産できるまでになっている。
工場の近代化に続いて、今度は吉原氏のチームが中心となって取り組んだのが、ITシステムの導入だった。具体的には、生産達成率、損失時間率、不良率といった科学的な指標を工程管理に取り入れるといった生産管理の高度化を進めるとともに、各部門に散在していた受発注システムを一本化、注文が寄せられた時点で、販売計画から原料計画、生産計画までを一気通貫で立案できる環境を整えたのだ。
この、工場設備とITとを組み合わせた生産システムは「OQR-5(Okamoto Quick Response-5)」と命名され、同社の供給システムを支えるエンジンとして機能している。現在は、小売店からの注文に対して通常で3週間(最短では5日)というリード・タイムを実現しており、計画は1週間のスパンでアップデートすることが可能になっている。
靴下の魅力を世界中に伝える
岡本の経営革新プロジェクトをITの面からサポートする吉原氏は「業務の中で生まれる情報を高いレベルで共有して始めて、モノづくりとマーケティングの融合が実現できる」と語る。 photo by Keiji Kaneda
以上の取り組みによって、商品を開発して市場に供給するという“モノづくりの原点”を磨き上げてきた岡本だが、2004年からスタートし現在進行中の「OKAMOTO RenaissanceフェーズII」では、もう一方の主役である“マーケティング”の実効性をいかに高めていくかという課題にも本格的に取り組んでいる。
すでに、全国各地の大手量販店と協力して、衣料品売り場に自社ブランドの専用スペースを設けたり、特別キャンペーンを実施したりといったリテール・マーケティングの強化策や、消費者に商品をじかに手にしてもらう機会を増やそうという取り込みを継続的に展開している。また、都市部での需要が見込まれるSUPER SOXについては、東京・八重洲で、ビジネスマンに7,000足分もの商品を無料で配布するというキャンペーンも実施した。
大がかりなマス・マーケティングを展開することなく、SUPER SOXがヒットした背景には、こうした地道な努力があったのだ。
なお、こうしたマーケティングの分野でも、ITは積極的に活用されている。その1つが、「まだ実験段階」(椿野氏)だが、自社商品のネット販売を手がけるeコマース事業である。物流コストなどいくつかの課題をクリアする必要はあるものの、こうした新たな販売チャネルづくりが今後の大きなテーマになることは、椿野氏も認めているところだ。また、受発注データや店頭での売上げ情報をシステムによって分析し、消費者の潜在的なニーズの掘り起こしにITを役立てるといったことも検討されている。
さて、岡本が身を置く日本の靴下産業だが、その現状は決してバラ色に彩られているわけではない。特に2000年以降は、アジア各国からの輸入量が大幅に伸び続ける一方で、国内の生産量は年々減り続けている。快調にヒット商品を送り出しているように見える岡本にしても、混迷する靴下市場の中で、何とか踏みとどまっていられるというのが実情だ。
「確かに、コモディティ商品である靴下だけに、『安ければそれでいい』と考える消費者が多いことは否定できない。だが、人々の生活を豊かにする“本物の靴下”というものが世の中には存在する。その魅力をしっかりと世界中の消費者に伝えたい。それこそが、我々のマーケティング戦略の目指すところだと考えている」(椿野氏)
創業以来最寄り品である靴下を作り続けて72年。8年前から始まった同社の挑戦は、効率が最優先される現代社会に対する一種のアンチテーゼだと言えるのかもしれない。
中で紹介されているBlogは必見ですよ!!
ブログ・マーケティングで、顧客との接点をつくる
岡本の経営革新プロジェクトを実務面でリードする3人の執行役員。(左から)業務推進・監査担当の吉原剛氏、マーケティング戦略・社長室担当の椿野泉氏、生産本部担当の河野文明氏は、互いに連携をとりながら、モノづくりとマーケティングを融合させた経営革新を進めている。 photo by Keiji Kaneda
とある閑静な住宅街で、ベランダに干してある靴下が次々と切り刻まれるという連続事件が発生。刑事が捕まえた犯人は、なんと常連客から足が臭いとバカにされていた居酒屋の店員だった!──これは、靴下メーカーの岡本が運営するブログ・サイト「今日もガンバレ! 足クサ男」に掲載されている人気連載の1場面である。企業が運営するサイトとしては、かなり“異色”なこのブログ。実は、同社が製造・販売する高機能靴下「SUPER SOX」の販売促進を目的とした、立派な“マーケティング・ツール”なのである。
サイトには、プロの作家とイラストレーターに制作を依頼しているというこのコメディ・タッチの連載に加え、足を清潔に保つためのワン・ポイント講座、消費者からの自由な投稿を受け付ける専用コーナーなど、「足」をテーマにした多彩なコンテンツがそろっている。読者ターゲットとして想定しているのは、毎日靴下を履くビジネスマンと、その妻たちである。
「足のムレ、ニオイ」という、なかなか大っぴらにしにくいテーマをあえて取り上げることで、消費者に楽しみながら靴下の機能を見直してもらいたい──このブログには、靴下づくりにこだわる岡本のそんな思いが込められている。
インターネットの世界において、すでに主要なコミュニケーション・ツールとしての地位を確立したブログだが、その存在は今、マーケティング戦略の強化を図る企業からも注目されている。コメント、トラックバックといった機能によって読み手が自由にフィードバックを行えるため、従来までの一方通行の情報提供にとどまらない双方向による顧客とのコミュニケーションが期待できるというのが、その理由だ。岡本はそんな“ブログ・マーケティング”の可能性に早くから着目した企業の1社なのだ。
同社の執行役員でマーケティング戦略を統括する椿野泉氏は、ブログに代表されるWebマーケティングの可能性についてこう語る。
「顧客満足を起点にした商品展開を志向する当社にとって、店頭でなかなか出会えないお客様とダイレクトにつながることができるWeb環境は非常に貴重な存在だ。特にテキストという身近なコミュニケーション手段で表現されるブログは、忘れられがちな靴下の役割を市場に知らしめるうえで利用価値が大きいメディアだと考えている」
オープンからほぼ1年。同社のブログの認知度は着実に高まっており、現在は月間1万件のページビューを誇るまでになった。
奈良県に本社を構え、それまで“知る人ぞ知る”存在だった同社にとって、ブログは、市場(消費者)との接点を切り開くという重要な役割を担っているのだ。
R&Dの強化が実を結んだヒット商品
岡本が運営するブログ・サイト「今日もガンバレ!足クサ男」(http://ashikusa.jp)。大っぴらに話題にしにくい足のムレ・ニオイをテーマにしたコンテンツをそろえ、消費者に楽しんでもらいつつ靴下の機能を訴求することを目指している。
そのほか、供給システムにまつわる部分で岡本が推進した取り組みに、研究開発(R&D)の強化がある。まず、OEMビジネスを展開する中で一度は消滅していたR&D部を岡本氏が社長就任後に復活させた。以後、主に高付加価値商品の開発に資金を投じてきたのである。
現在、同社のR&D部は、靴下の原料となる天然繊維の改良や新素材の開発を手がける「ファイバー課」、高付加価値商品を生産するための編み機の開発・研究を手がける「メカトロ課」、人体の形状や生理機構、歩行理論などを研究しながら、未来型の靴下の開発を進める「ボディサイエンス課」から成り、各課が協調し合いながら商品開発に取り組んでいる。
この施策によって生まれた代表的な成果が、冒頭でも紹介した新素材靴下のSUPER SOXだ。同商品は、天然のウールに独自の加工を施した独自開発の新素材「BREATHE FIBER」を使用し、足のムレとニオイを防ぐという機能にフォーカスして開発された看板商品である。抗菌剤・消臭剤を付着させた一般の商品とは異なり、効果が高く持続性に優れているとあって、2004年の発売から2年で150万足以上を売り上げるヒット商品となった。
「開発段階で消費者に対して実施したアンケートでも、足のムレとニオイが、靴下に関する悩みの1位と2位に挙げられていた。そうした消費者の率直な声を起点に開発したことが高く評価された」と、椿野氏もこの成果には大きな手ごたえを感じている。
また、人の歩き方に着目し、つま先付近、土踏まず、かかとといった足裏の部位によって生地の厚みを変えることで、足への負担を減らすことに重点を置いた「CROSS PRO」も、着実に主力ブランドに育っている。これは、ボディサイエンス課とメカトロ課が手を組み、専用の編み機まで開発するという、同社のこだわりによって生まれた商品だ。
自社ブランドの確立へ向けた挑戦
岡本が素材から見直して商品化したヒット商品「SUPER SOX」。吸湿性と放湿性に優れ、足のムレとニオイを気にするビジネスマンに愛用されている。
時代の先端を行くかのような岡本のブログ・マーケティングだが、実は、この施策は、1997年に社長に就任した岡本哲治氏のリーダーシップの下で進められている大規模な経営革新プロジェクトと深いかかわりを持つ。法人設立50周年に当たる1998年を「第2の創業元年」と位置づけた同社は、「世界に通用するマーケティング力の優れたソックス・メーカー」を目指すべく、企画、生産、調達、販売といったあらゆる業務プロセス、ならびに商品戦略の抜本的な見直しを図ってきたのだ。
「OKAMOTO Renaissance(岡本ルネサンス)」と銘打たれたこの経営革新プロジェクトにおいて、中心テーマの1つに掲げられたのが、自社ブランドの確立であった。
それまでの岡本のビジネス・モデルはと言えば、ライセンス・ブランド商品、量販店からの依頼に基づいて生産するプライベート・ブランド商品の主に2種類の商品によって成り立っていた。これは、岡本に限らず、世界中の靴下メーカーに共通した特徴である。言ってみれば、靴を履く人であればだれもが必要とする最寄り品を扱いながら、一般消費者に対しては長らく“顔の見えない”ビジネスを展開してきたのである。
「大量生産・大量消費の時代はそれでよかったかもしれないが、消費者の嗜好が多様化したことで、今では他社との明確な差別化が求められるようになってきた。また、生産コストの安い中国のメーカーが世界的に台頭してきたという事情もある。当社が自社ブランド商品を手がけようとした背景には、こうした市場環境の中で強力な武器を手にしたいとの思いがあった」(椿野氏)
アパレル・メーカーや量販店のニーズを起点としたOEMモデルから、消費者のニーズを起点とした自社ブランド・モデルへの転換──岡本にとって、ここ数年間は、この創業以来とも言える挑戦の歴史だったのである。
マーケティングと“モノづくり”をITでつなぐ
「製造業としての基本のプロセスに磨きをかけないかぎり、どんなマーケティング戦略も効力を持たない」と力説する椿野氏。 photo by Keiji Kaneda
靴下づくりのノウハウはすでにある。であれば、あとは「岡本」の名を市場に浸透させるためのマーケティングに注力すればいい──自社ブランドを新たに展開すると聞けば、すぐにこんなストーリーが思い浮かぶだろう。
だが、同社が自社ブランド商品を展開するうえで最初に手をつけたのは、実は、商品を企画し、生産し、それを店舗に届けるという“供給システム”の再構築のほうであった。1998年からの最初の6年間で実施された「OKAMOTO RenaissanceフェーズI」では、むしろこちらのほうに圧倒的に重点が置かれたのである。これは、「製造業としての基本プロセスに磨きをかけないかぎり、どんなマーケティング戦略も効力を発揮できない」(椿野氏)という考えによるものだ。
事実、同社の経営革新プロジェクトでは、「供給システム」と「マーケティング」が両輪として位置づけられており、その2つが相乗効果を生むことによって消費者の満足度を高めていくというビジョンがしっかりと描かれている。椿野氏は続ける。
「社長のビジョンは明快だ。我々の本業はあくまでもモノづくりであり、そのプロセスを強化することなくして、魅力的な商品は生みだせない。だが、そればかりを追求していると、結果として、今度は消費者に対して自分たちの商品を“押しつける”ことになってしまうおそれがある。そこで、そのバランスをとるために、供給システムとマーケティングを連携させようというわけだ」
モノづくりとマーケティングをつなぐ──これを実現するためのカギとして、岡本がきわめて重視しているもの、それはもちろんITである。
同社の業務推進担当執行役員で、情報システム部門を統括する吉原剛氏は、次のように強調する。
「良いモノを迅速に作り、それを消費者に効果的に訴求する──そう言うと当たり前の取り組みに聞こえるかもしれないが、それは、業務の中で生まれる情報を高いレベルで共有することができて初めて実現できるものだ。その意味で、ハードルは高いが、挑戦しがいのあるテーマだと言える」
生産プロセスを革新する
生産プロセスの改革を手がけた河野氏は、「かつての内職頼みの生産プロセスでは、消費者からのニーズに迅速に対応できないと考えた」と述懐する。 photo by Keiji Kaneda
それでは、岡本はどのようにして供給システムの再構築を進めてきたかのであろうか。それは、端的に言えば、大量生産・大量消費を前提とした“作り置き型”の見込み生産から、市場の需要に応じて生産量を細かく調節する“多品種少量型”の生産スタイルへの転換であった。SCM(Supply Chain Management)の実践と言いかえることもできる。
業種を問わず、製造業にとって共通のテーマとなっているSCMだが、岡本のような靴下メーカーにとっては、その実践は他の業種よりもさらに困難であった。というのも、靴下の生産プロセスは伝統的に内職によって支えられており、プロセスが細かく分断されていたからである。そのため、同社ではまず、生産現場(工場)の改革から手をつけなければならなかった。
生産本部担当の執行役員である河野文明氏は、工場のライン化は時代の要請にこたえるために不可欠な取り組みだったと語る。
「内職を当てにした生産プロセスでは、仕上がりの時期が読めないうえに、品質を向上させることも難しい。高付加価値のビジネスを目指すのであれば、こうしたプロセスを改め、工場内のラインで工程を一本化する“1枚流し”を早期に実現することが大きな命題だった」(河野氏)
本社に併設された工場に入ると、大型の編み機によって自動的に作られる生地が、工場内に張り巡らされたパイプを通り、スタッフの手作業を介しながら次第に靴下の形を成していく光景を目にすることができる。これは、経営革新プロジェクトがスタートした1998年から整備に着手し、その後も少しずつ改良を重ねてきた同社自慢の設備だ。現在、この工場は24時間稼働を実現しており、5秒に1足というハイ・ペースで靴下が生産できるまでになっている。
工場の近代化に続いて、今度は吉原氏のチームが中心となって取り組んだのが、ITシステムの導入だった。具体的には、生産達成率、損失時間率、不良率といった科学的な指標を工程管理に取り入れるといった生産管理の高度化を進めるとともに、各部門に散在していた受発注システムを一本化、注文が寄せられた時点で、販売計画から原料計画、生産計画までを一気通貫で立案できる環境を整えたのだ。
この、工場設備とITとを組み合わせた生産システムは「OQR-5(Okamoto Quick Response-5)」と命名され、同社の供給システムを支えるエンジンとして機能している。現在は、小売店からの注文に対して通常で3週間(最短では5日)というリード・タイムを実現しており、計画は1週間のスパンでアップデートすることが可能になっている。
靴下の魅力を世界中に伝える
岡本の経営革新プロジェクトをITの面からサポートする吉原氏は「業務の中で生まれる情報を高いレベルで共有して始めて、モノづくりとマーケティングの融合が実現できる」と語る。 photo by Keiji Kaneda
以上の取り組みによって、商品を開発して市場に供給するという“モノづくりの原点”を磨き上げてきた岡本だが、2004年からスタートし現在進行中の「OKAMOTO RenaissanceフェーズII」では、もう一方の主役である“マーケティング”の実効性をいかに高めていくかという課題にも本格的に取り組んでいる。
すでに、全国各地の大手量販店と協力して、衣料品売り場に自社ブランドの専用スペースを設けたり、特別キャンペーンを実施したりといったリテール・マーケティングの強化策や、消費者に商品をじかに手にしてもらう機会を増やそうという取り込みを継続的に展開している。また、都市部での需要が見込まれるSUPER SOXについては、東京・八重洲で、ビジネスマンに7,000足分もの商品を無料で配布するというキャンペーンも実施した。
大がかりなマス・マーケティングを展開することなく、SUPER SOXがヒットした背景には、こうした地道な努力があったのだ。
なお、こうしたマーケティングの分野でも、ITは積極的に活用されている。その1つが、「まだ実験段階」(椿野氏)だが、自社商品のネット販売を手がけるeコマース事業である。物流コストなどいくつかの課題をクリアする必要はあるものの、こうした新たな販売チャネルづくりが今後の大きなテーマになることは、椿野氏も認めているところだ。また、受発注データや店頭での売上げ情報をシステムによって分析し、消費者の潜在的なニーズの掘り起こしにITを役立てるといったことも検討されている。
さて、岡本が身を置く日本の靴下産業だが、その現状は決してバラ色に彩られているわけではない。特に2000年以降は、アジア各国からの輸入量が大幅に伸び続ける一方で、国内の生産量は年々減り続けている。快調にヒット商品を送り出しているように見える岡本にしても、混迷する靴下市場の中で、何とか踏みとどまっていられるというのが実情だ。
「確かに、コモディティ商品である靴下だけに、『安ければそれでいい』と考える消費者が多いことは否定できない。だが、人々の生活を豊かにする“本物の靴下”というものが世の中には存在する。その魅力をしっかりと世界中の消費者に伝えたい。それこそが、我々のマーケティング戦略の目指すところだと考えている」(椿野氏)
創業以来最寄り品である靴下を作り続けて72年。8年前から始まった同社の挑戦は、効率が最優先される現代社会に対する一種のアンチテーゼだと言えるのかもしれない。
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