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SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。 SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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富士通、従量課金でソフト提供-米で事業実験
2006年10月09日



 富士通は全額出資子会社の米国グロービア・インターナショナル(カリフォルニア州)を通じ、ソフトウエアを電気や水のように従量課金で提供する新たな事業モデルの実験を始めることを明らかにした。ソフトウエアのサービス化は「SaaS(サース)=用語参照」と呼ばれ、ITの新潮流として注目されている有力分野。富士通は「まず試してみることが重要」(秋草直之会長)とし、米国での実験で得たノウハウを日本に逆輸入することを検討する。



 グロービア・インターナショナルが2日に設立したSaaS専門会社であるグロービア・サービシズが「GSイノベート」の名称で提供する。グロービア・インターナショナルが開発・販売している生産管理用の統合業務パッケージ(ERP)を現地の中堅・中小製造業向けにウェブ経由で提供する。



 料金体系は現在、検討中だが、ERPをパッケージ製品として丸ごと購入するよりも割安に設定することで新規需要を喚起する。基本ソフト(OS)にはオープンソース(無償公開・利用改変自由)のリナックスを採用する方針。



 SaaSの事業形態は「アプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)サービス」と類似しているが、ASPとは異なり他のアプリケーションとの連携やカスタマイズ(個別対応)などが自由にできる。米国ではオープンソースソフト(OSS)とSaaS形態を融合させたユーザー参加型のサービスモデルが脚光を浴び、顧客情報管理(CRM)サービスを中心に専業のソフトベンチャーが相次ぎ誕生している。一方、日本ではこれまで中小ソフト会社などでSaaSビジネスが関心を呼んできた。またここにきて日本オラクルがCRM分野でSaaS市場への本格参入を表明。国産ERP最大手の富士通の戦略的な取り組みに注目が集まる。



 民間非営利団体(NPO)のASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン(ASPICジャパン)の調査では、ASPを含めたSaaS市場は07年に8000億円、2010年には1兆5000億円に達すると予測している。



 【用語】SaaS=software as a serviceの略で、「サービスとしてのソフトウエア」という意味。



 顧客が開発者からソフトウエアの提供を受ける際、必要な機能のみを選択して利用できるようにしたソフトウエア。顧客のパソコンにアプリケーションソフト(適用業務ソフト)が搭載されていなくともネット経由で随時ソフトウエアを利用できる。通信費用の低下など利用環境の向上で実現したサービスとされ、従来のASPとは区別される。




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三共、抜本的業務改革にSAP R/3を採用
~ 9社共同運営システムで年間200億円のコスト削減を見込む ~

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 本日、イキソスソフトウェア株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:佐藤勉、以下、イキソス)、イーエムシー ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:スティーブン フィッツ、以下、EMC)、SAPジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:藤井清孝、以下、SAP)、デルコンピュータ株式会社(本社:川崎市、代表取締役社長:浜田宏、以下、デル)、東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(本社:千葉県習志野市、取締役社長:千田峰雄、以下、B-EN-G)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:金杉明信、以下、NEC)、日本ユニシス株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役社長:島田精一、以下、日本ユニシス)、株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、代表執行役 執行役社長:庄山悦彦、以下、日立)、マイクロソフト株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:マイケル ローディング、以下、マイクロソフト)(五十音順)の9社は、三共株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:庄田隆、以下、三共)が、中期経営計画達成に向けた経営改革の一環として、生産、販売、人事、経理などの業務を統括的に管理する統合基幹業務システム (ERP) SAP R/3®を採用するにあたり共同で導入運営にあたったと発表しました。

 国際的競争が激化する製薬業界では、新薬の創出に向けた研究開発費の増大、薬価(薬の公定価格)引き下げなど、各製薬企業ともに収益を圧迫する厳しい事業環境に置かれています。こうした状況下、三共は、2001年7月に業務改革本部を発足し、コスト削減とともに、業務全体の流れの抜本的見直しに取り組んでいます。三共にとって、統合基幹業務システム (ERP) SAP R/3の導入は、今後の事業展開を視野に入れた大規模な投資でしたが、抜本的改革の大きな一手としてその導入を決定し、準備が進められました。

 今回の統合情報システム(サプライチェーン、会計、人事の3領域で16のSAP R/3モジュールと12の外郭システム)導入にあたっては、業務改革計画・実行支援をアクセンチュア、システム導入サポートを主にSAPが構築し、サプライチェーン領域をB-EN-Gが担当いたしました。また基盤面及び製造業務の支援には日立が参画、技術基盤としてはマイクロソフトのMicrosoft® Windows® 2000 Datacenter Server、Microsoft® SQL SeverTM 2000を全面的に採用し、H/WにはDBサーバーに日本ユニシス、Webサーバーやその他のサーバーハードウェアにデル、ストレージにEMCを使用し、加えてアーカイブにイキソスを採用しました。また稼動後の運用保守はNECに全面的アウトソースを行っているという、大規模かつ稀にみる9社共同のもとに導入が実施されました。

 三共は、今回のSAP R/3および関連システム導入によって、部門ごとに40以上あった業務システムを統合し、あたかも単一システムのように運用できるようになりました。このことは、同じデータを別々の部門でその都度入力するといった手間を省くことができ、業務の効率化につながります。また、生産や在庫に関する最新データも全社で共有出来るようになったため、生産計画のきめ細かな調整も可能になり、生産計画のサイクルをこれまでの月単位から旬(10日)単位に短縮することで、より効率的な資材調達や在庫状況に応じた迅速な生産計画作成が可能になります。結果として、在庫の適正化によるコスト削減につなげることができます。

 三共では、業務改革の取り組みにより年間200億円以上のコスト削減を目標としております。
また、ERPの導入を単なるシステムによる自動・省力化ではなく、経営力のアップにつなげるため、特に、業績管理、意思決定スピードの向上に最大限に活用したい考えでおり、今後、更なる改革をすすめていく予定です。




【ご参考】
イキソスソフトウェア株式会社
イキソスソフトウェアは、企業内が抱えるドキュメントやインフラの問題をアーカイブを通じて解決し、業務効率の革新的な向上を実現します。なかでもイキソスソフトウェアのIXOS-eCON Solution Suiteは、業務アプリケーション (SAP R/3) 、グループウェア (MS Exchange) 、インターネットを含めた企業の情報インフラと文書管理のシームレスな統合を実現します。既に日本国内の160社を超えるSAP R/3ユーザーが、イキソスソフトウェアのアーカイブ・ソリューションを採用し、ペーパーレス化や社内の散在する文書の有効活用、電子帳簿保存法への対応だけでなく、データアーカイブによるDB増大回避といったインフラの有効活用など、大幅な生産性の向上を実現しています。
イーエムシー ジャパン株式会社
イーエムシー ジャパン株式会社は、情報ストレージ、ソフトウエア、ネットワーク、サービスを総合ソリューションとして提供している、世界的なリーディングカンパニー、EMCコーポレーションの日本法人です。あらゆる規模のお客様に、オートメート・ネットワーク・ストレージ・ソリューションを提供し、コスト効果の高い効率的な方法で、情報の保護・管理・共有を実現しています。1994年に設立され、従業員数576名。販売、保守業務拠点は東京、大阪、名古屋、広島、福岡、静岡、多摩、豊田の8ヶ所。
SAPジャパン株式会社
SAPジャパンは、企業向けビジネス・ソフトウェアの分野において世界のリーディングカンパニーであるSAP AGの日本法人として、1992年に設立されました。SAPは統合基幹業務ソフト (ERP) をはじめ、サプライヤ・リレーションシップ・マネージメント (SRM) やサプライチェーン・マネジメント (SCM) 、顧客関係管理 (CRM) 、企業向けポータル (Enterprise Portal) 、製品ライフサイクル管理 (PLM) などの構築を可能にする様々なソリューションを提供しています。すでに世界では120カ国、20,000以上の企業で1,200万人以上のユーザに利用されており、企業内、および企業間のあらゆるビジネスプロセスの統合・効率化を達成しています。日本国内でもすでに1,100社以上の企業グループで利用され、日本企業の情報化の推進、国際競争力及び企業価値の向上に貢献しています。
デルコンピュータ株式会社
デルコンピュータ株式会社は、米Dell Inc.の日本法人で、デル社独自の直販方式「デル・ダイレクト・モデル」を活かした販売/マーケティング/サービス・サポート業務を日本国内で行っています。業界標準の技術を採用した製品および各種サービスの拡充に注力しており、エンタープライズ市場においても「デル・ダイレクト・モデル」による優れたバリューをお客様に提供しています。
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社((略称B-EN-G) は、1999年に東洋エンジニアリング株式会社のIT事業部が分離独立、営業を開始し、2001年2月に店頭上場したビジネスエンジニアリング会社です。現在、主としてERP、CRM、SCM、EC等に関するコンサルテーションやシステム構築サービスを提供しております。資本金約7億円、売上高122億円、従業員数が243人となっております。(2003年3月現在)1993年よりSAP R/3のパートナーとなり、130を超えるSAPプロジェクト(うち製薬メーカ様26社)に携わって参りました。その取組姿勢に対しユーザ企業様多数の評価を頂き、SAP AWARD OF EXCELLENCEを6年連続で受賞しております。
日本電気株式会社
日本電気株式会社は、セキュリティ対策や災害対策を図ったセンター設備を活用し、システム運用サービスやシステム管理支援、帳票デリバリサービス、データ保管サービスなどのアウトソーシングサービスを提供しています。今回、NECネクサソリューションズ株式会社と株式会社日本総合研究所の2社とともに三共様に提供するアウトソーシングサービスは、人事・会計・生産管理・販売物流などの基幹業務を行う「統合情報システム (SAP R/3) 」の運用・管理、関連アプリケーションのメンテンナンス、システムやパソコンの利用に関する問い合わせ応対などを行うヘルプデスク業務などであり、同社内のITのさらなる活用を推進するとともに、新たな全社情報化戦略の立案や情報システム開発力の向上、システム運用業務の効率化に貢献します。
日本ユニシス株式会社
日本ユニシス株式会社は、現在ITベンダーとして各種ハード・ソフトウエアの製造、販売を行う一方でお客様が求めるさまざまなビジネスモデルの構築支援に力を入れています。
当社は、SAP関連ビジネスのひとつとして、SAP製品の機能を最大限に引き出すことができる、Windows 2000 Datacenter Serverを搭載し最大32CPU構成まで可能な高信頼/高可用性IAサーバー「ES7000」を、2000年から提供してきました。また2002年2月には、デルコンピュータ株式会社とSAPビジネスのプラットフォーム提供で提携しており、今回の三共事例は、該提携に基づく共同提案による第一号稼働ユーザ事例になります。
当社は今後も、お客様のビジネス戦略を最も効果的に、最も迅速に実現する"顧客価値創造型"のITサービスリーディングカンパニーを目指します。
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所は、1994年よりSAP パートナーとして、約100社のお客様のR/3システム構築に携わって参りました。この10年間に蓄積したノウハウおよび約1,148(2002年12月現在)名のSAP認定コンサルタントをベースに、R/3をコアとしたトータル基幹業務システムの構築(MES、LIMS、他システムとの統合/連携)、およびR/3本番稼動後のお客様の負荷軽減を実現すべく、AMO (Application Management Outsourcing) を中心としたトータルアウトソーシングサービスを併せてご提供しています。
医薬品業界においては、今回ご採用頂いた生産管理システム「HITPHAMS」、統合インターフェースシステム「OpenNABINS」をはじめ、研究開発から製造、販売、レギュレーション対応に至る全プロセスを対象としたソリューションサービスをご提供しており、お客様のコアビジネス発展に寄与申し上げるべく活動を展開して参ります。
マイクロソフト株式会社
マイクロソフト株式会社は、SAP社のテクノロジーパートナーとして、OS:Windows 2000 Server、DBMS:SQL Server 2000を提供してまいりました。特にここ2年は、新規顧客の実に70%近くがWindowsをそのSAPシステムの基盤として採用しており、更にこの6月に発売を開始したWindows Server 2003の64ビットバージョン により、大容量メモリを要求するSCMアプリケーションでも充分にWindows ServerおよびSQL Serverをご採用いただくことが可能になりました。今回ご採用頂いたWindows 2000 Datacenter Serverは、提供ハードウェア環境毎に2週間のテストを課し、認定を与え、99.99以上の高い可用性を実現する基幹システム向けのフラッグシップOSです。Cost Effectiveなシステムから高いReliabilityとScalabilityを実現するシステムまで、マイクロソフトは、今後もSAPシステムの標準プラットフォームベンダーとして、活動してまいります。
コクヨ
“顧客起点”のマーケティングを流通チャネルに持ち込む


身近で、どこででも手に入るというイメージから流通の世界で先端を歩んでいると思われがちなオフィス向け消耗品だが、その実、流通面の改革では後れをとっていた。コクヨは、そんな市場にマーケティングの視点を持ち込むことで、メーカーの枠にとらわれない流通革新を引き起こすべく、その先導役を務めている。同社の意図する「マーケティング」とは、いったいどのようなものなのか。本稿では、コクヨが新たなる流通チャネルと位置づけている@office事業を取り上げながら、そこに込められた同社の「マーケティング革新」のビジョンと戦略を明らかにする。

CIO Magazine編集部 text by CIO Magazine

メーカーが流通にかかわる時代
業界最大手のコクヨにあって、オフィス向け消耗品のマーケティング革新をリードする@office部長の遠藤竹彦氏(右)と、ECグループ課長の間渕憲一氏。両氏は、マーケティングにおけるITの役割を追求しつつも、業界の流通全体の変革を目指している。 photo by Tetsuo Hoshino
 オフィスでごく当たり前に使われているボールペンやクリップ、コピー用紙といった消耗文具品。その流通体系が今、変革期を迎えている。必需品でありながら、そのあまりの汎用性の高さがたたってか、流通改革が遅々として進まなかった市場に、ここ数年「調達の効率化」をキーワードとした新しいビジネス・モデルが出現しているのである。特に、企業をターゲットとした通販事業は、「手間をかけずに文具品を調達したい」という潜在ニーズをとらえるかたちで急成長を遂げている。

 そんななか、業界最大手メーカーであるコクヨも、従来までの“メーカー然”としたたたずまいを捨て、“顧客起点”を合い言葉とした“マーケティング企業”への脱皮を図っている。

 そうした一連の戦略を具体化したのが、大、中規模企業向けの「@office(あっとオフィス)」、SOHOを含む中小企業向けの「Kaunet(カウネット)」という2つの通販事業である。

 国内消耗文具品市場において“1強時代”を築いてきたコクヨが、今、「顧客起点」、「マーケティング革新」にこだわる理由はどこにあるのか。また、同社は今後、消耗文具品の流通をどのようにリードしていこうとしているのか。

 この問いに対して、@office事業を統括する流通企画カンパニー、@office部長の遠藤竹彦氏は、次のように答える。

 「これまでは、メーカーはモノを作っていればそれでよかった。だが、今や、顧客満足度に大きな影響を及ぼす流通を革新しなければ、業界の未来はない、という時代に入った。そこで、我々の立場から、どうしたら流通体系、ひいては末端のお客様を支援していけるかを考え、チャレンジしていくことにした。そのチャレンジを具体化したものが、@office事業なのだ」

 以下では、こうしたビジョンの下で展開されている@office事業を通して、コクヨが目指す「マーケティング革新」の全体像に迫る。

顧客との“近くて遠い”関係
 そもそも、コクヨが“顧客起点”をビジネスの中心に据えるようになったのは、1990年代後半のことである。

 それまでのコクヨは、「メーカー」、「卸」、「小売り」から成る3層構造の流通体系の中で、品ぞろえを充実されることで強大な勢力を築いてきた。つまり、全国津々浦々に点在する“街の文具屋さん”にいかに豊富な商品を届け、それを消費者へ浸透させるか――それこそが、コクヨにとっての最重要課題であり、競争力の源泉だったわけだ。

 だが、そうした“多種多売”による成長戦略の根幹を揺さぶる事態が突然やってきた。オフィスにOA機器が急速に普及し、文具品の定義が大きく変化するとともに、外資系ディスカウント・ストアや他業種企業の参入、競合メーカーのプラスによる通販事業「アスクル」の台頭が相次いで起こったのである。そして、ビジネスのあり方を見つめ直さざるをえなくなったコクヨが導き出した答えが、「マーケティング革新」だったのである。

 とはいえ、3層構造の流通体系の中で長らくビジネスを展開してきたコクヨには、マーケティング革新を実践するために欠かせない消費者についての情報が決定的に不足していた。多くの消費者に親しまれていた同社をしても、消費者の真のニーズがつかみ切れていなかったわけだ。

 この“近くて遠い”消費者との距離を縮めるために、コクヨがとったのは、新しい流通チャネルの創出と、顧客情報を集約し、分析・共有するためのマーケティング情報システムの構築という方策であった。

2つの「マーケティング戦略」
「メーカーはモノを作っていればそれでいいという時代は終わった。これからは、マーケティング革新を通じて流通全体にインパクトを与えることが必要だ」と力説する@office部長の遠藤氏。 photo by Tetsuo Hoshino
 コクヨが展開する@office事業では、コクヨ以外のメーカーの商品も含め、1万6,000点ものオフィス用品を取り扱っている。顧客からの発注はオンラインまたはファクスでなされ、受注の当日ないし翌日には配送される。また、決済方法も、部署単位あるいは全社単位というように、顧客の要求に応じて何とおりか用意されている。

 それまで企業に大きな負荷がかかっていた文具品の調達を簡素化できるとあって、まず大企業を中心に利用され始め、現在では1日あたり1万件の部署に配送を行うまでに成長を遂げている。

 ありふれたB2B(企業間)の流通チャネルと見なすこともできるが、その形態を細かく見ていくと、実は同事業がいわゆる「メーカーによる直販ビジネス」とは趣を大きく異にしていることが分かる。

 まず、@officeのカタログを見ると、商品と並んで記載されている価格は“メーカー希望小売価格”のみ。これは、販売価格の決定権を各小売店が持っていることを意味している。また、消費者との直接の窓口も、あくまで小売店。これによって、各小売店は、自らの“得意先”を確保したまま、流通にかかる負荷のみを軽減することが可能なのである。

 「受発注、配送といったルーチン・ワークがなくなれば、小売店はその分、セールスなどの戦略的な活動にリソースを振り向けることが可能になる。そのように、小売店を巻き込んだかたちでマーケティング革新を推進することに、@officeの目的がある」と遠藤氏は説明する。

 現在、この@officeには、全国約1,000店の小売店が参加している。インターネットに接続できる環境があればサービスが利用できるという手軽さが受け、現在では、都市部で約2割、地方で約1割のコクヨ製品の流通が、このシステムを通して行われるようになっている。

 さらに、この@officeには、実はもう1つの「マーケティング戦略」が隠されている。それは、コクヨ自身が顧客の動向をつぶさに把握することである。このシステムを使うことにより、それまで小売店や卸を介することでしか把握できなかった市場の実態を、直接、しかもリアルタイムに把握し、その情報を全社で共有することが可能になったのである。

 コクヨは、デスク・セットや収納、間仕切りなどを主力とするファニチャー・ビジネスにおいては、以前から“顧客起点”を掲げていたが、同社のビジネスの両輪を成すもう一方の消耗品ビジネスにおいては、そうした戦略を構築できずにいた。

 同社の戦略企画部でECグループ課長を務め、マーケティング戦略にも深くかかわってきた間渕憲一氏は、「顧客を知ること」の重要性をこう語る。

 「比較的お客様との接点が多いファニチャー・ビジネスを進める中で、お客さまの声を聞き、それを商品開発や営業などあらゆる業務の起点とすることの重要性を痛感していた。そのため、そうした仕組みを消耗品ビジネスの分野でも何とか構築できないかと考えていた。@officeは、そんな考えを実行に移すにあたって、最適な環境だった」

 日々膨大な数の商品が出荷される消耗品の販売動向を@officeを通じて正確に把握することができれば、経営情報の空白を埋められるだけでなく、自社製品の強み・弱みを的確に把握することができる。コクヨにとって@officeは、顧客との“距離”を近づけるための、きわめて貴重な流通チャネルとなっているのである。

「分析」と「共有」でデータを“知”に変える
 以上のように、顧客の購買動向にまつわる情報を集約する仕組みを整えたコクヨだが、そうした情報をマーケティングに役立てるとなると、今度は、集めた情報をどう分析するかという新たな課題が生じることになる。

 そこで、コクヨが活用しているのが、2種類のOLAP(Online Analytical Processing)ツール、テキスト・マイニング・ツールといったITインフラである。OLAPツールは、売上げをはじめとする定量情報を顧客属性などとひもづけて把握するために、テキスト・マイニング・ツールは、顧客の潜在的なニーズなど数値に表れない定性情報を把握するために、それぞれ用いられている。

 いずれのツールも、当初は主にファニチャー・ビジネスの現状を分析するために利用されていたが、@officeから膨大なデータが上がってくるようになったことで、現在では消耗品ビジネスの動向を探るための貴重な武器としても活用されている。それぞれのツールは、現場の営業支援システムや、経営管理システムと密接に統合されており、さまざまなセクションで用途に応じて使い分けられている。

 そして、@officeと分析ツールの組み合わせは、100年近くにわたってビジネスを展開してきたコクヨにとっても、初めて知るようなユニークな顧客動向を明らかにしてくれているという。

 例えば、同社が長らく測量/設計士向けに製造してきたポケット手帳が、実は、一般のビジネスマンの人気を博していたということが分かったというエピソードもあった。

 間渕氏は、苦笑とともにこう振り返る。

 「データを見ていて、たまたま気づいたことだった。この手帳は、技術者が屋外で立ったまま簡単な図面を引いたりすることができるように設計されているが、それが、実は仕事の予定を書き込んだりするのにも使い勝手がよいと評価されていたようだ。こちらが“こう使ってくれ”などと言うまでもなく、お客様は的確に商品を見ているということだろう」

 コクヨは今、こうした分析ツールにマーケティングの面からも多大な期待を寄せている。それは、端的に言えば「業務のPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを速く回す」ために、分析ツールの存在が欠かせないからだ。顧客の動向をリアルタイムで把握し、そのつどその動向に対応する手を打っていく――これが、コクヨの目指すマーケティングの根幹なのである。

 「かつては、1つの商品を市場に投入したら、それがはたして“売れるモノ”なのか、“売れないモノ”なのか、それを見極めるのに数年間の歳月を要することも珍しくなかった。だが、今では、ITによって顧客情報と定量データをひもづけして見ることができるようになったため、そのスピードが格段に上がった。リピート購買が発生しているか、詰め替え用製品が売れているか、そんな情報を分析すれば、商品の人気、不人気はたちどころに分かってしまう」と遠藤氏は強調する。

 こうした分析系ツール以外にも、コクヨでは、モバイル環境でも利用可能な営業支援ツール、現場スタッフの“営業日報”を共有し、効率的な営業活動を支援するマーケティング・ポータルなど、さまざまなITツールを導入し、顧客との接点拡大に努めている。

“草の根運動”でマーケティング・マインドを醸成
コクヨで、ITによるマーケティングのあり方を模索し続けてきたECグループ課長の間渕氏は、「ファニチャー・ビジネスを通じて学んだマーケティングの方法論を、今後は消耗品ビジネスでも展開していきたい」と語る。 photo by Tetsuo Hoshino
 ところで、いくら高度なITツールをそろえても、現場で働くスタッフにそれを利用してもらわないことには、マーケティング革新はおぼつかない。実際、コクヨの場合も、それまでとまったく異なる手法でマーケティング活動を展開することについては、スタッフの間から不満の声も上がったという。

 そうした問題を解決するために、同社が取り組んだのは、まさに“草の根運動”であった。ITを駆使したマーケティングの利点を地道にアピールし続けることで、スタッフの“マーケティング・マインド”を徐々に醸成していったのである。

 その手始めとして、2001年4月には、各部署にマーケティング担当者を配置。そのうえで全社的なマーケティング革新をつかさどる組織として、マーケティング戦略室を立ち上げた。そのように、まずは組織に手を加えることで、それまでスタッフの間になじみの薄かった「マーケティング」の必要性を訴えていったのである。

 ITとマーケティングの融合についても、いたずらにトップダウンで訴求するのではなく、現場レベルでの意識の高まりを待つ方針をとった。

 今春に、マーケティング戦略室がその任務を終えるまで同室に所属していた間渕氏は、「単に“ITを使え”と言っても、現場は言うことを聞かない。そこで、たとえ成果は小さくとも、部署単位で成功事例を作りだし、それを全社に広めるという方針をとったのだ。地道なアプローチだが、理論だけでなく実体の伴ったPR活動を展開したことで、かえって現場への訴求力を高めることができた」と述懐する。

「クリック」を起点に「モルタル」を変える
 新しい流通チャネルとITを融合させることで、「マーケティング企業」への変貌をもくろむコクヨだが、実はその真の目的は、オフィス用品の流通そのものを変革することにある。「顧客のニーズをつかむことができれば、ビジネスのあらゆる領域を効率化できる」というのが、コクヨの哲学なのである。

 現に、商品の物流拠点を東京、大阪の2カ所に集約し、中間在庫を一掃するなど、マーケティングを起点とした業務プロセスの効率化も始まっている。それに伴い、3層構造の一角を占めていた卸店の役割にも大きな変化が生じ始めているという。

 「これからの時代には、単に商品をそろえるだけの卸は要らない。求められるのは、市場の動向を踏まえて、メーカー、小売店の双方をサポートできるような存在だ。実際、ここにきて各卸店も、これまで文具店の弱点とされてきたOA機器の分野などで、積極的にイニシアチブを取り始めている。メーカー、卸、小売りが三位一体となってマーケティングに取り組めば、おのずと流通のあり方も変わってくるということだろう」(遠藤氏)

 ITやネットワークを駆使したビジネス・モデルを採用したことで、とかく「クリック」の部分ばかりが注目されがちなコクヨの@officeだが、その基盤となっているのは、営業、配送といった「モルタル」の部分である。

 「クリック」を整備することで「モルタル」を変革し、ひいては業界の流通のあり方そのものを変えていく――それが、コクヨの目指す「マーケティング革新」の姿なのである。
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