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SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。 SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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“注文達成率”の向上を目指してしのぎを削る米国企業

サプライチェーンの強化は、メーカーや流通業にとって永遠のテーマだと言える。厳しい企業間競争を勝ち抜くためには、常にサプライチェーンの強化に努める必要があるのだ。そんななか、米国では、顧客からの引き合いに応じて、指定された納期に、指定された場所へ、破損のない状態で製品を納品できる割合──すなわち注文達成率──が、サプライチェーンの評価基準として広く用いられるようになってきた。本稿では注文達成率が用いられるようになった背景を明らかにするとともに、注文達成率の向上に取り組む米国企業の取り組みから、サプライチェーンを強化するためのヒントを探りたい。

商機を逃さぬための情報共有を
クアルコムのCIO、ノーム・フェルドハイム氏は、長期的な需要予測を実施するとともに、共同で製品を製造するサプライヤーを増やすことで、生産能力に柔軟性を持たせることに成功した。 photo by Mark Robert Halper
 携帯電話端末向け半導体の開発や製造、他メーカーへの技術のライセンシングなどを手がける米国クアルコム。同社でCIOを務めるノーム・フェルドハイム氏は2003年末、自社の主力商品である半導体製品の需要が当初の予測を大幅に上回りそうであることを察知した。世界各国で携帯電話がかつてないほどのペースで普及し始めたことを受けて、端末メーカー各社が少しでも多くの半導体を早期に確保しようと動き出していたのである。

 フェルドハイム氏の読みどおり、その後の1年間で、携帯電話端末向け半導体の需要は、一気に37%も増加した。ところが、クアルコムは、絶好のビジネス・チャンスに遭遇しながら、指をくわえて眺めているしか術(すべ)がなかった。需要に見合うだけの増産体制を早期に築くことができなかったからである。

 同社の半導体製品は最先端の技術を用いて製造されており、増産するためには、生産ラインのあらゆる部分に手を加えなければならない。そのため、同社が、ようやく目標の生産体制を整えたころには、需要のピークはとうに過ぎていたのである。

 フェルドハイム氏は、当時の状況を苦々しい表情でこう振り返る。

 「需要のピーク時には、生産ラインをフル回転させても製品が不足するほどだった。顧客が要求する納期にこたえられないことはもちろん、発注自体に応じられないことも少なくなかった」

 空前の需要の高まりは、結果的に同社のサプライチェーンの“弱点”を白日の下にさらす結果を招いたのである。

 クアルコムの経営陣は、この手痛い経験を受けて、2004年8月、サプライチェーンの抜本的な改革に乗り出すという決断を下した。そのねらいは、関係者間の情報共有を高度化し、生産計画の立案をより入念にするというところにあった。

 同社はまず、サプライチェーンを回すために欠かせない生産計画ならびに需要予測の立案部署を統合し、サプライチェーン専任の部門を立ち上げた。これにより、各部門から寄せられる需要見込みデータを集約し、その情報を基に、12カ月先までの需要予測と生産計画を一元的に立案できる体制を整えたわけだ。

 加えて、サプライチェーンに携わる部門同士の連携を強化するための施策も講じた。例えば同社では、現在、サプライチェーン、販売、マーケティングの各担当役員が集まり、サプライチェーン専任部署によって立案された需要予測の有効性を確認する場が週に1度設けられている。また、それとほぼ同じ顔ぶれ(財務担当の役員が加わる)をメンバーとして、12カ月先までの生産計画を見直す会議が、月に1度開かれている。同社では近い将来、18カ月分の生産計画まで作成できるようにする計画だ。

 「需要の変化に柔軟に対応するためには、需要に対する長期的な見通しを立てておく必要がある。需要の急増に対応できなかったのは、それをきちんと認識できていなかったからだ。しかし、サプライチェーンを刷新したことで、今では社内のだれもが、長期的な計画立案の必要性を認識するようになった」(フェルドハイム氏)

 そのうえ、生産ラインの変更が難しいという問題を解決するために、新たに同業の半導体メーカー10社と手を結び、短期的な需要増が発生した場合に共同で生産に当たるといった体制も整備されつつある。そのために、Web接続やファイル共有などによって、パートナー各社との間で情報を共有するための仕組みも用意された。

 こうした一連の取り組みによって、一時は90%以下にまで落ち込んだクアルコムの注文達成率(納期までに製品を出荷できる割合)は現在、96%にまで回復している。製品の発注から納品までのリード・タイムが非常に短い半導体業界では、この数値はきわめて高いレベルにあると言える。

企業の収益を左右する“完璧な対応”率
 AMRリサーチのサプライチェーン担当アナリスト、ケビン・オマラー氏によると、指定された納期に、指定された場所へ、破損のない状態で製品を納品できる、いわば“完璧な対応”が行える比率──すなわち、注文達成率──の高い企業には、総じて次のような特徴があるという。

 まず第1に、それらの企業では高度なサプライチェーンが構築されていることが多いため、製品在庫コストが少なくて済むこと。第2に、在庫を抱えている期間が短いため、購入した資材を製品として販売し、その売上げを回収するまでの平均日数が短く、投資の回収にまつわるリスクが小さいこと。こうしたことから、注文達成率の高い企業は、同業他社と比較して収益率が高いというのである。

 「在庫が少なければ、不良在庫を抱えるというリスクも低減できる。計算上では、“完璧な対応”の達成率が3%向上すれば利益が1%上昇し、10%向上すれば1株当たりの利益が50セント増えることになる。注文達成率は企業にとって重要な経営指針であり、それを少しでも高めるために、企業には継続的にサプライチェーンを強化していくことが求められるのだ」(オマラー氏)

 注文達成率を、SCM(Supply Chain Management)の評価基準に最初に用いたのは、シリコンバレーの半導体メーカーだったとされる。この考えは1980年代から徐々に普及し始め、1990年代に入ると、食品サービス業界などにも広がった。そして今、注文達成率はSCMの評価基準の1つとして広く用いられようとしているのだ。

 注文達成率を向上させるための効果的な手法の1つが、クアルコムの取り組んだ需要予測の精度向上にほかならない。需要予測によって将来の実需を把握できれば、事前に生産量を調整することで、欠品や過剰在庫の発生を防ぐことができるのである。

 もっとも、いくら最新の需要予測システムを用いたとしても、将来の需要を完璧に把握することは現実的には不可能だ。しかし、その精度を高めることは決して不可能ではない。

 では、どのようにすれば、需要予測の精度を高めることができるのか──。そのカギを握るのが、需要予測を立案する基となるデータである。つまり、できるだけ“今”に近い実需データを需要予測の立案に用いることによって、予測の信頼性を高めようというわけだ。ここにきて、それを実現すべく、既存のサプライチェーンに変更を加える企業が相次いでいる。

 例えば、プロクター&ギャンブル(P&G)では、POSデータから各製品の販売動向をリアルタイムに把握し、その情報をサプライヤーに提供する取り組みを進めている。これにより、サプライヤーの注文達成率を高めるとともに、小売店からの引き合いに対するP&Gの注文達成率をも高めようとしているのだ。

店頭での販売データをサプライヤーと共有
P&Gのグローバル・サプライ・ネットワーク担当副社長パトリック・アーレキュー氏は、サプライヤーが製造データにアクセスするための手続きを改善し、リアルタイムで原材料をP&Gに提供できる体制の整備に努めている。 photo by Stephen Webster
 従来、P&Gでは小売店からの注文を受けて、担当者が在庫の有無を確認し、小売店に対して納品日を通知する一方で、一定期間ごとに製品を追加生産するために必要となる原材料と梱包材の量を、サプライヤーに知らせていた。サプライヤー各社はP&Gからの連絡に基づいて製品の原材料を製造し、指定の期日に納品する。そして、P&Gはそれらの原材料を用いて製品を製造する──というかたちでサプライチェーンが回っていたのである。

 しかし、このようなサプライチェーン・モデルでは、製品在庫がわずかしかない場合には、小売店からの大量の注文に即応することができず、小売店が求める商品をすべて納品し終えるまでに数カ月も要することがあった。この間、P&Gは他社の小売店からの発注に対応することができず、売上げ機会を失うことも少なくなかったのである。

 こうした問題を解決するために、同社では、ウォルマートなどの有力小売店と共同で、POSシステムで収集される情報を活用した新たなサプライチェーン・システムを整備した。

 新システムでは、レジで読み取ったPOSデータをP&Gの物流センターに転送することで、商品の販売動向をほぼリアルタイムで把握することが可能になっており、その情報がサプライチェーンの強化のためにさまざまなかたちで活用されている。例えば、物流業務では、製品の販売累計数が一定水準を超えると物流センターからその店舗に対して製品を自動的に配送する仕組みが確立されるなど、製品の自動補充が実現した。

 また、P&Gはポータル・サイトを通じて、このPOSデータをサプライヤーが利用できるようにした。これにより、サプライヤーは製品の販売量に応じて原料の生産量を柔軟に調整することが可能になるわけだ。P&Gでグローバル・サプライ・ネットワーク担当副社長を務めるパトリック・アーレキュー氏は、「POSデータをサプライヤーと共有することで、サプライヤーは、より精度の高い原材料の生産計画を立案できるようになる。その結果、製品を製造するために必要な原材料を、ジャスト・イン・タイムで納品させることができるようになるわけだ。つまり、店頭での販売情報を基に、リアルタイムに補充用製品を製造できる体制が整うことになるのだ」と新システムの効用を語る。

 もちろん、P&Gでは、需要予測の精度向上に向けても、POSデータを活用している。例えば、トイレタリー用品業界では、販売される商品のうちの20~30%が小売店の販売促進を目的とした特売に回されているが、これを踏まえ、現在、販促活動に携わっている販売部門やマーケティング部門のスタッフが、特売の有無といった情報をサプライチェーン部門と共有するようにすることで、特売にまつわる情報を需要予測に反映させているのである。

 「需要予測を立案するにあたっては、サプライチェーン部門が単独で事を進めるのではなく販売部門やロジスティックス部門と力を合わせることが大切なのだ」(アレギュー氏)

 通常、P&Gでは、各製品カテゴリーの責任者が月に最低1回は、システムが算出した需要計画を点検・検討している。新商品を相次ぎ発売している部門ではその頻度はさらに高く、例えば、定期的に新製品を市場に投入している化粧品部門では、毎週検討会議を開催している。

 この取り組みの結果、P&Gの物流センターにおける製品の在庫切れ率は大きく改善され、在庫切れ率が10%以上の製品ブランドは、約20%から約7%へと大幅に減少した。そのぶん、P&Gは売上げ機会の損失を回避できているわけだ。

緊密な情報共有が改革のカギに
 これまで述べてきたように、注文達成率を向上させるためには、需要予測や生産計画まで含めた情報をサプライヤーと共有できる仕組みを構築し、サプライヤーや顧客と緊密な関係を築き上げる必要がある。また、共有情報を基に、自社の需要予測や生産計画を絶えず見直し、生産量を柔軟に変更できるようにするには社内の各部署が協力して業務を進められるよう、社内の仕組みを整えるとともに、意識改革を進めなければならない。それを実践している会社の1つが、米国最大のマリーン用品小売りチェーンであるウェスト・マリーンである。

 カリフォルニアに本社を置く同社は、ライバル会社のE&Bマリーンを買収したのを機に、ビジネス・プロセスの改革を目指して1996年にサプライチェーンを構築した。だが、このサプライチェーンは、物流センターに必要とされる情報がほとんど集まらないなど致命的な欠陥を抱えていた。その結果、1996年の繁忙期には、12%の商品で在庫切れが発生した。その影響で、同社の売上げは年々減少を続けたのである。

 そこで、同社の役員会は1998年、サプライチェーン刷新の指揮を執らせるために、新たなCEOを迎え入れることを決断。新CEOは役員会の期待にこたえて、サプライチェーンの抜本的な改革と新たなビジネス・プロセスの構築に向けて、さまざまなIT投資を実施した。具体的には、物流センターと店舗とを直接ネットワークで結ぶとともに、物流センターと店舗の在庫補充システムを統合し、システム上でやり取りされている販売予測データを、メーカー各社とEDI(Electronic Data Interchange)で共有できるようにしたのだ。

情報をいかに活用させるか
ウェスト・マリーンの計画立案/在庫補充担当上級副社長、ラリー・スミス氏は、「販売情報や需要予測を200社のサプライヤーと共有できる環境を整えたことが、当社の経営再建につながった」と力説する。 photo by Timothy Archibald
 ウェスト・マリーンの計画立案/在庫補充担当上級副社長、ラリー・スミス氏によると、同社は、メーカー各社と販売予測データを共有するようになってから、わずか数年で、製品の在庫切れをほぼなくし、経営再建を果たすことができたという。一時は存続も危ぶまれた同社が、なぜこれほど早く経営再建を果たせたのであろうか。それは、サプライチェーンがウェスト・マリーンのみならず、メーカー各社に対してもきわめて大きなメリットを提供するものであったからだ。

 スタンフォード大学で教鞭を執るハウ・リー教授よると、ウェスト・マリーンが売上データの集計や販売動向の予測を行うシステムを開発し、その情報をメーカー各社と共有するための基盤を整備したことで、メーカー各社は特定の地域や季節による需要の変動を織り込んだ、精度の高い生産管理(生産計画)を実施できるようになったという。例えば、船舶用品の売上げは、ボストンでは夏場にかけて急増するが、フロリダでは年間を通じて一定している。こうした変動要因を考慮に入れて生産計画を立案すれば、メーカーは製品をより適切に製造することができるわけだ。

 「ウェスト・マリーンは同社のPOSデータの読み解き方をメーカー各社に公開している。このことが、メーカーが指定された期日までに納品できる割合を高めているのだ」(リー氏)

 在庫達成率の向上は、ウェスト・マリーンに在庫の適正化という効果をもたらすと同時に、メーカーにも販売機会損失の低減、すなわち売上げの増加という効果をもたらす。このようなメリットが見込めたことから、メーカー各社はウェスト・マリーンから提供される情報の活用に積極的に取り組んだのである。

 現在同社は、200社のメーカーと取り引きを行っているが、その取引先の半数以上で、同社の販売予測データがシステムなどに取り込まれ、生産管理に役立てられている。その結果、ウェスト・マリーンからの発注に対するメーカーの注文達成率は大幅に向上し、5年前には平均でわずか30~40%だったが、今では80%に達するほどだ。

 また、同社は390にも上る店舗のPOSデータを閉店後に毎日集計し、そのデータを在庫管理システムに入力して在庫管理に役立てている。さらに、毎週月曜日にはそのデータを基にして作成した翌週の販売予測を全店舗に電子メールで送信している一方で、取り引きのあるすべてのメーカーにウェスト・マリーンの在庫情報を送信している。そのほか、1年を通じて収集した売上データを基に、年間の販売予測と注文予測を行い、それらのデータをメーカーに提供するといったことも行っている。そうしたことに加えて、予測の精度を四半期ごとに検証することで、需要予測の精度向上にも余念がないのだ。

サプライチェーンの高度化に潜むリスク
 さて、これまではサプライチェーンの高度化に積極的に取り組んでいる企業の動きを見てきたが、言うまでもなく理想とされる“サプライチェーン像”は企業によって異なる。そのため、競争がますます激化する中で、企業には自社が事業を展開する業界や、製品特性などさまざまな面を考慮してサプライチェーンの強化に取り組むことが求められるが、AMRリサーチのオマラー氏によれば、サプライチェーンの強化にとどまらず“再構築”に踏み切る際には、いくつか注意すべき点があるという。

 まず、サプライチェーンを再構築するにあたっては、ROIの観点から、改善すべき業務を絞り込んだうえで実行に移す必要がある。というのも、サプライチェーンに含まれる業務は幅広く、場合によっては重要度がそれほど高くない業務にまで投資対象が広がってしまう可能性もあるからだ。

 また、サプライチェーンの改善活動によって、サプライチェーン・コストが増大する危険性を常に念頭に置いておかなければならない。特に、商品をより速く配送することが求められる企業では、すでに高度なサプライチェーンの仕組みやシステムが整備されている。そのような環境においてさらにサプライチェーンを改善するとなれば、より最先端のテクノロジーを用いることになり、それが結果的にITコストを押し上げてしまうおそれがあるのだ。

 こうしたリスクを低減させるためには、自社のサプライチェーン・コストを同業他社と比較しつつ、サプライチェーン・コストと注文達成率を天秤にかけてみるとよいと、オマラー氏は指摘する。

 「自動車部品を製造している企業であれば、自動車の組み立てラインを止めないために、非常に高い注文達成率をクリアできる仕組みを整えておく必要があろう。一方、低コストで保存可能な梱包材などの消耗品を製造している企業の場合は、サプライチェーンにはそれほどこだわらなくていい」

 さらに、サプライチェーンの再構築は本質的には業務プロセスの再構築であり、ITはあくまでツールであることも忘れてはならない。

 「一般的に、サプライチェーンを整備する際に必要な作業の75%は、そのための新たな業務プロセスの構築と、企業間/部門間の調整作業に充てられている。その際のCIOの使命は、サプライチェーンに参加する企業や部署のすべてがメリットを享受できる仕組みを作り上げ、利用を促進させることにある」(オマラー氏)
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