SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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5000個あった旧IBMの社内システムを10個以下に
中国レノボ・グループのスティーブ・J・バンドローザック上級副社長兼CIO(最高情報責任者)
写真 中国レノボのバンドローザック上級副社長兼CIO(最高情報責任者)
独DHLのCIOを5年近く務めたあと、2005年にレノボに移った
[画像のクリックで拡大表示]
2005年5月に米IBMのパソコン部門を買収した世界3位のパソコン・メーカー、中国レノボ・グループ。07年3月期の純利益が前年比7.3倍になるなど、業績好転を支える情報システムの変革について、スティーブ・J・バンドローザックCIO(最高情報責任者)に聞いた。
旧IBMのシステムは課題が多かったと聞くが具体的に教えてほしい。
旧IBMは、パソコン・メーカーに最適化されたサプライチェーン管理の仕組みを持っていなかった。このため、システムと業務プロセスの両方を変革する必要があった。
IBMは当時、5000種類もの社内システムを運用しており、複雑すぎた。ビジネス環境の変化に対応できる柔軟さに欠け、経営指標をリアルタイムに見ることもできなかった。
これを08年1月ころまでに10種類以下に集約する。旧システムのほとんどを停止し、新システムに移行する。
システムの具体的な改善点は。
最初に取り組んだのは、受注管理と部品管理の仕組みを連携させることだった。パソコンの納期順守率を向上させるためだ。
例えば、顧客が80GバイトのHDDを指定したとする。このとき80GバイトのHDDの在庫がなかったら、受注管理システムは別の選択肢を推薦する。「いまなら100GバイトのHDDがキャンペーン中です」といった具合だ。これによって、顧客はより高性能のパソコンを納期通りに入手できるし、当社の在庫回転率も高くなる。
納期順守率は、特に法人ユーザーの顧客満足度を高めるのに重要な要素だ。社内導入のタイミングに遅れてはいけないし、早く届けて顧客の在庫を増やしてもいけない。
納期順守率はどれくらい向上したのか。
新システムは、サプライチェーン・ソフト大手の米i2テクノロジーズの需要予測ソフトなどをベースに、06年8月にまず中国で稼働させた。納期順守率は07年2月までにノート・パソコンが43%、デスクトップ・パソコンが24%向上した。
今後の計画は。
i2をベースにした新システムを08年中に全世界に展開する。そのときに受注から3日間でパソコンを生産し、納入できる体制を作る。現在は8日間で納入できる割合が88%であり、それを大幅に改善させる。
旧IBMは法人市場に特化していたが、今後は個人市場に再参入すると聞く。それに向けたシステムの改善点は。
個人と法人でニーズは大きく異なるが、システムは共通化しなければならない。法人市場は、個々の企業が定めた標準仕様に従った製品を求められ、高い安定性が必要になる。一方の個人はCPUやHDDのメーカーなどにはこだわらない。それぞれで余った部品を融通しあえば、在庫管理などでより柔軟になるだろう。
中国人である従来のレノボのシステム部員と、旧IBMのシステム部員の連携はうまくいっているのか。
中国人のスタッフは当初、中国ローカルのスキルしか持っていなかった。コーディングなどのシステム面のスキルは世界共通だが、グローバル市場に向けて、実際のシステムを展開するには異なるスキルが必要になる。文化や言語の違いを知らなければならない。いま急速に学習しているところだ。
旧IBMと統合した効果はあったか。
私見だが、レノボ単体のままグローバルに展開していたら、10~20年はかかっていただろう。旧IBMの経験を生かして、グローバル展開を急いでいるところだ。
中国レノボ・グループのスティーブ・J・バンドローザック上級副社長兼CIO(最高情報責任者)
写真 中国レノボのバンドローザック上級副社長兼CIO(最高情報責任者)
独DHLのCIOを5年近く務めたあと、2005年にレノボに移った
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2005年5月に米IBMのパソコン部門を買収した世界3位のパソコン・メーカー、中国レノボ・グループ。07年3月期の純利益が前年比7.3倍になるなど、業績好転を支える情報システムの変革について、スティーブ・J・バンドローザックCIO(最高情報責任者)に聞いた。
旧IBMのシステムは課題が多かったと聞くが具体的に教えてほしい。
旧IBMは、パソコン・メーカーに最適化されたサプライチェーン管理の仕組みを持っていなかった。このため、システムと業務プロセスの両方を変革する必要があった。
IBMは当時、5000種類もの社内システムを運用しており、複雑すぎた。ビジネス環境の変化に対応できる柔軟さに欠け、経営指標をリアルタイムに見ることもできなかった。
これを08年1月ころまでに10種類以下に集約する。旧システムのほとんどを停止し、新システムに移行する。
システムの具体的な改善点は。
最初に取り組んだのは、受注管理と部品管理の仕組みを連携させることだった。パソコンの納期順守率を向上させるためだ。
例えば、顧客が80GバイトのHDDを指定したとする。このとき80GバイトのHDDの在庫がなかったら、受注管理システムは別の選択肢を推薦する。「いまなら100GバイトのHDDがキャンペーン中です」といった具合だ。これによって、顧客はより高性能のパソコンを納期通りに入手できるし、当社の在庫回転率も高くなる。
納期順守率は、特に法人ユーザーの顧客満足度を高めるのに重要な要素だ。社内導入のタイミングに遅れてはいけないし、早く届けて顧客の在庫を増やしてもいけない。
納期順守率はどれくらい向上したのか。
新システムは、サプライチェーン・ソフト大手の米i2テクノロジーズの需要予測ソフトなどをベースに、06年8月にまず中国で稼働させた。納期順守率は07年2月までにノート・パソコンが43%、デスクトップ・パソコンが24%向上した。
今後の計画は。
i2をベースにした新システムを08年中に全世界に展開する。そのときに受注から3日間でパソコンを生産し、納入できる体制を作る。現在は8日間で納入できる割合が88%であり、それを大幅に改善させる。
旧IBMは法人市場に特化していたが、今後は個人市場に再参入すると聞く。それに向けたシステムの改善点は。
個人と法人でニーズは大きく異なるが、システムは共通化しなければならない。法人市場は、個々の企業が定めた標準仕様に従った製品を求められ、高い安定性が必要になる。一方の個人はCPUやHDDのメーカーなどにはこだわらない。それぞれで余った部品を融通しあえば、在庫管理などでより柔軟になるだろう。
中国人である従来のレノボのシステム部員と、旧IBMのシステム部員の連携はうまくいっているのか。
中国人のスタッフは当初、中国ローカルのスキルしか持っていなかった。コーディングなどのシステム面のスキルは世界共通だが、グローバル市場に向けて、実際のシステムを展開するには異なるスキルが必要になる。文化や言語の違いを知らなければならない。いま急速に学習しているところだ。
旧IBMと統合した効果はあったか。
私見だが、レノボ単体のままグローバルに展開していたら、10~20年はかかっていただろう。旧IBMの経験を生かして、グローバル展開を急いでいるところだ。
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ERPがサービス化するのは当然の流れ
シャイ・アガシ氏
企業システム全体を「サービス」の集合ととらえるSOA(サービス指向アーキテクチャ)。ERP(統合基幹業務システム)パッケージの世界にもSOAの波は訪れている。ERPベンダーがSOAをなぜ重要と考え、どのようなことをやろうとしているのか。これに正面から答えた記事として、2005年8月22日号で日経コンピュータに掲載した、当時、独SAPの最高幹部だったシャイ・アガシ氏へのインタビューを掲載する。現在もその内容は全く古びていない。(聞き手は田中 淳)
主要ベンダーが打ち出すSOAのコンセプトはそれぞれ意味が異なり、やや混乱を招いています。
写真●シャイ・アガシ氏
当社が提唱している「ESA(ンタープライズ・サービス・アーキテクチャ)」を他社が言っているSOAと比べると、共通点が一つ、異なる点が三つあります。同じなのは、共通の技術仕様、すなわちWebサービスに関するオープンな標準仕様に基づく点です。
では違いは何でしょうか。
まず、SOAの実現に必要なプラットフォームに対する考え方です。我々は、プラットフォームを「一つに統合して提供すべきもの」と、とらえています。それが、ESAにのっとったミドルウエア群のNetWeaverです。
他社の場合は、SOAプラットフォームを実現するために、自社あるいは他社のさまざまな製品を組み合わせる必要があります。それらを統合する手間がかかってしまうんですよ。NetWeaverなら、1枚のDVDからインストールし、実行する。それでOKです。
1万種類の「サービス」を用意
二つ目の違いは、ビジネスを支援する要素まで含むかどうか。他社はそれらを盛り込まずに、“空”の状態で提供しています。我々は技術だけでなく、ビジネスを直接支援する機能も提供すべきだと考えています。それが「エンタープライズ・サービス(ES)」です。
現状のESは、当社の提供するパッケージ群「mySAP Business Suite」で提供するアプリケーションの機能を、サービスとして利用可能にしたものです。すでに500種類を公開しています。
つまりNetWeaverから呼び出せるサービスがすでにあると?
その通りです。最終的に、品質が保証され、多くの企業がベースとして利用できるESを1万種類用意すべきだと、我々は考えています。それらを当社あるいはパートナが提供していきます。
他社とのもう一つの違いは、SOAの価値をどこに見いだすかです。他社は「システムを要素に分解できる」点を重視しています。我々は、「当社製品と他社製品を組み合わせて、顧客が望むすべてのアプリケーションを提供できる」点に価値があると考えています。
我々はアプリケーションとプラットフォームの両方を手がけています。これがSAPに大きな優位性をもたらしています。アプリケーションの開発を通じて、 SOAの実現にどのような機能やプラットフォームが必要なのかを学び、逆にプラットフォームの開発を通じて、SOAに必要なアプリケーションとは何かを学べるわけです。
他社が打ち出すSOAは、言ってみればマーケティング上のコンセプトに過ぎません。当社のESAには実体が伴っています。これが他社との最大の違いかもしれません。
他社製ミドルウエアも検討
SOAの全面的な採用を打ち出したことは、SAPにとって大きな方針転換だと思うのですが。
確かに、SAPにとって大きな変化です。当社だけでなく、誰でも自由にアプリケーションを作れるオープンなプラットフォームを実現したのですから。実際かなり長い間、どのように進めるべきかを話し合いました。
議論は主に三つのレベルで進めました。まず、我々自身でプラットフォームを提供する必要があるのか、それとも他社製品を利用すべきなのか。第2に、現状で当社が販売している大規模なアプリケーションを、SOAというコンセプトを利用して本当に実現できるのか。もう一つは、我々がプラットフォームを作った場合、どこまでオープンにすべきかです。
なぜ他社のプラットフォームを採用しなかったのですか?
いくつか試したけれど、うまくいかなかった。これが理由の一つ目です。
もう一つの理由は、互換性がなかったことです。どれかプラットフォームを一つ選ぶと、他を排除することになってしまう。しかも、顧客の希望に応じようとすると、ある顧客向けにはIBMのWebSphere、別の顧客にはBEAシステムズのWebLogic、ほかにオラクル、マイクロソフトの.NET、 LAMP(Linux/Apache/MySQL/PHP)など、5種類あるいは6種類のプラットフォームが必要になる。我々の投資も、テストやサポートの手間も5倍、6倍に跳ね上がってしまいます。
だからこそ、我々自身でプラットフォームを持つ必要があったのです。そうしないと、我々は「人質」になってしまう。分かるでしょう?何か障害があったとき、そのベンダーが修整するのを待たなければいけないのですから。現状では、プラットフォームに何か問題があれば、自社の担当者に言えばよいだけの話です。
5000人をプラットフォーム開発に投入
プラットフォームの開発にはどれだけの要員を投入しているのですか。
当社の技術者は約1万人いますが、そのうち半数です。残りがアプリケーションを担当しています。
アプリケーションの開発負荷も相当重いと思うのですが、それだけの大量の人数を投入して大丈夫ですか。
技術者の配分は、市場の状況を見ながら1年から2年に1回、調整しているので、問題ありません。しかも現在、顧客は単純に機能が増えることを望んでいるわけではないと思います。むしろ、アプリケーションをよりシンプルに、より柔軟にしてほしいとの希望が強いのではないでしょうか。
その声に応える方策の一つとして、WordやExcelからSAPのアプリケーションが持つデータにアクセスできる製品「Mendocinoメンドシーノ」をマイクロソフトと共同で開発しています(本誌注:2006年に出荷を開始した)。(日本で05年6月に発表した)分析ツールのAnalyticsもアプリケーションの使い方を広げる製品の一つです。
これらは、新たなプラットフォームなしには実現できません。プラットフォームがあるからこそ、アプリケーションに多くの革新的な機能をもたらすことができるのです。プラットフォームへの投資は十分なメリットがあることがお分かりでしょう。
07年までに、ESA実現に必要な製品をそろえる計画を表明しています。
我々がNetWeaverを出荷したのは03年。04年6月には、NetWeaverで動作するERPパッケージを予定通り出荷しました。05年5月には予定よりも早く500種類のESを提供。これからAnalyticsを出荷しますし、Mendocinoも控えている。どれもESAに基づいています。
さらに、05年9月にはmySAP Business Suiteを構成するすべてのモジュールをNetWeaverに対応させます。これらすべての製品計画が予定通りに進んでおり、07年に完了します。
NetWeaverも強化していますね。
ええ。03年の出荷時には、我々はNetWeaverを「統合プラットフォーム」と呼んでいました。やり取りするメッセージの統合、さらにデータ・ウエアハウスによるデータの統合やポータルによる画面の統合など、さまざまなレベルでアプリケーションを統合することが主な役割だったからです。
04年には、NetWeaverは「コンポジション・プラットフォーム」に進化しました。複数のアプリケーションを組み合わせたコンポジット(複合)・アプリケーションを実現するために必要な機能を提供するプラットフォーム、との位置づけです。
コンポジット・アプリケーションは、言うならば「アプリケーションの上に作られたアプリケーション(Apps on Apps)」です。画面が2、3枚の軽いものもあれば、とてつもなく多くの画面を持つ大規模のものもあります。当社は「xApps(エックスアップス)」という名称で、現在20種類を提供しています。将来的に100種類に増やす計画です。
続いて06年には、NetWeaverにビジネス・プロセスを組み込んで「BPP(ビジネス・プロセス・プラットフォーム)」にしていきます。この段階で、ビジネス・プロセスに沿った形でESを組み合わせて、システムを実現できるようになるわけです。
競合の5年先を行く
課題は特にないのですか?
我々は正しいビジョンを抱いていると信じています。しかも我々全員が、同じ方向を目指して進んでいます。実は、この2点の実行が最も難しいのです。
自分がどこに向かっているかを理解し、そこに到着するために全員で努力すれば、きっとよいことが起こる。行く手には丘があったり、難しい問題が発生したりするでしょうが、我々はきっと目的地にたどり着けるはずです。
SAPの顧客は、その思いを理解しているのでしょうか。
ESAのビジョンや方向性を評価してくれていると認識しています。我々は競合他社よりも3年から5年、先を歩んでいる。この方向性を最も早く示し、しかもその方向は正しいのですから、我々の顧客は十分余裕を持って取り組むことができるはずです。
しかし、すべてのSAPユーザーがすぐESAを採用するとは思えませんが。
確かに、新しい考え方が浸透するには、時間がかかります。顧客に限らず、我々ベンダーやパートナも同じです。
ただ、SAPの顧客のうち、すでに1500社がESAに移行しています。こう言うと多いように聞こえますが、当社の全顧客のわずか5%に過ぎません。
我々の顧客は、今後より激しい競合他社との争いに直面するでしょう。この点は極めて重要です。業種や市場を問わず、変化の勢いに加速度がつく。企業は、自社のビジネス・プロセスをできる限り早く変更できるシステムが必要になっているのです。市場のリーダーになるか、少なくとも他社に後れを取らないようにするには、ESAを採用するしか手がありません。もうこの道を進むしかないのです。
ここで疑問が出てくるでしょう。今すぐにでも始めるべきか。それとも06年か、07年か? 様子を見ている余裕はそんなにないと、私は思います。
我々が、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)のR/3を出したときに、こんな質問をする顧客がいました。「なぜERPパッケージが必要なんだ?複雑すぎるし、金もかかりすぎる」。もはや、そんなことを問題視する企業はほとんどありません。同じことがSOAにも言えると思います。
2007年以降、ESAはどう進化していくのでしょうか。
とても多くの可能性があります。我々はまだ、これから起こる変化の始まりを見ているにすぎないのです。
SOAに基づいてシステムを構築することで、あるゆるものが影響を受けると思います。アプリケーションの見え方やその利用方法だけでなく、エンドユーザーが利用する機器、ネットワーク、サービスまで、システムを構成するすべての要素が変わる。そのくらい強い影響を及ぼすと確信しています。
シャイ・アガシ氏は、イスラエルでポータル・ソフト開発のトップティア・ソフトウエアや、中小企業向けERPパッケージ「SAP BusinessOne」の基盤を開発したトップマネージなどを設立。2001年4月に独SAPがトップティアを買収後、SAPポータルズのCEO(最高経営責任者)に就任。02年4月からSAPのエグゼクティブボードメンバー、05年4月から全製品の開発責任者を務めた。07年4月、SAPを退社した。
シャイ・アガシ氏
企業システム全体を「サービス」の集合ととらえるSOA(サービス指向アーキテクチャ)。ERP(統合基幹業務システム)パッケージの世界にもSOAの波は訪れている。ERPベンダーがSOAをなぜ重要と考え、どのようなことをやろうとしているのか。これに正面から答えた記事として、2005年8月22日号で日経コンピュータに掲載した、当時、独SAPの最高幹部だったシャイ・アガシ氏へのインタビューを掲載する。現在もその内容は全く古びていない。(聞き手は田中 淳)
主要ベンダーが打ち出すSOAのコンセプトはそれぞれ意味が異なり、やや混乱を招いています。
写真●シャイ・アガシ氏
当社が提唱している「ESA(ンタープライズ・サービス・アーキテクチャ)」を他社が言っているSOAと比べると、共通点が一つ、異なる点が三つあります。同じなのは、共通の技術仕様、すなわちWebサービスに関するオープンな標準仕様に基づく点です。
では違いは何でしょうか。
まず、SOAの実現に必要なプラットフォームに対する考え方です。我々は、プラットフォームを「一つに統合して提供すべきもの」と、とらえています。それが、ESAにのっとったミドルウエア群のNetWeaverです。
他社の場合は、SOAプラットフォームを実現するために、自社あるいは他社のさまざまな製品を組み合わせる必要があります。それらを統合する手間がかかってしまうんですよ。NetWeaverなら、1枚のDVDからインストールし、実行する。それでOKです。
1万種類の「サービス」を用意
二つ目の違いは、ビジネスを支援する要素まで含むかどうか。他社はそれらを盛り込まずに、“空”の状態で提供しています。我々は技術だけでなく、ビジネスを直接支援する機能も提供すべきだと考えています。それが「エンタープライズ・サービス(ES)」です。
現状のESは、当社の提供するパッケージ群「mySAP Business Suite」で提供するアプリケーションの機能を、サービスとして利用可能にしたものです。すでに500種類を公開しています。
つまりNetWeaverから呼び出せるサービスがすでにあると?
その通りです。最終的に、品質が保証され、多くの企業がベースとして利用できるESを1万種類用意すべきだと、我々は考えています。それらを当社あるいはパートナが提供していきます。
他社とのもう一つの違いは、SOAの価値をどこに見いだすかです。他社は「システムを要素に分解できる」点を重視しています。我々は、「当社製品と他社製品を組み合わせて、顧客が望むすべてのアプリケーションを提供できる」点に価値があると考えています。
我々はアプリケーションとプラットフォームの両方を手がけています。これがSAPに大きな優位性をもたらしています。アプリケーションの開発を通じて、 SOAの実現にどのような機能やプラットフォームが必要なのかを学び、逆にプラットフォームの開発を通じて、SOAに必要なアプリケーションとは何かを学べるわけです。
他社が打ち出すSOAは、言ってみればマーケティング上のコンセプトに過ぎません。当社のESAには実体が伴っています。これが他社との最大の違いかもしれません。
他社製ミドルウエアも検討
SOAの全面的な採用を打ち出したことは、SAPにとって大きな方針転換だと思うのですが。
確かに、SAPにとって大きな変化です。当社だけでなく、誰でも自由にアプリケーションを作れるオープンなプラットフォームを実現したのですから。実際かなり長い間、どのように進めるべきかを話し合いました。
議論は主に三つのレベルで進めました。まず、我々自身でプラットフォームを提供する必要があるのか、それとも他社製品を利用すべきなのか。第2に、現状で当社が販売している大規模なアプリケーションを、SOAというコンセプトを利用して本当に実現できるのか。もう一つは、我々がプラットフォームを作った場合、どこまでオープンにすべきかです。
なぜ他社のプラットフォームを採用しなかったのですか?
いくつか試したけれど、うまくいかなかった。これが理由の一つ目です。
もう一つの理由は、互換性がなかったことです。どれかプラットフォームを一つ選ぶと、他を排除することになってしまう。しかも、顧客の希望に応じようとすると、ある顧客向けにはIBMのWebSphere、別の顧客にはBEAシステムズのWebLogic、ほかにオラクル、マイクロソフトの.NET、 LAMP(Linux/Apache/MySQL/PHP)など、5種類あるいは6種類のプラットフォームが必要になる。我々の投資も、テストやサポートの手間も5倍、6倍に跳ね上がってしまいます。
だからこそ、我々自身でプラットフォームを持つ必要があったのです。そうしないと、我々は「人質」になってしまう。分かるでしょう?何か障害があったとき、そのベンダーが修整するのを待たなければいけないのですから。現状では、プラットフォームに何か問題があれば、自社の担当者に言えばよいだけの話です。
5000人をプラットフォーム開発に投入
プラットフォームの開発にはどれだけの要員を投入しているのですか。
当社の技術者は約1万人いますが、そのうち半数です。残りがアプリケーションを担当しています。
アプリケーションの開発負荷も相当重いと思うのですが、それだけの大量の人数を投入して大丈夫ですか。
技術者の配分は、市場の状況を見ながら1年から2年に1回、調整しているので、問題ありません。しかも現在、顧客は単純に機能が増えることを望んでいるわけではないと思います。むしろ、アプリケーションをよりシンプルに、より柔軟にしてほしいとの希望が強いのではないでしょうか。
その声に応える方策の一つとして、WordやExcelからSAPのアプリケーションが持つデータにアクセスできる製品「Mendocinoメンドシーノ」をマイクロソフトと共同で開発しています(本誌注:2006年に出荷を開始した)。(日本で05年6月に発表した)分析ツールのAnalyticsもアプリケーションの使い方を広げる製品の一つです。
これらは、新たなプラットフォームなしには実現できません。プラットフォームがあるからこそ、アプリケーションに多くの革新的な機能をもたらすことができるのです。プラットフォームへの投資は十分なメリットがあることがお分かりでしょう。
07年までに、ESA実現に必要な製品をそろえる計画を表明しています。
我々がNetWeaverを出荷したのは03年。04年6月には、NetWeaverで動作するERPパッケージを予定通り出荷しました。05年5月には予定よりも早く500種類のESを提供。これからAnalyticsを出荷しますし、Mendocinoも控えている。どれもESAに基づいています。
さらに、05年9月にはmySAP Business Suiteを構成するすべてのモジュールをNetWeaverに対応させます。これらすべての製品計画が予定通りに進んでおり、07年に完了します。
NetWeaverも強化していますね。
ええ。03年の出荷時には、我々はNetWeaverを「統合プラットフォーム」と呼んでいました。やり取りするメッセージの統合、さらにデータ・ウエアハウスによるデータの統合やポータルによる画面の統合など、さまざまなレベルでアプリケーションを統合することが主な役割だったからです。
04年には、NetWeaverは「コンポジション・プラットフォーム」に進化しました。複数のアプリケーションを組み合わせたコンポジット(複合)・アプリケーションを実現するために必要な機能を提供するプラットフォーム、との位置づけです。
コンポジット・アプリケーションは、言うならば「アプリケーションの上に作られたアプリケーション(Apps on Apps)」です。画面が2、3枚の軽いものもあれば、とてつもなく多くの画面を持つ大規模のものもあります。当社は「xApps(エックスアップス)」という名称で、現在20種類を提供しています。将来的に100種類に増やす計画です。
続いて06年には、NetWeaverにビジネス・プロセスを組み込んで「BPP(ビジネス・プロセス・プラットフォーム)」にしていきます。この段階で、ビジネス・プロセスに沿った形でESを組み合わせて、システムを実現できるようになるわけです。
競合の5年先を行く
課題は特にないのですか?
我々は正しいビジョンを抱いていると信じています。しかも我々全員が、同じ方向を目指して進んでいます。実は、この2点の実行が最も難しいのです。
自分がどこに向かっているかを理解し、そこに到着するために全員で努力すれば、きっとよいことが起こる。行く手には丘があったり、難しい問題が発生したりするでしょうが、我々はきっと目的地にたどり着けるはずです。
SAPの顧客は、その思いを理解しているのでしょうか。
ESAのビジョンや方向性を評価してくれていると認識しています。我々は競合他社よりも3年から5年、先を歩んでいる。この方向性を最も早く示し、しかもその方向は正しいのですから、我々の顧客は十分余裕を持って取り組むことができるはずです。
しかし、すべてのSAPユーザーがすぐESAを採用するとは思えませんが。
確かに、新しい考え方が浸透するには、時間がかかります。顧客に限らず、我々ベンダーやパートナも同じです。
ただ、SAPの顧客のうち、すでに1500社がESAに移行しています。こう言うと多いように聞こえますが、当社の全顧客のわずか5%に過ぎません。
我々の顧客は、今後より激しい競合他社との争いに直面するでしょう。この点は極めて重要です。業種や市場を問わず、変化の勢いに加速度がつく。企業は、自社のビジネス・プロセスをできる限り早く変更できるシステムが必要になっているのです。市場のリーダーになるか、少なくとも他社に後れを取らないようにするには、ESAを採用するしか手がありません。もうこの道を進むしかないのです。
ここで疑問が出てくるでしょう。今すぐにでも始めるべきか。それとも06年か、07年か? 様子を見ている余裕はそんなにないと、私は思います。
我々が、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)のR/3を出したときに、こんな質問をする顧客がいました。「なぜERPパッケージが必要なんだ?複雑すぎるし、金もかかりすぎる」。もはや、そんなことを問題視する企業はほとんどありません。同じことがSOAにも言えると思います。
2007年以降、ESAはどう進化していくのでしょうか。
とても多くの可能性があります。我々はまだ、これから起こる変化の始まりを見ているにすぎないのです。
SOAに基づいてシステムを構築することで、あるゆるものが影響を受けると思います。アプリケーションの見え方やその利用方法だけでなく、エンドユーザーが利用する機器、ネットワーク、サービスまで、システムを構成するすべての要素が変わる。そのくらい強い影響を及ぼすと確信しています。
シャイ・アガシ氏は、イスラエルでポータル・ソフト開発のトップティア・ソフトウエアや、中小企業向けERPパッケージ「SAP BusinessOne」の基盤を開発したトップマネージなどを設立。2001年4月に独SAPがトップティアを買収後、SAPポータルズのCEO(最高経営責任者)に就任。02年4月からSAPのエグゼクティブボードメンバー、05年4月から全製品の開発責任者を務めた。07年4月、SAPを退社した。
NECは6月6日、中堅企業向けERPソリューション「EXPLANNERシリーズ」(エクスプランナー)の商品ラインアップを拡充したと発表した。同時に、今後10%を超える成長が期待される同市場でのシェア拡大に向けて、国内および中国における事業体制を強化したことを明らかにした。
NEC 執行役員常務 岩波利光氏 新たに商品ラインアップに加わったのは、EXPLANNERビジネスマネジメントソリューションの「プロセスパフォーマンスモニタリングサービス」(税別50万円~)、「EXPLANNER/BM」(同50万円~)、卸売業向けソリューションの「EXPLANNER/Vf」(同800万円~)、「スタースチール」(同500万円~)の4製品。同社はこれまで業種共通の基幹業務システムソリューション「EXPLANNER/Ai」などを中心に製造業、流通業の個別業種に特化したソリューションを提供してきたが、新たに青果市場向け(EXPLANNER/Vf)、鋼材卸2次加工向け(スタースチール)を加えた形だ。新規に加わったビジネスマネジメント関連の2ソリューションと合わせたEXPLANNERブランドで、現在約4%の国内シェア(導入企業数ベース)の拡大を狙う。会見した執行役員常務 岩波利光氏は「シェアの低かった状態で、昨年から再スタートしたので、まだ市場に切り込める」と述べ、2006年度の売り上げ実績で約100億円のところ、今後3年間で計1200億円の売り上げを目指すとした。
現在NECはSAPのERPソリューションも提供しているが、その棲み分けについては「大手企業の子会社で、大手に合わせてということであればSAP、そうでなければまずEXPLANNERを提案していく。規模でいえば500億円プラスマイナス300億円程度の売り上げ規模の企業がターゲット」(岩波氏)という。
新ラインアップ発表に合わせ、販売体制強化も発表。まず、国内の販売体制強化として、NECネクサソリューションズ株式会社に100人規模のEXPLANNER営業・サポート体制を確立したほか、日本コンピューター・システムに50人規模のEXPLANNERサポート体制を構築し、販売店各社のSIを支援する。また、海外展開として中国の製造業顧客を中心とする事業強化に向け130人規模のEXPLANNER現地開発・サポート体制を確立する。中国でのサポート体制を強化することで、中国に拠点を持つ日系の製造業から引き合いが増えているという。
NEC 執行役員常務 岩波利光氏 新たに商品ラインアップに加わったのは、EXPLANNERビジネスマネジメントソリューションの「プロセスパフォーマンスモニタリングサービス」(税別50万円~)、「EXPLANNER/BM」(同50万円~)、卸売業向けソリューションの「EXPLANNER/Vf」(同800万円~)、「スタースチール」(同500万円~)の4製品。同社はこれまで業種共通の基幹業務システムソリューション「EXPLANNER/Ai」などを中心に製造業、流通業の個別業種に特化したソリューションを提供してきたが、新たに青果市場向け(EXPLANNER/Vf)、鋼材卸2次加工向け(スタースチール)を加えた形だ。新規に加わったビジネスマネジメント関連の2ソリューションと合わせたEXPLANNERブランドで、現在約4%の国内シェア(導入企業数ベース)の拡大を狙う。会見した執行役員常務 岩波利光氏は「シェアの低かった状態で、昨年から再スタートしたので、まだ市場に切り込める」と述べ、2006年度の売り上げ実績で約100億円のところ、今後3年間で計1200億円の売り上げを目指すとした。
現在NECはSAPのERPソリューションも提供しているが、その棲み分けについては「大手企業の子会社で、大手に合わせてということであればSAP、そうでなければまずEXPLANNERを提案していく。規模でいえば500億円プラスマイナス300億円程度の売り上げ規模の企業がターゲット」(岩波氏)という。
新ラインアップ発表に合わせ、販売体制強化も発表。まず、国内の販売体制強化として、NECネクサソリューションズ株式会社に100人規模のEXPLANNER営業・サポート体制を確立したほか、日本コンピューター・システムに50人規模のEXPLANNERサポート体制を構築し、販売店各社のSIを支援する。また、海外展開として中国の製造業顧客を中心とする事業強化に向け130人規模のEXPLANNER現地開発・サポート体制を確立する。中国でのサポート体制を強化することで、中国に拠点を持つ日系の製造業から引き合いが増えているという。