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最良のB2Bプラットフォームを探せ
EDIのままでいくべきか、WebポータルやXMLに移行すべきか
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今、日米をはじめとする多くの国の企業が、B2B電子商取引プラットフォームをEDIからWebベースのものに移行させようとしている。そうすることで、自社の取引プラットフォームをサプライヤーや顧客の取引環境に合わせるとともに、電子商取引コストの引き下げを図ろうとしているのだ。だが、現実問題として、今、EDIを完全に捨て去り、取引プラットフォームをWebベースのものに一本化することがベストなのだろうか。本稿では、B2B取引プラットフォームがEDIからWebへと置き換わりつつある今、企業にとっての現実的な選択肢を探るとともに、コストをかけずに複数の取引プラットフォームを維持する方法を見いだしたい。
メリディス・レビンソン ● text by Meridith Levinson
EDIか、それともWebか
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は、WebベースのB2B取引プラットフォームのメリットは認めながらも、しばらくはEDIとWebベースのプラットフォームを並行して運用していくつもりだ photo by Peter Murphy
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は長年、インターネットこそビジネス・プロセスの効率を劇的に高める“妙薬”であると信じてきた。
松下電器産業の北米子会社の1カンパニーで、年間数十億ドルの売上げを誇るパナソニック・インダストリアルは、電子部品、ストレージ・デバイス、半導体といった製品を、OEMパートナーや製造メーカーなどに販売している。
実は、同カンパニーでは、これらの取引先との取り引きに、15年以上も前からEDI(Electronic Data Interchange)を使ってきた。
この間、EDIは期待された役割を忠実に果たしていたが、インターネットの急激な広まりを見たジーノス氏は、インターネットを使えばEDIでは対応できないビジネス・プロセスに対応できるだけでなく、より低いコストで顧客のニーズにこたえられるのではないかと考えるようになった。
つまり、EDIからインターネットに移行することで、数万ドルにも及ぶVAN(Value Added Network)の回線使用料を削減することができると踏んだのである。
実際、インターネットが普及し始めた2001年以降、同社には、多くの取引先(顧客企業)から、EDIは停止していいから、インターネットを使って各種取引(注文、請求、需要予測など)を行えるようにしてほしいとの要望が寄せられるようになっていた。
しかしながら、EDIからインターネットに全面的に移行するという案は、パナソニック・インダストリアルにとって、メリットばかりが見えているわけではなかった。例えば、Webポータル型のEDIを使うようにすると、同社の社員の手作業が増えてしまうため、業務の効率性が損なわれるおそれがあったのである。
「Webポータル型EDIに切り替えれば、当社のスタッフは、顧客のWebサイトにアクセスして注文を確認したり、出荷通知や請求書を送信したりしなければならなくなり、1社の顧客に対する作業負荷が大幅に増えてしまうことが分かった。シミュレーションしてみたところ、結局、業務効率を損なわずにインターネットに切り替えるためには、顧客サービス担当のスタッフを10%増員しなければならない、という結果が出たのだ」(ジーノス氏)
同氏によると、例えば同社の顧客がある製品の需要予測を求めてきた場合には、同社の需要計画担当者は、まず顧客のWebサイトにアクセスし、その顧客が需要を予測してほしいと考えている製品の情報を探さなければならない。その後、担当者は、パナソニック・インダストリアルのERP(Enterprise Resource Planning)システムに製品情報を入力し、ERPシステムがその製品の需要予測を作成すると、その担当者は再び顧客のWebサイトにアクセスして、その予測データを手作業で入力する、という煩雑な作業を行わなければならないのである。
ところが、この作業を従来のEDIで行えば、一連のプロセスが自動化されているため、人手を介す必要はない。
もちろん、パナソニック・インダストリアルのERPシステムを個々の顧客のWebサイトに統合すればこのような手間は省くことができるが、ジーノス氏は、「そのアプローチは、コストの点から選択肢にはなりえない」と肩をすくめる。
また、たとえコスト的に統合が可能であったとしても、システム全体のセキュリティを万全に保つためには細心の注意を払う必要があるし、セキュリティ上の問題から一部の顧客の賛同を得られない可能性も高い。
強まる顧客からのプレッシャー
近年、米国のOEM部品製造メーカーの多くは、パナソニック・インダストリアルのように、EDIを捨ててインターネットへ移行するよう求める、顧客の強い圧力にさらされている。
なかでも、こうした動きが最も顕著に現れるのがエレクトロニクス業界やIT業界である。
IT業界団体のCompTIA(The Computing Technology Industry Association)の電子商取引担当副社長、デビッド・サマー氏によると、コンピュータ・メーカーの多くは、現在使用している混合トランザクション環境(EDIやB2Bポータル、XMLやファイル転送などの各種データ・フォーマットを組み合わせて使用する)を捨て、1つのトランザクション環境に統一することで調達コストを削減したいと考えているという。
そうした考えを実現するための有力な選択肢と目されているのがB2Bポータルである。B2BポータルはWebベースであるため、すべての取引パートナーが導入しやすく、データ入力に要する負担をOEM部品のサプライヤー側に転嫁することができるため、製造メーカーが低コストでデータ収集を行うことが可能だからだ。
だが、ポータルは製造メーカーにはメリットがある一方で、OEM部品メーカーやサプライヤーには必ずしもメリットがあるとは限らない。そのため、ポータルの採用を製造メーカーがOEMメーカーやサプライヤーに強いるという状況も生まれているようだ。
CompTIAが2005年の秋に行ったB2B電子商取引に関する調査によると、Webポータルを利用したB2B取引のメリットはEDIなどのほかのB2B取引プラットフォームを使う場合に比べて少ないと答えた企業が、77%にも達している。
というのも、例えばポータルを使うことで、EDIでは自動化されていた作業を手作業で補わなければならなくなるほか、手作業で情報を入力することにより、製品番号や数量の入力ミスなどが発生してしまう恐れも強まるからである。
取引プラットフォームの標準化は時期尚早!?
実際のところ、B2B取引プラットフォームの整備が進み、インターネット経由でのB2B取引が増えているとされる日系の製造メーカーでも、取引プラットフォームを完全に標準化(統一)している企業は少ないようだ。さらに、製造メーカー側がOEM部品のサプライヤーにEDIを捨てるように強いることについては、多くのCIOや電子商取引専門家の間から“本末転倒”であるとの指摘がなされている。
日立製作所とIBMのハードディスク・ドライブ事業部門が統合して2003年に設立された年商42億ドルのハードディスク・メーカー、日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのCIO、ランガ・ジャヤラマン氏は、「EDIを捨てるということは、B2Bの取引においては、大きな退歩になる」と語気を強める。また、年商111億ドルの電子機器メーカーであるアベントのCIO、スティーブ・フィリップス氏も、「現時点でEDIを捨ててしまうことは決して合理的な解決策とは言えない。すでにEDIシステムを構築している企業にとって、それを他のシステムに切り替えるためのコストはきわめて高くつくからだ」と主張する。
実際、EDIを捨て去ることで、ビジネスに悪影響が生じる可能性もある。AMRリサーチの調査担当副社長、ビル・スワントン氏は、「EDIからWebへの移行を強いられたOEM部品メーカーは、移行にかかったコストをサプライチェーンから回収しようとするため、長期的に見ると製品を購入する側にもコスト増となって跳ね返ってくる」と指摘する。
また、現実的には、1つの取引プラットフォームですべての取引先やビジネス・プロセスをサポートすることは難しいという問題もある。
ガートナーでアーキテクチャ/インフラストラクチャ・グループの調査ディレクターを務めるベノイト・ルルー氏は、「一般的には、企業は、取引先とビジネスを行うためのプラットフォームとして、ポータルやファイル転送、XML、EDI、Webサービスなど、5種類ほどの選択肢を用意するのが普通だろう。でないと、すべての取引相手の要望にこたえることは困難だ」と語る。
COLUMN 1 : 中小/中堅企業が電子商取引への投資から最大限にメリットを引き出す方法
現在、B2Bの電子商取引を支えるプラットフォーム環境は、中小/中堅規模の企業に対して、彼らがこれまでに経験したことのない課題を提起している。
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RosettaNetとEDIを並用する
上のような問題があるにもかかわらず、多くの製造メーカーがWebポータルだけを熱狂的に歓迎したがるのはなぜだろうか。その理由を解き明かすには、電子商取引の黎明期までさかのぼる必要がある。
実は、電子商取引の黎明期は、まさに“EDIの時代”であった。当時においては、EDIは革命的な技術だった。注文、出荷、金融取引に関するデータをやり取りする、初めての標準的な手段であり、紙ベースのプロセスを電子文書ベースにして自動化することで、製造業界のサプライチェーンを効率化できると考えられていたのである。
だが、実際に1970年代から1980年代にかけてEDIを導入したのは、ソフトウェアのライセンスを購入することができるとともに、システムの連携部分を継続的に運用管理し、各種のプロトコル、接続技術、データ・フォーマットをサポートし、年間数十万ドルにも上るVANの料金を支払うことのできる大企業だけであった。
言いかえれば、運用コストがかさむEDIを実装する資金的な余裕がない中小規模のサプライヤーとの取り引きまで、その恩恵が及ぶことはなかったのである。
そして、1990年代末にインターネットが爆発的な普及の兆しを見せると、製造メーカーのCIOたちは、小規模な取引パートナーとの取り引きを効率化させるためのソリューションとして、こぞってWebに飛びついた。
アロー・エレクトロニクスのCIO、マーク・セトル氏によると、当時、Webは、在庫をリアルタイムで管理するという、製造メーカーのCIOであればだれしもが夢に見ることを実現するためのソリューションとして、一躍脚光を浴びることになったという(EDIのトランザクションは、それまでバッチ処理されていた)。
これにより、多くの企業がWebベースのポータルを構築することになった。
そして、WebがB2B取引プラットフォームとして普及するようになったのとほぼ同じころ、IBMやモトローラ、ソニーなどITおよびエレクトロニクス業界の企業40社が、「RosettaNet」と呼ばれる非営利のコンソーシアムを設立し、リアルタイムB2B取引に対応するXMLベース標準の開発に乗り出した。
RosettaNetの代表者であるハーマン・スティフォウト氏によると、IT業界におけるB2B取引は非常に込み入っており、RosettaNetによる標準化がなされる前は、各企業は価格の見積もり、出荷情報の伝達、請求書の消し込みといった作業を独自のEDIのバリエーションを使って、行っていたという。
つまり、RosettaNetで取引プラットフォームが標準化されたことによって初めて、製品設計、在庫管理、製品情報の送信といったビジネス・プロセスの効率的な自動化が図れたわけである。
とはいえ、アロー・エレクトロニクスのセトル氏によると、エレクトロニクス業界や自動車業界の企業においても、B2B取引プラットフォームとしてRosettaNetだけを使っている企業は少なく、EDIと並行して運用している企業がほとんどだという。
ポータルへの一本化で運用コストを削減
セントラル・リューマーのIT担当副社長ケビン・ウィットフィールド氏は、「B2B取引プラットフォームを思い切ってポータルにしたが、当社の取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、まだ1社だけだ」と語る photo by Peter Murphy
セトル氏が指摘するように、現在は、EDIとWebベースの取引プラットフォームを併用する“ハイブリッド型”のB2B電子商取引環境を運用している企業は多い。とはいえ、複数の取引プラットフォームをサポートする場合は、コストの増大や運用の複雑化といった問題を避けて通ることはできない。
そうしたなか、中規模の紙流通業者、セントラル・リューマーは、取引プラットフォームを標準化することで、運用コストを削減しようと試みている。
年商7億5,000万ドルの同社でIT担当副社長を務めるケビン・ウィットフィールド氏は、「我々は決して、2種類、3種類、あるいはそれ以上の種類の電子商取引システムを運用したいとは思わない。そうした体制では、業務が複雑になり、経費がかさんでしまうのは分かりきっているからだ」と説明する。
同氏によるとこれまで、セントラル・リューマーのビジネスは、ほとんどが電話とファクスで行われており、EDIを使っている顧客は2社にすぎなかったという。
そうしたなか、取引をより効率的に進めるべく、同社ではB2B取引システムの構築プロジェクトを立ち上げたが、そこで検討した結果、EDIだと構築・運用コストが高くつくこともあって、リエイゾン・テクノロジーズがホストするWebポータルを採用することを決めたという。そして現在、同社はこのポータルを紙業界の事実上の標準取引プラットフォームとして推奨しようとしているところだ。
ウィットフィールド氏によると、リエイゾン・テクノロジーズが提供するポータルを使えば、XMLベースのシステムによってサプライヤーの在庫をリアルタイムに確認できるため、販売会社や印刷会社、グラフィック・デザイン会社などからの電話注文にも、迅速に対応することが可能だという。
AMRリサーチのスワントン氏は、「ポータルがB2B取引プラットフォームとして歓迎されるのは、ブラウザさえあればだれでもアクセスすることができるからだ。取引パートナーの多くがポータルを使うようになれば、ポータルを構築するために行ってきたそれまでの投資を最大限に生かすことができる。さらに、Webポータルを在庫管理や調達、経理などの業務に対応しているバックエンド・システムに統合することができれば、調達や請求業務にまつわるビジネス・プロセスを全面的に自動化することも可能だ」と説明する。
プラットフォームの統一を阻むベンダーの思惑
ただし、ポータルを使ってビジネス・プロセスを自動化する際には、常に“バランス”の問題を考慮する必要がある。Webポータルをバックエンド・システムに統合するのは口で言うほど簡単な作業ではないし、サプライヤー側でメーカーと同レベルの自動化を達成するのも結構難しいのだ。
すでにEDIを構築しているサプライヤーは、サードパーティのインテグレーション・サービスを利用することで、自社のシステムを顧客のポータルに接続することができる(セントラル・リューマーもサプライヤーにこのアプローチを提案している)が、サプライヤーがすべてのメーカーに対してこうした対応をとろうとすると、あまりにもコストがかかりすぎる。こうした背景から、現在のところ、セントラル・リューマーの取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、わずか1社(全米最大のサプライヤーであるインターナショナル・ペーパー)だけである。
ウィットフィールド氏によると、サプライヤーの中には、ポータルを挟んで電子商取引を行うことに消極的なところや、XMLトランザクションをサポートするだけの技術力を持っていないところが多くあるという。
その一方で従来から、多くの企業が使用しているEDIは、かつての欠点(トランザクションのバッチ処理など)の一部を解消することに成功している。現在では、インターネット経由でEDIデータを送信することができるため、EDIでもリアルタイム処理を行うことが可能なのだ。また、EDIは、企業にとって依然として大きな投資ではあるが、以前と比べれば構築コストは下がっている。さらに、ポータルやRosettaNetといった新たな技術に対抗するため、VANの料金も引き下げられている。
スターリング・コマース、GSX、バイアコアなどと同様、B2Bデータ交換やB2Bインテグレーション・サービスを提供するE2オープンでソリューションズ・エンジニアリング担当副社長を務めるロブ・バレット氏は、B2Bの電子商取引プラットフォームに関して、EDIか、Webか、といった意見の対立が生じている背景には、「容易に統合できないような製品を開発したベンダーの責任がある」と主張する。
というのも、ポータル・ベンダーの製品では、EDIの送信データを処理することができず、一方、EDI側ではポータル製品のデータを処理することができないため、多くの企業はミドルウェア・ベンダーが双方のシステムを統合してくれることに期待するしかないのだ。もちろん、多くの企業はコストのかかるこのような統合作業を自らやりたいとは思わないので、どれか1つのシステムを選択することになる。そしてその場合には、より多くの人が容易に導入できるという理由から、ポータルを選ぶ傾向が強い。そうなると、それまでEDIを使っていた取引パートナーも、ポータルの使用を迫られることになるのだ。バレット氏は、この状況について、「本来、取引パートナーの間では、ビジネス・プロセスに関する議論が先に行われるべきなのに、それを技術を巡る“宗教論争”に変えてしまったベンダーには、強い憤りを感じる」と声を荒げる。
ファイル変換プログラムを開発
もっとも、バレット氏が指摘するように、B2B取引プラットフォームに関する“宗教論争”はすぐには収まらないだろう。そのため、前述したように、現時点では多くの企業が、過去に投資したEDIから最新のWebベース・システムに至るまで、さまざまなプラットフォームをサポートしているというのが実情だ。
複数のプラットフォームをサポートしようとすると、1つのシステムで標準化する場合に比べてコストが高くつくものだが、アロー・エレクトロニクスや日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのように、複数の環境を維持したままでコストを抑えることに成功した企業もある。
アロー・エレクトロニクスは現在、EDI、RosettaNetなどのXML標準と、ポータル、フラット・ファイルなどのB2B商取引標準をサポートしている。年商110億ドルの同社は、約600社のサプライヤーから仕入れた半導体などのエレクトロニクス製品を13万社を超えるOEMパートナーに卸しているほか、在庫管理などのビジネス・サービスも提供している。
そこで、同社は個々の取引パートナーの技術的な要望にこたえるため、ウェブメソッドの開発プラットフォームを使って、顧客から受け取ったさまざまなフォーマット(のファイル)を自社で処理できるフォーマットに自動的に変換するためのプログラムを開発した。
具体的に説明すると、アローのシステムではまず、特定のトランザクションの発信元やトランザクションのタイプ(購入注文、請求書、事前出荷通知など)、フォーマット(Excelファイル、EDI、RosettaNetなど)、ファイルに含まれるデータなどが特定される。その後、各種のトランザクションに対応できる汎用データ・マップを備えたマッピング・プログラムが、顧客の使っているフォーマットをアローの財務システムや受注システムで処理可能なフォーマットに変換する。マッピング・プログラムでの処理が終わると、今度はファイルを送信するためのプラットフォームが決定され、購入注文は販売受注システムに、請求書は財務システムに、それぞれ転送されることになる。これによって、取引パートナーが使用しているプラットフォームに関係なく対応することができるわけだ。
EDI業務をアウトソースする
一方、日立グローバル・ストレージは、E2オープンが提供するトレーディング・ハブにEDI業務をそのままアウトソースすることで、取引パートナーに新しいプラットフォームの導入を強いることなく、EDI関連のコストを削減することに成功した。
日立グローバル・ストレージのCIO、ジャヤラマン氏によると1996年からEDIを利用している同社では、EDIインフラストラクチャを維持するために、毎年数十万ドルを支出しているという。そのコストに嫌気が差したジャヤラマン氏は、EDIを全廃してWebベースの取引プラットフォームに移行することを考えたが、同社と取り引きしているサプライヤーの中には、EDIを使った卸売りシステムを利用しているところも多かっため、決断を下しかねていた。そうしたなか、日本とフィリピンにある工場、およびこれらの工場と取り引きのあるサプライヤーとの間ですでに導入していたE2オープンのソフトウェア使って、EDIファイルをE2オープンのトレーディング・ハブから送信することを思いついたのである。
現在、E2オープンは、顧客のためにEDIインフラストラクチャを維持し、必要に応じてアップデートを行っている。例えば、日立グローバル・ストレージのある取引パートナーが新たに事業所を開設したり、別のトランザクションを追加するように求めてきたりしたときには、E2オープンが新しいIPアドレスやトランザクションを既存のEDIマップとプロトコルに追加するのだ。ジャヤラマン氏は、「E2オープンへの移行に要したコストは、9カ月で回収した。その結果、取引パートナーに迷惑をかけることなく、自社のコストを削減することができた」と誇らしげに語る。
日立グローバル・ストレージがとった方法は、自前でポータルを構築したり、何千行もの注文データを手作業で入力したりするよりははるかに効率的だ。
冒頭で紹介した、パナソニック・インダストリアルのジーノス氏は、現時点ではEDIを全廃し、Webベースの新しい取引プラットフォームに移行することは考えていないという。同氏は、EDIを廃止するよう求める顧客に対し、それによって起こるマイナス面を考慮してくれるよう説得を続けているという。そのおかげで、現在のところは、それぞれの顧客が運営するポータルを何種類も並行して利用するという事態には至っていない。
「説得の結果、いずれの顧客も、当社が最後の1社になるまで、彼らのポータルには加わらないという当社の方針を容認してくれた」(ジーノス氏)
EDIのままでいくべきか、WebポータルやXMLに移行すべきか
関連トップページ:B2B | SCM/設計製造 | EIP/コラボレーション
今、日米をはじめとする多くの国の企業が、B2B電子商取引プラットフォームをEDIからWebベースのものに移行させようとしている。そうすることで、自社の取引プラットフォームをサプライヤーや顧客の取引環境に合わせるとともに、電子商取引コストの引き下げを図ろうとしているのだ。だが、現実問題として、今、EDIを完全に捨て去り、取引プラットフォームをWebベースのものに一本化することがベストなのだろうか。本稿では、B2B取引プラットフォームがEDIからWebへと置き換わりつつある今、企業にとっての現実的な選択肢を探るとともに、コストをかけずに複数の取引プラットフォームを維持する方法を見いだしたい。
メリディス・レビンソン ● text by Meridith Levinson
EDIか、それともWebか
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は、WebベースのB2B取引プラットフォームのメリットは認めながらも、しばらくはEDIとWebベースのプラットフォームを並行して運用していくつもりだ photo by Peter Murphy
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は長年、インターネットこそビジネス・プロセスの効率を劇的に高める“妙薬”であると信じてきた。
松下電器産業の北米子会社の1カンパニーで、年間数十億ドルの売上げを誇るパナソニック・インダストリアルは、電子部品、ストレージ・デバイス、半導体といった製品を、OEMパートナーや製造メーカーなどに販売している。
実は、同カンパニーでは、これらの取引先との取り引きに、15年以上も前からEDI(Electronic Data Interchange)を使ってきた。
この間、EDIは期待された役割を忠実に果たしていたが、インターネットの急激な広まりを見たジーノス氏は、インターネットを使えばEDIでは対応できないビジネス・プロセスに対応できるだけでなく、より低いコストで顧客のニーズにこたえられるのではないかと考えるようになった。
つまり、EDIからインターネットに移行することで、数万ドルにも及ぶVAN(Value Added Network)の回線使用料を削減することができると踏んだのである。
実際、インターネットが普及し始めた2001年以降、同社には、多くの取引先(顧客企業)から、EDIは停止していいから、インターネットを使って各種取引(注文、請求、需要予測など)を行えるようにしてほしいとの要望が寄せられるようになっていた。
しかしながら、EDIからインターネットに全面的に移行するという案は、パナソニック・インダストリアルにとって、メリットばかりが見えているわけではなかった。例えば、Webポータル型のEDIを使うようにすると、同社の社員の手作業が増えてしまうため、業務の効率性が損なわれるおそれがあったのである。
「Webポータル型EDIに切り替えれば、当社のスタッフは、顧客のWebサイトにアクセスして注文を確認したり、出荷通知や請求書を送信したりしなければならなくなり、1社の顧客に対する作業負荷が大幅に増えてしまうことが分かった。シミュレーションしてみたところ、結局、業務効率を損なわずにインターネットに切り替えるためには、顧客サービス担当のスタッフを10%増員しなければならない、という結果が出たのだ」(ジーノス氏)
同氏によると、例えば同社の顧客がある製品の需要予測を求めてきた場合には、同社の需要計画担当者は、まず顧客のWebサイトにアクセスし、その顧客が需要を予測してほしいと考えている製品の情報を探さなければならない。その後、担当者は、パナソニック・インダストリアルのERP(Enterprise Resource Planning)システムに製品情報を入力し、ERPシステムがその製品の需要予測を作成すると、その担当者は再び顧客のWebサイトにアクセスして、その予測データを手作業で入力する、という煩雑な作業を行わなければならないのである。
ところが、この作業を従来のEDIで行えば、一連のプロセスが自動化されているため、人手を介す必要はない。
もちろん、パナソニック・インダストリアルのERPシステムを個々の顧客のWebサイトに統合すればこのような手間は省くことができるが、ジーノス氏は、「そのアプローチは、コストの点から選択肢にはなりえない」と肩をすくめる。
また、たとえコスト的に統合が可能であったとしても、システム全体のセキュリティを万全に保つためには細心の注意を払う必要があるし、セキュリティ上の問題から一部の顧客の賛同を得られない可能性も高い。
強まる顧客からのプレッシャー
近年、米国のOEM部品製造メーカーの多くは、パナソニック・インダストリアルのように、EDIを捨ててインターネットへ移行するよう求める、顧客の強い圧力にさらされている。
なかでも、こうした動きが最も顕著に現れるのがエレクトロニクス業界やIT業界である。
IT業界団体のCompTIA(The Computing Technology Industry Association)の電子商取引担当副社長、デビッド・サマー氏によると、コンピュータ・メーカーの多くは、現在使用している混合トランザクション環境(EDIやB2Bポータル、XMLやファイル転送などの各種データ・フォーマットを組み合わせて使用する)を捨て、1つのトランザクション環境に統一することで調達コストを削減したいと考えているという。
そうした考えを実現するための有力な選択肢と目されているのがB2Bポータルである。B2BポータルはWebベースであるため、すべての取引パートナーが導入しやすく、データ入力に要する負担をOEM部品のサプライヤー側に転嫁することができるため、製造メーカーが低コストでデータ収集を行うことが可能だからだ。
だが、ポータルは製造メーカーにはメリットがある一方で、OEM部品メーカーやサプライヤーには必ずしもメリットがあるとは限らない。そのため、ポータルの採用を製造メーカーがOEMメーカーやサプライヤーに強いるという状況も生まれているようだ。
CompTIAが2005年の秋に行ったB2B電子商取引に関する調査によると、Webポータルを利用したB2B取引のメリットはEDIなどのほかのB2B取引プラットフォームを使う場合に比べて少ないと答えた企業が、77%にも達している。
というのも、例えばポータルを使うことで、EDIでは自動化されていた作業を手作業で補わなければならなくなるほか、手作業で情報を入力することにより、製品番号や数量の入力ミスなどが発生してしまう恐れも強まるからである。
取引プラットフォームの標準化は時期尚早!?
実際のところ、B2B取引プラットフォームの整備が進み、インターネット経由でのB2B取引が増えているとされる日系の製造メーカーでも、取引プラットフォームを完全に標準化(統一)している企業は少ないようだ。さらに、製造メーカー側がOEM部品のサプライヤーにEDIを捨てるように強いることについては、多くのCIOや電子商取引専門家の間から“本末転倒”であるとの指摘がなされている。
日立製作所とIBMのハードディスク・ドライブ事業部門が統合して2003年に設立された年商42億ドルのハードディスク・メーカー、日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのCIO、ランガ・ジャヤラマン氏は、「EDIを捨てるということは、B2Bの取引においては、大きな退歩になる」と語気を強める。また、年商111億ドルの電子機器メーカーであるアベントのCIO、スティーブ・フィリップス氏も、「現時点でEDIを捨ててしまうことは決して合理的な解決策とは言えない。すでにEDIシステムを構築している企業にとって、それを他のシステムに切り替えるためのコストはきわめて高くつくからだ」と主張する。
実際、EDIを捨て去ることで、ビジネスに悪影響が生じる可能性もある。AMRリサーチの調査担当副社長、ビル・スワントン氏は、「EDIからWebへの移行を強いられたOEM部品メーカーは、移行にかかったコストをサプライチェーンから回収しようとするため、長期的に見ると製品を購入する側にもコスト増となって跳ね返ってくる」と指摘する。
また、現実的には、1つの取引プラットフォームですべての取引先やビジネス・プロセスをサポートすることは難しいという問題もある。
ガートナーでアーキテクチャ/インフラストラクチャ・グループの調査ディレクターを務めるベノイト・ルルー氏は、「一般的には、企業は、取引先とビジネスを行うためのプラットフォームとして、ポータルやファイル転送、XML、EDI、Webサービスなど、5種類ほどの選択肢を用意するのが普通だろう。でないと、すべての取引相手の要望にこたえることは困難だ」と語る。
COLUMN 1 : 中小/中堅企業が電子商取引への投資から最大限にメリットを引き出す方法
現在、B2Bの電子商取引を支えるプラットフォーム環境は、中小/中堅規模の企業に対して、彼らがこれまでに経験したことのない課題を提起している。
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RosettaNetとEDIを並用する
上のような問題があるにもかかわらず、多くの製造メーカーがWebポータルだけを熱狂的に歓迎したがるのはなぜだろうか。その理由を解き明かすには、電子商取引の黎明期までさかのぼる必要がある。
実は、電子商取引の黎明期は、まさに“EDIの時代”であった。当時においては、EDIは革命的な技術だった。注文、出荷、金融取引に関するデータをやり取りする、初めての標準的な手段であり、紙ベースのプロセスを電子文書ベースにして自動化することで、製造業界のサプライチェーンを効率化できると考えられていたのである。
だが、実際に1970年代から1980年代にかけてEDIを導入したのは、ソフトウェアのライセンスを購入することができるとともに、システムの連携部分を継続的に運用管理し、各種のプロトコル、接続技術、データ・フォーマットをサポートし、年間数十万ドルにも上るVANの料金を支払うことのできる大企業だけであった。
言いかえれば、運用コストがかさむEDIを実装する資金的な余裕がない中小規模のサプライヤーとの取り引きまで、その恩恵が及ぶことはなかったのである。
そして、1990年代末にインターネットが爆発的な普及の兆しを見せると、製造メーカーのCIOたちは、小規模な取引パートナーとの取り引きを効率化させるためのソリューションとして、こぞってWebに飛びついた。
アロー・エレクトロニクスのCIO、マーク・セトル氏によると、当時、Webは、在庫をリアルタイムで管理するという、製造メーカーのCIOであればだれしもが夢に見ることを実現するためのソリューションとして、一躍脚光を浴びることになったという(EDIのトランザクションは、それまでバッチ処理されていた)。
これにより、多くの企業がWebベースのポータルを構築することになった。
そして、WebがB2B取引プラットフォームとして普及するようになったのとほぼ同じころ、IBMやモトローラ、ソニーなどITおよびエレクトロニクス業界の企業40社が、「RosettaNet」と呼ばれる非営利のコンソーシアムを設立し、リアルタイムB2B取引に対応するXMLベース標準の開発に乗り出した。
RosettaNetの代表者であるハーマン・スティフォウト氏によると、IT業界におけるB2B取引は非常に込み入っており、RosettaNetによる標準化がなされる前は、各企業は価格の見積もり、出荷情報の伝達、請求書の消し込みといった作業を独自のEDIのバリエーションを使って、行っていたという。
つまり、RosettaNetで取引プラットフォームが標準化されたことによって初めて、製品設計、在庫管理、製品情報の送信といったビジネス・プロセスの効率的な自動化が図れたわけである。
とはいえ、アロー・エレクトロニクスのセトル氏によると、エレクトロニクス業界や自動車業界の企業においても、B2B取引プラットフォームとしてRosettaNetだけを使っている企業は少なく、EDIと並行して運用している企業がほとんどだという。
ポータルへの一本化で運用コストを削減
セントラル・リューマーのIT担当副社長ケビン・ウィットフィールド氏は、「B2B取引プラットフォームを思い切ってポータルにしたが、当社の取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、まだ1社だけだ」と語る photo by Peter Murphy
セトル氏が指摘するように、現在は、EDIとWebベースの取引プラットフォームを併用する“ハイブリッド型”のB2B電子商取引環境を運用している企業は多い。とはいえ、複数の取引プラットフォームをサポートする場合は、コストの増大や運用の複雑化といった問題を避けて通ることはできない。
そうしたなか、中規模の紙流通業者、セントラル・リューマーは、取引プラットフォームを標準化することで、運用コストを削減しようと試みている。
年商7億5,000万ドルの同社でIT担当副社長を務めるケビン・ウィットフィールド氏は、「我々は決して、2種類、3種類、あるいはそれ以上の種類の電子商取引システムを運用したいとは思わない。そうした体制では、業務が複雑になり、経費がかさんでしまうのは分かりきっているからだ」と説明する。
同氏によるとこれまで、セントラル・リューマーのビジネスは、ほとんどが電話とファクスで行われており、EDIを使っている顧客は2社にすぎなかったという。
そうしたなか、取引をより効率的に進めるべく、同社ではB2B取引システムの構築プロジェクトを立ち上げたが、そこで検討した結果、EDIだと構築・運用コストが高くつくこともあって、リエイゾン・テクノロジーズがホストするWebポータルを採用することを決めたという。そして現在、同社はこのポータルを紙業界の事実上の標準取引プラットフォームとして推奨しようとしているところだ。
ウィットフィールド氏によると、リエイゾン・テクノロジーズが提供するポータルを使えば、XMLベースのシステムによってサプライヤーの在庫をリアルタイムに確認できるため、販売会社や印刷会社、グラフィック・デザイン会社などからの電話注文にも、迅速に対応することが可能だという。
AMRリサーチのスワントン氏は、「ポータルがB2B取引プラットフォームとして歓迎されるのは、ブラウザさえあればだれでもアクセスすることができるからだ。取引パートナーの多くがポータルを使うようになれば、ポータルを構築するために行ってきたそれまでの投資を最大限に生かすことができる。さらに、Webポータルを在庫管理や調達、経理などの業務に対応しているバックエンド・システムに統合することができれば、調達や請求業務にまつわるビジネス・プロセスを全面的に自動化することも可能だ」と説明する。
プラットフォームの統一を阻むベンダーの思惑
ただし、ポータルを使ってビジネス・プロセスを自動化する際には、常に“バランス”の問題を考慮する必要がある。Webポータルをバックエンド・システムに統合するのは口で言うほど簡単な作業ではないし、サプライヤー側でメーカーと同レベルの自動化を達成するのも結構難しいのだ。
すでにEDIを構築しているサプライヤーは、サードパーティのインテグレーション・サービスを利用することで、自社のシステムを顧客のポータルに接続することができる(セントラル・リューマーもサプライヤーにこのアプローチを提案している)が、サプライヤーがすべてのメーカーに対してこうした対応をとろうとすると、あまりにもコストがかかりすぎる。こうした背景から、現在のところ、セントラル・リューマーの取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、わずか1社(全米最大のサプライヤーであるインターナショナル・ペーパー)だけである。
ウィットフィールド氏によると、サプライヤーの中には、ポータルを挟んで電子商取引を行うことに消極的なところや、XMLトランザクションをサポートするだけの技術力を持っていないところが多くあるという。
その一方で従来から、多くの企業が使用しているEDIは、かつての欠点(トランザクションのバッチ処理など)の一部を解消することに成功している。現在では、インターネット経由でEDIデータを送信することができるため、EDIでもリアルタイム処理を行うことが可能なのだ。また、EDIは、企業にとって依然として大きな投資ではあるが、以前と比べれば構築コストは下がっている。さらに、ポータルやRosettaNetといった新たな技術に対抗するため、VANの料金も引き下げられている。
スターリング・コマース、GSX、バイアコアなどと同様、B2Bデータ交換やB2Bインテグレーション・サービスを提供するE2オープンでソリューションズ・エンジニアリング担当副社長を務めるロブ・バレット氏は、B2Bの電子商取引プラットフォームに関して、EDIか、Webか、といった意見の対立が生じている背景には、「容易に統合できないような製品を開発したベンダーの責任がある」と主張する。
というのも、ポータル・ベンダーの製品では、EDIの送信データを処理することができず、一方、EDI側ではポータル製品のデータを処理することができないため、多くの企業はミドルウェア・ベンダーが双方のシステムを統合してくれることに期待するしかないのだ。もちろん、多くの企業はコストのかかるこのような統合作業を自らやりたいとは思わないので、どれか1つのシステムを選択することになる。そしてその場合には、より多くの人が容易に導入できるという理由から、ポータルを選ぶ傾向が強い。そうなると、それまでEDIを使っていた取引パートナーも、ポータルの使用を迫られることになるのだ。バレット氏は、この状況について、「本来、取引パートナーの間では、ビジネス・プロセスに関する議論が先に行われるべきなのに、それを技術を巡る“宗教論争”に変えてしまったベンダーには、強い憤りを感じる」と声を荒げる。
ファイル変換プログラムを開発
もっとも、バレット氏が指摘するように、B2B取引プラットフォームに関する“宗教論争”はすぐには収まらないだろう。そのため、前述したように、現時点では多くの企業が、過去に投資したEDIから最新のWebベース・システムに至るまで、さまざまなプラットフォームをサポートしているというのが実情だ。
複数のプラットフォームをサポートしようとすると、1つのシステムで標準化する場合に比べてコストが高くつくものだが、アロー・エレクトロニクスや日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのように、複数の環境を維持したままでコストを抑えることに成功した企業もある。
アロー・エレクトロニクスは現在、EDI、RosettaNetなどのXML標準と、ポータル、フラット・ファイルなどのB2B商取引標準をサポートしている。年商110億ドルの同社は、約600社のサプライヤーから仕入れた半導体などのエレクトロニクス製品を13万社を超えるOEMパートナーに卸しているほか、在庫管理などのビジネス・サービスも提供している。
そこで、同社は個々の取引パートナーの技術的な要望にこたえるため、ウェブメソッドの開発プラットフォームを使って、顧客から受け取ったさまざまなフォーマット(のファイル)を自社で処理できるフォーマットに自動的に変換するためのプログラムを開発した。
具体的に説明すると、アローのシステムではまず、特定のトランザクションの発信元やトランザクションのタイプ(購入注文、請求書、事前出荷通知など)、フォーマット(Excelファイル、EDI、RosettaNetなど)、ファイルに含まれるデータなどが特定される。その後、各種のトランザクションに対応できる汎用データ・マップを備えたマッピング・プログラムが、顧客の使っているフォーマットをアローの財務システムや受注システムで処理可能なフォーマットに変換する。マッピング・プログラムでの処理が終わると、今度はファイルを送信するためのプラットフォームが決定され、購入注文は販売受注システムに、請求書は財務システムに、それぞれ転送されることになる。これによって、取引パートナーが使用しているプラットフォームに関係なく対応することができるわけだ。
EDI業務をアウトソースする
一方、日立グローバル・ストレージは、E2オープンが提供するトレーディング・ハブにEDI業務をそのままアウトソースすることで、取引パートナーに新しいプラットフォームの導入を強いることなく、EDI関連のコストを削減することに成功した。
日立グローバル・ストレージのCIO、ジャヤラマン氏によると1996年からEDIを利用している同社では、EDIインフラストラクチャを維持するために、毎年数十万ドルを支出しているという。そのコストに嫌気が差したジャヤラマン氏は、EDIを全廃してWebベースの取引プラットフォームに移行することを考えたが、同社と取り引きしているサプライヤーの中には、EDIを使った卸売りシステムを利用しているところも多かっため、決断を下しかねていた。そうしたなか、日本とフィリピンにある工場、およびこれらの工場と取り引きのあるサプライヤーとの間ですでに導入していたE2オープンのソフトウェア使って、EDIファイルをE2オープンのトレーディング・ハブから送信することを思いついたのである。
現在、E2オープンは、顧客のためにEDIインフラストラクチャを維持し、必要に応じてアップデートを行っている。例えば、日立グローバル・ストレージのある取引パートナーが新たに事業所を開設したり、別のトランザクションを追加するように求めてきたりしたときには、E2オープンが新しいIPアドレスやトランザクションを既存のEDIマップとプロトコルに追加するのだ。ジャヤラマン氏は、「E2オープンへの移行に要したコストは、9カ月で回収した。その結果、取引パートナーに迷惑をかけることなく、自社のコストを削減することができた」と誇らしげに語る。
日立グローバル・ストレージがとった方法は、自前でポータルを構築したり、何千行もの注文データを手作業で入力したりするよりははるかに効率的だ。
冒頭で紹介した、パナソニック・インダストリアルのジーノス氏は、現時点ではEDIを全廃し、Webベースの新しい取引プラットフォームに移行することは考えていないという。同氏は、EDIを廃止するよう求める顧客に対し、それによって起こるマイナス面を考慮してくれるよう説得を続けているという。そのおかげで、現在のところは、それぞれの顧客が運営するポータルを何種類も並行して利用するという事態には至っていない。
「説得の結果、いずれの顧客も、当社が最後の1社になるまで、彼らのポータルには加わらないという当社の方針を容認してくれた」(ジーノス氏)
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