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日本のRFID業界をけん引する人々(3)


世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC

柏木 恵子
2007年1月17日
NECは、さまざまなトレーサビリティに関する実証実験に参加したり標準化団体「EPCglobal」にエンドユーザー会員として加入したりするなど、RFID事業を広範囲に展開している。また、2004年10月にはRFIDビジネスソリューションセンターを設立し、サプライチェーンマネージメント(SCM)など実業の分野でのRFID利用の推進を図っている。ビジネスに直結するRFID統合ソリューションについて、同センター長を務める平野弘一氏にお話を伺った
 現場により近いところでRFID事業戦略を立案するために
――NECのRFIDへの取り組みの経緯は


平野弘一 RFIDビジネスソリューションセンター長
平野 RFIDビジネスソリューションセンターは2004年に設立されました。それ以前のRFIDに関する仕事はマーケティングや研究開発の部門が主導していましたが、いよいよ事業として広がっていくだろうということで設立されたものです。

 RFIDビジネスソリューションセンターは、お客さまや市場に、より近いところで事業戦略や商品企画を行う組織があった方がよい、との考えから発足いたしました。

 また、センターの役割として、営業支援や販促活動なども行います。RFID事業に携わるものはNEC全体では300名くらいいますが、ビジネスソリューションセンターのスタッフは20名強です。

 RFIDの導入で一番ROI(投資対効果)が出るのは、現場だと思います。私どもはメーカーですから、工場ということですね。4~5年前に社内食堂の食器にRFIDタグを付け、その後、経産省の実証実験や農水省の豚肉のトレーサビリティの実験などを行ってきました。そして、2~3年前にNEC米沢の工程管理にRFIDを使い、非常に生産効率が上がりました【注】。現在は、そこからサプライチェーン全体に広げていこうとしています。

RFIDカンバンを自社の現場で実際に使う
――NECの工場では、どのようにRFIDを活用しているのですか

平野 NECパーソナルプロダクツ米沢事業場で工程管理に利用した例を紹介しましょう。この工場では、以前は紙の生産指示書とバーコードを利用していました。実は、この工場では1日に約1万台のパソコンを作りますが、全く同じものは2台と作りません。筐体が同じでも、ユーザーのニーズによってCPUやハードディスクの容量が違って、それを生産指示書に基づいて組み立てていくわけです。

 生産はセル方式で行っていますが、生産指示書のバーコードを1台当たり10回ほど読んでいました。10回を1万台分ですから、10万回の読み取りということですね。物を作りながら生産指示書のバーコードを読むというのは、大変煩雑な作業ですが、それを10万回行うというのは非効率極まりないということで、まずその部分をRFIDにしました。

 効率化のほかにも、万が一、不具合品が混入した場合には、原因究明のための指示書検索が簡単になるという副次的効果もあります。紙の指示書であれば、不具合品があった場合には倉庫に行って社員数人がかりで探さなければなりませんが、現在のシステムならば検索画面から簡単な操作をするだけで、それがどのラインでどのように作っているときに混入したものかを見つけることができます。

 現在、米沢の工場ではトヨタのカンバン方式を採用しており、RFIDカンバンを利用しています。生産に必要なさまざまな部材を各協力会社から工場に納めてもらうわけですが、牛乳の配達のように物流業者が協力会社をぐるぐる回ります。RFIDカンバンにより、工場にとっては棚卸し在庫の削減ができ、協力会社はタイムリーに物を納品できるようになりました。カンバンには、当初13.56MHzのRFIDを使っていましたが、EPCglobalの標準化活動が進み、タグの単価も安くなるだろうということもあって、この秋にUHF帯のものに切り替えました。


NECパーソナルプロダクツ米沢事業場


 世界標準に“和魂洋才”で取り組む
――RFID製品に対するNECの特色は

平野 利用しているチップはインピンジ(Impinj)社製のものです。NECトーキンがリーダ/ライタやこのチップを利用したインレイというタグを作っています。アンテナなどの機能が各メーカーの差別化ポイントですが、インピンジのものは性能が高くトーキンの技術とも相性が良いようです。

 RFIDに利用する周波数帯は日米欧で異なり、特に日本では周波数の幅が狭い。これらすべての周波数帯に対して高い性能を持っているのがインピンジです。UHF帯を使ったRFIDの利用は最終的にはグローバルでのサプライチェーンを目指したものですから、さまざまな周波数帯に対応することが必要です。

 リーダ/ライタもインピンジとの共同開発です。インピンジのファウンダーのトップがEPCglobalのタグに関するWGの委員長をやっているので、標準化が進むのであれば最初から協力してやっていくのがいいだろうということもあります。

 ただ、日本の場合は周波数帯が非常に狭く、トーキンのノウハウをインピンジのノウハウとうまく組み合わせて作る「和魂洋才」でやっています。

イノベーションセンターでRFIDをリアルに見せる
――事業としてのRFIDに対する手応えは

平野 RFIDというのは非常に旬な話題ですが、事業としては、各社どこも大きな数字にはなっていません。ユーザーにしても、興味は示すものの、いざ導入となるとちょっと尻込みをするといった感じです。

 それはやはり「RFIDを使ってどういうメリットがあるのか」とか「本当にRFIDを使って動くんだろうか」といった、疑心暗鬼があるからだと思います。私どもは米沢の工場で実際に使っていますので、それを見せることができます。

 2005年には2000人くらいの方が見学されました。2006年は恐らく3000人くらいでしょう。実際に運用されているシステムを見れば、「できるんだな」とか「知恵の出し方次第で何か使える」といった感想を持たれます。

 実際に実機でやってみると、「なるほど、このくらいだと水が影響を与えるぞ」といったことも見えてきます。「このような制限を考慮しながら、こういう使い方をすれば、実際にできるんだな」という大きな信頼感を勝ち得ることができるわけです。

――工場以外にもRFIDシステムを体感できる場所があるとか

平野 2006年秋に設立した「イノベーションセンター」です。私どもが倉庫として使っている東京流通センター内で実際に触れられるRFIDシステムをお見せすることも可能です。米沢では、事業で利用している実例を見せるのですが、イノベーションセンターでは技術面での実証実験ができます。そこが、他社と違うところだと思います。

 例えば、イノベーションセンターには、NECパーソナルプロダクツで実際に使用しているゲート式リーダ/ライタがあります。実証実験でよく使われるゲート式リーダ/ライタは、ポールを立てたようなものですが、これは読み取り精度に問題があります。電波が反射したり同じようなものが並んでいたりすると余計なタグまで読んでしまう。それを技術的に解決したのがこのゲート式です。ここでは、NECパーソナルプロダクツで使っているのと同じ段ボールを、現場と同じ積み方でお見せします。


左)ゲート式リーダ/ライタ
右)包装機に乗っているのはビジネス向けノートPC「VERSA」の箱

 例えば、テスト環境の段ボールの積み方が、現場のそれとはまったく異なることもあると聞きます。それで「読めた、読めない」ということをやっても、現場からすれば、「こんな積み方はしていないよ」ということになります。このイノベーションセンターでは、実際に現場でやっているとおりの積み方でお見せします。そして、読めたり読めなかったりしたら、こうすればいいというお話をします。

 また、見学者の中には、その会社が実際に扱っているような荷物でテストしてみたいという方もいます。例えば、物流業でしたら、段ボールでも大中小さまざまな大きさがあるでしょうし、紙袋やゴルフバッグなどもあるかもしれません。さすがにゴルフバッグはラインに流しませんが、できるだけ実際の業務に近い形で実証実験を行うことができます。


左)高速コンベア
右)仕分けコンベア

――イノベーションセンターで利用している周波数帯はやはりUHF帯ですか

平野 UHFでと希望される見学者が多いですね。NECは、2.45GHz帯タグである「NETLABEL(ネットラベル)」という製品も持っていますが、こちらはセキュリティとか金融といった特殊な場面で利用されます。NETLABELは非常に小さくできるうえ、メモリ領域が広く使えます。エンコーディングなども非常に簡単にできます。

ROIを出せるトータルソリューションとして提供
――どうしたらRFIDシステムでROIが出せますか

平野 もちろん、ゲート型リーダ/ライタを導入すればROIが出せるというものではなく、RFIDシステム全体で事業の効率化を図ることが重要です。

 ご存じのとおり、RFID事業はそれぞれの部分でプレーヤが違うのです。タグはインピンジなどの半導体メーカーの分野ですし、プリンタやリーダ/ライタなども複数のプレーヤーが製品を持っています。さらに、ミドルウェアはそれ専門のソフトウェアベンダ、その上位のデータベースといったように、システム構築の際のカウンターパートは多数です。

 これらをワンストップで提供できることはNECの特徴の1つになります。チップやタグ、その上のミドルウェアまで含めて、上位のシステムと現場で使うRFIDのシステムをうまく連携しながら、垂直統合型でシステム全体を提案します。

 具体的には、まず、NECのブランドの中でシステム構築します。そしてもし、われわれの提案するものよりも良いものがあれば、われわれがコーディネイトして、いわゆるシステムインテグレーションを行います。

 コンサルティングでは、現場のことをよく分かっている者にRFIDはこうやって使うということを、いわば伝道師のように語ってもらうという手法も取っています。例えば、米沢のNECパーソナルプロダクツにいる若月(新一SCM改革推進部グループマネージャー)のやっている仕事がそれです。

――NECのソリューションをすでに導入している企業もありますか

平野 何社かあります。最近は製造業の現場が海外であることも多いのですが、電波法は国によって違います。そのあたりのノウハウも含め、海外でのインテグレーションも行います。さらに、サポートは現地法人で対応できます。

 見落とされがちな金型管理は重要なソリューション
――多くのソリューションの中で、「これは」というものを挙げるとすれば

平野 特に力を入れているソリューションに、金型管理があります。大量生産の工業製品には必ず金型が必要ですが、これらは1つ当たり20万円から30万円、高いものでは400万円くらいするのです。

 しかし、これがあまりきちんと管理されていないケースが多い。よくてバーコード管理、チョークで記号番号を書いてあるだけというようなこともあります。数十万から数百万円するものですから、本来そんな扱いではいけないはずですが……。部品は自動車など多くの製品で永久部品ですから、金型の管理をしたいというニーズは高いのです。

 金型の管理で何が大変かというと汚れ対策です。金型はグリースでどろどろになってしまうものですし、チョークで書いた記号は消えてしまうことが多く、バーコードは汚れで読めなくなってしまいます。

 しかし、RFIDならば電波さえ届けばいいので、金属対応タグを利用すれば読めなくなるということはありません。RFIDを使ったソリューションの多くは、バーコードでもできなくはないものですが、これはバーコードではできないことです。この金型管理ソリューションもイノベーションセンターでお見せしています。

 この金型管理は自動車製造の最終的な部品製造システムの一部になりますが、その上の設計システムまで含めて、巨大なエンタープライズのシステムの一部です。金型管理はほんの小さなシステムですが、NECはその上位システムまで含めて、連携したシステム提案ができます。

 RFIDの市場規模というのはどこで見るか難しいですが、タグだけで見たらそれほど大きくはなりません。5円のタグを1億枚売っても、5億円ですからね。しかし、タグだけあってもシステムは動きませんから、このような全体のシステムで見ればかなり大きなビジネスになります。例えば米沢のシステムは最終的にはSAPと連携していますので、そこまで含めればすごい金額になります。

RFIDを使うメリットが見えれば普及は進む
――実用化がいまひとつ広がっていない原因は何でしょう

平野 1つは技術的な読み取り精度の問題ですね。よくいわれる価格の問題についてですが、タグが安くなれば本当に使われるのかというと、疑問に感じます。例えば、タグを無料で配れば、それでみんなが使うのでしょうか。

 やはり、RFIDを使うことによってどういうROIが出るのか、どう便利になるのかを見せないと、タグが無料であっても使わないと思います。例えば、米沢工場で使っているタグは1個500円です。しかし、リライタブルタイプなので、500回使えば1回1円。使い方によっては、リライタブルタイプの方が安いことになります。

――EPCglobalの動向については

平野  デファクトスタンダード化が進むと価格が下がりますから、その意味ではメリットがありますね。米国向けの売り上げが大きな割合を占める電機メーカーも多いので、米国で広まっているEPCglobalを無視するわけにはいかないでしょう。

――RFIDが普及することで社会はどのように変化しますか

平野 時期は別にして、RFIDは必ず社会インフラの1つになると思います。サプライチェーンで全部つながるという使い方だけでなく、金型管理や文書管理などいろいろな使い方があるでしょう。いまは、RFIDの周波数帯などさまざまな特徴をうまく使うための知恵を出しているところでしょう。

 社会全体が動き出すのは、2007年ごろではないでしょうか。リーダ/ライタを用意して、読めたかどうかという実証実験はすでにあちこちで行われていますし、実際のシステムの一部分で使えるかどうかというテストケース導入が増えてくると思います。NECでも「このオペレーションのこの領域でやりたい」といった相談案件が増えています。いままでとは違うという感触を得ています。

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