半導体チップの過剰在庫は2007年も引き続き増加

米国の市場調査会社iSuppli社の調査員が発表した報告書によれば、2006年第4四半期の半導体製品の過剰在庫の増加にはさらに拍車がかかった。エレクトロニクス業界のサプライチェーンはそれによって世界的規模で影響を受け続けており、その傾向は2007年に入っても変わらないという。

　iSuppli社が概算として算出した半導体チップ製品の過剰在庫の総額は、2007年度の第3四半期末には41億米ドル、第4四半期には43億米ドルまで増えて4.9％アップすると見込んでいる。

　また、同社の予測通りに過剰在庫の状況はさらに加速する傾向にあるが、それによって市場が悪化することはないと語った。

　iSuppli社のアナリスト、Rosemary Farrell氏は、「過剰在庫が継続的に増加し続けている現象は、世界的規模で市場展開している業界にとって2007年度の懸念材料ではある。だが、それにより市場の成長が妨げられることはない」と声明の中で語った。

　今年の第4四半期に43億米ドルに達すると予測される過剰在庫の総額は、半導体産業市場の先行きを十分不安にさせると思われる。しかし、このように予測したiSuppli社は、過剰在庫の増加が市場に与える影響は小さいと見ている。同社によれば、2007年度の世界規模での半導体チップ製品の売り上げは10.6％増加するという。そして、今回発表された予測に比べても、2007年度の半導体市場の成長の割り合いは1～2ポイント増になるものと見込まれるという。

　実際、半導体チップ製品の在庫増加が市場で確認され始めた時期と、半導体製品市場/エレクトロニクス産業市場全体に周期的に訪れる景気後退が始まった時期は重なっている。それらがほぼ同時に起こったのが2006年第4四半期である。具体的には、チップサプライヤが弱体化し始めたことに加えて、3Gワイヤレスハンドセットやハイエンドコンピュータ製品向けの半導体製品の受注量が大幅に減った。また、液晶テレビ製品が生産量を過剰に増やしたことも、それらの製品に搭載される半導体チップ製品で過剰在庫が起こり、結果として市場に多大な影響を与えている。

　半導体製品サプライヤが過剰在庫に注目している一方で、EMS業者(electronic manufacturing service：電子機器受託製造サービス)の在庫状況で悪化が表れ始めた。これは半導体製品サプライヤの過剰在庫の中から製品がEMS業者に戻されたために発生している。それでも構成部品卸業者の在庫状況はまだ安定しているとiSuppli社は考えている。

　市場で起きているさまざまな事柄にもかかわらず、iSuppli社の説明によれば、半導体製品サプライヤのうち数社は自社の在庫を減らしているし、ほかの企業がそれによる恩恵を受けて問題が相殺されると考えれば、過剰在庫の現状はそれほど懸念すべき要因ではないという。

　さらにiSuppli社は、「通常よりも在庫期間を短縮する企業が業界全体に増えてきているのは当社が予想した通りである。また、半導体チップを購入する顧客も在庫調整をし始めており、その動きによりエンドマーケットでも製品需要の低迷が発生している」と説明した。