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SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。 SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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TOC──全体最適による
業務改革戦略ガイド

第2回   制約を解決するSCMソフトと思考プロセス

竹之内 隆
シーアイエス株式会社
コンサルティングカンパニー カンパニープレジデント
2001/11/13

<今回の内容>
■ 「どこに焦点を当てるか?」に関する意思決定
■ 99対1の法則
■ 弱い鎖を明らかにする
■ 制約を探し出す手段
■ ドラム・バッファ・ロープとSCMソフトアルゴリズム
■ ソフトでは解決できない制約を改善する思考プロセス
 前回はTOCの目指すところが企業利益直結型の改革であり、部分最適な改善の積み上げでは企業利益には結び付きにくいという点を指摘した。

 全体最適を促進するために、TOCでは改善を「ボトムライン=利益」に直接働き掛ける活動とする。そして、改善が実際に起こったのかどうかを判断する評価指標として、TOCでは投資利益率(ROI)が適当であるとしている。しかし、ROIは改善を生み出すためにどこに着目すべきかは何も教えてくれないのも事実である。

 今回はTOCによる具体的な改善策として、どのような手法があるかを概説する。

  「どこに焦点を当てるか?」に関する意思決定

 前回指摘した3つの指標のうち、改善の対象として、どれか1つを選ぶことになった場合、ほとんどの人は直感的にスループット改善を最も重要だとして選択するであろう。しかし、この選択は単なる直感だけでなく、次のような説得力を持った主張に基づいている。

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 在庫と経常費用(オペレーティングイクスペンス)の改善には限度がある。それらはゼロを超えて削減できないし、ある程度の在庫、経常費用はスループットを生み出す、あるいは守るためには不可欠なものであるからだ。

 経常費用削減(コストダウン)に集中した活動を続けながら、継続的に利益を向上させていくプロセスというのはそれほど長い間は維持できない。経常費用ゼロの目的に近づけば近づくほど、継続はますます難しくなっていくし、仮にその目的が達成されたとしても、そのときは売り上げもゼロに削減されることになってしまうだろう。

 在庫と経常費用はスループットを生み出す、あるいはそれを守るために存在しているのだとしたら、まずはスループットを向上させるために何をすべきであるのか、について理解を深めなければならない。

 本来スループットには限度がなく、それゆえにスループットは改善のための大きな機会を生み出してくれる。もしスループットの数値が十分な速度で継続的に向上し続けるのであれば、莫大な在庫と経常費用を抱えるという「罪」さえも許され得る。

 スループットは相互に依存した企業活動のプロセスによって生み出されるものであり、その増加のために改善しなければならないことはそれほど多くない。その点において、スループットに集中することが非常に大きな影響力を持つことになるといえる。

  99対1の法則

 下の図のように、連続した2つの資源(生産設備と考えてもよい)が生産工程をなしている際に、1番目の設備から順繰りに材料が第2設備へ渡される限り、第1設備と第2設備は同期して稼働する可能性がある。これはあくまで可能性であって、一般的には第1設備の需要が逼迫して100%の能力に達するときには、第1設備のわずかなつまずきが2番目の設備(資源)に供給できなくなる可能性を非常に高くしてしまう。


図1 工程1が100%稼働したときだけ、工程2も100%稼働となる

 そして、もし本当に供給することができなければ、2番目の資源もまた次の資源へ材料を供給することができなくなってしまうことであろう(いわゆる玉突き現象)。さらに、第1設備からの材料供給がバラツキを持つと、第2設備はいっそう苦しくなり、より大きなバラツキを持ってしまうことになる。つまり前工程のバラツキは次工程の稼働をいっそう低下させてしまう傾向にある。第2工程(設備)の負荷が100%に達することはめったにない。そこを考えれば、すべての設備に着目する必要はなくなるのである。

いかなる事象の連鎖において、最も弱い鎖はただ1つである。もし改善が必要であるならば、最も弱い鎖の輪だけを強化すればよい

 このことはどこに焦点を当てるかを決定する際の手掛かりとなる。パレートの法則では80対20のルールを教えている。つまり80%の原価は20%の原価ドライバーによって作り出されるというものであるが、この考え方は「99対1のルール」(Goldratt,1990)としても適用することができる。すなわち、「99%の影響は1%の変化によって生じる」である。

  弱い鎖を明らかにする

 どこに着目して改善を行うかを知るためには、企業システムの限界とその影響を知ることが必要である。企業が無限に金を稼ぎ出さない限り、弱い鎖が必ず存在しているはずである。ではどのように弱い鎖を特定するべきなのだろうか、またその弱い鎖がその能力を最大限に発揮しようとするのを制限する要素は何だろうか。弱い鎖は制約(条件)と呼ばれ、多くのカテゴリに分類される。

行動制約
管理(方針)制約
能力制約
市場制約
ロジスティックス制約
 これらの制約はそれぞれ会社の円滑な事業運営に独自の影響を与えるものである。ロジスティックス制約は計画・管理システムがシステムに与える限界などである。管理(方針)制約とは誤った管理戦略、方針、意思決定のために生まれてしまうメカニズムなどである。行動制約は、全体最適な観点から見たときに、つたない業務遂行につながる従業員の行動や仕事の習慣などである。

■管理(方針)制約
 不適切な管理方針はしばしば物理的な資源を最大限に活用する能力を制限したり、スループット創出を妨害したりする。例えば、通常の原価計算制度に従って工場利益計画を策定すると、固定費を配賦する対象を求めるために大量生産を是認し、架空の生産利益を生み出しているかのように思い込ませてしまう。実際、こうした方針は在庫を積み増し、結果的に販売経費の増加を招き深刻な利益の低下をもたらす可能性がある(原料系の製造業では多くの企業が信じている)。これを打破する唯一の方法は重役たちの考え方を変えることである。

■能力制約
 需要が資源(生産設備など)の利用可能能力を超えるときには必ず能力制約が生まれる。能力制約とは具体的には機械、人間などのことであり、スループットの創出を制限するものである。第1次制約条件は企業全体のアウトプットを制限する制約条件である。それに対して、第2次制約条件はそのほかの能力を第1次制約条件に適正に従属させる能力を制限するものである。つまり、ある資源に対する需要が増加し、それが第1次制約条件に対して必要なものを供給できなくなる可能性が高くなったとき、その問題は第2次制約条件に移ったといえる。これらの能力制約はSCPと呼ばれるサプライチェーン管理のソフトウェアを活用することで特定できる。

  制約を探し出す手段

 制約条件のうち、能力制約は把握しやすい。これはSCP(サプライチェーン・プランニング)と総称されるソフトウェアを利用すれば可能になる。

 例えば、そもそも企業が保有する生産能力を超える需要がいつ、どの程度押し寄せてくるかを知るには需要予測ソフトを活用することで、ある程度は正確に把握可能である。

 その需要を満たすに足りる在庫と生産能力が準備されているか否かを判定し、在庫を充足させ、生産を納期に間に合わせるためにどのように計画を変更するべきかを教えてくれるのがサプライチェーン・プランニングソフトである。これらはAPS(Advanced Planning and Scheduling)とも呼ばれる。A.I.を活用したり、TOCのロジックを活用したりして需要に最適な生産・在庫供給計画を策定する。

 TOCのロジックを活用して供給計画を策定・変更していく場合の特徴は、ソフト上に売り場在庫や、倉庫在庫、工場の生産工程、および資材在庫などサプライチェーンをモデリングし、第1に、その時点で需要にこたえるために最も弱点になる部分(倉庫在庫、生産工程など)をとらえる。そこが制約条件になるのである。第2に、制約条件にいかりを下ろして、制約工程や設備をフル稼働させていくための資材確保、材料供給計画を具体化する。そのうえで制約工程から顧客に製品が届くまでの全体最適化のプランを策定するのである。

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TOC──全体最適による
業務改革戦略ガイド

第1回   サプライチェーンの原点
TOCとは何か

竹之内 隆
シーアイエス株式会社
コンサルティングカンパニー カンパニープレジデント
2001/10/16

<今回の内容>
■ TOCとは何か──TOCの起源
■ TOCの目指すもの──企業の“ゴール”は業績/利益
■ 個別コスト削減のムダ
 『ザ・ゴール』邦訳版の出版によって、経営の全体最適化の改善手法として知られるTOC(制約条件の理論)への興味は高まっている。TOCは、ITの重要なキーワードとなっているSCM(サプライチェーン・マネジメント)の背景理論の1つでもある。ここでは、TOCについて、その概要を3回に渡って解説していく。

  TOCとは何か──TOCの起源


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 1970年代後半にイスラエルの物理学者エリー・ゴールドラット(Eli Goldratt)博士は生産スケジューリングのことを相談され、物理学の研究で得た発想や知識を使って当時としてはアーキテクチャ面で画期的な生産スケジューリングの方法を編み出し、ソフトウェアに仕立てることに成功した。

 そこで、ゴールドラット博士はその生産スケジューリングソフトウェアをOPT(Optimized Production Technology)と名付け、米国にこれを販売する企業を設立し、会長の座に就いた。OPTは高価なソフトウェアであるにもかかわらず、それを導入した工場では生産性が大幅に改善され、生産リードタイムが劇的に短縮するという効果が出て一躍注目されるようになった。しかしゴールドラット博士はOPTの詳しい仕組みは一切公表せず、ソフトウェア開発もイスラエルで行っていた。この状況は、MRP(Material Requirements Planning:資源所要量計画)のように最初に提唱されたころからその仕組みが完全に公表されているものとはまったく違っていたのである。このため生産管理の専門家の中には中身が分からないOPTを無視しようとする傾向が強くあった。

ザ・ゴール
企業の究極の目的とは何か
エリヤフ・ゴールドラット著
三本木亮訳
ダイヤモンド社
2001年5月
ISBN4-478-42040-8
1600円+税



 そこで彼はこのOPTの基本的な原理を分かりやすく説明する小説を書くことを思い立つ。このアイデアに周囲は皆が反対した。しかし周囲の反対を押し切って彼は『The Goal』(邦訳『ザ・ゴール』ダイヤモンド社刊、2001年)という企業小説を書いた。この小説は周囲の心配をよそに爆発的な売れ行きを示し、たちまちミリオンセラーになってしまった。

 この『The Goal』の出版直後に、多くの読者から『The Goal』は自分の工場とまったく同じ状況を描いているとか、自分の工場をモデルにしたのではないかという手紙が舞い込むようになる。中には小説にあるとおりに改善を実施してみたら、小説とまったく同じような劇的な成果が出たという手紙もあった。このことはゴールドラット博士のみならず、周辺のメンバーにとってもショッキングな出来事だった。

 OPTというツール抜きで見事に企業改革、サプライチェーン・マネジメントの基礎を確立している企業が散見されるようになったからである。このことはゴールドラット博士の転機となった。彼自身はOPTの販売から身を引き、OPTの背後にある考え方をTOC(Theory Of Constraints:制約条件の理論)と名付け、経営コンサルティングに従事するようになったのである。

 このTOCという名前は、OPTのスケジューリングが工場内のボトルネック工程、つまり生産の制約条件に着目しているところから名付けられた。博士はさらにTOCをスケジューリング手法から、制約条件に改善活動を集中させる経営改善の手法へと発展させた。これが改善の5ステップである。

■TOC 5ステップ
ステップ1:制約条件の特定
ステップ2:制約条件の活用
ステップ3:制約条件に従属させる
ステップ4:制約条件を強化する
ステップ5:再度、制約条件を特定する


  TOCの目指すもの──企業の“ゴール”は業績/利益

 TOCでは「改善」ということを厳密にとらえている。すなわち、「改善とはボトムライン(利益)を改善する活動のみを指す」ということである。従って、問題点を羅列して、全社員を巻き込むことに重点を置いてきたTQC(Total Quality Control)とは一線を画すのである。

 TOCが改善ステップの「ステップ1:制約条件の特定」を位置付けているのは企業全体のサプライチェーンを見渡した際に、真の制約条件こそがサプライチェーン全体の利益を規定してしまうという理解から、総花的に改善するのではなく真の制約条件から重点的にかつ真っ先に取り組むことを指摘しているのである。

 つまり、多くの問題点、課題が散在しているのが実在する企業の活動だが、片っ端から問題を解決していくことが利益直結の活動につながるとはいい難いという理解である。

 従って、TOCでは全体最適を追求し、個々の改善を積み上げる部分最適化手法を否定している。このことはすべての改善活動が企業の利益に直結していなければならないというゴールドラット博士の考え方に起因する。海外部品に置換し部品原価を削減しても、リードタイムが延びて製品の在庫がかえって増加してしまったり、結果的に値引き販売に走り販売経費が増してしまうようでは企業利益は増加しない。

 そこで、改善を測定する指標が必要になる。すなわち、改善活動が本当に企業活動にとって意味のある活動か否かを判断できる指標が必要になってくるわけである。ゴールドラット博士は、以下の指標を提示している。

■TOCの評価指標
スループット(T)=売上-資材費
  ≒企業システムが売上を通して貨幣を創出する比率
純利益=スループット(T)-経常費用(OE)
ROI={スループット(T)-経常費用(OE)}÷在庫(I)
在庫≒企業システムが販売を意図するものを購入する際に投資する金額
経常費用(OE)≒企業システムが在庫をスループットに変換するために支出する金額


スループット(T:Throughput)
経常費用(OE:Operating Expense)
投資利益率(ROI:Return On Investment)
在庫(I:Inventory)

 これらの評価指標は、ゴールドラット博士の著書『The Goal』(1984年)、『The Race』(1986年)、『The Haystack Syndrome』(1990年)の中で初めて紹介され、その内容は多くの人が容易に理解できるものであった。これらの指標の目的は在庫と経常費用を最小限にしながら、スループットを最大化することにある。

 スループットは最も重要な概念で、売上から変動費の代表格である資材費を取り除いた利益を指す。また、通常スループットは製品単位で測定するのだが、合計したスループットは製品群、工場、事業部のスループットの合計値となる。さらに、時間当たりのスループットを測定し、これを最大化するために何をすればよいかを検討するところにTOCの特徴がある。

 すなわち、通常の原価計算は1カ月で締めてみて、ある工場、製品群、指図書単位に結果的に生じた原価を把握し、問題を探ろうとする。すでに過ぎたことを問題視するわけだ。

 TOCの指標はこれから生じるスループットを最大化するためにいかなる生産計画を組み替えればよいか、製造すべきか、購入すべきか、はたまた修理して出荷すべきか廃棄にすべきかを企業全体の利益に直結するか否かで判断しようとするのである。

 コスト管理の世界の前提条件は各部門、工程個別に指標を改善すれば企業全体の収益性が改善するし、各製品の標準原価を下げると企業のトータルコストは減るという考え方である。そこでの代表的な指標は、

■コスト管理の世界の指標
設備稼働率=稼動時間÷操業時間
標準原価=資材費+作業時間×ローディング


などである。

 TOCではROIも重視しているが、現場で簡便に利用できる分かりやすい指標として、スループット、経常費用、在庫の3項目に絞っている。この3項目の組み合わせであるROIは、全社の利益を代表する指標として、グローバル指標と呼んでいる。

  個別コスト削減のムダ

 実際に、コストを下げても在庫がその分増大すればROIは改善されない。売上を上げても、経常費用や在庫が増大すればROIは改善されない。

「What is your Goal? Make More Money!」

 ベストセラーの『The Goal』を読んだ方であればだれもが知っているTOCの常とう句だが、TOCは企業が「現在から将来にかけて」利益を生み続けることが目的であることを指摘している。これは簡単な一言だが、実は深い意味を持っている。

 在庫削減やコストダウンをそれ自身単体で実施し、企業全体のバランスや、最も重要なスループットとの兼ね合いを気にせずに個別改善を積み上げれば結果的に企業全体が良くなるという神話は成立しないということを指摘している。あたかも図1では個別コストをプロセスごとに集約しているように見えるが、本来のサプライチェーンではチェーンの強さや速度を評価しなければならない。


図1 従来の会計手法では、コストを「生産」「販売」など個別のプロセスごとに集約し、それぞれがバランスすると解釈する

 ちょうど図2のようにチェーン全体の強さを評価すると個別に改善するのではなくて企業全体の中で最も弱い、本質的な制約を解消しなければ企業利益は向上しないことが分かるはずである。ひいては、サプライチェーン全体の利益は制約条件を解消する以外には向上しないことが容易に理解できよう。


図2 サプライチェーンは強さや速度が問題。チェーン全体の強さ(能力)は、一番弱い輪(プロセス)に依存する

 つまり、個別改善を積み上げるのではなく全体の中でどこに制約条件が存在するかを特定し、そこから手を付けることこそ、企業業績向上策にほかならないのである。具体的には、工場改善が相変わらずコストダウンに向かい、営業活動とはまったく同期が取れていない状況では、一見コストは下がっているようでも企業全体では効果が出ない実態がよく見られる。

■プロセス間の不同期が制約条件になっている事例

 ある自動車部品メーカーでは自動車メーカーに納入するOEMビジネス以外にもアフターマーケット向けに市販品として製品/部品類をカー用品専門チェーンに卸していた。

 販売部門はA製品の販売計画を9月からインプットしているのだが、生産部門は生産計画に10月から乗せていたのである。販売部門はカー用品店の本部バイヤーとの商談で9月から店舗陳列(ショーケース)用に数千台の販売計画を策定していた。しかし、生産部門は営業部門の商談進ちょく情報を把握しておらず、10月の数万台生産ロットにまとめて生産しようと計画していた。

 結果的に初期の供給ショートが店舗の期待を裏切る結果となり、10月末に数万台の出荷をしようにも店舗からの総スカンに直面する羽目になったのである。残在庫の山が倉庫にできてしまった。


 次回は、TOCのポイントである制約にはどんなものがあるか、それを改善する方法としてどのような手法があるか概説する。

ビジネスを成功させる戦略的システム構築


情報システムが特定の業界に大きな変革をもたらしたコンセプトとしては、SCMと並んでMRP(Manufacturing Resource Planning=製造資源計画)を欠かすことはできないであろう。「必要なときに必要なものを」というジャストインタイムの考え方など、発想においてはSCMと共通する部分が多い。

しかし、一言で製造業といっても多種多様に渡り、業種や製造する商品によってその製造工程も著しく異なる。SCMのように川上から川下までSCMで統一できるというたぐいのものではないので、特に小規模な製造業の中にはシステム化がいっこうに進まない多くの企業があることも事実である。

MRPは紛らわしいことに、狭義のMRP(Material Requirements Planning=資材所要量計画)と広義のMRP(Manufacturing Resource Planning)があり、広義のMRPはある意味で狭義のMRPの反省から生まれた概念であるが、モジュールの一部として狭義のMRPを含むものである。

狭義のMRPと区別する上で、特に広義のMRPをMRP II(エムアールピーツー)と呼ぶこともある。

■狭義のMRP(Material Requirements Planning)

狭義のMRPが登場した時代(1960年頃)はまだ「作れば売れる」時代であり、最終的に消費される商品市場は比較的安定していたといえる。従って狭義のMRPは、一言で言うと「生産計画を基本とし、部品表をもとに展開される資材発注までのロジック」ということになる。

生産計画にて計画された最終製品レベルでの計画を元に、部品構成表を当てはめて資材の総所要量計算をおこなう
在庫、仕掛かり、注文残を差し引くことによって正味所要量計算をおこなう
部品ごとに設定されている要求ロットサイズを用いて手配に適したロットにまとめる
各部品が必要となる期日に対して調達リードタイムを用いてオーダーを作成する
狭義のMRPによって、「経験と勘によってとりあえずオーダーし、実務の段階で調整する」というそれ以前行われていた慣習は改められることになる。しかし、商品ニーズの多様化などによって、新製品の立ち上げや設計変更が増えてくると、柔軟性が保てない、あるいは部品構成表のメンテナンスなど、MRPを維持することに大きな工数がかかる、といったデメリットが指摘されるようになった。

■広義のMRP(Manufacturing Resource Planning)

広義のMRPの必要性が発生したのは、最終的な市場の需要の変動に応じて商品や数量を柔軟に変化させる能力が生産者側に求められるようになったためである。

資材所要量計画=狭義のMRPに加えて、資材以外に労働力配員計画、資金所要量計画、ロット管理、オーダー管理など、製造に必要な資源計画や管理を統合的に行うことをコンセプトとしている。

ただし今日の製造業をターゲットとした統合業務パッケージがMRPを標榜することは少なく、ほとんどがMRP IIをさらに発展させたERP(Enterprise Resource Planning)パッケージとして販売されている。

その範囲に明確な定義がないためにシステムの設計者の意向によってブレが生じるものの、ERPを含むおおむねのパッケージは下記のような方向性を指向している。

生産管理をマーケティング活動との連動で考えること
企業戦略の決定が生産管理を変革すること
製品企画・設計・研究開発の管理
技術予測・市場調査・技術の事前評価の管理
■IT化と製造業

特に生産管理の場合、現状行われている業務をそのままシステム化しようとする試みは、100%失敗すると言われる。というのも、生産管理で扱うデータが刻一刻と変化する動的なデータであるため、現状業務をそのままシステム化しようと思えば、何らかの変化が起こるたびに正確にデータに反映されなければシステムの信頼性は保たれないことになるからだ。

現状肯定型のシステムでは多くの場合、システムを導入したがために発生する膨大な入力の手間に耐えきれず、結果的にデータの信頼性が著しく低下する……という結果に陥りがちである。

従って、すでに複雑化した現状の業務をシステム化するのではなく、業務そのものを単純化する業務改革を同時に行う必要がある。生産管理のシステム化については一般に下記のようなことが言われることが多い。

業務そのものを単純化する
システムで扱う情報は本当に必要なもののみに絞ること
加工されない新鮮な情報を必要としている部署に迅速に伝えること
システム化の目的をはっきりさせ、その目的の実現に集中すること
たとえば、有名なトヨタ自動車のかんばん方式にみられるように、生産工程ごとの情報を管理するのではなく、生産工程の改善によって、管理そのものを不要にしてしまうような考え方が有効なのである。
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