SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
金融(生損保)業界の電算業務は、規模の拡大とともに集中から分散、そして統合へと変遷しています。それに合わせて事務センターでは、バックアップ要素も含みながら東西2センター化が、さらに企業間統廃合のなかで統合化が進んでいます。
センターの業務内容も、帳票アウトプットの見直し、データ転送によるリモートプリント指向や大量データのCD-ROM発送など、業務の多様化に伴う帳票多様化への対応、そしてピーク時も含む非定常業務のアウトソーシングなど進められています。
そうした中、センター内外までの広範囲で高度な物流システムとその管理が求められています。
三機工業は、このたび全国のJA(農業協同組合)で取扱う共済関係の事業全般を取扱っている、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)石岡センターの帳票類物流センターにおいて、自動倉庫を除く物流業務全体のシステムコーディネータとしてシステム構築をおこないました。
そのシステムの全体像と従来機械化が難しいとされていた「日次JA直送システム」について紹介します。
全体のシステムは次のとおりです。
● 帳票仕分システム
プリントされた帳票を仕分梱包発送するシステム(2000年6月・2001年4月・2003年1月)
● 運行管理システム
石岡センター内の物流業務の運行を管理するシステム(2000年6・2001年4月)
● 斡旋品発送システム
斡旋品(販促用のしおり、契約申込書等)を全国のJAからの注文に応じて仕分梱包発送するシステム(2001年4月)
● 保守支援システム
発生した設備トラブル情報を瞬時に関係部署に送信し、迅速な設備復旧を支援するシステム(2001年5月)
● 日次JA直送システム
プリントされた帳票を1枚単位で仕分し、全国の1000箇所以上の発送先に対し短時間で梱包発送するシステム(2004年4月)
● 荷物追跡システム
石岡センターから発送した荷物に対し、運送会社と情報連携することにより荷物の運送状況が簡単に確認できるシステム(2004年4月)
各システム納入後は納入以前に比べて短時間でより多くの業務がこなせるようになり、石岡センターの業務内容は年々拡大の一途を辿っています。
また、直近に納入した「日次JA直送システム」においては、従来各都道府県で行なっていた業務を石岡センターに集中かつ一元化することにより、各都道府県の業務負荷が低減し、全体として多大な経費削減効果が出ています。
納入した各システムはそれぞれ様々な技術・知恵を生かしたシステムであり、全てを紹介したいところですが、今回は「日次JA直送システム」について詳しくご紹介します。
●石岡センター内の物流システムの基本的な作業の流れ
1)データ受信 ホストからプリントするデータを受信します。
2)プリント ホストから受信したデータに基づき、各種用紙に内容を印字し帳票を作成します。
3)裂断 プリント済みの帳票をバースタ及びシーラという装置で加工処理を行います。
4)仕分 加工処理済みの帳票を発送先毎に仕分します。
5)梱包 仕分済みの帳票を箱、封筒などに梱包します。
6)発送 梱包済みの箱、封筒などに荷札を貼付し発送します。
「日次JA直送システム」には計画設計当初から以下のような厳しい前提条件がありました。
1) データ受信から発送までの作業を当日の運送会社が受領する時刻までに完了させなければならない
2) 仕分ミスは極力発生させない
3) 発送先は1000箇所以上もあり、発送先毎に処理量及び種類が異なる
4) 日によって処理量が大きく変動する(少量日と多量日で比べると2~3倍の差がある)
5) 仕分対象は多種多様であり状態が一定しない(扱い物は「紙」で30種類以上)
6) 設備設置可能スペースが狭い
上記前提条件に対し、以下のような方針で計画及び設計しました。
1) 帳票の仕分作業に機械装置を導入し、作業者による仕分ミスを低減させる
2) 処理量の変動に対しては、当日の処理量及び各仕分対象の量の偏りのデータの分析結果を日々の仕分作業毎のスケジュール編成に反映することにより負荷分散を図り設備の稼働率を上げる
3) 設備レイアウトを工夫し、狭いスペースでも安全性、操作・作業性、保守性を確保する
「日次JA直送システム」の大きな特徴は、帳票の仕分梱包作業に機械装置を導入している点にあります。
以下の装置で構成されており、一般に標準品として販売されている物、今回新たに開発した物等様々です。
● コレータ
世間一般には帳合機と呼ばれていて、通常は本の帳合、製本等に使用します。
標準品を今回向けに特別仕様に改造し、各帳票を棚にセットし、指示された枚数を給紙する用途に使用しています。
● 帳票集積装置
今回のシステム向けに新開発した装置です。 コレータから給紙された帳票を安定的に受け止めて発送先毎に積載し、後述のバケットコンベヤ上に帳票を移載する機能があります。
また、2次元コードリーダを取り付けることにより、様々なチェックをしています。
● バケットコンベヤ
帳票を梱包するダンボールシートを搬送するコンベヤです。
ダンボールシートを谷型に折り曲げた状態で搬送します。
● 結束機及び包装機
仕分作業が終了したダンボール上の帳票を結束及び包装する装置です。コレータ同様に標準品を今回向けに特別仕様に改造しています。
今回のような多種多様な帳票を機械で仕分するシステムは他では導入されておらず、未だ人手による人海戦術で作業をおこなっています。
今後は同様な業種に対して、本システムの応用および導入が期待されます。
センターの業務内容も、帳票アウトプットの見直し、データ転送によるリモートプリント指向や大量データのCD-ROM発送など、業務の多様化に伴う帳票多様化への対応、そしてピーク時も含む非定常業務のアウトソーシングなど進められています。
そうした中、センター内外までの広範囲で高度な物流システムとその管理が求められています。
三機工業は、このたび全国のJA(農業協同組合)で取扱う共済関係の事業全般を取扱っている、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)石岡センターの帳票類物流センターにおいて、自動倉庫を除く物流業務全体のシステムコーディネータとしてシステム構築をおこないました。
そのシステムの全体像と従来機械化が難しいとされていた「日次JA直送システム」について紹介します。
全体のシステムは次のとおりです。
● 帳票仕分システム
プリントされた帳票を仕分梱包発送するシステム(2000年6月・2001年4月・2003年1月)
● 運行管理システム
石岡センター内の物流業務の運行を管理するシステム(2000年6・2001年4月)
● 斡旋品発送システム
斡旋品(販促用のしおり、契約申込書等)を全国のJAからの注文に応じて仕分梱包発送するシステム(2001年4月)
● 保守支援システム
発生した設備トラブル情報を瞬時に関係部署に送信し、迅速な設備復旧を支援するシステム(2001年5月)
● 日次JA直送システム
プリントされた帳票を1枚単位で仕分し、全国の1000箇所以上の発送先に対し短時間で梱包発送するシステム(2004年4月)
● 荷物追跡システム
石岡センターから発送した荷物に対し、運送会社と情報連携することにより荷物の運送状況が簡単に確認できるシステム(2004年4月)
各システム納入後は納入以前に比べて短時間でより多くの業務がこなせるようになり、石岡センターの業務内容は年々拡大の一途を辿っています。
また、直近に納入した「日次JA直送システム」においては、従来各都道府県で行なっていた業務を石岡センターに集中かつ一元化することにより、各都道府県の業務負荷が低減し、全体として多大な経費削減効果が出ています。
納入した各システムはそれぞれ様々な技術・知恵を生かしたシステムであり、全てを紹介したいところですが、今回は「日次JA直送システム」について詳しくご紹介します。
●石岡センター内の物流システムの基本的な作業の流れ
1)データ受信 ホストからプリントするデータを受信します。
2)プリント ホストから受信したデータに基づき、各種用紙に内容を印字し帳票を作成します。
3)裂断 プリント済みの帳票をバースタ及びシーラという装置で加工処理を行います。
4)仕分 加工処理済みの帳票を発送先毎に仕分します。
5)梱包 仕分済みの帳票を箱、封筒などに梱包します。
6)発送 梱包済みの箱、封筒などに荷札を貼付し発送します。
「日次JA直送システム」には計画設計当初から以下のような厳しい前提条件がありました。
1) データ受信から発送までの作業を当日の運送会社が受領する時刻までに完了させなければならない
2) 仕分ミスは極力発生させない
3) 発送先は1000箇所以上もあり、発送先毎に処理量及び種類が異なる
4) 日によって処理量が大きく変動する(少量日と多量日で比べると2~3倍の差がある)
5) 仕分対象は多種多様であり状態が一定しない(扱い物は「紙」で30種類以上)
6) 設備設置可能スペースが狭い
上記前提条件に対し、以下のような方針で計画及び設計しました。
1) 帳票の仕分作業に機械装置を導入し、作業者による仕分ミスを低減させる
2) 処理量の変動に対しては、当日の処理量及び各仕分対象の量の偏りのデータの分析結果を日々の仕分作業毎のスケジュール編成に反映することにより負荷分散を図り設備の稼働率を上げる
3) 設備レイアウトを工夫し、狭いスペースでも安全性、操作・作業性、保守性を確保する
「日次JA直送システム」の大きな特徴は、帳票の仕分梱包作業に機械装置を導入している点にあります。
以下の装置で構成されており、一般に標準品として販売されている物、今回新たに開発した物等様々です。
● コレータ
世間一般には帳合機と呼ばれていて、通常は本の帳合、製本等に使用します。
標準品を今回向けに特別仕様に改造し、各帳票を棚にセットし、指示された枚数を給紙する用途に使用しています。
● 帳票集積装置
今回のシステム向けに新開発した装置です。 コレータから給紙された帳票を安定的に受け止めて発送先毎に積載し、後述のバケットコンベヤ上に帳票を移載する機能があります。
また、2次元コードリーダを取り付けることにより、様々なチェックをしています。
● バケットコンベヤ
帳票を梱包するダンボールシートを搬送するコンベヤです。
ダンボールシートを谷型に折り曲げた状態で搬送します。
● 結束機及び包装機
仕分作業が終了したダンボール上の帳票を結束及び包装する装置です。コレータ同様に標準品を今回向けに特別仕様に改造しています。
今回のような多種多様な帳票を機械で仕分するシステムは他では導入されておらず、未だ人手による人海戦術で作業をおこなっています。
今後は同様な業種に対して、本システムの応用および導入が期待されます。
PR
雑誌は、全国どこの書店・コンビニエンスストア(CVS)などで、同時期に同一価格で発売されます。
変化の厳しい現在、消費者ニーズにマッチした出版物を正確に、かつ安価な物流コストで、必要な量を、必要な場所へ、タイムリーに供給することが必要です。
そのためには、「最適な作業指示」「商品の入出荷」「FA(ファクトリ・オートメーション)機器」について、デジタルで目に見える管理が求められます。
当社は、出版流通大手である(株)トーハンの依頼を受け、物流情報システム・情報通信(高信頼性ネットワーク)・FA機器といった基幹要素技術を三位一体のシステムとして構築し、高品質・高効率な雑誌発送システムを開発しました。
雑誌の銘柄数は3400点強あり、日々(株)トーハンから約600万冊に及ぶ膨大な雑誌が25000店以上の取引先に配送されます。
各出版社から製本されてくる雑誌(月刊誌・週刊誌など)が搬入されると、(株)トーハンは、店舗別に、銘柄(アイテム)と部数(冊数)を仕分け、宛名紙を添付後、フィルム包装し、輸送会社に引き渡し、全国の小売店に届けます。
今回の計画は、(株)トーハンが推進している「雑誌サプライチェーンマネジメント(SCM)」の中の雑誌発送改革です。
すでに稼働している雑誌返品システム・雑誌配本システムと融合し、出版業界全体の売上の増大と返品の減少に大きく貢献します。
雑誌発送改革では、最新鋭の物流情報システムの導入により品質の管理を徹底し、事故率10万分の3以下(10万冊発送してミス品3冊以下)の高品質・高効率物流を実現しています。
これにより、小売店での検品レスを可能にし、経営コストの削減に寄与するとともに、販売機会を確実に掴むことができます。
トーハン上尾
今回のシステム構築にあたっては、すべての商品を同一の品質で取引先へ配送するために「雑誌物流情報センター」を設置しました。
当センターでは、あらゆる発送データを一元管理し、各作業拠点への作業データ割付・配信・実績収集をおこないます。
本システムの特徴として以下があげられます。
・ 環境、業務量変化に柔軟な対応ができるよう発送計画の動的変更が可能
・ 各工程での検品結果を反映した出荷検品により品質向上を図る
・ 各工程の作業進捗監視により遅滞なく作業の効率化を図る
・ 作業実績データの蓄積管理とそれによる各種統計資料で管理レベルの向上を図る
・ 運用管理端末、機器制御端末の統一を図り、全作業拠点で同一の操作性を実現
・ システムの基幹サーバはホットスタンバイ無停止システムとし、ミラーディスクによるデータ保全をおこない高信頼性を実現
・ 各発送機器毎のコンポーネントシステムとし、業務量変動に追従した拡張が容易な構成を実現
・ 各センターを結ぶ広域LAN(WAN)のネットワーク上の機器やトラフィック量を監視し、障害の絞り込みや早期発見を実現
・ 原価管理システムの導入によりローコストオペレーションを志向
雑誌の発送作業は、「束発送」と「バラ発送」の2形態があります。「束発送」は製本所から搬入された結束商品に店舗別の宛名紙を添付・包装し出荷します。「バラ発送」は店舗別に複数の銘柄を必要数ピッキングし宛名紙を添付・包装(詰め合わせ)し出荷します。いずれの発送形態も自動機械設備と人手作業の2種類で構成されています。これは、大量品は規格の統一性があるため自動機対応向きという特性があり生産性・品質の確保という効果があるからです。一方人手作業は、多品種少量品のためスピードと間違いのない発送が必要となります。本システムでは人手作業をおこなった部分は、必ず自動検品システムを経由しミスを発見・修正する仕組み(自動検品システム)を導入したことにより事故率10万分の3を実現しています。
自動機械設備は「束発送ロボット」「バラ自動発送ライン」があります。宛名紙等のライン自動発行を含め最大限ハンドリングの自動化を実現し、2シフトの生産体制を可能としました。人手作業は「束手動発送ライン」「コンベヤ発送ライン」があります。人手作業には、事故があるという前提に立ち、ミスを起こさない・起きたミスを自動で発見できる仕組みとして、自動仕分機・物の流し方・実績管理(事故内容、作業ピッチ)・商品データの管理を統計的に処理することにより、自ずと質の高い作業へ変革することができました。
変化の厳しい現在、消費者ニーズにマッチした出版物を正確に、かつ安価な物流コストで、必要な量を、必要な場所へ、タイムリーに供給することが必要です。
そのためには、「最適な作業指示」「商品の入出荷」「FA(ファクトリ・オートメーション)機器」について、デジタルで目に見える管理が求められます。
当社は、出版流通大手である(株)トーハンの依頼を受け、物流情報システム・情報通信(高信頼性ネットワーク)・FA機器といった基幹要素技術を三位一体のシステムとして構築し、高品質・高効率な雑誌発送システムを開発しました。
雑誌の銘柄数は3400点強あり、日々(株)トーハンから約600万冊に及ぶ膨大な雑誌が25000店以上の取引先に配送されます。
各出版社から製本されてくる雑誌(月刊誌・週刊誌など)が搬入されると、(株)トーハンは、店舗別に、銘柄(アイテム)と部数(冊数)を仕分け、宛名紙を添付後、フィルム包装し、輸送会社に引き渡し、全国の小売店に届けます。
今回の計画は、(株)トーハンが推進している「雑誌サプライチェーンマネジメント(SCM)」の中の雑誌発送改革です。
すでに稼働している雑誌返品システム・雑誌配本システムと融合し、出版業界全体の売上の増大と返品の減少に大きく貢献します。
雑誌発送改革では、最新鋭の物流情報システムの導入により品質の管理を徹底し、事故率10万分の3以下(10万冊発送してミス品3冊以下)の高品質・高効率物流を実現しています。
これにより、小売店での検品レスを可能にし、経営コストの削減に寄与するとともに、販売機会を確実に掴むことができます。
トーハン上尾
今回のシステム構築にあたっては、すべての商品を同一の品質で取引先へ配送するために「雑誌物流情報センター」を設置しました。
当センターでは、あらゆる発送データを一元管理し、各作業拠点への作業データ割付・配信・実績収集をおこないます。
本システムの特徴として以下があげられます。
・ 環境、業務量変化に柔軟な対応ができるよう発送計画の動的変更が可能
・ 各工程での検品結果を反映した出荷検品により品質向上を図る
・ 各工程の作業進捗監視により遅滞なく作業の効率化を図る
・ 作業実績データの蓄積管理とそれによる各種統計資料で管理レベルの向上を図る
・ 運用管理端末、機器制御端末の統一を図り、全作業拠点で同一の操作性を実現
・ システムの基幹サーバはホットスタンバイ無停止システムとし、ミラーディスクによるデータ保全をおこない高信頼性を実現
・ 各発送機器毎のコンポーネントシステムとし、業務量変動に追従した拡張が容易な構成を実現
・ 各センターを結ぶ広域LAN(WAN)のネットワーク上の機器やトラフィック量を監視し、障害の絞り込みや早期発見を実現
・ 原価管理システムの導入によりローコストオペレーションを志向
雑誌の発送作業は、「束発送」と「バラ発送」の2形態があります。「束発送」は製本所から搬入された結束商品に店舗別の宛名紙を添付・包装し出荷します。「バラ発送」は店舗別に複数の銘柄を必要数ピッキングし宛名紙を添付・包装(詰め合わせ)し出荷します。いずれの発送形態も自動機械設備と人手作業の2種類で構成されています。これは、大量品は規格の統一性があるため自動機対応向きという特性があり生産性・品質の確保という効果があるからです。一方人手作業は、多品種少量品のためスピードと間違いのない発送が必要となります。本システムでは人手作業をおこなった部分は、必ず自動検品システムを経由しミスを発見・修正する仕組み(自動検品システム)を導入したことにより事故率10万分の3を実現しています。
自動機械設備は「束発送ロボット」「バラ自動発送ライン」があります。宛名紙等のライン自動発行を含め最大限ハンドリングの自動化を実現し、2シフトの生産体制を可能としました。人手作業は「束手動発送ライン」「コンベヤ発送ライン」があります。人手作業には、事故があるという前提に立ち、ミスを起こさない・起きたミスを自動で発見できる仕組みとして、自動仕分機・物の流し方・実績管理(事故内容、作業ピッチ)・商品データの管理を統計的に処理することにより、自ずと質の高い作業へ変革することができました。
圧倒的なコストパフォーマンスでBizTalk ServerをEAIシステムに採用
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
セイコーインスツルメンツ株式会社(以下SII)は、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)、CRM(Customer Relationship Management)などの目的で社内に導入されたさまざまなビジネス・アプリケーションを連携させるためのEAI(Enterprise Application Integration)プラットフォームとして、マイクロソフトのBizTalk Server 2000(以下BizTalk Server)の採用を決定した。BizTalk Serverといえば、当初はBtoB(企業間取引)システムを構築するためのソフトウェアとして紹介されることが多かった。このBizTalk Serverを企業内部のアプリケーション連携に応用し、全社的なEAI基盤として導入した背景は何か? EAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverを選択した理由は何なのか? 今回のEAI導入をはじめ、SIIの情報システム体系全体を統括するセイコーインスツルメンツ(株) ストラテジーセンター eマネジメント部長の西田眞生氏、システムを利用するユーザー側からシステム設計に参加された(株)エポリードサービス 小山サービスセンター部長の大石典利氏、実際のシステム構築を担当されたセイコーアイテック(株) 情報システム部 SE四グループ課長の五十嵐善明氏を中心にお話を伺った。
SIIは、世界最大の時計メーカーの1つであるセイコー・グループにおけるウオッチ製造部門が1937年に独立して誕生した(当時の名称は「第二精工舎」)。それからおよそ60年、時計製造を通じて培われた精密技術を基盤として、ウオッチ、電子辞書、腕時計型コンピュータなどを手掛ける「ウェアラブル事業」、研究・開発・生産・検査用の各種精密工業機械を手掛ける「インダストリアル・システム事業」、液晶表示モジュールやCMOS IC、光ファイバ・コネクタなどを手掛ける「ネットワーク・コンポーネント事業」、ストア・オートメーション・システムや無線カード決済システム、携帯電話コンテンツ・サービスなどを手掛ける「e-ソリューション事業」などの多角化を進め、現在では年商2200億円(2000年度実績)、従業員数5400名という規模に成長した。
現在SIIは、社内のあらゆるマネージメント業務のデジタル化を進める「eマネジメント構想」を打ち立て、各種事業の差別化や効率化、社内の情報基盤整備を進めている。SIIではすでに、CRMやSCM、ERPなどのビジネス・アプリケーションを展開・運用している。しかし、ERPなどの情報基盤整備の対象から外れたアプリケーション、例えばSFA(Sales Force Automation)などは現場のニーズに応じて導入され、基本的にそれぞれが独立、または個別に接続されている状況で、各アプリケーションに蓄積された情報全体を簡単に一望する方法がなかった。
そこでSIIは、EAIシステムを構築し、既存の各アプリケーションをこのEAIを通して連携させることで、製品の付加価値向上や、経営層の迅速かつ的確な意思決定を支援するための情報基盤とすることを決定した。そしてSIIは、EAI構築用のシステムとしてマイクロソフトのBizTalk Server 2000を選択した。このEAIシステムに基づくビジネス・アプリケーション連携として、まずはSAP R/3の顧客管理モジュールと、フィールド・エンジニアが使用するWebフロントエンドをBizTalk Serverを基盤として統合化することから始め、将来的には、BizTalk Serverを全社レベルのビジネス・アプリケーション統合基盤として発展させることを決定したという。
並みいるEAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverが選択された理由は何だろうか? そこには、圧倒的なコストパフォーマンスの高さと、信頼できるコンサルティング・サービスがあった。
事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
SIIでは、21世紀に向けた経営戦略(SII21構想)の柱の1つとして「情報技術の活用」を据えている。冒頭の「eマネジメント戦略」は、この経営戦略の一環として打ち出されたもので、従業員を中心とするシステムのユーザーが情報システムを最大限に活用し、その結果を、製品やサービスの付加価値向上に結び付けられるようにすることを目標としている。「『eマネジメント構想』とは、あらゆるマネジメント業務に『e』を付ける、すなわちデジタル化を進め、それを顧客価値や株主価値に昇華させることを目指した構想です。具体的なアクションとしては、事業の差別化や効率化、社内の情報風土革新、情報基盤整備があります」(SII 西田眞生氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント 部長
西田眞生
「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。これを可能にするしくみとして、EAIが注目されるようになりました」
すでにSIIは、業務に必要な複数のビジネス・アプリケーションを展開している。具体的には、販売管理や在庫管理、財務会計などを行うためのERP(SAP R/3)、需要予測や生産計画を立案するためのSCM、顧客情報を管理し市場動向をいち早くつかむためのCRMなどだ。それらを企業全体として有効に活用するには、アプリケーション連携は欠かせないポイントである。「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。部分的にうまく機能させるのは当然として、最終的には、それがシステム全体の総合力として効果をあげなければ意味がありません」(SII 西田眞生氏)
アプリケーション連携の伝統的なアプローチは、必要に応じてその都度アプリケーション間の接続アダプタを開発し、ポイント・ツー・ポイントでの連携を実現する方法である。しかしこのようなアプローチを続けていくと、やがてアプリケーション同士が複雑に接続され、混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。こうなると、運用管理は煩雑さを極め、モジュールとしてのビジネス・アプリケーションに改変を加えることなどが困難になる。
典型的なEAIの構成例
必要に応じて、都度アプリケーションの接続アダプタを開発するという伝統的なアプリケーション連携のアプローチを繰り返していくと、やがて混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。これに対し、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにするのがEAIの代表的な構成例である。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。
各アプリケーションがポイントtoポイントで接続された「スパゲッティ連携」ではなく、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにする。これがEAIの代表的な構成の1つである。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。このためEAI環境では、OSやミドルウェアに依存しない自由なアプリケーション連携が可能で、またアプリケーションの追加や更新が容易になる。
経営者層が迅速・的確なグループ経営の意思決定を行えるようにすること、従業員などのユーザー層が付加価値の高い製品やサービスを創造するために本当に役立つ情報をタイムリーに入手できるようにすること、これを両立するためには、各ビジネス・アプリケーションに分散されている情報に統一的な手段でアクセスする方法が不可欠だと判断し、EAIの構築を決定したという。
顧客の信頼を勝ち取るカギは「情報」
株式会社エポリードサービス
小山サービスセンター 部長
大石典利
「フィールド・サービスでは、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めなければなりません。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です」
EAI構築の手始めとして今回は、ERPソフトウェアであるSAP R/3を使って管理している顧客管理情報と、BEAのWebLogicで構築したWebアプリケーションとをBizTalk Serverを介して連携させ、フィールド・エンジニアに対して作業指示を出し、フィールド・エンジニアが実施した作業内容の情報や、顧客情報を中央に吸い上げるシステムを開発した。これは、主に産業用の分析・計測機器を手掛けるSIIの科学機器事業部の関連企業として、装置の導入やメンテナンスなどを専門に行う(株)エポリードサービスから要求されたものだ((株)エポリードサービスは、SIIの科学機器事業部にあったサービス部が6年前に分社化した会社)。
エポリードサービスでは、3年前よりSAP R/3の顧客管理モジュールを使って顧客管理を行っていたが、フィールド・エンジニアへの作業指示や、実施された作業内容の報告には紙ベースの書類を使い、電話とFAXで連絡を取り合っていた。データ・エントリの労力を割けなかったため、ごく一部の情報(交換した部品に関する情報など)しかSAP R/3側に反映されていなかった。「フィールド・サービスというと、お客さまからのアプローチを待っていればよいと思われるかもしれませんが、それは違います。SIIとお客さまの間で信頼を築き、保守サポートだけでなく、将来の機器販売につなげていくためには、受身で待っているのではなく、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めていかなければなりません。お客様ごとに異なるニーズに応えるという観点から、私たちはお客様を『顧客』ではなく『個客』であると考えています。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です。それには、個々の故障の履歴や部品交換の履歴、定期点検の実施履歴など、あらゆる情報を踏まえたうえでのサポートが必要です。特に故障の連絡では、お客さまは感情的になっている場合が多い。こんなときに情報が錯綜して、同じような問い合わせや報告をお客さまに対して行ったら、信用は完全に失われてしまいます。そのような失敗を起こすことなく、お客さまの信頼を勝ち取るためのツールとして、今回のようなシステムが必要だと以前から考えていました」(エポリードサービス 大石典利氏)
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
2.Webソリューションの必要性
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
単に技術面だけを考えれば、フィールド・エンジニアが公衆回線を使ったリモート・アクセスでサーバに接続し、SAP R/3のデータを直接更新するという方法も可能なようにも思える。しかしメンテナンスなどの具体的な作業指示は、本部側にいるスタッフが判断を下して発行する必要がある。またフィールド・エンジニア(全国で約100名)は社員ばかりでなく、協力会社のエンジニアもおり、セキュリティ上の問題から、ダイヤルアップ接続は利用できなかった。「お客さまから連絡を受けたら、障害などの内容を確認し、必要な場合だけフィールド・エンジニアを派遣することになります。実際、問い合わせのほとんどは、電話対応レベルで解決しています。フィールド・エンジニアを派遣するかどうか、部品交換が必要かどうかなどは、経験豊富なスタッフでなければ判断できません。また社員だけがアクセスするなら、ダイヤルアップでSIIのLANに接続するという手段もあるのですが、協力会社のエンジニアにこれを許すことはできません。ですから、エポリードサービスのスタッフやフィールド・エンジニアに加え、協力会社のエンジニアも参照できるSAP R/3のフロントエンドが必要でした。これには、Webブラウザとインターネットがあればアクセスが可能なWebソリューションが適していると考えました」(エポリードサービス 大石典利氏)
SAP R/3を手始めに、ノーツやSiebelなどの連携も検討
フロントエンドのWebアプリケーションにはWebLogicを使い、これをSAP R/3と連携させることが決定された。こちらも技術的には、WebLogicとSAP R/3を直接接続することが可能であるし、実際は別の案件で、両者の連携を行った実績もあったようだ。しかし今回は、ここにBizTalk Serverを介在させてEAIを構築することになる。「今回構築することになったのはSAP R/3の顧客管理モジュールとWebアプリケーションの連携ですが、将来的には既存のCRMシステム(Siebelを使用)や手順書などのドキュメント管理用として使っているロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」(SII 鈴木真二氏)
圧倒的なコストパフォーマンスの高さでBizTalk Serverを選択
セイコーインスツルメンツ
株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
eポータルグループ 課長
鈴木真二
「今回のSAP R/3とWebアプリケーションの連携をはじめ、将来的には既存のCRMシステムやロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」
いまやEAIは、ビジネス・アプリケーション統合の主要キーワードとなっており、EAI専業メーカーによる製品も数多い。しかも必ずしもEAIシステムとしてはあまりなじみのないBizTalk Serverを選択した理由は何だろうか? 「当然ながら、EAIソフトウェアの選定に当たっては、専業メーカーを含めいくつかの製品を検討しました。これらのEAI製品の特徴は、非常に高機能で、特にメインフレームとの接続性が高く、実績も申し分ないのですが、いかんせん高価だということ。しかしSIIでは、SAP R/3(Hewlett-PackardのHP-UX上で稼働)を導入した段階でメインフレームを撤廃しており、メインフレームとの接続性は重要ではありませんでした。また、すでにSAP R/3と他システムとのアダプタ部分をグループ内で開発した経験があり、EAIシステム側の機能にそれほど依存しなくても連携を実装できそうだと考えました。BizTalk Serverは開発環境も強力で、かつ将来のXML Webサービス対応が明確に打ち出されていること、ほかのEAIシステムと異なり、小規模なレベルから始められて、必要に応じてこれを拡張できる柔軟性を備えていること、システムのベース・アーキテクチャを変更することなく、将来的なプライベート・マーケットプレイスや、ロゼッタネットなどの共通マーケットプレイスにまでを対応できるということ、そして何よりも、EAI専業メーカーのシステムと比較したコストパフォーマンスが圧倒的に高いということがBizTalk Server選択のポイントです。具体的な数値の公表は避けますが、価格差はまさに『けた違い』でした」(SII 鈴木真二氏)
技術評価は2カ月で完了、コンサルティングの協力も得て3カ月でカットオーバーに
結果的に、技術評価に残った候補はBizTalk Serverだけだった。SAP R/3とWebとの連携は以前に開発経験もあったため、BizTalk ServerとSAP R/3との連携も、非常に見通しやすかったという。実際のシステム開発は、SIIグループでSI事業などを手掛けるセイコーアイテック(株)が担当した。「私たちセイコーアイテックでは、以前の案件でSAP R/3とWebシステムとの連携を実現した経験があり、その際に使ったSAP R/3とのインターフェイスをBizTalk Serverとの間でもほぼそのまま使えることが分かっていましたから、見通しはよくききました」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
セイコーアイテック株式会社
情報システム部
SE四グループ
課長
五十嵐善明
「高価格帯のEAIシステムでは、きめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、コンサルティングやサポートを受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」
2001年5月からBizTalk Serverの技術評価を開始し、7月までの2カ月でテストを完了、正式採用を決定した。その後、今回のシステム構築作業が開始されたのは、2001年9月からで、実質3カ月程度で試験運用開始にこぎつけた。今回のシステムでは、フロントエンド側のWebLogicで多くのビジネス・プロセス処理を行っており、BizTalk Server側での多くの処理をパターン化できたこと、そして何より、マイクロソフトのコンサルタントとの共同作業が非常に円滑だったことが早期のカットオーバーを実現したポイントだったという。「SAP R/3とBizTalk Serverとのインターフェイスは開発しましたが、BizTalk Server側のブローカー定義やステータス・モニタの機能はマイクロソフトのコンサルタントが実現してくれました。このためSII側で主に作業したのは、XMLスキーマの設計と、システム連携にかかわる運用監視設計でした」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
「当初は、BizTalk Serverの大きな特徴であるオーケストレーション機能などを使って、接続するアプリケーションごとにそれらを作り込んでいくのかと思ったのですが、マイクロソフトのコンサルタント担当者の提案でそのような構成ではなく、イベント・ドリブンで処理が実行されるような形式にして、データ変換に必要なデータベースのパターンさえプロトコルとして定義すれば、連携が可能になるような構成をとることになりました。こうしたシステムの核心部分で経験豊富なマイクロソフトのコンサルタントの意見を聞くことができ、実際に開発もお願いできたということが、早期のシステム構築を可能にしたのだと思います」(SII 鈴木真二氏)
「先に述べた高価格帯のEAIシステムでは、ある程度アダプタのパッケージ化が進んでいますから、このようにきめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。これはBizTalk Serverそのものの特徴ではありませんが、高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、そうしたコンサルティングやサポートが受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
今回展開されたシステム構成
以下は、今回展開されたシステムの構成である。OSとしてはWindows 2000 Advanced Serverを組み込んだIAサーバを4台用意し、このうち2台にそれぞれBizTalk Server 2000 Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを行い、残る2台にSQL Server 2000 Enterpriseをインストールしてアクティブ-パッシブのクラスタリング構成とした。
今回導入されたBizTalk ServerによるEAIシステムの構成
今回はWindows 2000 Advanced ServerをベースとするIAサーバを4台用意し、このうち2台にBizTalk Server Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを導入した。BizTalk Server用のDBとして、残る2台にSQL Server Enterprise Editionを組み込み、アクティブーパッシブ・タイプのクラスタリング構成とした。
SAP R/3とBizTalk Server、Webアプリケーション・サーバとなるWebLogicとの間のインターフェイスは次のとおりである。
SAP R/3、BizTalk Server、WebLogic間の接続インターフェイス
BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(DCOMインターフェイス)を、逆方向ではFTPを使ってファイルを転送する。
図から分かるとおり、BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk ServerとSAP R/3とのデータ交換では、BizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(BAPI、RFC)を使い、逆にSAP R/3→BizTalk Serverの通信ではFTPを使ってファイルを転送する。
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
システム稼働の様子は次のとおりだ。例えばいま、顧客から電話で障害報告があったとする。これを受けた本社のスタッフは、障害内容を確認し、必要と判断すればフィールド・エンジニアの派遣を決定する。するとスタッフは、Webサーバにアクセスし、その顧客の過去の修理履歴や部品交換履歴などをSAP R/3から取り出して確認したうえ、今回の障害報告から新たな部品交換が必要と判断すれば、その情報を加えて作業指示書を作成してフィールド・エンジニアへの送信を指示する。すると作業指示が発生したことは、フィールド・エンジニアにメールで送信され、フィールド・エンジニアはそのメールを携帯電話で受信する。メールを受信したフィールド・エンジニアは、手持ちのモバイルPCと最寄りのISPを使ってWebサーバにアクセスし、作業指示書(顧客の過去の修理履歴・部品交換履歴・新たな作業指示と部品交換)をPCにダウンロードする。34人のフィールド・エンジニアでテスト運用を開始した段階です。本稼働になれば、1日の作業指示は約50件程度、1カ月あたりで約1000件程度のトランザクションが発生することになる。「本当はオンラインで処理したいところですが、フィールド・エンジニアはネットワークを使えないクリーン・ルームに入ることも多いため、このようなオフラインの形式でも使えるようにしてもらいました」(エポリードサービス 大石典利氏)
セイコーアイテック 情報センタに設置された今回のサーバ
今回導入されたサーバは、安全対策認定事業所であるセイコーアイテックの情報センタに設置された。
フィールド・エンジニアに送られる作業指示書には、SAP R/3 顧客管理モジュールに記録された過去の履歴情報がすべて含まれる。その顧客から過去にどのような問い合わせがあったのか、どのような修理を行ったのかなどがすぐに分かるようになっている。顧客先での作業が完了したら、作業報告書をモバイルPCで作成し、画面上で顧客に内容を承認してもらい、再度Webに接続して報告書を本社側に送る。また、装置の状態や顧客の意見、要望などは、顧客情報シートとして、作業完了後、作業報告と同様にWebサーバから本社に送られる。「当初は小型のタブレットでも持参して、サインもデジタル・データとしてもらうという話もあったのですが、あまり現実的ではないのでこのような形式にしました。業務を簡便にするために画面上で承認してもらっていますが、どうしてもサインが必要な場合には、FAXに作業確認のサインをもらいます。将来的には、電子承認システムを導入するつもりです」(エポリードサービス 大石典利氏)
Webサーバ側にアップロードされたデータは、スタッフのチェックを受けてから、リーダーの操作によってSAP R/3に反映される。「フィールド・エンジニアが直接SAP R/3にデータを反映させることはできません。作業にかかった時間や、交換した部品を丸々お客さまに請求できるとは限りません。弊社側の責任で発生した作業や部品交換などもあり得るからです。この点をリーダーが確認して、データがSAP R/3に反映され、作業報告情報が次の請求業務に移されることになります」(エポリードサービス 大石典利氏)
当面の問題は通信速度。高速通信カードの配布で問題を解決
SIIのデータ通信カードRapiraCard
cdmaOneに対応した64kbpsの高速データ通信PCカード。通信エリアはほぼ国内全地域で、データ通信中に電話も使えることから、9600bpsでは厳しいデータ・ダウンロードもPapiraCardならまったく問題はない。
とにかく充実した情報が、ほぼリアルタイムにフィールド・エンジニアやスタッフから参照可能になり、システムのテスト運用は非常に好評だという。ただ1点、不満が多く聞かれるのは通信速度とのことだ。一部のフィールド・エンジニアは、現在でも携帯電話を使った9600bpsのデータ通信を利用しており、これではWebサーバにアクセスしてデータをダウンロードするのに10分から、長いときで40分もかかるときがあるという。「こればかりは高速な通信手段に替えていくしかありません。何かいい方法はないかと探していたら、SIIの高速パケット通信カード(RapiraCard、写真)があるじゃないですか(笑)。これなら通信速度も通信エリアについてもまったく問題ありません。さらに、ダウンロード中でも携帯電話で詳細な点の確認ができます。RapiraCardを全員に配布すべく手配しています」(エポリードサービス 大石典利氏)
eマネジメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverの全面採用を決定
セイコーアイテック株式会社
情報システム部 SE3グループ 係長 渡辺光秀
「現在は事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用していますが、今後はBizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」
今回のプロジェクトの結果から、SIIでは、冒頭で述べたeマネージメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverを採用することを決定した。「SIIでは、ERPソフトウェアをSAP R/3で統一しています。現状は、事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用しています。今後は、BizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」(セイコーアイテック 渡辺光秀氏)
さらにSIIでは、ERPのSAP R/3だけでなく、順次、既存のビジネス・アプリケーションをEAIシステムに対応させていく。「全社的なEAIで基本的に使用するXMLスキーマの大枠は決定しました。後は各業務に向けて、細部を詰めていけばよい状態になっています。かなりのスピードで対応を進められると考えています」(SII 鈴木真二氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
中田光一
「今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」
「ただし、今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」(SII 中田光一氏)
今後の具体的な案件としては、CRMシステムであるSiebelとの接続、プライベートなマーケットプレイスの接続が検討されている。「当初は、あくまでプライベートな販売サイトをマーケットプレイス化してみようと思っています。最終的にはロゼッタネットのような共通マーケットプレイスがあるのですが、電子部品の大手ベンダは、すでにEDIを導入して大量の受発注業務を行っており、これらに移行する必然性はいまのところあまりありません。またSiebelとBizTalk Serverの接続については、すでに技術的なレベルでは、HTTPとXMLで接続できることを確認しています」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
メインフレームなどのレガシー・システムや水平分散型のクライアント/サーバ・システム、最近の潮流であるWebソリューションなど、さまざまなシステムで混とんとなった大企業のエンタープライズ環境において、過去のシステムはできるだけそのままに、データ連携を可能にするしくみとしてEAIが急速に注目を集めている。BizTalk Serverは、強力な開発環境やスケーラビリティ、そして圧倒的なコストパフォーマンスと手厚いコンサルティングを武器に、EAIソリューションを提供するソフトウェアとして新たな関心を呼びそうだ。
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
セイコーインスツルメンツ株式会社(以下SII)は、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)、CRM(Customer Relationship Management)などの目的で社内に導入されたさまざまなビジネス・アプリケーションを連携させるためのEAI(Enterprise Application Integration)プラットフォームとして、マイクロソフトのBizTalk Server 2000(以下BizTalk Server)の採用を決定した。BizTalk Serverといえば、当初はBtoB(企業間取引)システムを構築するためのソフトウェアとして紹介されることが多かった。このBizTalk Serverを企業内部のアプリケーション連携に応用し、全社的なEAI基盤として導入した背景は何か? EAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverを選択した理由は何なのか? 今回のEAI導入をはじめ、SIIの情報システム体系全体を統括するセイコーインスツルメンツ(株) ストラテジーセンター eマネジメント部長の西田眞生氏、システムを利用するユーザー側からシステム設計に参加された(株)エポリードサービス 小山サービスセンター部長の大石典利氏、実際のシステム構築を担当されたセイコーアイテック(株) 情報システム部 SE四グループ課長の五十嵐善明氏を中心にお話を伺った。
SIIは、世界最大の時計メーカーの1つであるセイコー・グループにおけるウオッチ製造部門が1937年に独立して誕生した(当時の名称は「第二精工舎」)。それからおよそ60年、時計製造を通じて培われた精密技術を基盤として、ウオッチ、電子辞書、腕時計型コンピュータなどを手掛ける「ウェアラブル事業」、研究・開発・生産・検査用の各種精密工業機械を手掛ける「インダストリアル・システム事業」、液晶表示モジュールやCMOS IC、光ファイバ・コネクタなどを手掛ける「ネットワーク・コンポーネント事業」、ストア・オートメーション・システムや無線カード決済システム、携帯電話コンテンツ・サービスなどを手掛ける「e-ソリューション事業」などの多角化を進め、現在では年商2200億円(2000年度実績)、従業員数5400名という規模に成長した。
現在SIIは、社内のあらゆるマネージメント業務のデジタル化を進める「eマネジメント構想」を打ち立て、各種事業の差別化や効率化、社内の情報基盤整備を進めている。SIIではすでに、CRMやSCM、ERPなどのビジネス・アプリケーションを展開・運用している。しかし、ERPなどの情報基盤整備の対象から外れたアプリケーション、例えばSFA(Sales Force Automation)などは現場のニーズに応じて導入され、基本的にそれぞれが独立、または個別に接続されている状況で、各アプリケーションに蓄積された情報全体を簡単に一望する方法がなかった。
そこでSIIは、EAIシステムを構築し、既存の各アプリケーションをこのEAIを通して連携させることで、製品の付加価値向上や、経営層の迅速かつ的確な意思決定を支援するための情報基盤とすることを決定した。そしてSIIは、EAI構築用のシステムとしてマイクロソフトのBizTalk Server 2000を選択した。このEAIシステムに基づくビジネス・アプリケーション連携として、まずはSAP R/3の顧客管理モジュールと、フィールド・エンジニアが使用するWebフロントエンドをBizTalk Serverを基盤として統合化することから始め、将来的には、BizTalk Serverを全社レベルのビジネス・アプリケーション統合基盤として発展させることを決定したという。
並みいるEAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverが選択された理由は何だろうか? そこには、圧倒的なコストパフォーマンスの高さと、信頼できるコンサルティング・サービスがあった。
事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
SIIでは、21世紀に向けた経営戦略(SII21構想)の柱の1つとして「情報技術の活用」を据えている。冒頭の「eマネジメント戦略」は、この経営戦略の一環として打ち出されたもので、従業員を中心とするシステムのユーザーが情報システムを最大限に活用し、その結果を、製品やサービスの付加価値向上に結び付けられるようにすることを目標としている。「『eマネジメント構想』とは、あらゆるマネジメント業務に『e』を付ける、すなわちデジタル化を進め、それを顧客価値や株主価値に昇華させることを目指した構想です。具体的なアクションとしては、事業の差別化や効率化、社内の情報風土革新、情報基盤整備があります」(SII 西田眞生氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント 部長
西田眞生
「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。これを可能にするしくみとして、EAIが注目されるようになりました」
すでにSIIは、業務に必要な複数のビジネス・アプリケーションを展開している。具体的には、販売管理や在庫管理、財務会計などを行うためのERP(SAP R/3)、需要予測や生産計画を立案するためのSCM、顧客情報を管理し市場動向をいち早くつかむためのCRMなどだ。それらを企業全体として有効に活用するには、アプリケーション連携は欠かせないポイントである。「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。部分的にうまく機能させるのは当然として、最終的には、それがシステム全体の総合力として効果をあげなければ意味がありません」(SII 西田眞生氏)
アプリケーション連携の伝統的なアプローチは、必要に応じてその都度アプリケーション間の接続アダプタを開発し、ポイント・ツー・ポイントでの連携を実現する方法である。しかしこのようなアプローチを続けていくと、やがてアプリケーション同士が複雑に接続され、混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。こうなると、運用管理は煩雑さを極め、モジュールとしてのビジネス・アプリケーションに改変を加えることなどが困難になる。
典型的なEAIの構成例
必要に応じて、都度アプリケーションの接続アダプタを開発するという伝統的なアプリケーション連携のアプローチを繰り返していくと、やがて混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。これに対し、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにするのがEAIの代表的な構成例である。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。
各アプリケーションがポイントtoポイントで接続された「スパゲッティ連携」ではなく、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにする。これがEAIの代表的な構成の1つである。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。このためEAI環境では、OSやミドルウェアに依存しない自由なアプリケーション連携が可能で、またアプリケーションの追加や更新が容易になる。
経営者層が迅速・的確なグループ経営の意思決定を行えるようにすること、従業員などのユーザー層が付加価値の高い製品やサービスを創造するために本当に役立つ情報をタイムリーに入手できるようにすること、これを両立するためには、各ビジネス・アプリケーションに分散されている情報に統一的な手段でアクセスする方法が不可欠だと判断し、EAIの構築を決定したという。
顧客の信頼を勝ち取るカギは「情報」
株式会社エポリードサービス
小山サービスセンター 部長
大石典利
「フィールド・サービスでは、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めなければなりません。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です」
EAI構築の手始めとして今回は、ERPソフトウェアであるSAP R/3を使って管理している顧客管理情報と、BEAのWebLogicで構築したWebアプリケーションとをBizTalk Serverを介して連携させ、フィールド・エンジニアに対して作業指示を出し、フィールド・エンジニアが実施した作業内容の情報や、顧客情報を中央に吸い上げるシステムを開発した。これは、主に産業用の分析・計測機器を手掛けるSIIの科学機器事業部の関連企業として、装置の導入やメンテナンスなどを専門に行う(株)エポリードサービスから要求されたものだ((株)エポリードサービスは、SIIの科学機器事業部にあったサービス部が6年前に分社化した会社)。
エポリードサービスでは、3年前よりSAP R/3の顧客管理モジュールを使って顧客管理を行っていたが、フィールド・エンジニアへの作業指示や、実施された作業内容の報告には紙ベースの書類を使い、電話とFAXで連絡を取り合っていた。データ・エントリの労力を割けなかったため、ごく一部の情報(交換した部品に関する情報など)しかSAP R/3側に反映されていなかった。「フィールド・サービスというと、お客さまからのアプローチを待っていればよいと思われるかもしれませんが、それは違います。SIIとお客さまの間で信頼を築き、保守サポートだけでなく、将来の機器販売につなげていくためには、受身で待っているのではなく、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めていかなければなりません。お客様ごとに異なるニーズに応えるという観点から、私たちはお客様を『顧客』ではなく『個客』であると考えています。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です。それには、個々の故障の履歴や部品交換の履歴、定期点検の実施履歴など、あらゆる情報を踏まえたうえでのサポートが必要です。特に故障の連絡では、お客さまは感情的になっている場合が多い。こんなときに情報が錯綜して、同じような問い合わせや報告をお客さまに対して行ったら、信用は完全に失われてしまいます。そのような失敗を起こすことなく、お客さまの信頼を勝ち取るためのツールとして、今回のようなシステムが必要だと以前から考えていました」(エポリードサービス 大石典利氏)
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
2.Webソリューションの必要性
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
単に技術面だけを考えれば、フィールド・エンジニアが公衆回線を使ったリモート・アクセスでサーバに接続し、SAP R/3のデータを直接更新するという方法も可能なようにも思える。しかしメンテナンスなどの具体的な作業指示は、本部側にいるスタッフが判断を下して発行する必要がある。またフィールド・エンジニア(全国で約100名)は社員ばかりでなく、協力会社のエンジニアもおり、セキュリティ上の問題から、ダイヤルアップ接続は利用できなかった。「お客さまから連絡を受けたら、障害などの内容を確認し、必要な場合だけフィールド・エンジニアを派遣することになります。実際、問い合わせのほとんどは、電話対応レベルで解決しています。フィールド・エンジニアを派遣するかどうか、部品交換が必要かどうかなどは、経験豊富なスタッフでなければ判断できません。また社員だけがアクセスするなら、ダイヤルアップでSIIのLANに接続するという手段もあるのですが、協力会社のエンジニアにこれを許すことはできません。ですから、エポリードサービスのスタッフやフィールド・エンジニアに加え、協力会社のエンジニアも参照できるSAP R/3のフロントエンドが必要でした。これには、Webブラウザとインターネットがあればアクセスが可能なWebソリューションが適していると考えました」(エポリードサービス 大石典利氏)
SAP R/3を手始めに、ノーツやSiebelなどの連携も検討
フロントエンドのWebアプリケーションにはWebLogicを使い、これをSAP R/3と連携させることが決定された。こちらも技術的には、WebLogicとSAP R/3を直接接続することが可能であるし、実際は別の案件で、両者の連携を行った実績もあったようだ。しかし今回は、ここにBizTalk Serverを介在させてEAIを構築することになる。「今回構築することになったのはSAP R/3の顧客管理モジュールとWebアプリケーションの連携ですが、将来的には既存のCRMシステム(Siebelを使用)や手順書などのドキュメント管理用として使っているロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」(SII 鈴木真二氏)
圧倒的なコストパフォーマンスの高さでBizTalk Serverを選択
セイコーインスツルメンツ
株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
eポータルグループ 課長
鈴木真二
「今回のSAP R/3とWebアプリケーションの連携をはじめ、将来的には既存のCRMシステムやロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」
いまやEAIは、ビジネス・アプリケーション統合の主要キーワードとなっており、EAI専業メーカーによる製品も数多い。しかも必ずしもEAIシステムとしてはあまりなじみのないBizTalk Serverを選択した理由は何だろうか? 「当然ながら、EAIソフトウェアの選定に当たっては、専業メーカーを含めいくつかの製品を検討しました。これらのEAI製品の特徴は、非常に高機能で、特にメインフレームとの接続性が高く、実績も申し分ないのですが、いかんせん高価だということ。しかしSIIでは、SAP R/3(Hewlett-PackardのHP-UX上で稼働)を導入した段階でメインフレームを撤廃しており、メインフレームとの接続性は重要ではありませんでした。また、すでにSAP R/3と他システムとのアダプタ部分をグループ内で開発した経験があり、EAIシステム側の機能にそれほど依存しなくても連携を実装できそうだと考えました。BizTalk Serverは開発環境も強力で、かつ将来のXML Webサービス対応が明確に打ち出されていること、ほかのEAIシステムと異なり、小規模なレベルから始められて、必要に応じてこれを拡張できる柔軟性を備えていること、システムのベース・アーキテクチャを変更することなく、将来的なプライベート・マーケットプレイスや、ロゼッタネットなどの共通マーケットプレイスにまでを対応できるということ、そして何よりも、EAI専業メーカーのシステムと比較したコストパフォーマンスが圧倒的に高いということがBizTalk Server選択のポイントです。具体的な数値の公表は避けますが、価格差はまさに『けた違い』でした」(SII 鈴木真二氏)
技術評価は2カ月で完了、コンサルティングの協力も得て3カ月でカットオーバーに
結果的に、技術評価に残った候補はBizTalk Serverだけだった。SAP R/3とWebとの連携は以前に開発経験もあったため、BizTalk ServerとSAP R/3との連携も、非常に見通しやすかったという。実際のシステム開発は、SIIグループでSI事業などを手掛けるセイコーアイテック(株)が担当した。「私たちセイコーアイテックでは、以前の案件でSAP R/3とWebシステムとの連携を実現した経験があり、その際に使ったSAP R/3とのインターフェイスをBizTalk Serverとの間でもほぼそのまま使えることが分かっていましたから、見通しはよくききました」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
セイコーアイテック株式会社
情報システム部
SE四グループ
課長
五十嵐善明
「高価格帯のEAIシステムでは、きめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、コンサルティングやサポートを受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」
2001年5月からBizTalk Serverの技術評価を開始し、7月までの2カ月でテストを完了、正式採用を決定した。その後、今回のシステム構築作業が開始されたのは、2001年9月からで、実質3カ月程度で試験運用開始にこぎつけた。今回のシステムでは、フロントエンド側のWebLogicで多くのビジネス・プロセス処理を行っており、BizTalk Server側での多くの処理をパターン化できたこと、そして何より、マイクロソフトのコンサルタントとの共同作業が非常に円滑だったことが早期のカットオーバーを実現したポイントだったという。「SAP R/3とBizTalk Serverとのインターフェイスは開発しましたが、BizTalk Server側のブローカー定義やステータス・モニタの機能はマイクロソフトのコンサルタントが実現してくれました。このためSII側で主に作業したのは、XMLスキーマの設計と、システム連携にかかわる運用監視設計でした」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
「当初は、BizTalk Serverの大きな特徴であるオーケストレーション機能などを使って、接続するアプリケーションごとにそれらを作り込んでいくのかと思ったのですが、マイクロソフトのコンサルタント担当者の提案でそのような構成ではなく、イベント・ドリブンで処理が実行されるような形式にして、データ変換に必要なデータベースのパターンさえプロトコルとして定義すれば、連携が可能になるような構成をとることになりました。こうしたシステムの核心部分で経験豊富なマイクロソフトのコンサルタントの意見を聞くことができ、実際に開発もお願いできたということが、早期のシステム構築を可能にしたのだと思います」(SII 鈴木真二氏)
「先に述べた高価格帯のEAIシステムでは、ある程度アダプタのパッケージ化が進んでいますから、このようにきめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。これはBizTalk Serverそのものの特徴ではありませんが、高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、そうしたコンサルティングやサポートが受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
今回展開されたシステム構成
以下は、今回展開されたシステムの構成である。OSとしてはWindows 2000 Advanced Serverを組み込んだIAサーバを4台用意し、このうち2台にそれぞれBizTalk Server 2000 Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを行い、残る2台にSQL Server 2000 Enterpriseをインストールしてアクティブ-パッシブのクラスタリング構成とした。
今回導入されたBizTalk ServerによるEAIシステムの構成
今回はWindows 2000 Advanced ServerをベースとするIAサーバを4台用意し、このうち2台にBizTalk Server Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを導入した。BizTalk Server用のDBとして、残る2台にSQL Server Enterprise Editionを組み込み、アクティブーパッシブ・タイプのクラスタリング構成とした。
SAP R/3とBizTalk Server、Webアプリケーション・サーバとなるWebLogicとの間のインターフェイスは次のとおりである。
SAP R/3、BizTalk Server、WebLogic間の接続インターフェイス
BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(DCOMインターフェイス)を、逆方向ではFTPを使ってファイルを転送する。
図から分かるとおり、BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk ServerとSAP R/3とのデータ交換では、BizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(BAPI、RFC)を使い、逆にSAP R/3→BizTalk Serverの通信ではFTPを使ってファイルを転送する。
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
--------------------------------------------------------------------------------
システム稼働の様子は次のとおりだ。例えばいま、顧客から電話で障害報告があったとする。これを受けた本社のスタッフは、障害内容を確認し、必要と判断すればフィールド・エンジニアの派遣を決定する。するとスタッフは、Webサーバにアクセスし、その顧客の過去の修理履歴や部品交換履歴などをSAP R/3から取り出して確認したうえ、今回の障害報告から新たな部品交換が必要と判断すれば、その情報を加えて作業指示書を作成してフィールド・エンジニアへの送信を指示する。すると作業指示が発生したことは、フィールド・エンジニアにメールで送信され、フィールド・エンジニアはそのメールを携帯電話で受信する。メールを受信したフィールド・エンジニアは、手持ちのモバイルPCと最寄りのISPを使ってWebサーバにアクセスし、作業指示書(顧客の過去の修理履歴・部品交換履歴・新たな作業指示と部品交換)をPCにダウンロードする。34人のフィールド・エンジニアでテスト運用を開始した段階です。本稼働になれば、1日の作業指示は約50件程度、1カ月あたりで約1000件程度のトランザクションが発生することになる。「本当はオンラインで処理したいところですが、フィールド・エンジニアはネットワークを使えないクリーン・ルームに入ることも多いため、このようなオフラインの形式でも使えるようにしてもらいました」(エポリードサービス 大石典利氏)
セイコーアイテック 情報センタに設置された今回のサーバ
今回導入されたサーバは、安全対策認定事業所であるセイコーアイテックの情報センタに設置された。
フィールド・エンジニアに送られる作業指示書には、SAP R/3 顧客管理モジュールに記録された過去の履歴情報がすべて含まれる。その顧客から過去にどのような問い合わせがあったのか、どのような修理を行ったのかなどがすぐに分かるようになっている。顧客先での作業が完了したら、作業報告書をモバイルPCで作成し、画面上で顧客に内容を承認してもらい、再度Webに接続して報告書を本社側に送る。また、装置の状態や顧客の意見、要望などは、顧客情報シートとして、作業完了後、作業報告と同様にWebサーバから本社に送られる。「当初は小型のタブレットでも持参して、サインもデジタル・データとしてもらうという話もあったのですが、あまり現実的ではないのでこのような形式にしました。業務を簡便にするために画面上で承認してもらっていますが、どうしてもサインが必要な場合には、FAXに作業確認のサインをもらいます。将来的には、電子承認システムを導入するつもりです」(エポリードサービス 大石典利氏)
Webサーバ側にアップロードされたデータは、スタッフのチェックを受けてから、リーダーの操作によってSAP R/3に反映される。「フィールド・エンジニアが直接SAP R/3にデータを反映させることはできません。作業にかかった時間や、交換した部品を丸々お客さまに請求できるとは限りません。弊社側の責任で発生した作業や部品交換などもあり得るからです。この点をリーダーが確認して、データがSAP R/3に反映され、作業報告情報が次の請求業務に移されることになります」(エポリードサービス 大石典利氏)
当面の問題は通信速度。高速通信カードの配布で問題を解決
SIIのデータ通信カードRapiraCard
cdmaOneに対応した64kbpsの高速データ通信PCカード。通信エリアはほぼ国内全地域で、データ通信中に電話も使えることから、9600bpsでは厳しいデータ・ダウンロードもPapiraCardならまったく問題はない。
とにかく充実した情報が、ほぼリアルタイムにフィールド・エンジニアやスタッフから参照可能になり、システムのテスト運用は非常に好評だという。ただ1点、不満が多く聞かれるのは通信速度とのことだ。一部のフィールド・エンジニアは、現在でも携帯電話を使った9600bpsのデータ通信を利用しており、これではWebサーバにアクセスしてデータをダウンロードするのに10分から、長いときで40分もかかるときがあるという。「こればかりは高速な通信手段に替えていくしかありません。何かいい方法はないかと探していたら、SIIの高速パケット通信カード(RapiraCard、写真)があるじゃないですか(笑)。これなら通信速度も通信エリアについてもまったく問題ありません。さらに、ダウンロード中でも携帯電話で詳細な点の確認ができます。RapiraCardを全員に配布すべく手配しています」(エポリードサービス 大石典利氏)
eマネジメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverの全面採用を決定
セイコーアイテック株式会社
情報システム部 SE3グループ 係長 渡辺光秀
「現在は事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用していますが、今後はBizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」
今回のプロジェクトの結果から、SIIでは、冒頭で述べたeマネージメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverを採用することを決定した。「SIIでは、ERPソフトウェアをSAP R/3で統一しています。現状は、事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用しています。今後は、BizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」(セイコーアイテック 渡辺光秀氏)
さらにSIIでは、ERPのSAP R/3だけでなく、順次、既存のビジネス・アプリケーションをEAIシステムに対応させていく。「全社的なEAIで基本的に使用するXMLスキーマの大枠は決定しました。後は各業務に向けて、細部を詰めていけばよい状態になっています。かなりのスピードで対応を進められると考えています」(SII 鈴木真二氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
中田光一
「今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」
「ただし、今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」(SII 中田光一氏)
今後の具体的な案件としては、CRMシステムであるSiebelとの接続、プライベートなマーケットプレイスの接続が検討されている。「当初は、あくまでプライベートな販売サイトをマーケットプレイス化してみようと思っています。最終的にはロゼッタネットのような共通マーケットプレイスがあるのですが、電子部品の大手ベンダは、すでにEDIを導入して大量の受発注業務を行っており、これらに移行する必然性はいまのところあまりありません。またSiebelとBizTalk Serverの接続については、すでに技術的なレベルでは、HTTPとXMLで接続できることを確認しています」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
メインフレームなどのレガシー・システムや水平分散型のクライアント/サーバ・システム、最近の潮流であるWebソリューションなど、さまざまなシステムで混とんとなった大企業のエンタープライズ環境において、過去のシステムはできるだけそのままに、データ連携を可能にするしくみとしてEAIが急速に注目を集めている。BizTalk Serverは、強力な開発環境やスケーラビリティ、そして圧倒的なコストパフォーマンスと手厚いコンサルティングを武器に、EAIソリューションを提供するソフトウェアとして新たな関心を呼びそうだ。