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圧倒的なコストパフォーマンスでBizTalk ServerをEAIシステムに採用
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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セイコーインスツルメンツ株式会社(以下SII)は、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)、CRM(Customer Relationship Management)などの目的で社内に導入されたさまざまなビジネス・アプリケーションを連携させるためのEAI(Enterprise Application Integration)プラットフォームとして、マイクロソフトのBizTalk Server 2000(以下BizTalk Server)の採用を決定した。BizTalk Serverといえば、当初はBtoB(企業間取引)システムを構築するためのソフトウェアとして紹介されることが多かった。このBizTalk Serverを企業内部のアプリケーション連携に応用し、全社的なEAI基盤として導入した背景は何か? EAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverを選択した理由は何なのか? 今回のEAI導入をはじめ、SIIの情報システム体系全体を統括するセイコーインスツルメンツ(株) ストラテジーセンター eマネジメント部長の西田眞生氏、システムを利用するユーザー側からシステム設計に参加された(株)エポリードサービス 小山サービスセンター部長の大石典利氏、実際のシステム構築を担当されたセイコーアイテック(株) 情報システム部 SE四グループ課長の五十嵐善明氏を中心にお話を伺った。
SIIは、世界最大の時計メーカーの1つであるセイコー・グループにおけるウオッチ製造部門が1937年に独立して誕生した(当時の名称は「第二精工舎」)。それからおよそ60年、時計製造を通じて培われた精密技術を基盤として、ウオッチ、電子辞書、腕時計型コンピュータなどを手掛ける「ウェアラブル事業」、研究・開発・生産・検査用の各種精密工業機械を手掛ける「インダストリアル・システム事業」、液晶表示モジュールやCMOS IC、光ファイバ・コネクタなどを手掛ける「ネットワーク・コンポーネント事業」、ストア・オートメーション・システムや無線カード決済システム、携帯電話コンテンツ・サービスなどを手掛ける「e-ソリューション事業」などの多角化を進め、現在では年商2200億円(2000年度実績)、従業員数5400名という規模に成長した。
現在SIIは、社内のあらゆるマネージメント業務のデジタル化を進める「eマネジメント構想」を打ち立て、各種事業の差別化や効率化、社内の情報基盤整備を進めている。SIIではすでに、CRMやSCM、ERPなどのビジネス・アプリケーションを展開・運用している。しかし、ERPなどの情報基盤整備の対象から外れたアプリケーション、例えばSFA(Sales Force Automation)などは現場のニーズに応じて導入され、基本的にそれぞれが独立、または個別に接続されている状況で、各アプリケーションに蓄積された情報全体を簡単に一望する方法がなかった。
そこでSIIは、EAIシステムを構築し、既存の各アプリケーションをこのEAIを通して連携させることで、製品の付加価値向上や、経営層の迅速かつ的確な意思決定を支援するための情報基盤とすることを決定した。そしてSIIは、EAI構築用のシステムとしてマイクロソフトのBizTalk Server 2000を選択した。このEAIシステムに基づくビジネス・アプリケーション連携として、まずはSAP R/3の顧客管理モジュールと、フィールド・エンジニアが使用するWebフロントエンドをBizTalk Serverを基盤として統合化することから始め、将来的には、BizTalk Serverを全社レベルのビジネス・アプリケーション統合基盤として発展させることを決定したという。
並みいるEAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverが選択された理由は何だろうか? そこには、圧倒的なコストパフォーマンスの高さと、信頼できるコンサルティング・サービスがあった。
事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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SIIでは、21世紀に向けた経営戦略(SII21構想)の柱の1つとして「情報技術の活用」を据えている。冒頭の「eマネジメント戦略」は、この経営戦略の一環として打ち出されたもので、従業員を中心とするシステムのユーザーが情報システムを最大限に活用し、その結果を、製品やサービスの付加価値向上に結び付けられるようにすることを目標としている。「『eマネジメント構想』とは、あらゆるマネジメント業務に『e』を付ける、すなわちデジタル化を進め、それを顧客価値や株主価値に昇華させることを目指した構想です。具体的なアクションとしては、事業の差別化や効率化、社内の情報風土革新、情報基盤整備があります」(SII 西田眞生氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント 部長
西田眞生
「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。これを可能にするしくみとして、EAIが注目されるようになりました」
すでにSIIは、業務に必要な複数のビジネス・アプリケーションを展開している。具体的には、販売管理や在庫管理、財務会計などを行うためのERP(SAP R/3)、需要予測や生産計画を立案するためのSCM、顧客情報を管理し市場動向をいち早くつかむためのCRMなどだ。それらを企業全体として有効に活用するには、アプリケーション連携は欠かせないポイントである。「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。部分的にうまく機能させるのは当然として、最終的には、それがシステム全体の総合力として効果をあげなければ意味がありません」(SII 西田眞生氏)
アプリケーション連携の伝統的なアプローチは、必要に応じてその都度アプリケーション間の接続アダプタを開発し、ポイント・ツー・ポイントでの連携を実現する方法である。しかしこのようなアプローチを続けていくと、やがてアプリケーション同士が複雑に接続され、混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。こうなると、運用管理は煩雑さを極め、モジュールとしてのビジネス・アプリケーションに改変を加えることなどが困難になる。
典型的なEAIの構成例
必要に応じて、都度アプリケーションの接続アダプタを開発するという伝統的なアプリケーション連携のアプローチを繰り返していくと、やがて混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。これに対し、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにするのがEAIの代表的な構成例である。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。
各アプリケーションがポイントtoポイントで接続された「スパゲッティ連携」ではなく、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにする。これがEAIの代表的な構成の1つである。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。このためEAI環境では、OSやミドルウェアに依存しない自由なアプリケーション連携が可能で、またアプリケーションの追加や更新が容易になる。
経営者層が迅速・的確なグループ経営の意思決定を行えるようにすること、従業員などのユーザー層が付加価値の高い製品やサービスを創造するために本当に役立つ情報をタイムリーに入手できるようにすること、これを両立するためには、各ビジネス・アプリケーションに分散されている情報に統一的な手段でアクセスする方法が不可欠だと判断し、EAIの構築を決定したという。
顧客の信頼を勝ち取るカギは「情報」
株式会社エポリードサービス
小山サービスセンター 部長
大石典利
「フィールド・サービスでは、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めなければなりません。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です」
EAI構築の手始めとして今回は、ERPソフトウェアであるSAP R/3を使って管理している顧客管理情報と、BEAのWebLogicで構築したWebアプリケーションとをBizTalk Serverを介して連携させ、フィールド・エンジニアに対して作業指示を出し、フィールド・エンジニアが実施した作業内容の情報や、顧客情報を中央に吸い上げるシステムを開発した。これは、主に産業用の分析・計測機器を手掛けるSIIの科学機器事業部の関連企業として、装置の導入やメンテナンスなどを専門に行う(株)エポリードサービスから要求されたものだ((株)エポリードサービスは、SIIの科学機器事業部にあったサービス部が6年前に分社化した会社)。
エポリードサービスでは、3年前よりSAP R/3の顧客管理モジュールを使って顧客管理を行っていたが、フィールド・エンジニアへの作業指示や、実施された作業内容の報告には紙ベースの書類を使い、電話とFAXで連絡を取り合っていた。データ・エントリの労力を割けなかったため、ごく一部の情報(交換した部品に関する情報など)しかSAP R/3側に反映されていなかった。「フィールド・サービスというと、お客さまからのアプローチを待っていればよいと思われるかもしれませんが、それは違います。SIIとお客さまの間で信頼を築き、保守サポートだけでなく、将来の機器販売につなげていくためには、受身で待っているのではなく、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めていかなければなりません。お客様ごとに異なるニーズに応えるという観点から、私たちはお客様を『顧客』ではなく『個客』であると考えています。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です。それには、個々の故障の履歴や部品交換の履歴、定期点検の実施履歴など、あらゆる情報を踏まえたうえでのサポートが必要です。特に故障の連絡では、お客さまは感情的になっている場合が多い。こんなときに情報が錯綜して、同じような問い合わせや報告をお客さまに対して行ったら、信用は完全に失われてしまいます。そのような失敗を起こすことなく、お客さまの信頼を勝ち取るためのツールとして、今回のようなシステムが必要だと以前から考えていました」(エポリードサービス 大石典利氏)
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
2.Webソリューションの必要性
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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単に技術面だけを考えれば、フィールド・エンジニアが公衆回線を使ったリモート・アクセスでサーバに接続し、SAP R/3のデータを直接更新するという方法も可能なようにも思える。しかしメンテナンスなどの具体的な作業指示は、本部側にいるスタッフが判断を下して発行する必要がある。またフィールド・エンジニア(全国で約100名)は社員ばかりでなく、協力会社のエンジニアもおり、セキュリティ上の問題から、ダイヤルアップ接続は利用できなかった。「お客さまから連絡を受けたら、障害などの内容を確認し、必要な場合だけフィールド・エンジニアを派遣することになります。実際、問い合わせのほとんどは、電話対応レベルで解決しています。フィールド・エンジニアを派遣するかどうか、部品交換が必要かどうかなどは、経験豊富なスタッフでなければ判断できません。また社員だけがアクセスするなら、ダイヤルアップでSIIのLANに接続するという手段もあるのですが、協力会社のエンジニアにこれを許すことはできません。ですから、エポリードサービスのスタッフやフィールド・エンジニアに加え、協力会社のエンジニアも参照できるSAP R/3のフロントエンドが必要でした。これには、Webブラウザとインターネットがあればアクセスが可能なWebソリューションが適していると考えました」(エポリードサービス 大石典利氏)
SAP R/3を手始めに、ノーツやSiebelなどの連携も検討
フロントエンドのWebアプリケーションにはWebLogicを使い、これをSAP R/3と連携させることが決定された。こちらも技術的には、WebLogicとSAP R/3を直接接続することが可能であるし、実際は別の案件で、両者の連携を行った実績もあったようだ。しかし今回は、ここにBizTalk Serverを介在させてEAIを構築することになる。「今回構築することになったのはSAP R/3の顧客管理モジュールとWebアプリケーションの連携ですが、将来的には既存のCRMシステム(Siebelを使用)や手順書などのドキュメント管理用として使っているロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」(SII 鈴木真二氏)
圧倒的なコストパフォーマンスの高さでBizTalk Serverを選択
セイコーインスツルメンツ
株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
eポータルグループ 課長
鈴木真二
「今回のSAP R/3とWebアプリケーションの連携をはじめ、将来的には既存のCRMシステムやロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」
いまやEAIは、ビジネス・アプリケーション統合の主要キーワードとなっており、EAI専業メーカーによる製品も数多い。しかも必ずしもEAIシステムとしてはあまりなじみのないBizTalk Serverを選択した理由は何だろうか? 「当然ながら、EAIソフトウェアの選定に当たっては、専業メーカーを含めいくつかの製品を検討しました。これらのEAI製品の特徴は、非常に高機能で、特にメインフレームとの接続性が高く、実績も申し分ないのですが、いかんせん高価だということ。しかしSIIでは、SAP R/3(Hewlett-PackardのHP-UX上で稼働)を導入した段階でメインフレームを撤廃しており、メインフレームとの接続性は重要ではありませんでした。また、すでにSAP R/3と他システムとのアダプタ部分をグループ内で開発した経験があり、EAIシステム側の機能にそれほど依存しなくても連携を実装できそうだと考えました。BizTalk Serverは開発環境も強力で、かつ将来のXML Webサービス対応が明確に打ち出されていること、ほかのEAIシステムと異なり、小規模なレベルから始められて、必要に応じてこれを拡張できる柔軟性を備えていること、システムのベース・アーキテクチャを変更することなく、将来的なプライベート・マーケットプレイスや、ロゼッタネットなどの共通マーケットプレイスにまでを対応できるということ、そして何よりも、EAI専業メーカーのシステムと比較したコストパフォーマンスが圧倒的に高いということがBizTalk Server選択のポイントです。具体的な数値の公表は避けますが、価格差はまさに『けた違い』でした」(SII 鈴木真二氏)
技術評価は2カ月で完了、コンサルティングの協力も得て3カ月でカットオーバーに
結果的に、技術評価に残った候補はBizTalk Serverだけだった。SAP R/3とWebとの連携は以前に開発経験もあったため、BizTalk ServerとSAP R/3との連携も、非常に見通しやすかったという。実際のシステム開発は、SIIグループでSI事業などを手掛けるセイコーアイテック(株)が担当した。「私たちセイコーアイテックでは、以前の案件でSAP R/3とWebシステムとの連携を実現した経験があり、その際に使ったSAP R/3とのインターフェイスをBizTalk Serverとの間でもほぼそのまま使えることが分かっていましたから、見通しはよくききました」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
セイコーアイテック株式会社
情報システム部
SE四グループ
課長
五十嵐善明
「高価格帯のEAIシステムでは、きめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、コンサルティングやサポートを受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」
2001年5月からBizTalk Serverの技術評価を開始し、7月までの2カ月でテストを完了、正式採用を決定した。その後、今回のシステム構築作業が開始されたのは、2001年9月からで、実質3カ月程度で試験運用開始にこぎつけた。今回のシステムでは、フロントエンド側のWebLogicで多くのビジネス・プロセス処理を行っており、BizTalk Server側での多くの処理をパターン化できたこと、そして何より、マイクロソフトのコンサルタントとの共同作業が非常に円滑だったことが早期のカットオーバーを実現したポイントだったという。「SAP R/3とBizTalk Serverとのインターフェイスは開発しましたが、BizTalk Server側のブローカー定義やステータス・モニタの機能はマイクロソフトのコンサルタントが実現してくれました。このためSII側で主に作業したのは、XMLスキーマの設計と、システム連携にかかわる運用監視設計でした」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
「当初は、BizTalk Serverの大きな特徴であるオーケストレーション機能などを使って、接続するアプリケーションごとにそれらを作り込んでいくのかと思ったのですが、マイクロソフトのコンサルタント担当者の提案でそのような構成ではなく、イベント・ドリブンで処理が実行されるような形式にして、データ変換に必要なデータベースのパターンさえプロトコルとして定義すれば、連携が可能になるような構成をとることになりました。こうしたシステムの核心部分で経験豊富なマイクロソフトのコンサルタントの意見を聞くことができ、実際に開発もお願いできたということが、早期のシステム構築を可能にしたのだと思います」(SII 鈴木真二氏)
「先に述べた高価格帯のEAIシステムでは、ある程度アダプタのパッケージ化が進んでいますから、このようにきめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。これはBizTalk Serverそのものの特徴ではありませんが、高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、そうしたコンサルティングやサポートが受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
今回展開されたシステム構成
以下は、今回展開されたシステムの構成である。OSとしてはWindows 2000 Advanced Serverを組み込んだIAサーバを4台用意し、このうち2台にそれぞれBizTalk Server 2000 Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを行い、残る2台にSQL Server 2000 Enterpriseをインストールしてアクティブ-パッシブのクラスタリング構成とした。
今回導入されたBizTalk ServerによるEAIシステムの構成
今回はWindows 2000 Advanced ServerをベースとするIAサーバを4台用意し、このうち2台にBizTalk Server Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを導入した。BizTalk Server用のDBとして、残る2台にSQL Server Enterprise Editionを組み込み、アクティブーパッシブ・タイプのクラスタリング構成とした。
SAP R/3とBizTalk Server、Webアプリケーション・サーバとなるWebLogicとの間のインターフェイスは次のとおりである。
SAP R/3、BizTalk Server、WebLogic間の接続インターフェイス
BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(DCOMインターフェイス)を、逆方向ではFTPを使ってファイルを転送する。
図から分かるとおり、BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk ServerとSAP R/3とのデータ交換では、BizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(BAPI、RFC)を使い、逆にSAP R/3→BizTalk Serverの通信ではFTPを使ってファイルを転送する。
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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システム稼働の様子は次のとおりだ。例えばいま、顧客から電話で障害報告があったとする。これを受けた本社のスタッフは、障害内容を確認し、必要と判断すればフィールド・エンジニアの派遣を決定する。するとスタッフは、Webサーバにアクセスし、その顧客の過去の修理履歴や部品交換履歴などをSAP R/3から取り出して確認したうえ、今回の障害報告から新たな部品交換が必要と判断すれば、その情報を加えて作業指示書を作成してフィールド・エンジニアへの送信を指示する。すると作業指示が発生したことは、フィールド・エンジニアにメールで送信され、フィールド・エンジニアはそのメールを携帯電話で受信する。メールを受信したフィールド・エンジニアは、手持ちのモバイルPCと最寄りのISPを使ってWebサーバにアクセスし、作業指示書(顧客の過去の修理履歴・部品交換履歴・新たな作業指示と部品交換)をPCにダウンロードする。34人のフィールド・エンジニアでテスト運用を開始した段階です。本稼働になれば、1日の作業指示は約50件程度、1カ月あたりで約1000件程度のトランザクションが発生することになる。「本当はオンラインで処理したいところですが、フィールド・エンジニアはネットワークを使えないクリーン・ルームに入ることも多いため、このようなオフラインの形式でも使えるようにしてもらいました」(エポリードサービス 大石典利氏)
セイコーアイテック 情報センタに設置された今回のサーバ
今回導入されたサーバは、安全対策認定事業所であるセイコーアイテックの情報センタに設置された。
フィールド・エンジニアに送られる作業指示書には、SAP R/3 顧客管理モジュールに記録された過去の履歴情報がすべて含まれる。その顧客から過去にどのような問い合わせがあったのか、どのような修理を行ったのかなどがすぐに分かるようになっている。顧客先での作業が完了したら、作業報告書をモバイルPCで作成し、画面上で顧客に内容を承認してもらい、再度Webに接続して報告書を本社側に送る。また、装置の状態や顧客の意見、要望などは、顧客情報シートとして、作業完了後、作業報告と同様にWebサーバから本社に送られる。「当初は小型のタブレットでも持参して、サインもデジタル・データとしてもらうという話もあったのですが、あまり現実的ではないのでこのような形式にしました。業務を簡便にするために画面上で承認してもらっていますが、どうしてもサインが必要な場合には、FAXに作業確認のサインをもらいます。将来的には、電子承認システムを導入するつもりです」(エポリードサービス 大石典利氏)
Webサーバ側にアップロードされたデータは、スタッフのチェックを受けてから、リーダーの操作によってSAP R/3に反映される。「フィールド・エンジニアが直接SAP R/3にデータを反映させることはできません。作業にかかった時間や、交換した部品を丸々お客さまに請求できるとは限りません。弊社側の責任で発生した作業や部品交換などもあり得るからです。この点をリーダーが確認して、データがSAP R/3に反映され、作業報告情報が次の請求業務に移されることになります」(エポリードサービス 大石典利氏)
当面の問題は通信速度。高速通信カードの配布で問題を解決
SIIのデータ通信カードRapiraCard
cdmaOneに対応した64kbpsの高速データ通信PCカード。通信エリアはほぼ国内全地域で、データ通信中に電話も使えることから、9600bpsでは厳しいデータ・ダウンロードもPapiraCardならまったく問題はない。
とにかく充実した情報が、ほぼリアルタイムにフィールド・エンジニアやスタッフから参照可能になり、システムのテスト運用は非常に好評だという。ただ1点、不満が多く聞かれるのは通信速度とのことだ。一部のフィールド・エンジニアは、現在でも携帯電話を使った9600bpsのデータ通信を利用しており、これではWebサーバにアクセスしてデータをダウンロードするのに10分から、長いときで40分もかかるときがあるという。「こればかりは高速な通信手段に替えていくしかありません。何かいい方法はないかと探していたら、SIIの高速パケット通信カード(RapiraCard、写真)があるじゃないですか(笑)。これなら通信速度も通信エリアについてもまったく問題ありません。さらに、ダウンロード中でも携帯電話で詳細な点の確認ができます。RapiraCardを全員に配布すべく手配しています」(エポリードサービス 大石典利氏)
eマネジメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverの全面採用を決定
セイコーアイテック株式会社
情報システム部 SE3グループ 係長 渡辺光秀
「現在は事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用していますが、今後はBizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」
今回のプロジェクトの結果から、SIIでは、冒頭で述べたeマネージメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverを採用することを決定した。「SIIでは、ERPソフトウェアをSAP R/3で統一しています。現状は、事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用しています。今後は、BizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」(セイコーアイテック 渡辺光秀氏)
さらにSIIでは、ERPのSAP R/3だけでなく、順次、既存のビジネス・アプリケーションをEAIシステムに対応させていく。「全社的なEAIで基本的に使用するXMLスキーマの大枠は決定しました。後は各業務に向けて、細部を詰めていけばよい状態になっています。かなりのスピードで対応を進められると考えています」(SII 鈴木真二氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
中田光一
「今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」
「ただし、今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」(SII 中田光一氏)
今後の具体的な案件としては、CRMシステムであるSiebelとの接続、プライベートなマーケットプレイスの接続が検討されている。「当初は、あくまでプライベートな販売サイトをマーケットプレイス化してみようと思っています。最終的にはロゼッタネットのような共通マーケットプレイスがあるのですが、電子部品の大手ベンダは、すでにEDIを導入して大量の受発注業務を行っており、これらに移行する必然性はいまのところあまりありません。またSiebelとBizTalk Serverの接続については、すでに技術的なレベルでは、HTTPとXMLで接続できることを確認しています」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
メインフレームなどのレガシー・システムや水平分散型のクライアント/サーバ・システム、最近の潮流であるWebソリューションなど、さまざまなシステムで混とんとなった大企業のエンタープライズ環境において、過去のシステムはできるだけそのままに、データ連携を可能にするしくみとしてEAIが急速に注目を集めている。BizTalk Serverは、強力な開発環境やスケーラビリティ、そして圧倒的なコストパフォーマンスと手厚いコンサルティングを武器に、EAIソリューションを提供するソフトウェアとして新たな関心を呼びそうだ。
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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セイコーインスツルメンツ株式会社(以下SII)は、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)、CRM(Customer Relationship Management)などの目的で社内に導入されたさまざまなビジネス・アプリケーションを連携させるためのEAI(Enterprise Application Integration)プラットフォームとして、マイクロソフトのBizTalk Server 2000(以下BizTalk Server)の採用を決定した。BizTalk Serverといえば、当初はBtoB(企業間取引)システムを構築するためのソフトウェアとして紹介されることが多かった。このBizTalk Serverを企業内部のアプリケーション連携に応用し、全社的なEAI基盤として導入した背景は何か? EAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverを選択した理由は何なのか? 今回のEAI導入をはじめ、SIIの情報システム体系全体を統括するセイコーインスツルメンツ(株) ストラテジーセンター eマネジメント部長の西田眞生氏、システムを利用するユーザー側からシステム設計に参加された(株)エポリードサービス 小山サービスセンター部長の大石典利氏、実際のシステム構築を担当されたセイコーアイテック(株) 情報システム部 SE四グループ課長の五十嵐善明氏を中心にお話を伺った。
SIIは、世界最大の時計メーカーの1つであるセイコー・グループにおけるウオッチ製造部門が1937年に独立して誕生した(当時の名称は「第二精工舎」)。それからおよそ60年、時計製造を通じて培われた精密技術を基盤として、ウオッチ、電子辞書、腕時計型コンピュータなどを手掛ける「ウェアラブル事業」、研究・開発・生産・検査用の各種精密工業機械を手掛ける「インダストリアル・システム事業」、液晶表示モジュールやCMOS IC、光ファイバ・コネクタなどを手掛ける「ネットワーク・コンポーネント事業」、ストア・オートメーション・システムや無線カード決済システム、携帯電話コンテンツ・サービスなどを手掛ける「e-ソリューション事業」などの多角化を進め、現在では年商2200億円(2000年度実績)、従業員数5400名という規模に成長した。
現在SIIは、社内のあらゆるマネージメント業務のデジタル化を進める「eマネジメント構想」を打ち立て、各種事業の差別化や効率化、社内の情報基盤整備を進めている。SIIではすでに、CRMやSCM、ERPなどのビジネス・アプリケーションを展開・運用している。しかし、ERPなどの情報基盤整備の対象から外れたアプリケーション、例えばSFA(Sales Force Automation)などは現場のニーズに応じて導入され、基本的にそれぞれが独立、または個別に接続されている状況で、各アプリケーションに蓄積された情報全体を簡単に一望する方法がなかった。
そこでSIIは、EAIシステムを構築し、既存の各アプリケーションをこのEAIを通して連携させることで、製品の付加価値向上や、経営層の迅速かつ的確な意思決定を支援するための情報基盤とすることを決定した。そしてSIIは、EAI構築用のシステムとしてマイクロソフトのBizTalk Server 2000を選択した。このEAIシステムに基づくビジネス・アプリケーション連携として、まずはSAP R/3の顧客管理モジュールと、フィールド・エンジニアが使用するWebフロントエンドをBizTalk Serverを基盤として統合化することから始め、将来的には、BizTalk Serverを全社レベルのビジネス・アプリケーション統合基盤として発展させることを決定したという。
並みいるEAI専業メーカーの製品ではなく、BizTalk Serverが選択された理由は何だろうか? そこには、圧倒的なコストパフォーマンスの高さと、信頼できるコンサルティング・サービスがあった。
事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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SIIでは、21世紀に向けた経営戦略(SII21構想)の柱の1つとして「情報技術の活用」を据えている。冒頭の「eマネジメント戦略」は、この経営戦略の一環として打ち出されたもので、従業員を中心とするシステムのユーザーが情報システムを最大限に活用し、その結果を、製品やサービスの付加価値向上に結び付けられるようにすることを目標としている。「『eマネジメント構想』とは、あらゆるマネジメント業務に『e』を付ける、すなわちデジタル化を進め、それを顧客価値や株主価値に昇華させることを目指した構想です。具体的なアクションとしては、事業の差別化や効率化、社内の情報風土革新、情報基盤整備があります」(SII 西田眞生氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント 部長
西田眞生
「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。これを可能にするしくみとして、EAIが注目されるようになりました」
すでにSIIは、業務に必要な複数のビジネス・アプリケーションを展開している。具体的には、販売管理や在庫管理、財務会計などを行うためのERP(SAP R/3)、需要予測や生産計画を立案するためのSCM、顧客情報を管理し市場動向をいち早くつかむためのCRMなどだ。それらを企業全体として有効に活用するには、アプリケーション連携は欠かせないポイントである。「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。部分的にうまく機能させるのは当然として、最終的には、それがシステム全体の総合力として効果をあげなければ意味がありません」(SII 西田眞生氏)
アプリケーション連携の伝統的なアプローチは、必要に応じてその都度アプリケーション間の接続アダプタを開発し、ポイント・ツー・ポイントでの連携を実現する方法である。しかしこのようなアプローチを続けていくと、やがてアプリケーション同士が複雑に接続され、混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。こうなると、運用管理は煩雑さを極め、モジュールとしてのビジネス・アプリケーションに改変を加えることなどが困難になる。
典型的なEAIの構成例
必要に応じて、都度アプリケーションの接続アダプタを開発するという伝統的なアプリケーション連携のアプローチを繰り返していくと、やがて混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。これに対し、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにするのがEAIの代表的な構成例である。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。
各アプリケーションがポイントtoポイントで接続された「スパゲッティ連携」ではなく、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにする。これがEAIの代表的な構成の1つである。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。このためEAI環境では、OSやミドルウェアに依存しない自由なアプリケーション連携が可能で、またアプリケーションの追加や更新が容易になる。
経営者層が迅速・的確なグループ経営の意思決定を行えるようにすること、従業員などのユーザー層が付加価値の高い製品やサービスを創造するために本当に役立つ情報をタイムリーに入手できるようにすること、これを両立するためには、各ビジネス・アプリケーションに分散されている情報に統一的な手段でアクセスする方法が不可欠だと判断し、EAIの構築を決定したという。
顧客の信頼を勝ち取るカギは「情報」
株式会社エポリードサービス
小山サービスセンター 部長
大石典利
「フィールド・サービスでは、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めなければなりません。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です」
EAI構築の手始めとして今回は、ERPソフトウェアであるSAP R/3を使って管理している顧客管理情報と、BEAのWebLogicで構築したWebアプリケーションとをBizTalk Serverを介して連携させ、フィールド・エンジニアに対して作業指示を出し、フィールド・エンジニアが実施した作業内容の情報や、顧客情報を中央に吸い上げるシステムを開発した。これは、主に産業用の分析・計測機器を手掛けるSIIの科学機器事業部の関連企業として、装置の導入やメンテナンスなどを専門に行う(株)エポリードサービスから要求されたものだ((株)エポリードサービスは、SIIの科学機器事業部にあったサービス部が6年前に分社化した会社)。
エポリードサービスでは、3年前よりSAP R/3の顧客管理モジュールを使って顧客管理を行っていたが、フィールド・エンジニアへの作業指示や、実施された作業内容の報告には紙ベースの書類を使い、電話とFAXで連絡を取り合っていた。データ・エントリの労力を割けなかったため、ごく一部の情報(交換した部品に関する情報など)しかSAP R/3側に反映されていなかった。「フィールド・サービスというと、お客さまからのアプローチを待っていればよいと思われるかもしれませんが、それは違います。SIIとお客さまの間で信頼を築き、保守サポートだけでなく、将来の機器販売につなげていくためには、受身で待っているのではなく、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めていかなければなりません。お客様ごとに異なるニーズに応えるという観点から、私たちはお客様を『顧客』ではなく『個客』であると考えています。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です。それには、個々の故障の履歴や部品交換の履歴、定期点検の実施履歴など、あらゆる情報を踏まえたうえでのサポートが必要です。特に故障の連絡では、お客さまは感情的になっている場合が多い。こんなときに情報が錯綜して、同じような問い合わせや報告をお客さまに対して行ったら、信用は完全に失われてしまいます。そのような失敗を起こすことなく、お客さまの信頼を勝ち取るためのツールとして、今回のようなシステムが必要だと以前から考えていました」(エポリードサービス 大石典利氏)
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
2.Webソリューションの必要性
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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単に技術面だけを考えれば、フィールド・エンジニアが公衆回線を使ったリモート・アクセスでサーバに接続し、SAP R/3のデータを直接更新するという方法も可能なようにも思える。しかしメンテナンスなどの具体的な作業指示は、本部側にいるスタッフが判断を下して発行する必要がある。またフィールド・エンジニア(全国で約100名)は社員ばかりでなく、協力会社のエンジニアもおり、セキュリティ上の問題から、ダイヤルアップ接続は利用できなかった。「お客さまから連絡を受けたら、障害などの内容を確認し、必要な場合だけフィールド・エンジニアを派遣することになります。実際、問い合わせのほとんどは、電話対応レベルで解決しています。フィールド・エンジニアを派遣するかどうか、部品交換が必要かどうかなどは、経験豊富なスタッフでなければ判断できません。また社員だけがアクセスするなら、ダイヤルアップでSIIのLANに接続するという手段もあるのですが、協力会社のエンジニアにこれを許すことはできません。ですから、エポリードサービスのスタッフやフィールド・エンジニアに加え、協力会社のエンジニアも参照できるSAP R/3のフロントエンドが必要でした。これには、Webブラウザとインターネットがあればアクセスが可能なWebソリューションが適していると考えました」(エポリードサービス 大石典利氏)
SAP R/3を手始めに、ノーツやSiebelなどの連携も検討
フロントエンドのWebアプリケーションにはWebLogicを使い、これをSAP R/3と連携させることが決定された。こちらも技術的には、WebLogicとSAP R/3を直接接続することが可能であるし、実際は別の案件で、両者の連携を行った実績もあったようだ。しかし今回は、ここにBizTalk Serverを介在させてEAIを構築することになる。「今回構築することになったのはSAP R/3の顧客管理モジュールとWebアプリケーションの連携ですが、将来的には既存のCRMシステム(Siebelを使用)や手順書などのドキュメント管理用として使っているロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」(SII 鈴木真二氏)
圧倒的なコストパフォーマンスの高さでBizTalk Serverを選択
セイコーインスツルメンツ
株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
eポータルグループ 課長
鈴木真二
「今回のSAP R/3とWebアプリケーションの連携をはじめ、将来的には既存のCRMシステムやロータス・ノーツ、マーケットプレイスとの連携なども念頭にあり、特定のプラットフォームに依存しないEAIが必要でした」
いまやEAIは、ビジネス・アプリケーション統合の主要キーワードとなっており、EAI専業メーカーによる製品も数多い。しかも必ずしもEAIシステムとしてはあまりなじみのないBizTalk Serverを選択した理由は何だろうか? 「当然ながら、EAIソフトウェアの選定に当たっては、専業メーカーを含めいくつかの製品を検討しました。これらのEAI製品の特徴は、非常に高機能で、特にメインフレームとの接続性が高く、実績も申し分ないのですが、いかんせん高価だということ。しかしSIIでは、SAP R/3(Hewlett-PackardのHP-UX上で稼働)を導入した段階でメインフレームを撤廃しており、メインフレームとの接続性は重要ではありませんでした。また、すでにSAP R/3と他システムとのアダプタ部分をグループ内で開発した経験があり、EAIシステム側の機能にそれほど依存しなくても連携を実装できそうだと考えました。BizTalk Serverは開発環境も強力で、かつ将来のXML Webサービス対応が明確に打ち出されていること、ほかのEAIシステムと異なり、小規模なレベルから始められて、必要に応じてこれを拡張できる柔軟性を備えていること、システムのベース・アーキテクチャを変更することなく、将来的なプライベート・マーケットプレイスや、ロゼッタネットなどの共通マーケットプレイスにまでを対応できるということ、そして何よりも、EAI専業メーカーのシステムと比較したコストパフォーマンスが圧倒的に高いということがBizTalk Server選択のポイントです。具体的な数値の公表は避けますが、価格差はまさに『けた違い』でした」(SII 鈴木真二氏)
技術評価は2カ月で完了、コンサルティングの協力も得て3カ月でカットオーバーに
結果的に、技術評価に残った候補はBizTalk Serverだけだった。SAP R/3とWebとの連携は以前に開発経験もあったため、BizTalk ServerとSAP R/3との連携も、非常に見通しやすかったという。実際のシステム開発は、SIIグループでSI事業などを手掛けるセイコーアイテック(株)が担当した。「私たちセイコーアイテックでは、以前の案件でSAP R/3とWebシステムとの連携を実現した経験があり、その際に使ったSAP R/3とのインターフェイスをBizTalk Serverとの間でもほぼそのまま使えることが分かっていましたから、見通しはよくききました」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
セイコーアイテック株式会社
情報システム部
SE四グループ
課長
五十嵐善明
「高価格帯のEAIシステムでは、きめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、コンサルティングやサポートを受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」
2001年5月からBizTalk Serverの技術評価を開始し、7月までの2カ月でテストを完了、正式採用を決定した。その後、今回のシステム構築作業が開始されたのは、2001年9月からで、実質3カ月程度で試験運用開始にこぎつけた。今回のシステムでは、フロントエンド側のWebLogicで多くのビジネス・プロセス処理を行っており、BizTalk Server側での多くの処理をパターン化できたこと、そして何より、マイクロソフトのコンサルタントとの共同作業が非常に円滑だったことが早期のカットオーバーを実現したポイントだったという。「SAP R/3とBizTalk Serverとのインターフェイスは開発しましたが、BizTalk Server側のブローカー定義やステータス・モニタの機能はマイクロソフトのコンサルタントが実現してくれました。このためSII側で主に作業したのは、XMLスキーマの設計と、システム連携にかかわる運用監視設計でした」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
「当初は、BizTalk Serverの大きな特徴であるオーケストレーション機能などを使って、接続するアプリケーションごとにそれらを作り込んでいくのかと思ったのですが、マイクロソフトのコンサルタント担当者の提案でそのような構成ではなく、イベント・ドリブンで処理が実行されるような形式にして、データ変換に必要なデータベースのパターンさえプロトコルとして定義すれば、連携が可能になるような構成をとることになりました。こうしたシステムの核心部分で経験豊富なマイクロソフトのコンサルタントの意見を聞くことができ、実際に開発もお願いできたということが、早期のシステム構築を可能にしたのだと思います」(SII 鈴木真二氏)
「先に述べた高価格帯のEAIシステムでは、ある程度アダプタのパッケージ化が進んでいますから、このようにきめ細かいサービスを受けることは難しかったと思います。これはBizTalk Serverそのものの特徴ではありませんが、高価格帯EAIシステムと比較して不足する部分について、そうしたコンサルティングやサポートが受けられたという点も、BizTalk Serverを選択した理由といえます」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
今回展開されたシステム構成
以下は、今回展開されたシステムの構成である。OSとしてはWindows 2000 Advanced Serverを組み込んだIAサーバを4台用意し、このうち2台にそれぞれBizTalk Server 2000 Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを行い、残る2台にSQL Server 2000 Enterpriseをインストールしてアクティブ-パッシブのクラスタリング構成とした。
今回導入されたBizTalk ServerによるEAIシステムの構成
今回はWindows 2000 Advanced ServerをベースとするIAサーバを4台用意し、このうち2台にBizTalk Server Enterpriseをインストールしてロード・バランシングを導入した。BizTalk Server用のDBとして、残る2台にSQL Server Enterprise Editionを組み込み、アクティブーパッシブ・タイプのクラスタリング構成とした。
SAP R/3とBizTalk Server、Webアプリケーション・サーバとなるWebLogicとの間のインターフェイスは次のとおりである。
SAP R/3、BizTalk Server、WebLogic間の接続インターフェイス
BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(DCOMインターフェイス)を、逆方向ではFTPを使ってファイルを転送する。
図から分かるとおり、BizTalk ServerとWebLogicとの接続では双方にHTTPプロコトルを使用する。これに対しBizTalk ServerとSAP R/3とのデータ交換では、BizTalk Server→SAP R/3への通信ではCOMインターフェイス(BAPI、RFC)を使い、逆にSAP R/3→BizTalk Serverの通信ではFTPを使ってファイルを転送する。
[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社
3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード
デジタルアドバンテージ
2002/03/12
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システム稼働の様子は次のとおりだ。例えばいま、顧客から電話で障害報告があったとする。これを受けた本社のスタッフは、障害内容を確認し、必要と判断すればフィールド・エンジニアの派遣を決定する。するとスタッフは、Webサーバにアクセスし、その顧客の過去の修理履歴や部品交換履歴などをSAP R/3から取り出して確認したうえ、今回の障害報告から新たな部品交換が必要と判断すれば、その情報を加えて作業指示書を作成してフィールド・エンジニアへの送信を指示する。すると作業指示が発生したことは、フィールド・エンジニアにメールで送信され、フィールド・エンジニアはそのメールを携帯電話で受信する。メールを受信したフィールド・エンジニアは、手持ちのモバイルPCと最寄りのISPを使ってWebサーバにアクセスし、作業指示書(顧客の過去の修理履歴・部品交換履歴・新たな作業指示と部品交換)をPCにダウンロードする。34人のフィールド・エンジニアでテスト運用を開始した段階です。本稼働になれば、1日の作業指示は約50件程度、1カ月あたりで約1000件程度のトランザクションが発生することになる。「本当はオンラインで処理したいところですが、フィールド・エンジニアはネットワークを使えないクリーン・ルームに入ることも多いため、このようなオフラインの形式でも使えるようにしてもらいました」(エポリードサービス 大石典利氏)
セイコーアイテック 情報センタに設置された今回のサーバ
今回導入されたサーバは、安全対策認定事業所であるセイコーアイテックの情報センタに設置された。
フィールド・エンジニアに送られる作業指示書には、SAP R/3 顧客管理モジュールに記録された過去の履歴情報がすべて含まれる。その顧客から過去にどのような問い合わせがあったのか、どのような修理を行ったのかなどがすぐに分かるようになっている。顧客先での作業が完了したら、作業報告書をモバイルPCで作成し、画面上で顧客に内容を承認してもらい、再度Webに接続して報告書を本社側に送る。また、装置の状態や顧客の意見、要望などは、顧客情報シートとして、作業完了後、作業報告と同様にWebサーバから本社に送られる。「当初は小型のタブレットでも持参して、サインもデジタル・データとしてもらうという話もあったのですが、あまり現実的ではないのでこのような形式にしました。業務を簡便にするために画面上で承認してもらっていますが、どうしてもサインが必要な場合には、FAXに作業確認のサインをもらいます。将来的には、電子承認システムを導入するつもりです」(エポリードサービス 大石典利氏)
Webサーバ側にアップロードされたデータは、スタッフのチェックを受けてから、リーダーの操作によってSAP R/3に反映される。「フィールド・エンジニアが直接SAP R/3にデータを反映させることはできません。作業にかかった時間や、交換した部品を丸々お客さまに請求できるとは限りません。弊社側の責任で発生した作業や部品交換などもあり得るからです。この点をリーダーが確認して、データがSAP R/3に反映され、作業報告情報が次の請求業務に移されることになります」(エポリードサービス 大石典利氏)
当面の問題は通信速度。高速通信カードの配布で問題を解決
SIIのデータ通信カードRapiraCard
cdmaOneに対応した64kbpsの高速データ通信PCカード。通信エリアはほぼ国内全地域で、データ通信中に電話も使えることから、9600bpsでは厳しいデータ・ダウンロードもPapiraCardならまったく問題はない。
とにかく充実した情報が、ほぼリアルタイムにフィールド・エンジニアやスタッフから参照可能になり、システムのテスト運用は非常に好評だという。ただ1点、不満が多く聞かれるのは通信速度とのことだ。一部のフィールド・エンジニアは、現在でも携帯電話を使った9600bpsのデータ通信を利用しており、これではWebサーバにアクセスしてデータをダウンロードするのに10分から、長いときで40分もかかるときがあるという。「こればかりは高速な通信手段に替えていくしかありません。何かいい方法はないかと探していたら、SIIの高速パケット通信カード(RapiraCard、写真)があるじゃないですか(笑)。これなら通信速度も通信エリアについてもまったく問題ありません。さらに、ダウンロード中でも携帯電話で詳細な点の確認ができます。RapiraCardを全員に配布すべく手配しています」(エポリードサービス 大石典利氏)
eマネジメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverの全面採用を決定
セイコーアイテック株式会社
情報システム部 SE3グループ 係長 渡辺光秀
「現在は事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用していますが、今後はBizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」
今回のプロジェクトの結果から、SIIでは、冒頭で述べたeマネージメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverを採用することを決定した。「SIIでは、ERPソフトウェアをSAP R/3で統一しています。現状は、事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用しています。今後は、BizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」(セイコーアイテック 渡辺光秀氏)
さらにSIIでは、ERPのSAP R/3だけでなく、順次、既存のビジネス・アプリケーションをEAIシステムに対応させていく。「全社的なEAIで基本的に使用するXMLスキーマの大枠は決定しました。後は各業務に向けて、細部を詰めていけばよい状態になっています。かなりのスピードで対応を進められると考えています」(SII 鈴木真二氏)
セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
中田光一
「今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」
「ただし、今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」(SII 中田光一氏)
今後の具体的な案件としては、CRMシステムであるSiebelとの接続、プライベートなマーケットプレイスの接続が検討されている。「当初は、あくまでプライベートな販売サイトをマーケットプレイス化してみようと思っています。最終的にはロゼッタネットのような共通マーケットプレイスがあるのですが、電子部品の大手ベンダは、すでにEDIを導入して大量の受発注業務を行っており、これらに移行する必然性はいまのところあまりありません。またSiebelとBizTalk Serverの接続については、すでに技術的なレベルでは、HTTPとXMLで接続できることを確認しています」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)
メインフレームなどのレガシー・システムや水平分散型のクライアント/サーバ・システム、最近の潮流であるWebソリューションなど、さまざまなシステムで混とんとなった大企業のエンタープライズ環境において、過去のシステムはできるだけそのままに、データ連携を可能にするしくみとしてEAIが急速に注目を集めている。BizTalk Serverは、強力な開発環境やスケーラビリティ、そして圧倒的なコストパフォーマンスと手厚いコンサルティングを武器に、EAIソリューションを提供するソフトウェアとして新たな関心を呼びそうだ。
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