SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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情報システムの将来性を考えて、オフコンなどのレガシー システムをオープン システムに移行してビジネス変化への対応を目指す企業が増えています。昨年創業 50 周年を迎えた中華食材の卸売業を営む神戸市の廣記商行でも、変化への対応を果たせる柔軟性をもったシステムへの移行が急務でした。しかし同社が 15 年の長きにわたって使い込み、システムが作りこまれてきたオフコンによる業務システムの完成度は非常に高く、オープン システムへの移行には多くの難点がありました。その最大のものは、従来のビジネス ノウハウを完全に継承しながら業務をより効率化していくことでした。その解決のために同社が選んだのは .NET Framework を利用してビジネス ロジックを継承しながらシステムを一から作りこむことでした。短工期で従来システムを超える効果を実現するという難問に果敢に挑戦した同社は、オープン システムならではの柔軟性と将来性を手に入れることに成功したのみならず、従来からの顧客中心のビジネスをさらに発展させ、商品の受注から配送までの時間の大幅短縮、営業活動のさらなる高度化、販売情報のきめ細かい把握や決算などの情報分析および活用の効率化など、業務と経営のスピード化を実現しました。
<導入の背景と狙い>
15 年間「作りこんだ」オフコンに限界が見えた
株式会社廣記商行
代表取締役社長
鮑 悦初 氏
株式会社廣記商行は、1953 年に神戸市で創業し、横浜、長崎と並ぶ中華街として知られる南京町をはじめ神戸市全域の中華料理店や全国のスーパーや小売チェーンへの食材卸売りを一手に担う企業に成長してきました。同社の顧客は約 3,000、毎日の注文は 4,000 行 (明細) に及びます。その受注から出荷に至る業務を約 100 名の従業員がこなします。
「餃子の皮 20 パック、シュウマイの皮 8 パック~」などと、同社への注文は小ロットで多品目。得意先 1 軒1 軒から、電話やファックスで注文が届きます。注文品目は必ずしも銘柄などがはっきりと指定されるとは限りません。しかも中華料理店をはじめとする顧客の営業時間はさまざまで、日中、夜間を問わず注文が入り、それを翌日の午前中には配送を開始しなければなりません。顧客にとっては 1 対 1 の関係でも、同社から見れば 3,000 対 1 での仕事。しかしそれでも個々の顧客に密着してビジネスを行うのが同社の方針です。
顧客を中心に考えたビジネスのためのシステム拡張が困難に
「『牡蠣油!』と注文があれば、それがどのメーカーの牡蠣油かわからなくても前回の注文を調べて「いつもの牡蠣油」を届けることができる。お客さまのことを考えて、そういうことをしていかなくてはいけない」と語るのは、同社社長の鮑悦初 (ばお ゆうちゅう) 氏。15 年前に導入したオフコンによる業務システムにも、そうした同社の顧客優先の考え方をもとに、徹底した合理化を行うための「作りこみ」が行われてきました。
しかしオフコンでの業務システムをいくら作りこんでも、増え続ける物流の量に対応していくことに限界が見えていました。オフコン導入時に想定した処理量は、約 10 年も前から超過しています。システムを変更していくことで業務が滞りなく進むように工夫を重ねてきてはいましたが、やがて、開発を行おうとしても思うようにはならなくなってきていたのです。鮑 氏は「システムが肥大化してきたというか、あれもこれもと要求が重なっていっていつまで経ってもソフトが完成しないという時期がありました」とかつてを振り返ります。
安定性や信頼性にすぐれるレガシー システムに業務処理を集中させる方式は、かつては最も効率的な情報システムの形態でした。しかし近年ではオープン システムとネットワークによる分散型のシステムが安定性や信頼性の面でも十分に活用できることが実証されています。しかも導入コストも運用管理コストもレガシー システムに比べて著しく低く抑えることができます。さらに将来的な拡張性の面でも、レガシー システムよりもオープン システムのほうに分があります。廣記商行でも、従来システムをオープン システムに移行することで、オフコンの限界を打ち破ることができるのではないかと考えました。
<システム導入の経緯>
パッケージのカスタマイズではノウハウが生かせない
株式会社廣記商行
取締役営業部長
中山 太一 氏
既存システムの問題は、15 年間作りこまれてきたオフコンが度重なるシステム変更によって肥大化および複雑化してきた結果、ビジネス発展にともなうさまざまな要求に応えるためのさらなる変更が容易にできなくなってしまっている点です。それを解決するためのオープン システムの採用は、同社にとっても基本方針でした。しかし、同社がオフコンを利用しながら培ってきた膨大なノウハウや合理的な業務プロセスを、できるだけコストをかけずにオープン システムに移行していく最適な方法は何かが、大きな問題でした。2003 年 2 月から、社運をかけたシステム移行プロジェクトがスタートし、幹部ミーティングが繰り返し開かれ、議論が戦わされました。
業務のノウハウがビジネスの生命線
鮑社長はまず、オープン システムならではの豊富な業務パッケージに注目しました。「これだけ豊富にパッケージがあるのに、一から開発することはないのではないか。むしろパッケージを利用したほうが業界標準に合うのではないか」と、パッケージに業務を合わせる方法を考えていたのです。実際に顧客先のパソコンや携帯端末から発注してもらう形態のシステムについて、複数の提案が同社に持ちかけられてもいました。
しかし、今まで苦労しながら築いてきたビジネスのノウハウが、システム移行で失われはしないかと危機感を抱いていたのが同社の取締役営業部長の中山太一氏です。忙しい仕事が終わって疲れた料理店主が、慣れないパソコン等で本当に注文してくれるのか、これまで培ってきた顧客優先の業務の仕組みをなくしてしまってよいのか。
システム移行については中山氏も諸手を上げて大賛成。しかし、パッケージに業務を合わせる方針にはどうしても納得できなかったのです。
これまで同社の発展を支えてきた営業をはじめとするビジネスのノウハウは何よりも貴重な財産です。顧客優先のビジネスを行ってきた同社のノウハウを活用できるシステムにしなければいけないという中山氏の進言に、鮑社長は膝を叩きました。「それが当社の生命線だと。どの企業にも適用できるパッケージで業務を標準化してしまうと、我々のノウハウを捨てることにもなりかねません」 (鮑社長)。
従来からの業務を完全に継承し、さらに高度化できるシステムへと移行。そしてそれは今後、ビジネス環境の変化に応じて柔軟に対応しながら長期にわたって活用できるものでなければならない。システム像はこのように描かれ、今度はそれを実現する方策を探ることになりました。
完成度の高さに驚いたシステム開発会社
同社は地元の (財) ひょうご中小企業活性化センターの IT 化アドバイザーに構築パートナーの紹介を依頼しました。「オフコンからオープン環境で Windows® を検討している」との条件での依頼に、アドバイザーが紹介したのは株式会社富士通ビジネスシステム (以下、FJB) でした。
FJB はレガシー システムとオープン システム双方に多くの システム構築 実績をもつ会社で、今回のシステム移行についてはうってつけの企業と考えられました。当初は FJB としてもこの案件は基本的な販売管理システムの移行案件だと考えていました。ところが、廣記商行に出向いてオフコンによるシステムを実際に見た FJB の担当者は、その完成度に息を呑むことになりました。
「さてこの蓄積されたいろんなアプリケーションやノウハウをどういうふうに新しいものにもっていくのか」と FJB 関西システム統括部長の浅香直也氏は頭を抱えました。「顔色がだんだん変わっていきましたね。『これは深い』『おまけにこれもあるの?』という感じで」(中山氏)。しかし、浅香部長はやがて廣記商行が本当に目指していることが顧客への対応の速さであることに気づきました。「(システムの仕組みがすべて) 1 秒でも速く受注を入れて、1 秒でも速く出荷してお客さまに品物を届けるんだということに根ざしていました」(浅香部長)。そこから出てくる要求を、FJB の技術力をもってして実現できないと言うことは、FJB としてもプライドが許しませんでした。
そして廣記商行と FJB の 2 人 3 脚でのプロジェクトが本格的に始動しました。困難な要求と極めて短い工期、しかも成果物は必ず従来の完成度の高いシステムと比べられることになります。FJB にとってもリスクをともなうチャレンジとなりました。一方では移行コストも重要です。できるだけ初期コストをかけずに、将来の TCO も低く抑えられるシステムとしなければなりません。
<導入システムの概要>
.NET Framework で将来の拡張性を確保
株式会社富士通ビジネスシステム (FJB)
システム本部
関西システム統括部長
浅香 直也 氏
廣記商行の要望を満たすために FJB が提案したのは、.NET プラットフォームを利用した新システムでした。それは新システムが今後長期にわたって使われ続けることを考慮した結果です。他の方法を使ってもオープン システムにするだけで必ずコストは低下します。しかし、OS のバージョン アップをはじめさまざまな理由で、将来的に細切れに費用が発生することが避けられません。FJB は目先のコスト ダウンだけでは廣記商行のためにはならないと考えました。「.NET なら将来的にもそのまま継続していける、Framework が一緒だったら継続していけるというところで、胸を張って提案させていただけると」(FJB の SE、島田龍也氏)。
また、FJB にはすでに、.NET Framework で構築されたさまざまな業務に適用可能なプログラム モジュールを集成し、「WebAS Component」と名づけて提供していました。もともとは FJB が開発したシステムの一部を再利用できるようにしたものであり、パッケージ ソフトの要素と、委託開発の要素とをあわせ持ち、両方の長所を利用できるソリューションです。今回のケースでは、WebAS Component の販売管理基本モジュールが提供され、その機能を生かしながら、廣記商行の求める機能を Visual BasicR .NET を用いて開発することにしたのです。
この提案は廣記商行に歓迎され、2003 年 4 月から、本格的な構築作業が始まりました。完成の目標期限はわずかに 6 か月。短い工期での構築では、仕様書づくりばかりに時間をかけてはいられません。FJB はどんどんプロトタイプを作り、ただちにデモを行うことを繰り返しました。中山氏はデモを見て納得できればすぐに新たな要求を行いました。こうしてシステムは構築途上でもさらに磨き上げられながら、完成に向かっていきました。
多くの部分が WebAS Component でまかなうことができました。コンポーネント (プログラム モジュール) が利用できる部分は、いわば「イージー オーダー」の開発になり、最初から開発するより短工期、低コストになります。しかし課題は既存のコンポーネントで対応できない部分、特にクイック レスポンスのレベルでした。それはシステムの処理能力というよりも、受注入力などの際の、キーボードのタッチ数をいかに少なくするかが焦点となっていました。さまざまな工夫と苦闘の末、計画どおり、2004 年 1 月にシステムは完成し、稼働を始めました。
<導入システムの効果>
受注処理、商品ピッキング、配送が大幅に効率化
株式会社富士通ビジネスシステム (FJB)
システム本部
関西システム統括部
第一システム部
プロジェクトリーダー
島田 龍也 氏
.NET Framework を利用した新システムが稼動を始めると、社員から「わあーっと歓声があがりました」(中山部長)。新システムは最初から、はっきり目に見える効率化効果を実感させたのです。 まずは入力のスピード。同社では顧客からの電話を担当者が受けて、それをシステムに入力する方式をとり、担当者不在の夜間などには留守録で注文を受けるようになっています。新システムでは、顧客の音声による注文をメモすることもなく、たちまち画面で品物や個数などを選択して入力することができます。音声とほぼ同じ速さでわずか数秒で受注処理が完了します。在庫確認がその時点で行われ、納期の回答もその場で行えます。
午前 7 時からの受注業務で昨夜からの注文を処理すると、次は出荷作業に移ります。9 時前には倉庫からの商品ピッキングが開始できるようになりました。ピッキングにおいてもシステムの情報をもとにして商品や配送先の特定が行われ、電光掲示板などを利用して配送用の商品を振り分けていきます。この部分の合理化により、1 日の配達分のピッキングがわずか 1 時間で完了するようになりました。10 時前ごろには、顧客に向けて商品を積んだトラックが出発できるようになったのです。同社では社員全員が受注作業を担当することになっています。
効果はそれだけではありません。入力されたデータは、請求書や送り状、見積り書の発行とも連動して業務効率を上げたほか、生データを加工することで顧客ごとの販売推移や売れ筋商品発見などのビジネス分析が容易に、思いのままに行えるようになりました。会計処理や決算業務にも生かされ、月次での決算も容易になるなど、経営支援の面からもこれまでにない力を発揮したのです。
「正直、できると思ってました。中小企業ですからコストをかけて駄目でしたというのは許されない。今回は良きパートナーを得て、双方が本気でやってきた。FJB も私自身も褒めてあげたい」(中山部長)。
順調に滑り出した同社の新システムは、高い満足度で社内に受け入れられたのはもちろんですが、受注 ~ 配送という基本業務が合理化された分、顧客への営業活動はよりきめ細かく、十分な時間をとって行われるようにもなりました。それは顧客にとっての満足度向上にもつながります。顧客の 1 人はこのように評価します。「営業力がすごくいいというか、熱心というか。やっぱり中華食材いうたら廣記さん。ほとんどがそうなりますわな」(群愛飯店 施蓮棠氏)。
社内外での高い評価を得た新システムですが、オープン化の真価が問われるのはこれから。変化に即応したバージョン アップの際、本当の利点が生きてきます。
「人間の命には限りがあるけど、経営者が時代時代の要求、時代時代にあった商品だとかサービスだとか、を開発していけば、廣記商行はいわば綿々と存在し続けられる」(鮑社長)。変化に即応してチャレンジを続ける同社は、.NET Framework により、さらなる発展を確信しています。
<導入の背景と狙い>
15 年間「作りこんだ」オフコンに限界が見えた
株式会社廣記商行
代表取締役社長
鮑 悦初 氏
株式会社廣記商行は、1953 年に神戸市で創業し、横浜、長崎と並ぶ中華街として知られる南京町をはじめ神戸市全域の中華料理店や全国のスーパーや小売チェーンへの食材卸売りを一手に担う企業に成長してきました。同社の顧客は約 3,000、毎日の注文は 4,000 行 (明細) に及びます。その受注から出荷に至る業務を約 100 名の従業員がこなします。
「餃子の皮 20 パック、シュウマイの皮 8 パック~」などと、同社への注文は小ロットで多品目。得意先 1 軒1 軒から、電話やファックスで注文が届きます。注文品目は必ずしも銘柄などがはっきりと指定されるとは限りません。しかも中華料理店をはじめとする顧客の営業時間はさまざまで、日中、夜間を問わず注文が入り、それを翌日の午前中には配送を開始しなければなりません。顧客にとっては 1 対 1 の関係でも、同社から見れば 3,000 対 1 での仕事。しかしそれでも個々の顧客に密着してビジネスを行うのが同社の方針です。
顧客を中心に考えたビジネスのためのシステム拡張が困難に
「『牡蠣油!』と注文があれば、それがどのメーカーの牡蠣油かわからなくても前回の注文を調べて「いつもの牡蠣油」を届けることができる。お客さまのことを考えて、そういうことをしていかなくてはいけない」と語るのは、同社社長の鮑悦初 (ばお ゆうちゅう) 氏。15 年前に導入したオフコンによる業務システムにも、そうした同社の顧客優先の考え方をもとに、徹底した合理化を行うための「作りこみ」が行われてきました。
しかしオフコンでの業務システムをいくら作りこんでも、増え続ける物流の量に対応していくことに限界が見えていました。オフコン導入時に想定した処理量は、約 10 年も前から超過しています。システムを変更していくことで業務が滞りなく進むように工夫を重ねてきてはいましたが、やがて、開発を行おうとしても思うようにはならなくなってきていたのです。鮑 氏は「システムが肥大化してきたというか、あれもこれもと要求が重なっていっていつまで経ってもソフトが完成しないという時期がありました」とかつてを振り返ります。
安定性や信頼性にすぐれるレガシー システムに業務処理を集中させる方式は、かつては最も効率的な情報システムの形態でした。しかし近年ではオープン システムとネットワークによる分散型のシステムが安定性や信頼性の面でも十分に活用できることが実証されています。しかも導入コストも運用管理コストもレガシー システムに比べて著しく低く抑えることができます。さらに将来的な拡張性の面でも、レガシー システムよりもオープン システムのほうに分があります。廣記商行でも、従来システムをオープン システムに移行することで、オフコンの限界を打ち破ることができるのではないかと考えました。
<システム導入の経緯>
パッケージのカスタマイズではノウハウが生かせない
株式会社廣記商行
取締役営業部長
中山 太一 氏
既存システムの問題は、15 年間作りこまれてきたオフコンが度重なるシステム変更によって肥大化および複雑化してきた結果、ビジネス発展にともなうさまざまな要求に応えるためのさらなる変更が容易にできなくなってしまっている点です。それを解決するためのオープン システムの採用は、同社にとっても基本方針でした。しかし、同社がオフコンを利用しながら培ってきた膨大なノウハウや合理的な業務プロセスを、できるだけコストをかけずにオープン システムに移行していく最適な方法は何かが、大きな問題でした。2003 年 2 月から、社運をかけたシステム移行プロジェクトがスタートし、幹部ミーティングが繰り返し開かれ、議論が戦わされました。
業務のノウハウがビジネスの生命線
鮑社長はまず、オープン システムならではの豊富な業務パッケージに注目しました。「これだけ豊富にパッケージがあるのに、一から開発することはないのではないか。むしろパッケージを利用したほうが業界標準に合うのではないか」と、パッケージに業務を合わせる方法を考えていたのです。実際に顧客先のパソコンや携帯端末から発注してもらう形態のシステムについて、複数の提案が同社に持ちかけられてもいました。
しかし、今まで苦労しながら築いてきたビジネスのノウハウが、システム移行で失われはしないかと危機感を抱いていたのが同社の取締役営業部長の中山太一氏です。忙しい仕事が終わって疲れた料理店主が、慣れないパソコン等で本当に注文してくれるのか、これまで培ってきた顧客優先の業務の仕組みをなくしてしまってよいのか。
システム移行については中山氏も諸手を上げて大賛成。しかし、パッケージに業務を合わせる方針にはどうしても納得できなかったのです。
これまで同社の発展を支えてきた営業をはじめとするビジネスのノウハウは何よりも貴重な財産です。顧客優先のビジネスを行ってきた同社のノウハウを活用できるシステムにしなければいけないという中山氏の進言に、鮑社長は膝を叩きました。「それが当社の生命線だと。どの企業にも適用できるパッケージで業務を標準化してしまうと、我々のノウハウを捨てることにもなりかねません」 (鮑社長)。
従来からの業務を完全に継承し、さらに高度化できるシステムへと移行。そしてそれは今後、ビジネス環境の変化に応じて柔軟に対応しながら長期にわたって活用できるものでなければならない。システム像はこのように描かれ、今度はそれを実現する方策を探ることになりました。
完成度の高さに驚いたシステム開発会社
同社は地元の (財) ひょうご中小企業活性化センターの IT 化アドバイザーに構築パートナーの紹介を依頼しました。「オフコンからオープン環境で Windows® を検討している」との条件での依頼に、アドバイザーが紹介したのは株式会社富士通ビジネスシステム (以下、FJB) でした。
FJB はレガシー システムとオープン システム双方に多くの システム構築 実績をもつ会社で、今回のシステム移行についてはうってつけの企業と考えられました。当初は FJB としてもこの案件は基本的な販売管理システムの移行案件だと考えていました。ところが、廣記商行に出向いてオフコンによるシステムを実際に見た FJB の担当者は、その完成度に息を呑むことになりました。
「さてこの蓄積されたいろんなアプリケーションやノウハウをどういうふうに新しいものにもっていくのか」と FJB 関西システム統括部長の浅香直也氏は頭を抱えました。「顔色がだんだん変わっていきましたね。『これは深い』『おまけにこれもあるの?』という感じで」(中山氏)。しかし、浅香部長はやがて廣記商行が本当に目指していることが顧客への対応の速さであることに気づきました。「(システムの仕組みがすべて) 1 秒でも速く受注を入れて、1 秒でも速く出荷してお客さまに品物を届けるんだということに根ざしていました」(浅香部長)。そこから出てくる要求を、FJB の技術力をもってして実現できないと言うことは、FJB としてもプライドが許しませんでした。
そして廣記商行と FJB の 2 人 3 脚でのプロジェクトが本格的に始動しました。困難な要求と極めて短い工期、しかも成果物は必ず従来の完成度の高いシステムと比べられることになります。FJB にとってもリスクをともなうチャレンジとなりました。一方では移行コストも重要です。できるだけ初期コストをかけずに、将来の TCO も低く抑えられるシステムとしなければなりません。
<導入システムの概要>
.NET Framework で将来の拡張性を確保
株式会社富士通ビジネスシステム (FJB)
システム本部
関西システム統括部長
浅香 直也 氏
廣記商行の要望を満たすために FJB が提案したのは、.NET プラットフォームを利用した新システムでした。それは新システムが今後長期にわたって使われ続けることを考慮した結果です。他の方法を使ってもオープン システムにするだけで必ずコストは低下します。しかし、OS のバージョン アップをはじめさまざまな理由で、将来的に細切れに費用が発生することが避けられません。FJB は目先のコスト ダウンだけでは廣記商行のためにはならないと考えました。「.NET なら将来的にもそのまま継続していける、Framework が一緒だったら継続していけるというところで、胸を張って提案させていただけると」(FJB の SE、島田龍也氏)。
また、FJB にはすでに、.NET Framework で構築されたさまざまな業務に適用可能なプログラム モジュールを集成し、「WebAS Component」と名づけて提供していました。もともとは FJB が開発したシステムの一部を再利用できるようにしたものであり、パッケージ ソフトの要素と、委託開発の要素とをあわせ持ち、両方の長所を利用できるソリューションです。今回のケースでは、WebAS Component の販売管理基本モジュールが提供され、その機能を生かしながら、廣記商行の求める機能を Visual BasicR .NET を用いて開発することにしたのです。
この提案は廣記商行に歓迎され、2003 年 4 月から、本格的な構築作業が始まりました。完成の目標期限はわずかに 6 か月。短い工期での構築では、仕様書づくりばかりに時間をかけてはいられません。FJB はどんどんプロトタイプを作り、ただちにデモを行うことを繰り返しました。中山氏はデモを見て納得できればすぐに新たな要求を行いました。こうしてシステムは構築途上でもさらに磨き上げられながら、完成に向かっていきました。
多くの部分が WebAS Component でまかなうことができました。コンポーネント (プログラム モジュール) が利用できる部分は、いわば「イージー オーダー」の開発になり、最初から開発するより短工期、低コストになります。しかし課題は既存のコンポーネントで対応できない部分、特にクイック レスポンスのレベルでした。それはシステムの処理能力というよりも、受注入力などの際の、キーボードのタッチ数をいかに少なくするかが焦点となっていました。さまざまな工夫と苦闘の末、計画どおり、2004 年 1 月にシステムは完成し、稼働を始めました。
<導入システムの効果>
受注処理、商品ピッキング、配送が大幅に効率化
株式会社富士通ビジネスシステム (FJB)
システム本部
関西システム統括部
第一システム部
プロジェクトリーダー
島田 龍也 氏
.NET Framework を利用した新システムが稼動を始めると、社員から「わあーっと歓声があがりました」(中山部長)。新システムは最初から、はっきり目に見える効率化効果を実感させたのです。 まずは入力のスピード。同社では顧客からの電話を担当者が受けて、それをシステムに入力する方式をとり、担当者不在の夜間などには留守録で注文を受けるようになっています。新システムでは、顧客の音声による注文をメモすることもなく、たちまち画面で品物や個数などを選択して入力することができます。音声とほぼ同じ速さでわずか数秒で受注処理が完了します。在庫確認がその時点で行われ、納期の回答もその場で行えます。
午前 7 時からの受注業務で昨夜からの注文を処理すると、次は出荷作業に移ります。9 時前には倉庫からの商品ピッキングが開始できるようになりました。ピッキングにおいてもシステムの情報をもとにして商品や配送先の特定が行われ、電光掲示板などを利用して配送用の商品を振り分けていきます。この部分の合理化により、1 日の配達分のピッキングがわずか 1 時間で完了するようになりました。10 時前ごろには、顧客に向けて商品を積んだトラックが出発できるようになったのです。同社では社員全員が受注作業を担当することになっています。
効果はそれだけではありません。入力されたデータは、請求書や送り状、見積り書の発行とも連動して業務効率を上げたほか、生データを加工することで顧客ごとの販売推移や売れ筋商品発見などのビジネス分析が容易に、思いのままに行えるようになりました。会計処理や決算業務にも生かされ、月次での決算も容易になるなど、経営支援の面からもこれまでにない力を発揮したのです。
「正直、できると思ってました。中小企業ですからコストをかけて駄目でしたというのは許されない。今回は良きパートナーを得て、双方が本気でやってきた。FJB も私自身も褒めてあげたい」(中山部長)。
順調に滑り出した同社の新システムは、高い満足度で社内に受け入れられたのはもちろんですが、受注 ~ 配送という基本業務が合理化された分、顧客への営業活動はよりきめ細かく、十分な時間をとって行われるようにもなりました。それは顧客にとっての満足度向上にもつながります。顧客の 1 人はこのように評価します。「営業力がすごくいいというか、熱心というか。やっぱり中華食材いうたら廣記さん。ほとんどがそうなりますわな」(群愛飯店 施蓮棠氏)。
社内外での高い評価を得た新システムですが、オープン化の真価が問われるのはこれから。変化に即応したバージョン アップの際、本当の利点が生きてきます。
「人間の命には限りがあるけど、経営者が時代時代の要求、時代時代にあった商品だとかサービスだとか、を開発していけば、廣記商行はいわば綿々と存在し続けられる」(鮑社長)。変化に即応してチャレンジを続ける同社は、.NET Framework により、さらなる発展を確信しています。
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