SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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【東京ガス】
系列の壁超えた倉庫共用で全体最適化
取引先に実利を示し、在庫2割削減(前編)
ビフォー・ アフター
サプライチェーン・マネジメント(SCM)を実践し、在庫削減を目指す企業は多い。在庫管理や需要予測などは、情報システムが威力を発揮しやすい分野ではある。しかし、システム導入以上に、取引先との協調が鍵になる。取引先を粘り強く説得し、倉庫統廃合などの改革を促すことも必要だ。取引の力関係を前面に出して強引に改革を進めると失敗につながりやすい。
東京ガスでは、「オール電化」を掲げる電力会社との競争が激化。コスト面で対抗するために、2003年からガス管など工事材料の物流改革に取り組む。仕入れ先である資材メーカーには需要予測情報を提供。販売先である協力企業や施工会社にも利便性の高い受発注システムを生かし、倉庫の共用化を促している。東京ガス自身は在庫の2割減や、年間約10億円のコスト削減を実現。同時に取引先でも、在庫削減など経営体質強化が進んでいる。
東京ガスの取引先である協和日成の砧資材センター(東京・世田谷)。3社が共同利用。ガス管や継ぎ手などを扱う
規制産業に身を置いてきた東京ガスも、今や競争の真っ只中にある。住宅でガスではなく電力だけを使う「オール電化」の台頭が主な要因。パロマ製ガス湯沸かし器による死亡事故など、逆風も強い。
関東地域における新築住宅の「オール電化率」は1割超に達する。電力会社の営業攻勢が強い他地域はさらに電化率が高い。「危機感のなかで、これまで気づいていなかった物流面の効率化に目を向けた」(柳沢伸行・資材部物流改革プロジェクトグループ副部長)
東京ガスは、ガス管やガスメーターなどで年間250億円程度の資材を調達している。2003年に始まった物流改革プロジェクトでは、こうした資材の「物流費削減」「購入価格低減」「顧客志向」という3つの目標を掲げた。
従来は、倉庫管理システムと受発注システムが分断され、納期が不明確で欠品も目立っていた。こうした遅れた状況から、一気に理想形を目指した。そのために、取引先である上流の資材メーカーや、下流の協力企業や施工会社を巻き込んだ。日本オラクルのERP(統合基幹業務)パッケージを導入。需要動向や受発注などの情報を整備し、これを生かして物流網を最適化した。
一連の改革で、情報システムの刷新に十数億円を投資。資材購入価格の数%減、工材の在庫金額の20%減、物流費の15%減を実現した。既に年間約10億円のコスト削減効果が出ており、今後の改革の進展によってさらなる効果拡大を見込む。
プロジェクトに参画したベリングポイント(東京・千代田)の木村弘美ディレクターは、「同様の物流改革はよくあるが、力の強い一企業がメリットを独り占めしようとして失敗するケースが多い」と話す。東京ガスの特徴は、取引先もメリットを享受できる「Win-Win」の仕組み作りに腐心したことだ。
情報で仕入れ先の効率化促す
具体的には、まず2003年からガス管やメーターなどの資材メーカー約60社と、東京ガスとの間の上流物流の改革(1次改革)に着手。2004年10月に新しい在庫・需給管理システム「HAYATE(はやて)」を稼働させた。約2000品目ある資材の在庫管理を月次から日次化。欠品を予測して警告を出したり自動発注する機能も持つ。
「HAYATE」システムの需要予測画面
日立製作所の需要予測ソフト「SCPLAN」を採用。過去36カ月の出荷実績や、販促キャンペーンの予定などから、3カ月先の需要を計算する。品目ごとに、「移動平均」「季節変動」など8つのモデルのいずれかを適用して、予測値を出す。
この予測値は「発注予定情報」として、資材メーカーに開示する。資材の需要は秋から冬に集中する。メーカーは東京ガスから提供される需要予測情報を基に計画生産が可能になり、年間を通じて稼働率を平準化しやすくなった。
「地震などの突発事象がない限り、予測はかなり当たる」(柳沢副部長)。東京ガスはメーカーと交渉し、情報提供の見返りとして数%の値引きを引き出した。そのうえで、東京ガス側の在庫を20%削減しながら、欠品率(全品目数に占める欠品発生品目の比率を日次で集計して平均)は0.8%という低水準に抑えている。
複雑な系列関係を整理
次に昨年1月から、下流の物流改革(2次改革)に取り組んでいる。下流の事情はより複雑だ。東京ガスのガス工事は、約150社の協力企業が担当。協力企業は、さらに約1000社ある施工会社に工事を発注し、施工会社が住宅などの現場に行って工事する。施工会社は社員2~3人の小規模事業者が多く、倉庫を持たない。工事に必要なガス管などの工材は、東京ガスが協力企業に卸した物を、工事当日に施工会社が協力企業の倉庫まで車で取りに行く。
協力企業と施工会社の間には「系列」関係がある。施工会社aの近くに協力企業Bの倉庫があっても、遠くにある自社系列の協力企業Aの倉庫まで工材を取りに行かなければならず、その分1日にこなせる工事件数が減ってしまう。
他業界でもこうした問題に悩む企業は多いが、取引先は別会社であり、問題解決は容易でない。
東京ガスはまず情報インフラとして、今年5月、施工会社向け工材受発注システム「TODO君(とどくん)」を稼働させた。施工会社はTODO君の画面から正確な納期を見ながら必要な工材を発注できる。施工会社は1カ月先まで必要な工材を予約できる一方、東京ガスはこのデータを在庫削減や需要予測に役立てられる。
並行して、協力企業の倉庫を複数の協力企業が共用する「共同倉庫」化を推進している。既に約10倉庫が稼働し、順次増やす予定だ。
●東京ガスの下流物流改革(2次改革)の概要。協力企業に倉庫の共用を促している
[画像のクリックで拡大表示]
施工会社がTODO君で発注した工材は、東京ガスから共同倉庫に配送。施工会社は系列関係にかかわらず、最寄りの共同倉庫に工材を取りに行ける仕組みだ。
商流(系列関係)と物流を切り離したのもポイント。施工会社aが協力企業Bの共同倉庫に工材を取りに行く場合でも、支払いなどの商取引は従来通り協力企業Aとの間で行う。「一般に、既得権である取引関係を変えると抵抗が大きくなる」(ベリングポイントの木村ディレクター)。東京ガスは、実利を取って成功率を上げる道を選んだ。
協力企業・施工会社向け工材受発注システム「TODO君」の画面。在庫数や納期を発注時に確認できる。工材の電子カタログも参照可能
取引先にも在庫削減の利点
この体制は、協力企業にとって、他社倉庫を共用する分、自社倉庫のいくつかを閉鎖することを意味する。倉庫閉鎖はコスト削減につながるが、雇用の問題などから抵抗も少なくない。東京ガスは協力企業各社に綿密なヒアリングを行い、各社の意向を重視して、徐々に共同倉庫を拡大している。
大手協力企業である協和日成は、2社が合併して成立した経緯もあり、倉庫の統廃合に積極的だ。東京ガスの共同倉庫化の取り組みに沿って、現在7カ所ある倉庫を4カ所に減らすことを目指している。
協和日成は砧(きぬた)資材センター(東京・世田谷)を共同倉庫として運営。同社以外に協力企業2社が利用する。「利便性が高まって施工会社は喜んでいる。当社にとってもデメリットはない」(協和日成の加藤友三・資材部工材グループマネージャー)
共同倉庫は、東京ガスからの工材配送便が通常の週2回から、週3回になる特典がある。しかも、施工会社は工材の約8割をTODO君で2~3日前までに予約してくれる。
多頻度配送と事前予約の相乗効果で、砧資材センターでは3社分の物量をこなしながら、在庫金額が以前の3500万~4000万円程度から3000万円弱まで減った。ほかの2社から手数料も受け取れる。「協力企業にとって、共同倉庫は必ずコスト削減につながる」(東京ガスの柳沢副部長)。今後、協和日成のような先行企業の事例を示しながら、協力企業の参加を促していく。
系列の壁超えた倉庫共用で全体最適化
取引先に実利を示し、在庫2割削減(前編)
ビフォー・ アフター
サプライチェーン・マネジメント(SCM)を実践し、在庫削減を目指す企業は多い。在庫管理や需要予測などは、情報システムが威力を発揮しやすい分野ではある。しかし、システム導入以上に、取引先との協調が鍵になる。取引先を粘り強く説得し、倉庫統廃合などの改革を促すことも必要だ。取引の力関係を前面に出して強引に改革を進めると失敗につながりやすい。
東京ガスでは、「オール電化」を掲げる電力会社との競争が激化。コスト面で対抗するために、2003年からガス管など工事材料の物流改革に取り組む。仕入れ先である資材メーカーには需要予測情報を提供。販売先である協力企業や施工会社にも利便性の高い受発注システムを生かし、倉庫の共用化を促している。東京ガス自身は在庫の2割減や、年間約10億円のコスト削減を実現。同時に取引先でも、在庫削減など経営体質強化が進んでいる。
東京ガスの取引先である協和日成の砧資材センター(東京・世田谷)。3社が共同利用。ガス管や継ぎ手などを扱う
規制産業に身を置いてきた東京ガスも、今や競争の真っ只中にある。住宅でガスではなく電力だけを使う「オール電化」の台頭が主な要因。パロマ製ガス湯沸かし器による死亡事故など、逆風も強い。
関東地域における新築住宅の「オール電化率」は1割超に達する。電力会社の営業攻勢が強い他地域はさらに電化率が高い。「危機感のなかで、これまで気づいていなかった物流面の効率化に目を向けた」(柳沢伸行・資材部物流改革プロジェクトグループ副部長)
東京ガスは、ガス管やガスメーターなどで年間250億円程度の資材を調達している。2003年に始まった物流改革プロジェクトでは、こうした資材の「物流費削減」「購入価格低減」「顧客志向」という3つの目標を掲げた。
従来は、倉庫管理システムと受発注システムが分断され、納期が不明確で欠品も目立っていた。こうした遅れた状況から、一気に理想形を目指した。そのために、取引先である上流の資材メーカーや、下流の協力企業や施工会社を巻き込んだ。日本オラクルのERP(統合基幹業務)パッケージを導入。需要動向や受発注などの情報を整備し、これを生かして物流網を最適化した。
一連の改革で、情報システムの刷新に十数億円を投資。資材購入価格の数%減、工材の在庫金額の20%減、物流費の15%減を実現した。既に年間約10億円のコスト削減効果が出ており、今後の改革の進展によってさらなる効果拡大を見込む。
プロジェクトに参画したベリングポイント(東京・千代田)の木村弘美ディレクターは、「同様の物流改革はよくあるが、力の強い一企業がメリットを独り占めしようとして失敗するケースが多い」と話す。東京ガスの特徴は、取引先もメリットを享受できる「Win-Win」の仕組み作りに腐心したことだ。
情報で仕入れ先の効率化促す
具体的には、まず2003年からガス管やメーターなどの資材メーカー約60社と、東京ガスとの間の上流物流の改革(1次改革)に着手。2004年10月に新しい在庫・需給管理システム「HAYATE(はやて)」を稼働させた。約2000品目ある資材の在庫管理を月次から日次化。欠品を予測して警告を出したり自動発注する機能も持つ。
「HAYATE」システムの需要予測画面
日立製作所の需要予測ソフト「SCPLAN」を採用。過去36カ月の出荷実績や、販促キャンペーンの予定などから、3カ月先の需要を計算する。品目ごとに、「移動平均」「季節変動」など8つのモデルのいずれかを適用して、予測値を出す。
この予測値は「発注予定情報」として、資材メーカーに開示する。資材の需要は秋から冬に集中する。メーカーは東京ガスから提供される需要予測情報を基に計画生産が可能になり、年間を通じて稼働率を平準化しやすくなった。
「地震などの突発事象がない限り、予測はかなり当たる」(柳沢副部長)。東京ガスはメーカーと交渉し、情報提供の見返りとして数%の値引きを引き出した。そのうえで、東京ガス側の在庫を20%削減しながら、欠品率(全品目数に占める欠品発生品目の比率を日次で集計して平均)は0.8%という低水準に抑えている。
複雑な系列関係を整理
次に昨年1月から、下流の物流改革(2次改革)に取り組んでいる。下流の事情はより複雑だ。東京ガスのガス工事は、約150社の協力企業が担当。協力企業は、さらに約1000社ある施工会社に工事を発注し、施工会社が住宅などの現場に行って工事する。施工会社は社員2~3人の小規模事業者が多く、倉庫を持たない。工事に必要なガス管などの工材は、東京ガスが協力企業に卸した物を、工事当日に施工会社が協力企業の倉庫まで車で取りに行く。
協力企業と施工会社の間には「系列」関係がある。施工会社aの近くに協力企業Bの倉庫があっても、遠くにある自社系列の協力企業Aの倉庫まで工材を取りに行かなければならず、その分1日にこなせる工事件数が減ってしまう。
他業界でもこうした問題に悩む企業は多いが、取引先は別会社であり、問題解決は容易でない。
東京ガスはまず情報インフラとして、今年5月、施工会社向け工材受発注システム「TODO君(とどくん)」を稼働させた。施工会社はTODO君の画面から正確な納期を見ながら必要な工材を発注できる。施工会社は1カ月先まで必要な工材を予約できる一方、東京ガスはこのデータを在庫削減や需要予測に役立てられる。
並行して、協力企業の倉庫を複数の協力企業が共用する「共同倉庫」化を推進している。既に約10倉庫が稼働し、順次増やす予定だ。
●東京ガスの下流物流改革(2次改革)の概要。協力企業に倉庫の共用を促している
[画像のクリックで拡大表示]
施工会社がTODO君で発注した工材は、東京ガスから共同倉庫に配送。施工会社は系列関係にかかわらず、最寄りの共同倉庫に工材を取りに行ける仕組みだ。
商流(系列関係)と物流を切り離したのもポイント。施工会社aが協力企業Bの共同倉庫に工材を取りに行く場合でも、支払いなどの商取引は従来通り協力企業Aとの間で行う。「一般に、既得権である取引関係を変えると抵抗が大きくなる」(ベリングポイントの木村ディレクター)。東京ガスは、実利を取って成功率を上げる道を選んだ。
協力企業・施工会社向け工材受発注システム「TODO君」の画面。在庫数や納期を発注時に確認できる。工材の電子カタログも参照可能
取引先にも在庫削減の利点
この体制は、協力企業にとって、他社倉庫を共用する分、自社倉庫のいくつかを閉鎖することを意味する。倉庫閉鎖はコスト削減につながるが、雇用の問題などから抵抗も少なくない。東京ガスは協力企業各社に綿密なヒアリングを行い、各社の意向を重視して、徐々に共同倉庫を拡大している。
大手協力企業である協和日成は、2社が合併して成立した経緯もあり、倉庫の統廃合に積極的だ。東京ガスの共同倉庫化の取り組みに沿って、現在7カ所ある倉庫を4カ所に減らすことを目指している。
協和日成は砧(きぬた)資材センター(東京・世田谷)を共同倉庫として運営。同社以外に協力企業2社が利用する。「利便性が高まって施工会社は喜んでいる。当社にとってもデメリットはない」(協和日成の加藤友三・資材部工材グループマネージャー)
共同倉庫は、東京ガスからの工材配送便が通常の週2回から、週3回になる特典がある。しかも、施工会社は工材の約8割をTODO君で2~3日前までに予約してくれる。
多頻度配送と事前予約の相乗効果で、砧資材センターでは3社分の物量をこなしながら、在庫金額が以前の3500万~4000万円程度から3000万円弱まで減った。ほかの2社から手数料も受け取れる。「協力企業にとって、共同倉庫は必ずコスト削減につながる」(東京ガスの柳沢副部長)。今後、協和日成のような先行企業の事例を示しながら、協力企業の参加を促していく。
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