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SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。 SCM / MRP / 物流等々情報を集めていきます。
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松下電器産業/牧田孝衞氏
古い経営慣行を打ち破り、ITを軸とした経営革新に挑む

CIO Profile
牧田孝衞氏
1947年3月26日生まれ。関西学院大学経済学部卒業後、1969年に松下電器産業入社。情報企画部国際グループ・リーダー、アメリカ松下電器情報システム担当などを経て、1997年に本社情報システム担当兼情報企画部部長に就任、2000年4月にはコーポレート情報システム社長を兼任し、現在に至る。
1918年の創業以来、世界的な巨大企業へと成長してきた国内屈指の電器機器メーカー、松下電器産業。その同社も、ここにきて景気後退の影響を受け、業界他社と同様、厳しい経営を強いられている。この状況を打破すべく、同社は経営の“V字型回復”を目指した新しい経営モデルの創造に全社を挙げて取り組んでいる。そこでは、過去の経営構造や企業風土の破壊をも恐れない、ITを駆使した改革プロジェクトが実施されている。本稿では、松下電器産業の情報システム担当理事を務める牧田孝衞氏に、黒字経営の回復に向けて経営革新に挑む同社のIT戦略について聞いた。

CIO Magazine編集部=聞き手/文

革新成功のカギを握る、業務プロセスの“融合”
松下電器のIT革新本部の創設メンバーで、副本部長として本部長の中村邦夫社長を補佐する牧田孝衞氏。同氏が中心となって開発した企業内ポータル「I-EPOCH」は、約1,300人分の間接工数を削減するなど、大幅な業務効率化を実現した。(photo by Keiji Kaneda)
──まずIT化の取り組みの現状についてお聞かせください。

 現在、国内の製造業全体は、押し寄せるデフレの波、世界的なIT不況のあおりを受け、これまでにない危機的な経営状況にあると言えます。

 松下電器の場合、1933年から「事業部制」を採用し、それぞれのユニットごとに主要製品別/市場別に自主責任経営体制を作り上げてきました。各事業部内では、最大限の効率化を図る一方で、独自に生産販売を行い、利益を生みだすという歴史を歩んできました。また同時に、「自主責任経営の徹底」と「経営者の育成」を推進し、それを松下電器の経営の根幹を成す一大特色として現在まで定着させてきました。

 ところが、ここにきて、個別最適を積み重ねて全体最適を図ってきたこの縦割り分権型の組織体制では、全体をうまく連携できないことが分かってきました。つまり、全社的なシステムの統合に取り組もうとしても、事業部ごとにシステムが分散してしまっているために、どこかに必ずボトルネックが生じてしまっていたのです。

 そこで2000年7月末に、全社的な経営革新を目標に、ITを最大限に活用したプロジェクトを推進する「IT革新本部」を設置しました。この組織の本部長は、当社の代表取締役社長である中村邦夫が自ら兼務しています。

──全体最適の実現に向けて、具体的にどのような取り組みがなされているのですか。

 IT革新本部では、まず、全社的な業務プロジェクトの流れを、「商品化軸」「SCM(Supply Chain Management)軸」「CRM(Customer Relationship Management)軸」「管理間接業務」という4つのセグメントに分類し、それぞれの分野を融合させる「IT革新全社プロジェクト」を立ち上げ、包括的な業務プロセスの革新に取り組み始めました。

 このIT革新全社プロジェクトをスタートさせてから現在まで、「商品化」という縦軸の流れと「SCM」という横軸の流れを中心に、各プロジェクトごとにプロセス革新に取り組んできました。その結果、「顧客との接点」のセグメントを「商品化」と「SCM」の2つの軸とうまく連携させるのが最も重要な課題であることが徐々に浮き彫りになってきました。つまり、プロジェクト全体を成功へと導くためには、例えば広報やWebマーケティングによって吸い上げた顧客の要望を、SCM軸や商品化軸とうまく連携させるといったプロセスが何よりも重要であることが分かったわけです。

 当社では、今後もさらにこの3つの軸の有機的な融合に重点を置き、顧客中心のプロセス革新を行っていく方針です。

投資効果を計測し、業務の効率化を図る
松下電器で情報システム担当の理事を務める牧田孝衞氏は、「自分たちだけの世界しか目に入らない閉鎖的な経営を行っていては、もはや生き残ることのできない時代に突入していることを認識する必要がある」と語る。(photo by Keiji Kaneda)
──IT投資についてはどのようにお考えですか。

 ITを使って経営革新を遂行する際に、経営者が最も注目する点は、その投資に対して明確な効果があるかどうかということです。そのため、例えばSCMプロジェクトにおいては、昨年から実行結果を設定基準で評価し、その「スコア(評点)」によって計画のクオリティを測定するベンチマーク手法を採用しています。IT投資に際しては、こうした具体的な効果を測るベンチマークが必須だと考えています。

 現時点では、このベンチマーク手法を使った評価は、スタートしたばかりということもあって、その成果を完全に把握するには至っていませんが、IT投資の“使用前と使用後”の比較を可能にするためにも引き続き測定を行って、投資効果を明確に数値化する作業を重ねていく方針です。

──IT投資を行った中で、最も効果の出た取り組みは何ですか。

 目に見える成果を得られたという点では、企業内ポータルの開発を挙げることができるでしょう。

 昨年の4月から、管理間接部門の合理化/効率化を目指したシステムの統合に取り組んでいますが、その一環として、従来の間接部門の複雑な制度を見直し、経理、人事、総務、そして情報部門が中心になって、全社的な間接部門業務の共通化をねらいとする独自開発のポータル・システム「I-EPOCH」を構築しました。

 I-EPOCHは現在、ほぼ全社的な導入が完了し、約10万人の社員がPCから“ワン・クリック・アウェイ”で鮮度の高い有益な情報を迅速に閲覧することが可能になっています。同システムが稼働して3カ月間の導入効果は、経費削減ベースで20億円に上り、約1,300人分のコストを削減できた計算になります。

──業務の効率化という点では、どのような取り組みがありますか。

 まず、昨年4月にナショナルとパナソニックの2つのブランドに、それぞれマーケティング本部を設置しました。意外だと思われるかもしれませんが、それまで本社内には“マーケティング”と名の付く部署は存在しませんでした。つまり、これは松下電器で本格的なマーケティング活動を開始する初の試みとなったわけです。

 そして今年4月からは、この両マーケティング本部が中心になって、販売機会損失の防止と納期回答の短縮化を目的として、これまで月次のサイクルで行われていた受発注のプロセスを、週次サイクルに短縮する「製販ビジネス・プロセスのウィークリー化」プロジェクトをスタートさせました。

 このプロジェクトは、すでに米国と欧州の子会社で先行して実施されており、徐々にその成果が出始めています。なかでも下流工程、つまり顧客対応を行うディーラーの現場では大きな成果が出ています。ディーラーはこれまで1カ月に1回の割合で商品の発注を行っていましたが、週1回のサイクルで発注できるようになったことにより、1カ月分の在庫を確保する必要がなくなり、在庫の回転率が大幅に向上しました。本社でも同様に、「少ない在庫で売上げを高める」という構造を築いていきたいと考えています。

 さらに、この取り組みを上流工程に適用していくことによって、生産ラインの効率化を図ることが可能になります。つまり、生産サイクルを月次から週次に変更することで、倉庫在庫や流通在庫を削減することができるわけです。我々としては、月次サイクルで行われていた際のコストを4分の1まで削減できるよう努力していきたいと考えています。

──さらに、今後予定されている計画はありますか。

 はい。アプリケーションの共有という面では、今後もさらなる統合化を進めていきたいと考えています。

 すでに2~3年前から、SAPやオラクルなどのERPソリューションを本格的に導入し、これまで事業部ごとに構築されてきたシステムを共通化する取り組みを進めてきました。今後はさらに、SCM、CRM、B2B(企業間)電子商取引などをマネジメントする「ECM(Enter prise Commerce Management)」ソリューションの導入や、部品サプライヤーとメーカー間の調達機能を最適化する「SRM(Supplier Relationship Manage ment)」といった企業間/企業内連携を実現する仕組みの導入に積極的に取り組んでいく予定です。

グローバル競争を勝ち抜くために
──最後に、経営トップとCIOの役割についてお聞かせください。

 松下電器のCIOは、取締役社長である中村邦夫が自ら務めていると言うことができます。社長自らがIT革新の旗振り役として中心的な役割を果たしているわけです。柔軟な認識と感性を持って経営革新に取り組むリーダーの存在は、現在の当社にとっては非常に重要であると考えています。

 当社では現在、ITを活用して経営、構造、風土の改革を推進するための啓蒙活動を続けているのですが、その認識はいまだに十分に根づいているとは言えないのが正直なところです。20世紀の成功体験にしがみついた経営構造は、当社の最大のウィークポイントですが、これを打破するためには、どうしても強力なリーダーシップを発揮できる経営者の存在が必要になってくるわけです。

 一方、情報部門が経営トップに対して、ITを活用した経営改革の必要性を説くためには、その提案力が重要になります。ITにかかわる具体的なアイデアを経営者側に持ち込めるのは、情報部門以外にないわけですから、より積極的なアピールが必要になるでしょう。その点は、昔とは異なる情報部門の新しい役割だと考えています。

 グローバルな競争を勝ち抜くためには、企業間の連携がますます重要になってきます。我々は、自分たちだけの世界しか目に入らない閉鎖的な経営を行っていては、もはや生き残ることのできない時代に突入していることを認識する必要があるのです。

 当社はこれまで、全社を挙げて改革に取り組んできましたが、今年度は必ずその成果を享受できると期待しています。
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