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経済産業省/家電・出版・コンビニ・総合スーパー・百貨店・アパレルでRFID実証実験開始
経済産業省は、電子タグ(RFID)の実導入に積極的な6業界(家電業界、出版業界、コンビニ業界、総合スーパー業界、百貨店業界、アパレル業界)と、サプライチェーン全課程を通じての業務効率化等を総合的に評価し、実用化に向けた課題解決策を明らかにする実証実験を1月から開始する。
この事業は、流通・物流における国際標準に基づいた電子タグの昔及・実用化促進を目的として、メーカーの工場における製造段階から電子タグを貼付し、メーカー・卸売・小売のサプライチェーン等の全課程を通じての業務効率効果、小売段階での販売促進効果等を総合的に評価し、各業界における電子タグ実用化に向けた課題及びその解決策を明確化するもの。
実証実験は、家電、出版、コンビニ、総合スーパー、百貨店、アパレルの各業界におけるメーカー、卸売、小売の参加を得て実施する。(参加企業、詳細URLは下記のとおり)
家電業界:日立製作所、ビックカメラ、エディオン、ヨドバシカメラ、ヤマダ電機等
http://www.lnews.jp/2007/01/22047.html
出版業界:小学館、講談社、集英社、ジュンク堂書店、有隣堂、日本出版販売等
http://www.lnews.jp/2007/01/22056.html
コンビニエンスストア業界:ファミリーマート、トオカツフーズ.戸田フーズ、西野商事、ファミリーコーポレーション等
http://www.lnews.jp/2007/01/22055.html
総合スーパー業界:イトーヨーカ堂、イオン、アサヒビール、キユーピー等
http://www.lnews.jp/2007/01/22054.html
百貨店業界:三越、高島屋、阪急百貨店、小田急百貨店、京王百貨店、東急百貨店、井筒屋等
経済産業省は、電子タグ(RFID)の実導入に積極的な6業界(家電業界、出版業界、コンビニ業界、総合スーパー業界、百貨店業界、アパレル業界)と、サプライチェーン全課程を通じての業務効率化等を総合的に評価し、実用化に向けた課題解決策を明らかにする実証実験を1月から開始する。
この事業は、流通・物流における国際標準に基づいた電子タグの昔及・実用化促進を目的として、メーカーの工場における製造段階から電子タグを貼付し、メーカー・卸売・小売のサプライチェーン等の全課程を通じての業務効率効果、小売段階での販売促進効果等を総合的に評価し、各業界における電子タグ実用化に向けた課題及びその解決策を明確化するもの。
実証実験は、家電、出版、コンビニ、総合スーパー、百貨店、アパレルの各業界におけるメーカー、卸売、小売の参加を得て実施する。(参加企業、詳細URLは下記のとおり)
家電業界:日立製作所、ビックカメラ、エディオン、ヨドバシカメラ、ヤマダ電機等
http://www.lnews.jp/2007/01/22047.html
出版業界:小学館、講談社、集英社、ジュンク堂書店、有隣堂、日本出版販売等
http://www.lnews.jp/2007/01/22056.html
コンビニエンスストア業界:ファミリーマート、トオカツフーズ.戸田フーズ、西野商事、ファミリーコーポレーション等
http://www.lnews.jp/2007/01/22055.html
総合スーパー業界:イトーヨーカ堂、イオン、アサヒビール、キユーピー等
http://www.lnews.jp/2007/01/22054.html
百貨店業界:三越、高島屋、阪急百貨店、小田急百貨店、京王百貨店、東急百貨店、井筒屋等
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日本のRFID業界をけん引する人々(3)
世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC
柏木 恵子
2007年1月17日
NECは、さまざまなトレーサビリティに関する実証実験に参加したり標準化団体「EPCglobal」にエンドユーザー会員として加入したりするなど、RFID事業を広範囲に展開している。また、2004年10月にはRFIDビジネスソリューションセンターを設立し、サプライチェーンマネージメント(SCM)など実業の分野でのRFID利用の推進を図っている。ビジネスに直結するRFID統合ソリューションについて、同センター長を務める平野弘一氏にお話を伺った
現場により近いところでRFID事業戦略を立案するために
――NECのRFIDへの取り組みの経緯は
平野弘一 RFIDビジネスソリューションセンター長
平野 RFIDビジネスソリューションセンターは2004年に設立されました。それ以前のRFIDに関する仕事はマーケティングや研究開発の部門が主導していましたが、いよいよ事業として広がっていくだろうということで設立されたものです。
RFIDビジネスソリューションセンターは、お客さまや市場に、より近いところで事業戦略や商品企画を行う組織があった方がよい、との考えから発足いたしました。
また、センターの役割として、営業支援や販促活動なども行います。RFID事業に携わるものはNEC全体では300名くらいいますが、ビジネスソリューションセンターのスタッフは20名強です。
RFIDの導入で一番ROI(投資対効果)が出るのは、現場だと思います。私どもはメーカーですから、工場ということですね。4~5年前に社内食堂の食器にRFIDタグを付け、その後、経産省の実証実験や農水省の豚肉のトレーサビリティの実験などを行ってきました。そして、2~3年前にNEC米沢の工程管理にRFIDを使い、非常に生産効率が上がりました【注】。現在は、そこからサプライチェーン全体に広げていこうとしています。
RFIDカンバンを自社の現場で実際に使う
――NECの工場では、どのようにRFIDを活用しているのですか
平野 NECパーソナルプロダクツ米沢事業場で工程管理に利用した例を紹介しましょう。この工場では、以前は紙の生産指示書とバーコードを利用していました。実は、この工場では1日に約1万台のパソコンを作りますが、全く同じものは2台と作りません。筐体が同じでも、ユーザーのニーズによってCPUやハードディスクの容量が違って、それを生産指示書に基づいて組み立てていくわけです。
生産はセル方式で行っていますが、生産指示書のバーコードを1台当たり10回ほど読んでいました。10回を1万台分ですから、10万回の読み取りということですね。物を作りながら生産指示書のバーコードを読むというのは、大変煩雑な作業ですが、それを10万回行うというのは非効率極まりないということで、まずその部分をRFIDにしました。
効率化のほかにも、万が一、不具合品が混入した場合には、原因究明のための指示書検索が簡単になるという副次的効果もあります。紙の指示書であれば、不具合品があった場合には倉庫に行って社員数人がかりで探さなければなりませんが、現在のシステムならば検索画面から簡単な操作をするだけで、それがどのラインでどのように作っているときに混入したものかを見つけることができます。
現在、米沢の工場ではトヨタのカンバン方式を採用しており、RFIDカンバンを利用しています。生産に必要なさまざまな部材を各協力会社から工場に納めてもらうわけですが、牛乳の配達のように物流業者が協力会社をぐるぐる回ります。RFIDカンバンにより、工場にとっては棚卸し在庫の削減ができ、協力会社はタイムリーに物を納品できるようになりました。カンバンには、当初13.56MHzのRFIDを使っていましたが、EPCglobalの標準化活動が進み、タグの単価も安くなるだろうということもあって、この秋にUHF帯のものに切り替えました。
NECパーソナルプロダクツ米沢事業場
世界標準に“和魂洋才”で取り組む
――RFID製品に対するNECの特色は
平野 利用しているチップはインピンジ(Impinj)社製のものです。NECトーキンがリーダ/ライタやこのチップを利用したインレイというタグを作っています。アンテナなどの機能が各メーカーの差別化ポイントですが、インピンジのものは性能が高くトーキンの技術とも相性が良いようです。
RFIDに利用する周波数帯は日米欧で異なり、特に日本では周波数の幅が狭い。これらすべての周波数帯に対して高い性能を持っているのがインピンジです。UHF帯を使ったRFIDの利用は最終的にはグローバルでのサプライチェーンを目指したものですから、さまざまな周波数帯に対応することが必要です。
リーダ/ライタもインピンジとの共同開発です。インピンジのファウンダーのトップがEPCglobalのタグに関するWGの委員長をやっているので、標準化が進むのであれば最初から協力してやっていくのがいいだろうということもあります。
ただ、日本の場合は周波数帯が非常に狭く、トーキンのノウハウをインピンジのノウハウとうまく組み合わせて作る「和魂洋才」でやっています。
イノベーションセンターでRFIDをリアルに見せる
――事業としてのRFIDに対する手応えは
平野 RFIDというのは非常に旬な話題ですが、事業としては、各社どこも大きな数字にはなっていません。ユーザーにしても、興味は示すものの、いざ導入となるとちょっと尻込みをするといった感じです。
それはやはり「RFIDを使ってどういうメリットがあるのか」とか「本当にRFIDを使って動くんだろうか」といった、疑心暗鬼があるからだと思います。私どもは米沢の工場で実際に使っていますので、それを見せることができます。
2005年には2000人くらいの方が見学されました。2006年は恐らく3000人くらいでしょう。実際に運用されているシステムを見れば、「できるんだな」とか「知恵の出し方次第で何か使える」といった感想を持たれます。
実際に実機でやってみると、「なるほど、このくらいだと水が影響を与えるぞ」といったことも見えてきます。「このような制限を考慮しながら、こういう使い方をすれば、実際にできるんだな」という大きな信頼感を勝ち得ることができるわけです。
――工場以外にもRFIDシステムを体感できる場所があるとか
平野 2006年秋に設立した「イノベーションセンター」です。私どもが倉庫として使っている東京流通センター内で実際に触れられるRFIDシステムをお見せすることも可能です。米沢では、事業で利用している実例を見せるのですが、イノベーションセンターでは技術面での実証実験ができます。そこが、他社と違うところだと思います。
例えば、イノベーションセンターには、NECパーソナルプロダクツで実際に使用しているゲート式リーダ/ライタがあります。実証実験でよく使われるゲート式リーダ/ライタは、ポールを立てたようなものですが、これは読み取り精度に問題があります。電波が反射したり同じようなものが並んでいたりすると余計なタグまで読んでしまう。それを技術的に解決したのがこのゲート式です。ここでは、NECパーソナルプロダクツで使っているのと同じ段ボールを、現場と同じ積み方でお見せします。
左)ゲート式リーダ/ライタ
右)包装機に乗っているのはビジネス向けノートPC「VERSA」の箱
例えば、テスト環境の段ボールの積み方が、現場のそれとはまったく異なることもあると聞きます。それで「読めた、読めない」ということをやっても、現場からすれば、「こんな積み方はしていないよ」ということになります。このイノベーションセンターでは、実際に現場でやっているとおりの積み方でお見せします。そして、読めたり読めなかったりしたら、こうすればいいというお話をします。
また、見学者の中には、その会社が実際に扱っているような荷物でテストしてみたいという方もいます。例えば、物流業でしたら、段ボールでも大中小さまざまな大きさがあるでしょうし、紙袋やゴルフバッグなどもあるかもしれません。さすがにゴルフバッグはラインに流しませんが、できるだけ実際の業務に近い形で実証実験を行うことができます。
左)高速コンベア
右)仕分けコンベア
――イノベーションセンターで利用している周波数帯はやはりUHF帯ですか
平野 UHFでと希望される見学者が多いですね。NECは、2.45GHz帯タグである「NETLABEL(ネットラベル)」という製品も持っていますが、こちらはセキュリティとか金融といった特殊な場面で利用されます。NETLABELは非常に小さくできるうえ、メモリ領域が広く使えます。エンコーディングなども非常に簡単にできます。
ROIを出せるトータルソリューションとして提供
――どうしたらRFIDシステムでROIが出せますか
平野 もちろん、ゲート型リーダ/ライタを導入すればROIが出せるというものではなく、RFIDシステム全体で事業の効率化を図ることが重要です。
ご存じのとおり、RFID事業はそれぞれの部分でプレーヤが違うのです。タグはインピンジなどの半導体メーカーの分野ですし、プリンタやリーダ/ライタなども複数のプレーヤーが製品を持っています。さらに、ミドルウェアはそれ専門のソフトウェアベンダ、その上位のデータベースといったように、システム構築の際のカウンターパートは多数です。
これらをワンストップで提供できることはNECの特徴の1つになります。チップやタグ、その上のミドルウェアまで含めて、上位のシステムと現場で使うRFIDのシステムをうまく連携しながら、垂直統合型でシステム全体を提案します。
具体的には、まず、NECのブランドの中でシステム構築します。そしてもし、われわれの提案するものよりも良いものがあれば、われわれがコーディネイトして、いわゆるシステムインテグレーションを行います。
コンサルティングでは、現場のことをよく分かっている者にRFIDはこうやって使うということを、いわば伝道師のように語ってもらうという手法も取っています。例えば、米沢のNECパーソナルプロダクツにいる若月(新一SCM改革推進部グループマネージャー)のやっている仕事がそれです。
――NECのソリューションをすでに導入している企業もありますか
平野 何社かあります。最近は製造業の現場が海外であることも多いのですが、電波法は国によって違います。そのあたりのノウハウも含め、海外でのインテグレーションも行います。さらに、サポートは現地法人で対応できます。
見落とされがちな金型管理は重要なソリューション
――多くのソリューションの中で、「これは」というものを挙げるとすれば
平野 特に力を入れているソリューションに、金型管理があります。大量生産の工業製品には必ず金型が必要ですが、これらは1つ当たり20万円から30万円、高いものでは400万円くらいするのです。
しかし、これがあまりきちんと管理されていないケースが多い。よくてバーコード管理、チョークで記号番号を書いてあるだけというようなこともあります。数十万から数百万円するものですから、本来そんな扱いではいけないはずですが……。部品は自動車など多くの製品で永久部品ですから、金型の管理をしたいというニーズは高いのです。
金型の管理で何が大変かというと汚れ対策です。金型はグリースでどろどろになってしまうものですし、チョークで書いた記号は消えてしまうことが多く、バーコードは汚れで読めなくなってしまいます。
しかし、RFIDならば電波さえ届けばいいので、金属対応タグを利用すれば読めなくなるということはありません。RFIDを使ったソリューションの多くは、バーコードでもできなくはないものですが、これはバーコードではできないことです。この金型管理ソリューションもイノベーションセンターでお見せしています。
この金型管理は自動車製造の最終的な部品製造システムの一部になりますが、その上の設計システムまで含めて、巨大なエンタープライズのシステムの一部です。金型管理はほんの小さなシステムですが、NECはその上位システムまで含めて、連携したシステム提案ができます。
RFIDの市場規模というのはどこで見るか難しいですが、タグだけで見たらそれほど大きくはなりません。5円のタグを1億枚売っても、5億円ですからね。しかし、タグだけあってもシステムは動きませんから、このような全体のシステムで見ればかなり大きなビジネスになります。例えば米沢のシステムは最終的にはSAPと連携していますので、そこまで含めればすごい金額になります。
RFIDを使うメリットが見えれば普及は進む
――実用化がいまひとつ広がっていない原因は何でしょう
平野 1つは技術的な読み取り精度の問題ですね。よくいわれる価格の問題についてですが、タグが安くなれば本当に使われるのかというと、疑問に感じます。例えば、タグを無料で配れば、それでみんなが使うのでしょうか。
やはり、RFIDを使うことによってどういうROIが出るのか、どう便利になるのかを見せないと、タグが無料であっても使わないと思います。例えば、米沢工場で使っているタグは1個500円です。しかし、リライタブルタイプなので、500回使えば1回1円。使い方によっては、リライタブルタイプの方が安いことになります。
――EPCglobalの動向については
平野 デファクトスタンダード化が進むと価格が下がりますから、その意味ではメリットがありますね。米国向けの売り上げが大きな割合を占める電機メーカーも多いので、米国で広まっているEPCglobalを無視するわけにはいかないでしょう。
――RFIDが普及することで社会はどのように変化しますか
平野 時期は別にして、RFIDは必ず社会インフラの1つになると思います。サプライチェーンで全部つながるという使い方だけでなく、金型管理や文書管理などいろいろな使い方があるでしょう。いまは、RFIDの周波数帯などさまざまな特徴をうまく使うための知恵を出しているところでしょう。
社会全体が動き出すのは、2007年ごろではないでしょうか。リーダ/ライタを用意して、読めたかどうかという実証実験はすでにあちこちで行われていますし、実際のシステムの一部分で使えるかどうかというテストケース導入が増えてくると思います。NECでも「このオペレーションのこの領域でやりたい」といった相談案件が増えています。いままでとは違うという感触を得ています。
世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC
柏木 恵子
2007年1月17日
NECは、さまざまなトレーサビリティに関する実証実験に参加したり標準化団体「EPCglobal」にエンドユーザー会員として加入したりするなど、RFID事業を広範囲に展開している。また、2004年10月にはRFIDビジネスソリューションセンターを設立し、サプライチェーンマネージメント(SCM)など実業の分野でのRFID利用の推進を図っている。ビジネスに直結するRFID統合ソリューションについて、同センター長を務める平野弘一氏にお話を伺った
現場により近いところでRFID事業戦略を立案するために
――NECのRFIDへの取り組みの経緯は
平野弘一 RFIDビジネスソリューションセンター長
平野 RFIDビジネスソリューションセンターは2004年に設立されました。それ以前のRFIDに関する仕事はマーケティングや研究開発の部門が主導していましたが、いよいよ事業として広がっていくだろうということで設立されたものです。
RFIDビジネスソリューションセンターは、お客さまや市場に、より近いところで事業戦略や商品企画を行う組織があった方がよい、との考えから発足いたしました。
また、センターの役割として、営業支援や販促活動なども行います。RFID事業に携わるものはNEC全体では300名くらいいますが、ビジネスソリューションセンターのスタッフは20名強です。
RFIDの導入で一番ROI(投資対効果)が出るのは、現場だと思います。私どもはメーカーですから、工場ということですね。4~5年前に社内食堂の食器にRFIDタグを付け、その後、経産省の実証実験や農水省の豚肉のトレーサビリティの実験などを行ってきました。そして、2~3年前にNEC米沢の工程管理にRFIDを使い、非常に生産効率が上がりました【注】。現在は、そこからサプライチェーン全体に広げていこうとしています。
RFIDカンバンを自社の現場で実際に使う
――NECの工場では、どのようにRFIDを活用しているのですか
平野 NECパーソナルプロダクツ米沢事業場で工程管理に利用した例を紹介しましょう。この工場では、以前は紙の生産指示書とバーコードを利用していました。実は、この工場では1日に約1万台のパソコンを作りますが、全く同じものは2台と作りません。筐体が同じでも、ユーザーのニーズによってCPUやハードディスクの容量が違って、それを生産指示書に基づいて組み立てていくわけです。
生産はセル方式で行っていますが、生産指示書のバーコードを1台当たり10回ほど読んでいました。10回を1万台分ですから、10万回の読み取りということですね。物を作りながら生産指示書のバーコードを読むというのは、大変煩雑な作業ですが、それを10万回行うというのは非効率極まりないということで、まずその部分をRFIDにしました。
効率化のほかにも、万が一、不具合品が混入した場合には、原因究明のための指示書検索が簡単になるという副次的効果もあります。紙の指示書であれば、不具合品があった場合には倉庫に行って社員数人がかりで探さなければなりませんが、現在のシステムならば検索画面から簡単な操作をするだけで、それがどのラインでどのように作っているときに混入したものかを見つけることができます。
現在、米沢の工場ではトヨタのカンバン方式を採用しており、RFIDカンバンを利用しています。生産に必要なさまざまな部材を各協力会社から工場に納めてもらうわけですが、牛乳の配達のように物流業者が協力会社をぐるぐる回ります。RFIDカンバンにより、工場にとっては棚卸し在庫の削減ができ、協力会社はタイムリーに物を納品できるようになりました。カンバンには、当初13.56MHzのRFIDを使っていましたが、EPCglobalの標準化活動が進み、タグの単価も安くなるだろうということもあって、この秋にUHF帯のものに切り替えました。
NECパーソナルプロダクツ米沢事業場
世界標準に“和魂洋才”で取り組む
――RFID製品に対するNECの特色は
平野 利用しているチップはインピンジ(Impinj)社製のものです。NECトーキンがリーダ/ライタやこのチップを利用したインレイというタグを作っています。アンテナなどの機能が各メーカーの差別化ポイントですが、インピンジのものは性能が高くトーキンの技術とも相性が良いようです。
RFIDに利用する周波数帯は日米欧で異なり、特に日本では周波数の幅が狭い。これらすべての周波数帯に対して高い性能を持っているのがインピンジです。UHF帯を使ったRFIDの利用は最終的にはグローバルでのサプライチェーンを目指したものですから、さまざまな周波数帯に対応することが必要です。
リーダ/ライタもインピンジとの共同開発です。インピンジのファウンダーのトップがEPCglobalのタグに関するWGの委員長をやっているので、標準化が進むのであれば最初から協力してやっていくのがいいだろうということもあります。
ただ、日本の場合は周波数帯が非常に狭く、トーキンのノウハウをインピンジのノウハウとうまく組み合わせて作る「和魂洋才」でやっています。
イノベーションセンターでRFIDをリアルに見せる
――事業としてのRFIDに対する手応えは
平野 RFIDというのは非常に旬な話題ですが、事業としては、各社どこも大きな数字にはなっていません。ユーザーにしても、興味は示すものの、いざ導入となるとちょっと尻込みをするといった感じです。
それはやはり「RFIDを使ってどういうメリットがあるのか」とか「本当にRFIDを使って動くんだろうか」といった、疑心暗鬼があるからだと思います。私どもは米沢の工場で実際に使っていますので、それを見せることができます。
2005年には2000人くらいの方が見学されました。2006年は恐らく3000人くらいでしょう。実際に運用されているシステムを見れば、「できるんだな」とか「知恵の出し方次第で何か使える」といった感想を持たれます。
実際に実機でやってみると、「なるほど、このくらいだと水が影響を与えるぞ」といったことも見えてきます。「このような制限を考慮しながら、こういう使い方をすれば、実際にできるんだな」という大きな信頼感を勝ち得ることができるわけです。
――工場以外にもRFIDシステムを体感できる場所があるとか
平野 2006年秋に設立した「イノベーションセンター」です。私どもが倉庫として使っている東京流通センター内で実際に触れられるRFIDシステムをお見せすることも可能です。米沢では、事業で利用している実例を見せるのですが、イノベーションセンターでは技術面での実証実験ができます。そこが、他社と違うところだと思います。
例えば、イノベーションセンターには、NECパーソナルプロダクツで実際に使用しているゲート式リーダ/ライタがあります。実証実験でよく使われるゲート式リーダ/ライタは、ポールを立てたようなものですが、これは読み取り精度に問題があります。電波が反射したり同じようなものが並んでいたりすると余計なタグまで読んでしまう。それを技術的に解決したのがこのゲート式です。ここでは、NECパーソナルプロダクツで使っているのと同じ段ボールを、現場と同じ積み方でお見せします。
左)ゲート式リーダ/ライタ
右)包装機に乗っているのはビジネス向けノートPC「VERSA」の箱
例えば、テスト環境の段ボールの積み方が、現場のそれとはまったく異なることもあると聞きます。それで「読めた、読めない」ということをやっても、現場からすれば、「こんな積み方はしていないよ」ということになります。このイノベーションセンターでは、実際に現場でやっているとおりの積み方でお見せします。そして、読めたり読めなかったりしたら、こうすればいいというお話をします。
また、見学者の中には、その会社が実際に扱っているような荷物でテストしてみたいという方もいます。例えば、物流業でしたら、段ボールでも大中小さまざまな大きさがあるでしょうし、紙袋やゴルフバッグなどもあるかもしれません。さすがにゴルフバッグはラインに流しませんが、できるだけ実際の業務に近い形で実証実験を行うことができます。
左)高速コンベア
右)仕分けコンベア
――イノベーションセンターで利用している周波数帯はやはりUHF帯ですか
平野 UHFでと希望される見学者が多いですね。NECは、2.45GHz帯タグである「NETLABEL(ネットラベル)」という製品も持っていますが、こちらはセキュリティとか金融といった特殊な場面で利用されます。NETLABELは非常に小さくできるうえ、メモリ領域が広く使えます。エンコーディングなども非常に簡単にできます。
ROIを出せるトータルソリューションとして提供
――どうしたらRFIDシステムでROIが出せますか
平野 もちろん、ゲート型リーダ/ライタを導入すればROIが出せるというものではなく、RFIDシステム全体で事業の効率化を図ることが重要です。
ご存じのとおり、RFID事業はそれぞれの部分でプレーヤが違うのです。タグはインピンジなどの半導体メーカーの分野ですし、プリンタやリーダ/ライタなども複数のプレーヤーが製品を持っています。さらに、ミドルウェアはそれ専門のソフトウェアベンダ、その上位のデータベースといったように、システム構築の際のカウンターパートは多数です。
これらをワンストップで提供できることはNECの特徴の1つになります。チップやタグ、その上のミドルウェアまで含めて、上位のシステムと現場で使うRFIDのシステムをうまく連携しながら、垂直統合型でシステム全体を提案します。
具体的には、まず、NECのブランドの中でシステム構築します。そしてもし、われわれの提案するものよりも良いものがあれば、われわれがコーディネイトして、いわゆるシステムインテグレーションを行います。
コンサルティングでは、現場のことをよく分かっている者にRFIDはこうやって使うということを、いわば伝道師のように語ってもらうという手法も取っています。例えば、米沢のNECパーソナルプロダクツにいる若月(新一SCM改革推進部グループマネージャー)のやっている仕事がそれです。
――NECのソリューションをすでに導入している企業もありますか
平野 何社かあります。最近は製造業の現場が海外であることも多いのですが、電波法は国によって違います。そのあたりのノウハウも含め、海外でのインテグレーションも行います。さらに、サポートは現地法人で対応できます。
見落とされがちな金型管理は重要なソリューション
――多くのソリューションの中で、「これは」というものを挙げるとすれば
平野 特に力を入れているソリューションに、金型管理があります。大量生産の工業製品には必ず金型が必要ですが、これらは1つ当たり20万円から30万円、高いものでは400万円くらいするのです。
しかし、これがあまりきちんと管理されていないケースが多い。よくてバーコード管理、チョークで記号番号を書いてあるだけというようなこともあります。数十万から数百万円するものですから、本来そんな扱いではいけないはずですが……。部品は自動車など多くの製品で永久部品ですから、金型の管理をしたいというニーズは高いのです。
金型の管理で何が大変かというと汚れ対策です。金型はグリースでどろどろになってしまうものですし、チョークで書いた記号は消えてしまうことが多く、バーコードは汚れで読めなくなってしまいます。
しかし、RFIDならば電波さえ届けばいいので、金属対応タグを利用すれば読めなくなるということはありません。RFIDを使ったソリューションの多くは、バーコードでもできなくはないものですが、これはバーコードではできないことです。この金型管理ソリューションもイノベーションセンターでお見せしています。
この金型管理は自動車製造の最終的な部品製造システムの一部になりますが、その上の設計システムまで含めて、巨大なエンタープライズのシステムの一部です。金型管理はほんの小さなシステムですが、NECはその上位システムまで含めて、連携したシステム提案ができます。
RFIDの市場規模というのはどこで見るか難しいですが、タグだけで見たらそれほど大きくはなりません。5円のタグを1億枚売っても、5億円ですからね。しかし、タグだけあってもシステムは動きませんから、このような全体のシステムで見ればかなり大きなビジネスになります。例えば米沢のシステムは最終的にはSAPと連携していますので、そこまで含めればすごい金額になります。
RFIDを使うメリットが見えれば普及は進む
――実用化がいまひとつ広がっていない原因は何でしょう
平野 1つは技術的な読み取り精度の問題ですね。よくいわれる価格の問題についてですが、タグが安くなれば本当に使われるのかというと、疑問に感じます。例えば、タグを無料で配れば、それでみんなが使うのでしょうか。
やはり、RFIDを使うことによってどういうROIが出るのか、どう便利になるのかを見せないと、タグが無料であっても使わないと思います。例えば、米沢工場で使っているタグは1個500円です。しかし、リライタブルタイプなので、500回使えば1回1円。使い方によっては、リライタブルタイプの方が安いことになります。
――EPCglobalの動向については
平野 デファクトスタンダード化が進むと価格が下がりますから、その意味ではメリットがありますね。米国向けの売り上げが大きな割合を占める電機メーカーも多いので、米国で広まっているEPCglobalを無視するわけにはいかないでしょう。
――RFIDが普及することで社会はどのように変化しますか
平野 時期は別にして、RFIDは必ず社会インフラの1つになると思います。サプライチェーンで全部つながるという使い方だけでなく、金型管理や文書管理などいろいろな使い方があるでしょう。いまは、RFIDの周波数帯などさまざまな特徴をうまく使うための知恵を出しているところでしょう。
社会全体が動き出すのは、2007年ごろではないでしょうか。リーダ/ライタを用意して、読めたかどうかという実証実験はすでにあちこちで行われていますし、実際のシステムの一部分で使えるかどうかというテストケース導入が増えてくると思います。NECでも「このオペレーションのこの領域でやりたい」といった相談案件が増えています。いままでとは違うという感触を得ています。
最良のB2Bプラットフォームを探せ
EDIのままでいくべきか、WebポータルやXMLに移行すべきか
関連トップページ:B2B | SCM/設計製造 | EIP/コラボレーション
今、日米をはじめとする多くの国の企業が、B2B電子商取引プラットフォームをEDIからWebベースのものに移行させようとしている。そうすることで、自社の取引プラットフォームをサプライヤーや顧客の取引環境に合わせるとともに、電子商取引コストの引き下げを図ろうとしているのだ。だが、現実問題として、今、EDIを完全に捨て去り、取引プラットフォームをWebベースのものに一本化することがベストなのだろうか。本稿では、B2B取引プラットフォームがEDIからWebへと置き換わりつつある今、企業にとっての現実的な選択肢を探るとともに、コストをかけずに複数の取引プラットフォームを維持する方法を見いだしたい。
メリディス・レビンソン ● text by Meridith Levinson
EDIか、それともWebか
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は、WebベースのB2B取引プラットフォームのメリットは認めながらも、しばらくはEDIとWebベースのプラットフォームを並行して運用していくつもりだ photo by Peter Murphy
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は長年、インターネットこそビジネス・プロセスの効率を劇的に高める“妙薬”であると信じてきた。
松下電器産業の北米子会社の1カンパニーで、年間数十億ドルの売上げを誇るパナソニック・インダストリアルは、電子部品、ストレージ・デバイス、半導体といった製品を、OEMパートナーや製造メーカーなどに販売している。
実は、同カンパニーでは、これらの取引先との取り引きに、15年以上も前からEDI(Electronic Data Interchange)を使ってきた。
この間、EDIは期待された役割を忠実に果たしていたが、インターネットの急激な広まりを見たジーノス氏は、インターネットを使えばEDIでは対応できないビジネス・プロセスに対応できるだけでなく、より低いコストで顧客のニーズにこたえられるのではないかと考えるようになった。
つまり、EDIからインターネットに移行することで、数万ドルにも及ぶVAN(Value Added Network)の回線使用料を削減することができると踏んだのである。
実際、インターネットが普及し始めた2001年以降、同社には、多くの取引先(顧客企業)から、EDIは停止していいから、インターネットを使って各種取引(注文、請求、需要予測など)を行えるようにしてほしいとの要望が寄せられるようになっていた。
しかしながら、EDIからインターネットに全面的に移行するという案は、パナソニック・インダストリアルにとって、メリットばかりが見えているわけではなかった。例えば、Webポータル型のEDIを使うようにすると、同社の社員の手作業が増えてしまうため、業務の効率性が損なわれるおそれがあったのである。
「Webポータル型EDIに切り替えれば、当社のスタッフは、顧客のWebサイトにアクセスして注文を確認したり、出荷通知や請求書を送信したりしなければならなくなり、1社の顧客に対する作業負荷が大幅に増えてしまうことが分かった。シミュレーションしてみたところ、結局、業務効率を損なわずにインターネットに切り替えるためには、顧客サービス担当のスタッフを10%増員しなければならない、という結果が出たのだ」(ジーノス氏)
同氏によると、例えば同社の顧客がある製品の需要予測を求めてきた場合には、同社の需要計画担当者は、まず顧客のWebサイトにアクセスし、その顧客が需要を予測してほしいと考えている製品の情報を探さなければならない。その後、担当者は、パナソニック・インダストリアルのERP(Enterprise Resource Planning)システムに製品情報を入力し、ERPシステムがその製品の需要予測を作成すると、その担当者は再び顧客のWebサイトにアクセスして、その予測データを手作業で入力する、という煩雑な作業を行わなければならないのである。
ところが、この作業を従来のEDIで行えば、一連のプロセスが自動化されているため、人手を介す必要はない。
もちろん、パナソニック・インダストリアルのERPシステムを個々の顧客のWebサイトに統合すればこのような手間は省くことができるが、ジーノス氏は、「そのアプローチは、コストの点から選択肢にはなりえない」と肩をすくめる。
また、たとえコスト的に統合が可能であったとしても、システム全体のセキュリティを万全に保つためには細心の注意を払う必要があるし、セキュリティ上の問題から一部の顧客の賛同を得られない可能性も高い。
強まる顧客からのプレッシャー
近年、米国のOEM部品製造メーカーの多くは、パナソニック・インダストリアルのように、EDIを捨ててインターネットへ移行するよう求める、顧客の強い圧力にさらされている。
なかでも、こうした動きが最も顕著に現れるのがエレクトロニクス業界やIT業界である。
IT業界団体のCompTIA(The Computing Technology Industry Association)の電子商取引担当副社長、デビッド・サマー氏によると、コンピュータ・メーカーの多くは、現在使用している混合トランザクション環境(EDIやB2Bポータル、XMLやファイル転送などの各種データ・フォーマットを組み合わせて使用する)を捨て、1つのトランザクション環境に統一することで調達コストを削減したいと考えているという。
そうした考えを実現するための有力な選択肢と目されているのがB2Bポータルである。B2BポータルはWebベースであるため、すべての取引パートナーが導入しやすく、データ入力に要する負担をOEM部品のサプライヤー側に転嫁することができるため、製造メーカーが低コストでデータ収集を行うことが可能だからだ。
だが、ポータルは製造メーカーにはメリットがある一方で、OEM部品メーカーやサプライヤーには必ずしもメリットがあるとは限らない。そのため、ポータルの採用を製造メーカーがOEMメーカーやサプライヤーに強いるという状況も生まれているようだ。
CompTIAが2005年の秋に行ったB2B電子商取引に関する調査によると、Webポータルを利用したB2B取引のメリットはEDIなどのほかのB2B取引プラットフォームを使う場合に比べて少ないと答えた企業が、77%にも達している。
というのも、例えばポータルを使うことで、EDIでは自動化されていた作業を手作業で補わなければならなくなるほか、手作業で情報を入力することにより、製品番号や数量の入力ミスなどが発生してしまう恐れも強まるからである。
取引プラットフォームの標準化は時期尚早!?
実際のところ、B2B取引プラットフォームの整備が進み、インターネット経由でのB2B取引が増えているとされる日系の製造メーカーでも、取引プラットフォームを完全に標準化(統一)している企業は少ないようだ。さらに、製造メーカー側がOEM部品のサプライヤーにEDIを捨てるように強いることについては、多くのCIOや電子商取引専門家の間から“本末転倒”であるとの指摘がなされている。
日立製作所とIBMのハードディスク・ドライブ事業部門が統合して2003年に設立された年商42億ドルのハードディスク・メーカー、日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのCIO、ランガ・ジャヤラマン氏は、「EDIを捨てるということは、B2Bの取引においては、大きな退歩になる」と語気を強める。また、年商111億ドルの電子機器メーカーであるアベントのCIO、スティーブ・フィリップス氏も、「現時点でEDIを捨ててしまうことは決して合理的な解決策とは言えない。すでにEDIシステムを構築している企業にとって、それを他のシステムに切り替えるためのコストはきわめて高くつくからだ」と主張する。
実際、EDIを捨て去ることで、ビジネスに悪影響が生じる可能性もある。AMRリサーチの調査担当副社長、ビル・スワントン氏は、「EDIからWebへの移行を強いられたOEM部品メーカーは、移行にかかったコストをサプライチェーンから回収しようとするため、長期的に見ると製品を購入する側にもコスト増となって跳ね返ってくる」と指摘する。
また、現実的には、1つの取引プラットフォームですべての取引先やビジネス・プロセスをサポートすることは難しいという問題もある。
ガートナーでアーキテクチャ/インフラストラクチャ・グループの調査ディレクターを務めるベノイト・ルルー氏は、「一般的には、企業は、取引先とビジネスを行うためのプラットフォームとして、ポータルやファイル転送、XML、EDI、Webサービスなど、5種類ほどの選択肢を用意するのが普通だろう。でないと、すべての取引相手の要望にこたえることは困難だ」と語る。
COLUMN 1 : 中小/中堅企業が電子商取引への投資から最大限にメリットを引き出す方法
現在、B2Bの電子商取引を支えるプラットフォーム環境は、中小/中堅規模の企業に対して、彼らがこれまでに経験したことのない課題を提起している。
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RosettaNetとEDIを並用する
上のような問題があるにもかかわらず、多くの製造メーカーがWebポータルだけを熱狂的に歓迎したがるのはなぜだろうか。その理由を解き明かすには、電子商取引の黎明期までさかのぼる必要がある。
実は、電子商取引の黎明期は、まさに“EDIの時代”であった。当時においては、EDIは革命的な技術だった。注文、出荷、金融取引に関するデータをやり取りする、初めての標準的な手段であり、紙ベースのプロセスを電子文書ベースにして自動化することで、製造業界のサプライチェーンを効率化できると考えられていたのである。
だが、実際に1970年代から1980年代にかけてEDIを導入したのは、ソフトウェアのライセンスを購入することができるとともに、システムの連携部分を継続的に運用管理し、各種のプロトコル、接続技術、データ・フォーマットをサポートし、年間数十万ドルにも上るVANの料金を支払うことのできる大企業だけであった。
言いかえれば、運用コストがかさむEDIを実装する資金的な余裕がない中小規模のサプライヤーとの取り引きまで、その恩恵が及ぶことはなかったのである。
そして、1990年代末にインターネットが爆発的な普及の兆しを見せると、製造メーカーのCIOたちは、小規模な取引パートナーとの取り引きを効率化させるためのソリューションとして、こぞってWebに飛びついた。
アロー・エレクトロニクスのCIO、マーク・セトル氏によると、当時、Webは、在庫をリアルタイムで管理するという、製造メーカーのCIOであればだれしもが夢に見ることを実現するためのソリューションとして、一躍脚光を浴びることになったという(EDIのトランザクションは、それまでバッチ処理されていた)。
これにより、多くの企業がWebベースのポータルを構築することになった。
そして、WebがB2B取引プラットフォームとして普及するようになったのとほぼ同じころ、IBMやモトローラ、ソニーなどITおよびエレクトロニクス業界の企業40社が、「RosettaNet」と呼ばれる非営利のコンソーシアムを設立し、リアルタイムB2B取引に対応するXMLベース標準の開発に乗り出した。
RosettaNetの代表者であるハーマン・スティフォウト氏によると、IT業界におけるB2B取引は非常に込み入っており、RosettaNetによる標準化がなされる前は、各企業は価格の見積もり、出荷情報の伝達、請求書の消し込みといった作業を独自のEDIのバリエーションを使って、行っていたという。
つまり、RosettaNetで取引プラットフォームが標準化されたことによって初めて、製品設計、在庫管理、製品情報の送信といったビジネス・プロセスの効率的な自動化が図れたわけである。
とはいえ、アロー・エレクトロニクスのセトル氏によると、エレクトロニクス業界や自動車業界の企業においても、B2B取引プラットフォームとしてRosettaNetだけを使っている企業は少なく、EDIと並行して運用している企業がほとんどだという。
ポータルへの一本化で運用コストを削減
セントラル・リューマーのIT担当副社長ケビン・ウィットフィールド氏は、「B2B取引プラットフォームを思い切ってポータルにしたが、当社の取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、まだ1社だけだ」と語る photo by Peter Murphy
セトル氏が指摘するように、現在は、EDIとWebベースの取引プラットフォームを併用する“ハイブリッド型”のB2B電子商取引環境を運用している企業は多い。とはいえ、複数の取引プラットフォームをサポートする場合は、コストの増大や運用の複雑化といった問題を避けて通ることはできない。
そうしたなか、中規模の紙流通業者、セントラル・リューマーは、取引プラットフォームを標準化することで、運用コストを削減しようと試みている。
年商7億5,000万ドルの同社でIT担当副社長を務めるケビン・ウィットフィールド氏は、「我々は決して、2種類、3種類、あるいはそれ以上の種類の電子商取引システムを運用したいとは思わない。そうした体制では、業務が複雑になり、経費がかさんでしまうのは分かりきっているからだ」と説明する。
同氏によるとこれまで、セントラル・リューマーのビジネスは、ほとんどが電話とファクスで行われており、EDIを使っている顧客は2社にすぎなかったという。
そうしたなか、取引をより効率的に進めるべく、同社ではB2B取引システムの構築プロジェクトを立ち上げたが、そこで検討した結果、EDIだと構築・運用コストが高くつくこともあって、リエイゾン・テクノロジーズがホストするWebポータルを採用することを決めたという。そして現在、同社はこのポータルを紙業界の事実上の標準取引プラットフォームとして推奨しようとしているところだ。
ウィットフィールド氏によると、リエイゾン・テクノロジーズが提供するポータルを使えば、XMLベースのシステムによってサプライヤーの在庫をリアルタイムに確認できるため、販売会社や印刷会社、グラフィック・デザイン会社などからの電話注文にも、迅速に対応することが可能だという。
AMRリサーチのスワントン氏は、「ポータルがB2B取引プラットフォームとして歓迎されるのは、ブラウザさえあればだれでもアクセスすることができるからだ。取引パートナーの多くがポータルを使うようになれば、ポータルを構築するために行ってきたそれまでの投資を最大限に生かすことができる。さらに、Webポータルを在庫管理や調達、経理などの業務に対応しているバックエンド・システムに統合することができれば、調達や請求業務にまつわるビジネス・プロセスを全面的に自動化することも可能だ」と説明する。
プラットフォームの統一を阻むベンダーの思惑
ただし、ポータルを使ってビジネス・プロセスを自動化する際には、常に“バランス”の問題を考慮する必要がある。Webポータルをバックエンド・システムに統合するのは口で言うほど簡単な作業ではないし、サプライヤー側でメーカーと同レベルの自動化を達成するのも結構難しいのだ。
すでにEDIを構築しているサプライヤーは、サードパーティのインテグレーション・サービスを利用することで、自社のシステムを顧客のポータルに接続することができる(セントラル・リューマーもサプライヤーにこのアプローチを提案している)が、サプライヤーがすべてのメーカーに対してこうした対応をとろうとすると、あまりにもコストがかかりすぎる。こうした背景から、現在のところ、セントラル・リューマーの取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、わずか1社(全米最大のサプライヤーであるインターナショナル・ペーパー)だけである。
ウィットフィールド氏によると、サプライヤーの中には、ポータルを挟んで電子商取引を行うことに消極的なところや、XMLトランザクションをサポートするだけの技術力を持っていないところが多くあるという。
その一方で従来から、多くの企業が使用しているEDIは、かつての欠点(トランザクションのバッチ処理など)の一部を解消することに成功している。現在では、インターネット経由でEDIデータを送信することができるため、EDIでもリアルタイム処理を行うことが可能なのだ。また、EDIは、企業にとって依然として大きな投資ではあるが、以前と比べれば構築コストは下がっている。さらに、ポータルやRosettaNetといった新たな技術に対抗するため、VANの料金も引き下げられている。
スターリング・コマース、GSX、バイアコアなどと同様、B2Bデータ交換やB2Bインテグレーション・サービスを提供するE2オープンでソリューションズ・エンジニアリング担当副社長を務めるロブ・バレット氏は、B2Bの電子商取引プラットフォームに関して、EDIか、Webか、といった意見の対立が生じている背景には、「容易に統合できないような製品を開発したベンダーの責任がある」と主張する。
というのも、ポータル・ベンダーの製品では、EDIの送信データを処理することができず、一方、EDI側ではポータル製品のデータを処理することができないため、多くの企業はミドルウェア・ベンダーが双方のシステムを統合してくれることに期待するしかないのだ。もちろん、多くの企業はコストのかかるこのような統合作業を自らやりたいとは思わないので、どれか1つのシステムを選択することになる。そしてその場合には、より多くの人が容易に導入できるという理由から、ポータルを選ぶ傾向が強い。そうなると、それまでEDIを使っていた取引パートナーも、ポータルの使用を迫られることになるのだ。バレット氏は、この状況について、「本来、取引パートナーの間では、ビジネス・プロセスに関する議論が先に行われるべきなのに、それを技術を巡る“宗教論争”に変えてしまったベンダーには、強い憤りを感じる」と声を荒げる。
ファイル変換プログラムを開発
もっとも、バレット氏が指摘するように、B2B取引プラットフォームに関する“宗教論争”はすぐには収まらないだろう。そのため、前述したように、現時点では多くの企業が、過去に投資したEDIから最新のWebベース・システムに至るまで、さまざまなプラットフォームをサポートしているというのが実情だ。
複数のプラットフォームをサポートしようとすると、1つのシステムで標準化する場合に比べてコストが高くつくものだが、アロー・エレクトロニクスや日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのように、複数の環境を維持したままでコストを抑えることに成功した企業もある。
アロー・エレクトロニクスは現在、EDI、RosettaNetなどのXML標準と、ポータル、フラット・ファイルなどのB2B商取引標準をサポートしている。年商110億ドルの同社は、約600社のサプライヤーから仕入れた半導体などのエレクトロニクス製品を13万社を超えるOEMパートナーに卸しているほか、在庫管理などのビジネス・サービスも提供している。
そこで、同社は個々の取引パートナーの技術的な要望にこたえるため、ウェブメソッドの開発プラットフォームを使って、顧客から受け取ったさまざまなフォーマット(のファイル)を自社で処理できるフォーマットに自動的に変換するためのプログラムを開発した。
具体的に説明すると、アローのシステムではまず、特定のトランザクションの発信元やトランザクションのタイプ(購入注文、請求書、事前出荷通知など)、フォーマット(Excelファイル、EDI、RosettaNetなど)、ファイルに含まれるデータなどが特定される。その後、各種のトランザクションに対応できる汎用データ・マップを備えたマッピング・プログラムが、顧客の使っているフォーマットをアローの財務システムや受注システムで処理可能なフォーマットに変換する。マッピング・プログラムでの処理が終わると、今度はファイルを送信するためのプラットフォームが決定され、購入注文は販売受注システムに、請求書は財務システムに、それぞれ転送されることになる。これによって、取引パートナーが使用しているプラットフォームに関係なく対応することができるわけだ。
EDI業務をアウトソースする
一方、日立グローバル・ストレージは、E2オープンが提供するトレーディング・ハブにEDI業務をそのままアウトソースすることで、取引パートナーに新しいプラットフォームの導入を強いることなく、EDI関連のコストを削減することに成功した。
日立グローバル・ストレージのCIO、ジャヤラマン氏によると1996年からEDIを利用している同社では、EDIインフラストラクチャを維持するために、毎年数十万ドルを支出しているという。そのコストに嫌気が差したジャヤラマン氏は、EDIを全廃してWebベースの取引プラットフォームに移行することを考えたが、同社と取り引きしているサプライヤーの中には、EDIを使った卸売りシステムを利用しているところも多かっため、決断を下しかねていた。そうしたなか、日本とフィリピンにある工場、およびこれらの工場と取り引きのあるサプライヤーとの間ですでに導入していたE2オープンのソフトウェア使って、EDIファイルをE2オープンのトレーディング・ハブから送信することを思いついたのである。
現在、E2オープンは、顧客のためにEDIインフラストラクチャを維持し、必要に応じてアップデートを行っている。例えば、日立グローバル・ストレージのある取引パートナーが新たに事業所を開設したり、別のトランザクションを追加するように求めてきたりしたときには、E2オープンが新しいIPアドレスやトランザクションを既存のEDIマップとプロトコルに追加するのだ。ジャヤラマン氏は、「E2オープンへの移行に要したコストは、9カ月で回収した。その結果、取引パートナーに迷惑をかけることなく、自社のコストを削減することができた」と誇らしげに語る。
日立グローバル・ストレージがとった方法は、自前でポータルを構築したり、何千行もの注文データを手作業で入力したりするよりははるかに効率的だ。
冒頭で紹介した、パナソニック・インダストリアルのジーノス氏は、現時点ではEDIを全廃し、Webベースの新しい取引プラットフォームに移行することは考えていないという。同氏は、EDIを廃止するよう求める顧客に対し、それによって起こるマイナス面を考慮してくれるよう説得を続けているという。そのおかげで、現在のところは、それぞれの顧客が運営するポータルを何種類も並行して利用するという事態には至っていない。
「説得の結果、いずれの顧客も、当社が最後の1社になるまで、彼らのポータルには加わらないという当社の方針を容認してくれた」(ジーノス氏)
EDIのままでいくべきか、WebポータルやXMLに移行すべきか
関連トップページ:B2B | SCM/設計製造 | EIP/コラボレーション
今、日米をはじめとする多くの国の企業が、B2B電子商取引プラットフォームをEDIからWebベースのものに移行させようとしている。そうすることで、自社の取引プラットフォームをサプライヤーや顧客の取引環境に合わせるとともに、電子商取引コストの引き下げを図ろうとしているのだ。だが、現実問題として、今、EDIを完全に捨て去り、取引プラットフォームをWebベースのものに一本化することがベストなのだろうか。本稿では、B2B取引プラットフォームがEDIからWebへと置き換わりつつある今、企業にとっての現実的な選択肢を探るとともに、コストをかけずに複数の取引プラットフォームを維持する方法を見いだしたい。
メリディス・レビンソン ● text by Meridith Levinson
EDIか、それともWebか
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は、WebベースのB2B取引プラットフォームのメリットは認めながらも、しばらくはEDIとWebベースのプラットフォームを並行して運用していくつもりだ photo by Peter Murphy
パナソニック・インダストリアルの社内販売/業務担当ディレクター、ケン・ジーノス氏は長年、インターネットこそビジネス・プロセスの効率を劇的に高める“妙薬”であると信じてきた。
松下電器産業の北米子会社の1カンパニーで、年間数十億ドルの売上げを誇るパナソニック・インダストリアルは、電子部品、ストレージ・デバイス、半導体といった製品を、OEMパートナーや製造メーカーなどに販売している。
実は、同カンパニーでは、これらの取引先との取り引きに、15年以上も前からEDI(Electronic Data Interchange)を使ってきた。
この間、EDIは期待された役割を忠実に果たしていたが、インターネットの急激な広まりを見たジーノス氏は、インターネットを使えばEDIでは対応できないビジネス・プロセスに対応できるだけでなく、より低いコストで顧客のニーズにこたえられるのではないかと考えるようになった。
つまり、EDIからインターネットに移行することで、数万ドルにも及ぶVAN(Value Added Network)の回線使用料を削減することができると踏んだのである。
実際、インターネットが普及し始めた2001年以降、同社には、多くの取引先(顧客企業)から、EDIは停止していいから、インターネットを使って各種取引(注文、請求、需要予測など)を行えるようにしてほしいとの要望が寄せられるようになっていた。
しかしながら、EDIからインターネットに全面的に移行するという案は、パナソニック・インダストリアルにとって、メリットばかりが見えているわけではなかった。例えば、Webポータル型のEDIを使うようにすると、同社の社員の手作業が増えてしまうため、業務の効率性が損なわれるおそれがあったのである。
「Webポータル型EDIに切り替えれば、当社のスタッフは、顧客のWebサイトにアクセスして注文を確認したり、出荷通知や請求書を送信したりしなければならなくなり、1社の顧客に対する作業負荷が大幅に増えてしまうことが分かった。シミュレーションしてみたところ、結局、業務効率を損なわずにインターネットに切り替えるためには、顧客サービス担当のスタッフを10%増員しなければならない、という結果が出たのだ」(ジーノス氏)
同氏によると、例えば同社の顧客がある製品の需要予測を求めてきた場合には、同社の需要計画担当者は、まず顧客のWebサイトにアクセスし、その顧客が需要を予測してほしいと考えている製品の情報を探さなければならない。その後、担当者は、パナソニック・インダストリアルのERP(Enterprise Resource Planning)システムに製品情報を入力し、ERPシステムがその製品の需要予測を作成すると、その担当者は再び顧客のWebサイトにアクセスして、その予測データを手作業で入力する、という煩雑な作業を行わなければならないのである。
ところが、この作業を従来のEDIで行えば、一連のプロセスが自動化されているため、人手を介す必要はない。
もちろん、パナソニック・インダストリアルのERPシステムを個々の顧客のWebサイトに統合すればこのような手間は省くことができるが、ジーノス氏は、「そのアプローチは、コストの点から選択肢にはなりえない」と肩をすくめる。
また、たとえコスト的に統合が可能であったとしても、システム全体のセキュリティを万全に保つためには細心の注意を払う必要があるし、セキュリティ上の問題から一部の顧客の賛同を得られない可能性も高い。
強まる顧客からのプレッシャー
近年、米国のOEM部品製造メーカーの多くは、パナソニック・インダストリアルのように、EDIを捨ててインターネットへ移行するよう求める、顧客の強い圧力にさらされている。
なかでも、こうした動きが最も顕著に現れるのがエレクトロニクス業界やIT業界である。
IT業界団体のCompTIA(The Computing Technology Industry Association)の電子商取引担当副社長、デビッド・サマー氏によると、コンピュータ・メーカーの多くは、現在使用している混合トランザクション環境(EDIやB2Bポータル、XMLやファイル転送などの各種データ・フォーマットを組み合わせて使用する)を捨て、1つのトランザクション環境に統一することで調達コストを削減したいと考えているという。
そうした考えを実現するための有力な選択肢と目されているのがB2Bポータルである。B2BポータルはWebベースであるため、すべての取引パートナーが導入しやすく、データ入力に要する負担をOEM部品のサプライヤー側に転嫁することができるため、製造メーカーが低コストでデータ収集を行うことが可能だからだ。
だが、ポータルは製造メーカーにはメリットがある一方で、OEM部品メーカーやサプライヤーには必ずしもメリットがあるとは限らない。そのため、ポータルの採用を製造メーカーがOEMメーカーやサプライヤーに強いるという状況も生まれているようだ。
CompTIAが2005年の秋に行ったB2B電子商取引に関する調査によると、Webポータルを利用したB2B取引のメリットはEDIなどのほかのB2B取引プラットフォームを使う場合に比べて少ないと答えた企業が、77%にも達している。
というのも、例えばポータルを使うことで、EDIでは自動化されていた作業を手作業で補わなければならなくなるほか、手作業で情報を入力することにより、製品番号や数量の入力ミスなどが発生してしまう恐れも強まるからである。
取引プラットフォームの標準化は時期尚早!?
実際のところ、B2B取引プラットフォームの整備が進み、インターネット経由でのB2B取引が増えているとされる日系の製造メーカーでも、取引プラットフォームを完全に標準化(統一)している企業は少ないようだ。さらに、製造メーカー側がOEM部品のサプライヤーにEDIを捨てるように強いることについては、多くのCIOや電子商取引専門家の間から“本末転倒”であるとの指摘がなされている。
日立製作所とIBMのハードディスク・ドライブ事業部門が統合して2003年に設立された年商42億ドルのハードディスク・メーカー、日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのCIO、ランガ・ジャヤラマン氏は、「EDIを捨てるということは、B2Bの取引においては、大きな退歩になる」と語気を強める。また、年商111億ドルの電子機器メーカーであるアベントのCIO、スティーブ・フィリップス氏も、「現時点でEDIを捨ててしまうことは決して合理的な解決策とは言えない。すでにEDIシステムを構築している企業にとって、それを他のシステムに切り替えるためのコストはきわめて高くつくからだ」と主張する。
実際、EDIを捨て去ることで、ビジネスに悪影響が生じる可能性もある。AMRリサーチの調査担当副社長、ビル・スワントン氏は、「EDIからWebへの移行を強いられたOEM部品メーカーは、移行にかかったコストをサプライチェーンから回収しようとするため、長期的に見ると製品を購入する側にもコスト増となって跳ね返ってくる」と指摘する。
また、現実的には、1つの取引プラットフォームですべての取引先やビジネス・プロセスをサポートすることは難しいという問題もある。
ガートナーでアーキテクチャ/インフラストラクチャ・グループの調査ディレクターを務めるベノイト・ルルー氏は、「一般的には、企業は、取引先とビジネスを行うためのプラットフォームとして、ポータルやファイル転送、XML、EDI、Webサービスなど、5種類ほどの選択肢を用意するのが普通だろう。でないと、すべての取引相手の要望にこたえることは困難だ」と語る。
COLUMN 1 : 中小/中堅企業が電子商取引への投資から最大限にメリットを引き出す方法
現在、B2Bの電子商取引を支えるプラットフォーム環境は、中小/中堅規模の企業に対して、彼らがこれまでに経験したことのない課題を提起している。
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RosettaNetとEDIを並用する
上のような問題があるにもかかわらず、多くの製造メーカーがWebポータルだけを熱狂的に歓迎したがるのはなぜだろうか。その理由を解き明かすには、電子商取引の黎明期までさかのぼる必要がある。
実は、電子商取引の黎明期は、まさに“EDIの時代”であった。当時においては、EDIは革命的な技術だった。注文、出荷、金融取引に関するデータをやり取りする、初めての標準的な手段であり、紙ベースのプロセスを電子文書ベースにして自動化することで、製造業界のサプライチェーンを効率化できると考えられていたのである。
だが、実際に1970年代から1980年代にかけてEDIを導入したのは、ソフトウェアのライセンスを購入することができるとともに、システムの連携部分を継続的に運用管理し、各種のプロトコル、接続技術、データ・フォーマットをサポートし、年間数十万ドルにも上るVANの料金を支払うことのできる大企業だけであった。
言いかえれば、運用コストがかさむEDIを実装する資金的な余裕がない中小規模のサプライヤーとの取り引きまで、その恩恵が及ぶことはなかったのである。
そして、1990年代末にインターネットが爆発的な普及の兆しを見せると、製造メーカーのCIOたちは、小規模な取引パートナーとの取り引きを効率化させるためのソリューションとして、こぞってWebに飛びついた。
アロー・エレクトロニクスのCIO、マーク・セトル氏によると、当時、Webは、在庫をリアルタイムで管理するという、製造メーカーのCIOであればだれしもが夢に見ることを実現するためのソリューションとして、一躍脚光を浴びることになったという(EDIのトランザクションは、それまでバッチ処理されていた)。
これにより、多くの企業がWebベースのポータルを構築することになった。
そして、WebがB2B取引プラットフォームとして普及するようになったのとほぼ同じころ、IBMやモトローラ、ソニーなどITおよびエレクトロニクス業界の企業40社が、「RosettaNet」と呼ばれる非営利のコンソーシアムを設立し、リアルタイムB2B取引に対応するXMLベース標準の開発に乗り出した。
RosettaNetの代表者であるハーマン・スティフォウト氏によると、IT業界におけるB2B取引は非常に込み入っており、RosettaNetによる標準化がなされる前は、各企業は価格の見積もり、出荷情報の伝達、請求書の消し込みといった作業を独自のEDIのバリエーションを使って、行っていたという。
つまり、RosettaNetで取引プラットフォームが標準化されたことによって初めて、製品設計、在庫管理、製品情報の送信といったビジネス・プロセスの効率的な自動化が図れたわけである。
とはいえ、アロー・エレクトロニクスのセトル氏によると、エレクトロニクス業界や自動車業界の企業においても、B2B取引プラットフォームとしてRosettaNetだけを使っている企業は少なく、EDIと並行して運用している企業がほとんどだという。
ポータルへの一本化で運用コストを削減
セントラル・リューマーのIT担当副社長ケビン・ウィットフィールド氏は、「B2B取引プラットフォームを思い切ってポータルにしたが、当社の取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、まだ1社だけだ」と語る photo by Peter Murphy
セトル氏が指摘するように、現在は、EDIとWebベースの取引プラットフォームを併用する“ハイブリッド型”のB2B電子商取引環境を運用している企業は多い。とはいえ、複数の取引プラットフォームをサポートする場合は、コストの増大や運用の複雑化といった問題を避けて通ることはできない。
そうしたなか、中規模の紙流通業者、セントラル・リューマーは、取引プラットフォームを標準化することで、運用コストを削減しようと試みている。
年商7億5,000万ドルの同社でIT担当副社長を務めるケビン・ウィットフィールド氏は、「我々は決して、2種類、3種類、あるいはそれ以上の種類の電子商取引システムを運用したいとは思わない。そうした体制では、業務が複雑になり、経費がかさんでしまうのは分かりきっているからだ」と説明する。
同氏によるとこれまで、セントラル・リューマーのビジネスは、ほとんどが電話とファクスで行われており、EDIを使っている顧客は2社にすぎなかったという。
そうしたなか、取引をより効率的に進めるべく、同社ではB2B取引システムの構築プロジェクトを立ち上げたが、そこで検討した結果、EDIだと構築・運用コストが高くつくこともあって、リエイゾン・テクノロジーズがホストするWebポータルを採用することを決めたという。そして現在、同社はこのポータルを紙業界の事実上の標準取引プラットフォームとして推奨しようとしているところだ。
ウィットフィールド氏によると、リエイゾン・テクノロジーズが提供するポータルを使えば、XMLベースのシステムによってサプライヤーの在庫をリアルタイムに確認できるため、販売会社や印刷会社、グラフィック・デザイン会社などからの電話注文にも、迅速に対応することが可能だという。
AMRリサーチのスワントン氏は、「ポータルがB2B取引プラットフォームとして歓迎されるのは、ブラウザさえあればだれでもアクセスすることができるからだ。取引パートナーの多くがポータルを使うようになれば、ポータルを構築するために行ってきたそれまでの投資を最大限に生かすことができる。さらに、Webポータルを在庫管理や調達、経理などの業務に対応しているバックエンド・システムに統合することができれば、調達や請求業務にまつわるビジネス・プロセスを全面的に自動化することも可能だ」と説明する。
プラットフォームの統一を阻むベンダーの思惑
ただし、ポータルを使ってビジネス・プロセスを自動化する際には、常に“バランス”の問題を考慮する必要がある。Webポータルをバックエンド・システムに統合するのは口で言うほど簡単な作業ではないし、サプライヤー側でメーカーと同レベルの自動化を達成するのも結構難しいのだ。
すでにEDIを構築しているサプライヤーは、サードパーティのインテグレーション・サービスを利用することで、自社のシステムを顧客のポータルに接続することができる(セントラル・リューマーもサプライヤーにこのアプローチを提案している)が、サプライヤーがすべてのメーカーに対してこうした対応をとろうとすると、あまりにもコストがかかりすぎる。こうした背景から、現在のところ、セントラル・リューマーの取引パートナーの中でポータルを使用しているのは、わずか1社(全米最大のサプライヤーであるインターナショナル・ペーパー)だけである。
ウィットフィールド氏によると、サプライヤーの中には、ポータルを挟んで電子商取引を行うことに消極的なところや、XMLトランザクションをサポートするだけの技術力を持っていないところが多くあるという。
その一方で従来から、多くの企業が使用しているEDIは、かつての欠点(トランザクションのバッチ処理など)の一部を解消することに成功している。現在では、インターネット経由でEDIデータを送信することができるため、EDIでもリアルタイム処理を行うことが可能なのだ。また、EDIは、企業にとって依然として大きな投資ではあるが、以前と比べれば構築コストは下がっている。さらに、ポータルやRosettaNetといった新たな技術に対抗するため、VANの料金も引き下げられている。
スターリング・コマース、GSX、バイアコアなどと同様、B2Bデータ交換やB2Bインテグレーション・サービスを提供するE2オープンでソリューションズ・エンジニアリング担当副社長を務めるロブ・バレット氏は、B2Bの電子商取引プラットフォームに関して、EDIか、Webか、といった意見の対立が生じている背景には、「容易に統合できないような製品を開発したベンダーの責任がある」と主張する。
というのも、ポータル・ベンダーの製品では、EDIの送信データを処理することができず、一方、EDI側ではポータル製品のデータを処理することができないため、多くの企業はミドルウェア・ベンダーが双方のシステムを統合してくれることに期待するしかないのだ。もちろん、多くの企業はコストのかかるこのような統合作業を自らやりたいとは思わないので、どれか1つのシステムを選択することになる。そしてその場合には、より多くの人が容易に導入できるという理由から、ポータルを選ぶ傾向が強い。そうなると、それまでEDIを使っていた取引パートナーも、ポータルの使用を迫られることになるのだ。バレット氏は、この状況について、「本来、取引パートナーの間では、ビジネス・プロセスに関する議論が先に行われるべきなのに、それを技術を巡る“宗教論争”に変えてしまったベンダーには、強い憤りを感じる」と声を荒げる。
ファイル変換プログラムを開発
もっとも、バレット氏が指摘するように、B2B取引プラットフォームに関する“宗教論争”はすぐには収まらないだろう。そのため、前述したように、現時点では多くの企業が、過去に投資したEDIから最新のWebベース・システムに至るまで、さまざまなプラットフォームをサポートしているというのが実情だ。
複数のプラットフォームをサポートしようとすると、1つのシステムで標準化する場合に比べてコストが高くつくものだが、アロー・エレクトロニクスや日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズのように、複数の環境を維持したままでコストを抑えることに成功した企業もある。
アロー・エレクトロニクスは現在、EDI、RosettaNetなどのXML標準と、ポータル、フラット・ファイルなどのB2B商取引標準をサポートしている。年商110億ドルの同社は、約600社のサプライヤーから仕入れた半導体などのエレクトロニクス製品を13万社を超えるOEMパートナーに卸しているほか、在庫管理などのビジネス・サービスも提供している。
そこで、同社は個々の取引パートナーの技術的な要望にこたえるため、ウェブメソッドの開発プラットフォームを使って、顧客から受け取ったさまざまなフォーマット(のファイル)を自社で処理できるフォーマットに自動的に変換するためのプログラムを開発した。
具体的に説明すると、アローのシステムではまず、特定のトランザクションの発信元やトランザクションのタイプ(購入注文、請求書、事前出荷通知など)、フォーマット(Excelファイル、EDI、RosettaNetなど)、ファイルに含まれるデータなどが特定される。その後、各種のトランザクションに対応できる汎用データ・マップを備えたマッピング・プログラムが、顧客の使っているフォーマットをアローの財務システムや受注システムで処理可能なフォーマットに変換する。マッピング・プログラムでの処理が終わると、今度はファイルを送信するためのプラットフォームが決定され、購入注文は販売受注システムに、請求書は財務システムに、それぞれ転送されることになる。これによって、取引パートナーが使用しているプラットフォームに関係なく対応することができるわけだ。
EDI業務をアウトソースする
一方、日立グローバル・ストレージは、E2オープンが提供するトレーディング・ハブにEDI業務をそのままアウトソースすることで、取引パートナーに新しいプラットフォームの導入を強いることなく、EDI関連のコストを削減することに成功した。
日立グローバル・ストレージのCIO、ジャヤラマン氏によると1996年からEDIを利用している同社では、EDIインフラストラクチャを維持するために、毎年数十万ドルを支出しているという。そのコストに嫌気が差したジャヤラマン氏は、EDIを全廃してWebベースの取引プラットフォームに移行することを考えたが、同社と取り引きしているサプライヤーの中には、EDIを使った卸売りシステムを利用しているところも多かっため、決断を下しかねていた。そうしたなか、日本とフィリピンにある工場、およびこれらの工場と取り引きのあるサプライヤーとの間ですでに導入していたE2オープンのソフトウェア使って、EDIファイルをE2オープンのトレーディング・ハブから送信することを思いついたのである。
現在、E2オープンは、顧客のためにEDIインフラストラクチャを維持し、必要に応じてアップデートを行っている。例えば、日立グローバル・ストレージのある取引パートナーが新たに事業所を開設したり、別のトランザクションを追加するように求めてきたりしたときには、E2オープンが新しいIPアドレスやトランザクションを既存のEDIマップとプロトコルに追加するのだ。ジャヤラマン氏は、「E2オープンへの移行に要したコストは、9カ月で回収した。その結果、取引パートナーに迷惑をかけることなく、自社のコストを削減することができた」と誇らしげに語る。
日立グローバル・ストレージがとった方法は、自前でポータルを構築したり、何千行もの注文データを手作業で入力したりするよりははるかに効率的だ。
冒頭で紹介した、パナソニック・インダストリアルのジーノス氏は、現時点ではEDIを全廃し、Webベースの新しい取引プラットフォームに移行することは考えていないという。同氏は、EDIを廃止するよう求める顧客に対し、それによって起こるマイナス面を考慮してくれるよう説得を続けているという。そのおかげで、現在のところは、それぞれの顧客が運営するポータルを何種類も並行して利用するという事態には至っていない。
「説得の結果、いずれの顧客も、当社が最後の1社になるまで、彼らのポータルには加わらないという当社の方針を容認してくれた」(ジーノス氏)