SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
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【特別講演】松下電器におけるIT経営革新--牧田孝衞氏 松下電器産業 情報システム担当役員 IT革新本部副本部長
スピード経営に向け情報基盤の最適化を推進
松下電器産業は1918年の創業以来、規格型商品の大量生産によって成長を遂げた。だが、過去の成功体験から脱却できず、90年代に入るとさまざまな課題が生じてきた。具体的には、事業の重複、事業部門と営業部門の分断、大企業病の3つである。
そうしたなかで、21世紀型ビジネスモデルの実現に向けた改革前夜ともいうべきいくつかの取り組みが97年からスタートした。一例を挙げると、デジタル家電を担当する社内カンパニーのAVC社(当時)でサプライチェーンの取り組みが始まった。そのトリガーになったのは、「週次べースで配送してほしい」という海外の大手量販店からの要請だった。当時、商品が顧客に届くまでの仕組みは複雑で、時間がかかっていた。
また、半導体部門でも99年4月から改革に着手した。それまでは松下電器の半導体開発本部がR&D(研究開発)を受け持ち、松下電子工業が生産を、松下電器の半導体営業本部が営業をそれぞれ担当し、縦割り組織で対応していたが、それを一人の責任者の下に開発・生産・販売を一体運営する体制に切り替えた。半導体部門の取り組みは組織再編のテストケースとして実施され、これが2003年に実施した全社での事業再編の基本的な考え方となっている。
トップ主導でIT革新を推進
情報システムの改革に着手したのも90年代後半のことだ。事業部制を基本としていた松下電器では、従来、本社の役割は主に流通や管理部門の業務を中心とした全社的な情報戦略の策定やネットワーク、コードなどのIT基盤の全社行政機能を担っていた。経営環境の変化に俊敏に対応できる製販一体の戦略的事業運営をビジネスプロセスと情報システムの両面から実現するため、新たな情報戦略の方向を99年7月に打ち出した。この情報戦略は、(1)全体最適の視点からビジネスプロセスの改革を推進する、(2)変化に俊敏に対応できる情報システムの統合・連携を進める、(3)戦略的な情報化のテーマには事業部ではなく本社として投資する、(4)事業部に散在していた情報システム部門を再編する――という4つの視点で練った。
2000年6月に社長に就任した中村邦夫会長(前社長)は、「破壊」と「創造」をキーワードとして発信し、「守るべきは松下電器の経営理念だけ」と経営革新に着手した。中村会長の経営に対する基本的な考えは、「顧客満足・価値の追求」「軽くて速い経営の実現」「創造的時間の創出」である。
経営革新を進めるに当たり、ITを基軸とするとともに、IT革命はトップ主導で行うことを中村会長は繰り返し発信した。そして、全社のITを基軸として経営革新を推進するエンジンの役割を担う組織としてIT革新本部を社長就任1カ月後に発足させ、本部長に自らが就任した。
IT革新で中核に据えたのは「モノづくりにおけるSCM(仕入れ先からの調達・生産・物流・顧客に商品を届けるサプライチェーン)の軸」「商品企画から開発・設計、量産試作・生産という商品化軸」「顧客の接点を強化するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)軸」「間接業務およびIT基盤」の4ブロックだ。
当社は、01年度から始めた「創生21」、04年度から取り組んだ「躍進21」という2つの中期計画に基づき、6年間にわたってさまざまな経営改革とIT革新に取り組んだ。具体的には、01年に全国の家電店や販売会社を含めた家電の流通改革をスタートさせるとともに、事業ドメインの再編、商品の世界同時発売・垂直立ち上げといった経営の大テーマに取り組み、あわせてサプライチェーンや開発プロセスの革新、CRM、調達革新などを進め、現在に至っている。
IT革新では、6年間で2133億円を投資し、成果は2253億円に達する見通しで、投資を上回る成果が現れてきた。商品の世界同時発売・垂直立ち上げはその一例だ。04年6月に国内で薄型テレビのVIERAを対象に(1)発売日程に照準を合わせた開発マネジメント、(2)短期量産の立ち上げ、(3)発売日から逆算したマーケティング、という3つのプロセスの密連携により、垂直立ち上げを実現した。そこで得たノウハウを形式知に置き換え、05年に国内と同じプロセスを欧米で確立、06年春に中国に導入した。その結果、世界同時の開発と生産、販売が実現し、短期間でトップシェアを握る経営戦略を展開できるようになった。
図●松下電器産業が取り組んだ経営改革とIT革新
IT革新なくして経営革新なし
経営改革とIT革新の取り組みによって、経営課題として掲げたスピード向上は、先行事例においては商品企画から開発までの期間を42%削減し、調達プロセスでは70%の削減が達成できた。また、生産面でもセル生産の導入を含めてムダを省き、最大で75%のリードタイムの短縮が可能になった。その一方で、プロセス革新の成果達成レベルが事業ドメイン間によって格差があるという課題も存在している。それを早期に高位平準化していくことで、さらに競争力を強化していくつもりだ。
今後は(1)IT革新マネジメントの定着化を図る、(2)ナレッジを経営に生かす、(3)経営ITアーキテクチャ(コーポレートITアーキテクチャ=CITA)に取り組む。
IT革新マネジメントの定着化に関しては、上流工程から経営戦略とIT革新を一体化させることが重要だ。できるだけ早い時期から経営改革とIT革新を連携させながら、経営トップを巻き込んでいかないと、経営や業務の施策を深掘りすることができず、失敗に終わってしまう。
ナレッジの活用については、デザイン部門ではポータルサイトなどを開設してナレッジを共有した結果、優れたデザインに与えられるGマークの取得件数が01年の約2.3倍に増加、他の部門でもナレッジの形式知化と共有化を一段と進めていく。
最後のCITAはEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)のことだ。事業部ごとにバラバラだったIT基盤やビジネスプロセスを松下グループとして統一すべきものと事業ドメインで最適化を図るものとに切り分け、都市の再開発のように情報基盤全体の最適化を図る。完成した暁には、経営環境の変化に柔軟に対応できコストミニマムの情報システムが構築され、スピード経営を進める基盤が実現する。
今後とも、徹底したIT生産性を追求していかなければならない。それとともに「IT革新なくして経営革新なし」を肝に銘じ、IT革新は終わりなき活動であると認識し、邁進していく所存だ。
スピード経営に向け情報基盤の最適化を推進
松下電器産業は1918年の創業以来、規格型商品の大量生産によって成長を遂げた。だが、過去の成功体験から脱却できず、90年代に入るとさまざまな課題が生じてきた。具体的には、事業の重複、事業部門と営業部門の分断、大企業病の3つである。
そうしたなかで、21世紀型ビジネスモデルの実現に向けた改革前夜ともいうべきいくつかの取り組みが97年からスタートした。一例を挙げると、デジタル家電を担当する社内カンパニーのAVC社(当時)でサプライチェーンの取り組みが始まった。そのトリガーになったのは、「週次べースで配送してほしい」という海外の大手量販店からの要請だった。当時、商品が顧客に届くまでの仕組みは複雑で、時間がかかっていた。
また、半導体部門でも99年4月から改革に着手した。それまでは松下電器の半導体開発本部がR&D(研究開発)を受け持ち、松下電子工業が生産を、松下電器の半導体営業本部が営業をそれぞれ担当し、縦割り組織で対応していたが、それを一人の責任者の下に開発・生産・販売を一体運営する体制に切り替えた。半導体部門の取り組みは組織再編のテストケースとして実施され、これが2003年に実施した全社での事業再編の基本的な考え方となっている。
トップ主導でIT革新を推進
情報システムの改革に着手したのも90年代後半のことだ。事業部制を基本としていた松下電器では、従来、本社の役割は主に流通や管理部門の業務を中心とした全社的な情報戦略の策定やネットワーク、コードなどのIT基盤の全社行政機能を担っていた。経営環境の変化に俊敏に対応できる製販一体の戦略的事業運営をビジネスプロセスと情報システムの両面から実現するため、新たな情報戦略の方向を99年7月に打ち出した。この情報戦略は、(1)全体最適の視点からビジネスプロセスの改革を推進する、(2)変化に俊敏に対応できる情報システムの統合・連携を進める、(3)戦略的な情報化のテーマには事業部ではなく本社として投資する、(4)事業部に散在していた情報システム部門を再編する――という4つの視点で練った。
2000年6月に社長に就任した中村邦夫会長(前社長)は、「破壊」と「創造」をキーワードとして発信し、「守るべきは松下電器の経営理念だけ」と経営革新に着手した。中村会長の経営に対する基本的な考えは、「顧客満足・価値の追求」「軽くて速い経営の実現」「創造的時間の創出」である。
経営革新を進めるに当たり、ITを基軸とするとともに、IT革命はトップ主導で行うことを中村会長は繰り返し発信した。そして、全社のITを基軸として経営革新を推進するエンジンの役割を担う組織としてIT革新本部を社長就任1カ月後に発足させ、本部長に自らが就任した。
IT革新で中核に据えたのは「モノづくりにおけるSCM(仕入れ先からの調達・生産・物流・顧客に商品を届けるサプライチェーン)の軸」「商品企画から開発・設計、量産試作・生産という商品化軸」「顧客の接点を強化するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)軸」「間接業務およびIT基盤」の4ブロックだ。
当社は、01年度から始めた「創生21」、04年度から取り組んだ「躍進21」という2つの中期計画に基づき、6年間にわたってさまざまな経営改革とIT革新に取り組んだ。具体的には、01年に全国の家電店や販売会社を含めた家電の流通改革をスタートさせるとともに、事業ドメインの再編、商品の世界同時発売・垂直立ち上げといった経営の大テーマに取り組み、あわせてサプライチェーンや開発プロセスの革新、CRM、調達革新などを進め、現在に至っている。
IT革新では、6年間で2133億円を投資し、成果は2253億円に達する見通しで、投資を上回る成果が現れてきた。商品の世界同時発売・垂直立ち上げはその一例だ。04年6月に国内で薄型テレビのVIERAを対象に(1)発売日程に照準を合わせた開発マネジメント、(2)短期量産の立ち上げ、(3)発売日から逆算したマーケティング、という3つのプロセスの密連携により、垂直立ち上げを実現した。そこで得たノウハウを形式知に置き換え、05年に国内と同じプロセスを欧米で確立、06年春に中国に導入した。その結果、世界同時の開発と生産、販売が実現し、短期間でトップシェアを握る経営戦略を展開できるようになった。
図●松下電器産業が取り組んだ経営改革とIT革新
IT革新なくして経営革新なし
経営改革とIT革新の取り組みによって、経営課題として掲げたスピード向上は、先行事例においては商品企画から開発までの期間を42%削減し、調達プロセスでは70%の削減が達成できた。また、生産面でもセル生産の導入を含めてムダを省き、最大で75%のリードタイムの短縮が可能になった。その一方で、プロセス革新の成果達成レベルが事業ドメイン間によって格差があるという課題も存在している。それを早期に高位平準化していくことで、さらに競争力を強化していくつもりだ。
今後は(1)IT革新マネジメントの定着化を図る、(2)ナレッジを経営に生かす、(3)経営ITアーキテクチャ(コーポレートITアーキテクチャ=CITA)に取り組む。
IT革新マネジメントの定着化に関しては、上流工程から経営戦略とIT革新を一体化させることが重要だ。できるだけ早い時期から経営改革とIT革新を連携させながら、経営トップを巻き込んでいかないと、経営や業務の施策を深掘りすることができず、失敗に終わってしまう。
ナレッジの活用については、デザイン部門ではポータルサイトなどを開設してナレッジを共有した結果、優れたデザインに与えられるGマークの取得件数が01年の約2.3倍に増加、他の部門でもナレッジの形式知化と共有化を一段と進めていく。
最後のCITAはEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)のことだ。事業部ごとにバラバラだったIT基盤やビジネスプロセスを松下グループとして統一すべきものと事業ドメインで最適化を図るものとに切り分け、都市の再開発のように情報基盤全体の最適化を図る。完成した暁には、経営環境の変化に柔軟に対応できコストミニマムの情報システムが構築され、スピード経営を進める基盤が実現する。
今後とも、徹底したIT生産性を追求していかなければならない。それとともに「IT革新なくして経営革新なし」を肝に銘じ、IT革新は終わりなき活動であると認識し、邁進していく所存だ。
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