SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
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TCO
2002.7.19更新
1168953717656
読み方 : ティーシーオー
フルスペル : Total Cost of Ownership
分野 : 企業情報システム > コンピュータシステム > 大規模システム
コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用の総額。従来、コンピュータシステムのコストは製品価格(導入費用)で評価されることが多かったが、近年のコンピュータシステムの複雑化や製品価格の下落などにより、コンピュータシステムの維持・管理やアップグレード、ユーザの教育、システムダウンによる損失など、導入後にかかる費用(ランニングコスト)が相対的に大きな存在となったため、企業ユーザの間でTCOが注目されるようになった。
2002.7.19更新
1168953717656
読み方 : ティーシーオー
フルスペル : Total Cost of Ownership
分野 : 企業情報システム > コンピュータシステム > 大規模システム
コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用の総額。従来、コンピュータシステムのコストは製品価格(導入費用)で評価されることが多かったが、近年のコンピュータシステムの複雑化や製品価格の下落などにより、コンピュータシステムの維持・管理やアップグレード、ユーザの教育、システムダウンによる損失など、導入後にかかる費用(ランニングコスト)が相対的に大きな存在となったため、企業ユーザの間でTCOが注目されるようになった。
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ビジネス・インテリジェンス
business intelligence / BI
企業内外の事実に基づくデータを組織的かつ系統的に蓄積・分類・検索・分析・加工して、ビジネス上の各種の意思決定に有用な知識や洞察を生み出すという概念や仕組み、活動のこと。また、そうした活動を支えるシステムやテクノロジを含む場合もある。
この言葉は、ガートナーグループのアナリスト、ハワード・ドレスナー(Howard Dresner)氏が1989年に使ったのが最初だといわれている。彼は、経営者や一般のビジネスパーソンが、情報分野の専門家に頼らずに自らが売上分析、利益分析、顧客動向分析などを行い、迅速に意思決定することの実用性を説き、そのコンセプトをビジネス・インテリジェンスと呼んだ。
ドレスナーの考えるビジネス・インテリジェンスにはデータマイニングは含まれなかったようだが、今日では意思決定支援システム(DSS)、データウェアハウス、OLAP、アドホックなクエリツール、レポーティングツールなどとともに、データマイニングもBIテクノロジ、BIツールと位置付けられることが一般的となっている。
重要性が認知され始めた
BIの市場動向
IT化に積極的な企業の次のターゲットとして、BI(ビジネスインテリジェンス)があらためて注目されている。情報システムをより戦略的に活用するとともに、効率経営へとつなげ、そして企業体質を転換するツールとして、BIの重要性が浸透してきたためだ。今回は、あらためてBIにスポットを当て、企業におけるBIの重要性、そして主要ベンダ各社の取り組みを通じた市場性などについて探ってみることにした
大河原 克行
2002/7/17
ビジネスインテリジェンスが注目される背景
景気低迷などの経済環境の悪化を背景に、多くの企業は経営体質の転換を余儀なくされている。もちろん、国際競争力の強化、迅速な意思決定、コラボレーション型経営の推進といった経済環境とは別の観点からも、企業体質の転換は進められているといえるだろう。
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こうした企業体質の転換には、情報システムの果たす役割が欠かせない。多くの経営者も、その点では意見が一致する。だが、情報システムを戦略的に、そしてより効果的に活用する手法を知る経営者は、わずか一握りといわざるを得ない。BIが注目を集めているのは、まずこの点にある。
まず、最初に、BIとは何か、という基本的な部分をおさらいしてみたい。
BIとひとくちにいっても、ベンダ各社が指す範囲はそれぞれに異なる。また、各社が得意とする技術を背景にBIのポイントをアピールするために、BIの狙いやメリットが微妙にずれているという点をまず理解しておくべきだ。
例えば、SPSSの場合は、同社が培ってきたデータマイニング技術による優位性をアピールし、この部分を差別化ポイントとして、ユーザーに訴える。コグノスは、多次元型データベースを活用したOLAP(On-Line Analytical Processing)と、そこから取り出される多彩な切り口のデータをどのような指標で読み取るかをひとつの強みとして掲げる。また、SASインスティチュートの場合は、データ・アクセスから各種分析に至るトータルソリューションのアプローチで、その中でもエンタープライズの領域あるいは業界別ソリューションによる優位性を強調し、BIの導入促進を図ろうとする。
このように、各社のアプローチは少しずつ異なるが、BIによって各社が共通に目指しているのは、膨大な企業情報データを統合的に管理し、これを戦略的経営ツールとして活用し、企業の競争力を高めるという点だ。
企業におけるデータ量は急速な勢いで拡大している。例えば、ガートナーグループの調べによると、全世界のストレージの市場規模は、2001年には年間約100ペタバイト(1ペタバイト=1024テラバイト)であるのに対して、2005年には年間約4000ペタバイトものストレージが出荷されると予測されている。つまり、それだけ、世の中に流通するデータ容量が急速な勢いで拡大することの証左でもある。これらの情報すべてが企業情報でないにしろ、この数値を見ただけでも、企業における情報量が継続的に、そして飛躍的な勢いで増加することが裏付けられるだろう。
この背景には、インターネットの普及が見逃せない。インターネットの広がりとともに、企業が取り扱う情報量は飛躍的に拡大している。エンタープライズとしての情報量の増加とともに、部門ごとに独自に活用する情報量も急増しており、このデータの管理だけでも大変な労力と投資が求められるようになっている。
また、異なるデータベースの統合も依然として多くの企業における課題となっている。部門ごとに分散化した顧客データや、ERPシステム、CRMシステムで蓄積された各種データ。さらに、外部企業から入手したデータや過去のデータベースなど、企業が活用するデータはさまざまな形で存在する。
問題は、データは存在するのにそれが十分に活かされていないという点だ。
データの「統合」「分析」「レポ-ティング」
企業内のあちこちに蓄積されながら、ほとんど活用されない膨大なデータをいかに戦略的な情報に変えることができるか──これが、BIの目的だ。
企業情報の中には、分析や解釈のやり方次第で売り上げ拡大やコスト削減に結び付くデータが数多く眠っている。BIでは、こうした企業情報をいったんデータウェアハウスやデータマートの形に吸い上げ、これを基に有益な知識を読み取っていくことになる。
BIの第一歩は、このデータ統合から始まる。
SPSSでは、この部分を「データソース」「データの準備」「データの蓄積」という3つのフェイズに分類して、ユーザーへの提案活動を行っている。各社もほぼ同様のアプローチでBIソリューションの提案を進めている。
ひとくちに統合といっても、もともと統合することを目的に作られてない、形式や構造がまったく異なるデータをどのように統合するか、ここがまず1つのテーマとなる。データのコンバートや編集が必要なのだ。基幹システムなどからデータを取り出してきて、データウェアハウスを構築するツールとしては、ETL(Extract, Transform, Load)ツールと呼ばれるものがある。また、特定のERPや業務アプリケーションに対応していて、そこからダイレクトにデータを取り込めるようになっているBIツールもある。
データが統合できたら、分析が行えるようになる。BIを支える分析テクノロジは、OLAPとデータマイニングだ。最近では、テキストマイニングに対する需要が高まっている点も見逃せない。
デーマイニングで実績のあるSPSSでは、CRISP-DMという手法を用い、「ビジネス状況の把握」「データの理解」「データの準備」「モデル作成」「評価」「展開/共有」という6つのフェイズを繰り返し行うことで、経営者から現場までのあらゆるレベルのユーザーに対して、適切な情報を迅速に導き出すことが可能になると説明している。
次の段階で求められるのが、レポーティングである。導き出された情報が経営者の意思決定や経営判断に使えるレポートとならなくては意味がない。また、情報によって、共有情報としての活用を求められるものもある。各社とも最近では、Webを活用したレポーティングを用意しており、経営者自身が直接操作して中長期的なビジネス判断や、日々の業務に役立つ情報を入手することが容易になってきている。
ここでは、クリスタルディシジョンズの「Crystal Reports」などが有名だ。コグノスも、OLAPツールとレポーティングソフトを1つにまとめた「Cognos Web BI Suite」を取り扱う。
これらの情報を最終的に、今後の企業の方向性や、経営判断における意思決定、さらには問題の事前察知といった点に活用するための分析ツールも注目を集め始めている。バランススコアカードを用いた経営分析などがその最たるもので、BIにおける重要なファクタとなりつつある。
コグノスは、市場調査会社大手ガートナーが提唱するCPM(Corporate Performance Management)に取り組む。CPMとは「企業のビジネス・パフォーマンスを監視・管理する上で用いる方法論、基準、プロセス、システム」と説明されているが、つまりビジネス戦略それ自体とその実行度合いを全社的に評価していこうというものだ。
SASインスティチュートでは、こうしたBIにおける一連の流れを逆三角形として示し、情報価値や重要性が増大してくことを表現した提案手法を用いていることが特筆される。これは同社のBIに対する基本的な考え方の表れだといえる。
図1 SASインスティチュートが示すBI
この図では、社内にある基幹系アプリケーションや基幹系データベース、インフラストラクチャ、そして部門ごとに存在する各種データを最も小さな三角形として定義、その上に、インテリジェントアーキテクチャとして、データの統合/接続、データウェアハウスの構築、OLAPなどによるデータ活用を示し、さらに、その上に、カスタマインテリジェンス、オーガニゼーションインテリジェンス、サプライヤインテリジェンスを定義し、分析/レポーティングツールや、グループ経営のためのソリューションツール、データマイニングを活用した情報分析ツールを用意している。そして、最も大きな部分にエンタープライズインテリジェンスを定義、スコアカードを活用した戦略的業績管理の提案を行っている。
データ統合から、最終的には企業の方向性および問題の事前察知などを知る手段を図案化したものだが、BIにより、情報の価値が高まっていることを分かりやすく示したものだといえるだろう。
BI導入が遅れる日本
では、BIの市場規模はどうなっているのだろうか。
先ごろ、米IDCが発表したBIツールの市場規模は、2006年には全世界で75億ドル(約9000億円)に達すると予測した。これは、IAT(情報アクセスツール)市場動向調査の中で、BIの市場性を示したものだ。
ここでは、BIツールをクエリ/レポーティング、多次元解析、データマイニング、データウェアハウス、ESIソフトで構成しており、経済環境が悪化している中でも、企業はBIに高い関心を寄せており、BIに関連するそれぞれの分野が引き続き成長するとみている。
主要ベンダの売上高からもそれは分かる。
IDCの最新調査において、BIツールで最大シェアを獲得した加コグノスは、2003年度第1四半期の業績が、前年同期比11%増の売上高1億2013万USドル、純利益は990万USドルと、前年同期のマイナス210万USドルから一転して大幅な利益を計上したと発表した。中でも、BIに関する売上高は、前年同期比13%増の1億1160万USドルと堅調な伸びを見せている。
BIに関しては、米国陸軍予備軍、マテル、ヒュート・アソシエイツ、スターバックスの4社から100万ドルを超える大型案件を獲得、そのほか、20万ドルを超える案件を42件、5万ドルを超える案件は337件獲得したという。
このように、昨今の経済環境の悪化という状況にありながらも、BIに対する需要は引き続き根強いものがある。
一方、国内においては、どうだろうか。
ガートナージャパンのデータクエスト部門が発表したITサービスにおける日本の市場規模は、2001年の7兆8750億円から2005年には約10兆5864億円に達すると予測した。だが、こうした産業全体の成長が見込まれる中、BIの成長が米国のように見込まれているかというとそうではない。
実は、同社の別の調査では、現時点では、まだBIを導入している企業の比率は10.8%と低い。また、今後3年間にBIの導入を予定している企業の比率もそれほど高くはないのが実態だ。
だが、企業の情報化投資に関しては、ROIが不透明な情報化投資を避ける傾向が強いこと、既存のIT資産を最大限に活用する意向が強いこと、さらに効率化やコスト削減といった方向性を持った情報化投資が優先されていることなどの理由から、今後、BIが注目を集める可能性が高い。経営者がBIの有効性を理解すれば、米国並みに導入が促進されるのかもしれない。
ビジネスインテリジェンス導入を
巡る日本の課題
Part1「重要性が認知され始めたBIの市場動向」の後半でも触れたが、BI(ビジネスインテリジェンス)の市場は、米国においては、驚くべき勢いで伸張しようとしている。日本ではまだ顕在化していないが、主要なBI関連ベンダの声をまとめると、昨今の経済環境による体質改善が求められていること、市場競争が激化している点、さらに、グローバル化の進展といった企業が置かれた立場が大きく変化していることで、BIに関する関心が高まり始めている様子が分かる。つまり今後は、日本でもBIの成長が見込まれることになりそうだ
大河原 克行
2002/7/30
危機感もデータもツールもあるが……
SPSS ビジネスインテリジェンス事業部担当 村田悦子上級副社長
SPSSのビジネスインテリジェンス事業部担当・村田悦子上級副社長は、企業がBIに関心を寄せ始めている理由として、「ユーザー企業自身が、顧客の顔が見えなくなっている、という危機感を持っていることが大きく作用している」と話す。
「企業は、顧客の動向を把握するために、数々のITを導入し、多くの情報を手に入れることに成功した。だがその結果、企業内には数多くの情報がはんらんすることになり、とても処理ができないほどのデータが蓄積されることになった。顧客を知るために蓄積したはずのデータが処理できずに、結局は顧客の顔が見えないというジレンマに陥っている」というわけだ。
コグノスのマーケティング本部・山田和昭副本部長も、「販売、仕入れ、マーケティングにかかわるデータだけを見ても莫大なデータ量が企業に蓄積されている。この数字を束ねて、あらゆる角度から検証し、迅速に結果を導き出すことが求められている。顧客起点の経営手法を現実のものにするという意味で、BIの導入を加速させる企業が出てきた」と話す。
データ量の増大は、直接、顧客動向を把握することにはつながらない。この点ではまさに、BIの導入によって解決する側面が出てくることになりそうだ。
また、国際会計基準への準拠、四半期ごとの業績評価、国際競争力を高めるという点も、BIの導入が推進される要因の1つとなりそうだ。
一方、経営者の意識の変化も作用している。
経営者の元には現場から数々の情報が上がってくるが、それらの情報を見ても、経営判断には生かしにくいという実態がある。部門偏重型のデータであったり、一部には現場意向を尊重した形でバイアスがかかった報告書が出てきたりする可能性もあるからだ。さらに、過去の傾向を分析するだけにとどまっているデータ利用を超えて、今後噴出するであろう課題を事前に予測したり、市場の変化を先読みしたりするといった経営判断支援型の情報を求める声もある。
つまり、経営判断指標となるような経営者向けの情報が欲しいという要求が出始めているのだ。部門ごとの意思決定では不可能であった、経営全般の視点からの意思決定支援システムを求めており、この点でも、BIの重要性が認識されつつあるといえるだろう。
SASインスティチュート マーケティング本部 安藤秀樹本部長
だが、SASインスティチュートのマーケティング本部・安藤秀樹本部長は、こんな指摘をする。
「経営者の間にも、BIに対する認識が高まり、BIによるIT武装をしなくてはならない、という危機感もある。だが、実際に導入を検討する段階になると、自社の場合はどうしたらいいのか、何を導入すればいいのか、という点が分からない例が多い。経営者の経営に対する問題意識はある。そして、優れたBIツールもそろってきた。だが、その間をつなぐことができない経営者があまりにも多い」
そこで、SASインスティチュートでは、一気に成果を求めるのではなく、まず段階的な取り組みを提案する。
「社内にBIを活用するノウハウの蓄積がない段階や、情報を扱うための業務設計ができていなければ、BIの効果は十分に発揮できない。データを活用して事業を推進していく考え方やそのための定義、ビジョンなどを策定し、社内に定着させる必要がある」と訴える。段階的に第1フェイズ、第2フェイズというような形で、企業体質を転換していくことがBIの成功につながるという。
すでに、各社はこの辺りに知恵を絞り始めている。BIの導入に関する事例を積極的に紹介し始めたり、コンサルティングチームの増強などに力を入れ始めたりしているのも、その表れの1つだといえるだろう。
使い勝手がポイント
「データマイニングが、BIの頭脳部分」と位置付けるSPSSでは、「データウェアハウスの導入が浸透していることで、企業におけるデータがきれいな形で整備されている点がデータマイニングを行いやすい環境につながり、BIの導入を強力に後押しすることになっている」と話す。
データマイニングやテキストマイニングを行いやすいデータ環境を整えるには多大な時間がかかる。だが、ここ数年のCRMやERP、さらにWebから得られる各種データなどの蓄積された情報がデータウェアハウスとして、分析しやすい状態で保存されていることは、BI導入の障壁を大きく引き下げることにつながっている。
同時に、データマイニングツール、統計解析ツール、OLAPツールなどの操作性が高まっていることも見逃せない。SPSSでは「Clementine」を提供しているが、「統計解析の専門知識を持たないユーザーでも利用できる操作性の高さを訴えている」という。
SPSS ビジネスインテリジェント事業部営業部 多川真康マネージャ
「3~5年前に、データマイニングツールを導入したものの、一部の統計知識を持つ専門家向けのものであったことから、かなり苦労をしたというユーザーの声も聞く。だがClementineでは、専門家以外でも活用でき、それにより経営改革を実現したという事例も出てきている。あまりにも過大に万人向けのツールになっているといういい方をすると誤解が生じるが、統計解析の専門家による運用でなくても導入成果が出ているという実績を積極的にアピールしていく必要があるだろう」とSPSSのビジネスインテリジェント事業部営業部・多川真康マネージャは話す。
Clementineは、世界的に見ても日本での販売実績が最も大きく、「使いやすいデータマイニングという点にフォーカスした展開が成功の要因」と同社では、自己分析している。
SASインスティチュートでも、「操作性の高さは重要な視点」(SASマーケティング本部マーケティングコミュニケーション部・平尾正裕マネージャ)と前置きしながらも、「操作性だけでなく、企業内に蓄積されたデータを加工して、企業全体で情報を共有できるところまでをスムーズに行える統合環境の提供も重要だ」と訴える。BIバリューチェーンを標ぼうする同社ならではの視点だといえるだろう。
同社では、「使いやすさとともに、どれだけ効果があるかを訴えることが早道」ともいう。
「統計解析は難しいといった意識が根底にあり、これが導入の障壁になっている点も見逃せない。専門知識が必要ではないといった壁がなくなっている点を強調するとともに、実際に効果がこれだけ出たという実績を示した方が理解しやすい」と、異口同音に話す。
コグノス マーケティング本部 山田和昭副本部長
OLAPツールの使い勝手で高い評価を得ているコグノスでは、今後、OLAPのWeb対応を強化することで、経営トップから現場レベルまで、BIを活用できる環境を提供する考えだ。
コグノスの山田副本部長は、「BIは一部の人間しか活用できないというのでは意味がない。現場レベルが日々の活動の中で手掛かりをつかむためのツールにならなくてはいけない。ERPやCRMの浸透によって、活用できるデータはそろってきている。さらに、ハードウェアの低価格化によって導入コストも低減してきた。また、Webの普及で、Webに対するリテラシーも上がってきている。こうしたさまざまな環境を考えると、経営者から一般社員までの各層において、BIを積極的に活用できる仕組みが出来上がっている」と話す。
同社では、Webサービスへの対応なども視野に入れて、展開していく考えだ。
BIの投資対効果には独自の指標を
では、BIのROI(投資対効果)に対する考え方はどうなのだろうか。
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BIは、人員削減型や期間短縮などを前提とした情報化投資ではないことから、ROIが推し量りにくいというのが実際のところだ。
そのため、導入に成功したユーザー企業もROIの数値目標を明確に掲げていない場合が多いといえる。
「だが、BIは使う人によって、ROIが大きく変化することを知るべきだ」とSPSSの村田上級副社長は警告する。
「分析者のノウハウや知識によって、どんな結果が導き出せるか、あるいはいかに的確な経営判断につなぐことができるかは大きく変化する。それによってROIも、当然変化する」
SPSSでは、導入を前に実際のデータを活用したプレ分析サービスを用意して、データマイニングの活用による実績を具体的な事例として見せている。
「導入目的が明確でないといった、漠然とした意識の企業は失敗する公算が強い。自分の会社は、どんなところに問題があると考えているのか、BIによって何をしたいのか。当社では単にBIツールを売りっ放しにするのではなく、その解決に向けて、ユーザー企業、パートナーと一緒になって取り組ませてもらっている」(SPSS・多川マネージャ)と強調する。
SASインスティチュートでは、ROIを、あえて「リターン・オブ・インテリジェンス」と定義し、インテリジェンスからいかにリターンを得るかというBIの根本的な考え方を訴える。
「単に、業務効率をお金に換算するという従来型の考え方ではなく、インテリジェンスに投資し、それによって企業の体質を変えたり、強化したりといったことが必要になる。BIのROIは、そうあるべきだ」と話す。
BIにおいては、従来の基幹系情報システムとは大きく異なったROIの考え方を導入すべきというのが、ベンダ各社に共通した意見といえる。
BIツールの向こうにある
ビジネスインテリジェンス
エンロンやワールドコムの不正会計・破たんといった米国大手企業の問題は、米国経済の低迷を長期化させる要因となっているが、これは、同時に日本の経済環境の不透明感をさらに長期化させることにもつながっている。長いトンネルは、まだまだ出口が見えないというのが現状であろう。こうした不透明な環境下において、企業はIT投資によって、不透明な経済環境を見据えるための「行灯(あんどん)」を模索しようとしている。その1つの回答がBI(ビジネスインテリジェンス)といえまいか。だが、BIの導入がスムーズにいっている企業ばかりではない。問題点が幾つか蓄積していることも事実である。そして、BIは、今後はどの方向に向かおうとしているのか?
大河原 克行
2002/8/10
BIが成果を上げられない理由
BIが注目を集める背景には、企業が置かれる立場が大きく変化していることが挙げられるのは、Part2「ビジネスインテリジェンス導入を巡る日本の課題」で触れたとおりだ。
製造業といえども、製品力だけでは差別化できない時代が訪れ、顧客の声を直接反映した製品作り、顧客満足度を追求した体制作りが模索されている。
ここ数年、大手企業が顧客の声を集め、それを製品化に反映させようという取り組みを積極化させているのも、その表れの1つだといえる。
ところが、企業内は顧客満足度向上のために集めた数多くのデータを処理し切れずに、実際の製品作りやサービス向上に生かし切れていないという実態がある。いや、それを処理し切れないばかりか、莫大なデータを前に、何も手が付けられない、という状態となっている例が少なくない。
それを解決する手法の1つとして、BIによるソリューション提案が存在するわけだ。
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しかし、企業がそれに気が付き、BIの採用に乗り出したとはいえ、すべてが成功につながっているわけではない。その背景には、BIツールを導入しただけでは成功しないという根本的な問題点を分かっていないこと、あるいはそれを知っていても、実行に移せていないという企業が少なからず見受けられるからだ。つまり、BI市場に参入しているベンダが優れた製品を投入し、サービス/サポート体制を構築しても、企業側の体制変化がそれに追いつかないという問題が発生しているのだ。
例えば、ある大手製造業企業は、昨年BIを導入したが、導入後1年を経過しても、本来掲げていた目標が達成されないままである。
同社では、顧客相談窓口に寄せられた問い合わせ内容を分析し、それを新製品開発などに結び付けようという狙いがあった。年間数百万件に上る問い合わせデータを、テキストマイニングおよびデータマイニングツールを活用し、そこから顧客の需要動向や要求を判断するとともに、一般に提供されるニュースなどの各種外部情報、系列店の販売情報などを分析して、新たなコンセプトの製品作りに結び付けるとともに、全社的な経営判断にも活用しようというわけだ。
だが、同社の場合、顧客情報などを取り入れる仕組みを活用したものの、実際の活用を現場サイドにゆだねたため、結果としてそのスキルの育成と体制作りが追いつかず、明確な効果まで生むことができなかった。
同社の関係者によると、「当初は、興味本位でデータをいじってみる部門もあったが、結局、目的の情報を得るまでに時間がかかること、効果的な情報が得られない、という悪いイメージが早い段階で定着してしまったことで、いままで積極的な利用にはつながっていないのが実情」と明かす。
つまり、現場が自由に活用して、効果を得られる情報を獲得するまでの情報リテラシがないままに運用を開始してしまったことが、“使われない”という結果につながっている。
「残念ながら、BIによって、新たな製品が開発されたり、経営の方向性に影響を及ぼすといった成果はいまのところ見られない」(同社関係者)という。
成功事例もまだ道半ば
全社員が自由に情報を閲覧できるようになり、そこからビジネスに必要な新たな答えを導き出す仕組みは有効といえるが、それを使いこなす能力を社員が持たなければならない。しかも、数百万件というデータを現場や経営者が直接ハンドリングするのはあまり現実的でないといえるだろう。まずは、こうした業務を専門的に担当する人材を配置して、ある程度の情報まで加工してエンドユーザーに提供するという段階的な導入も必要といえそうだ。
ある金融大手では、今年春から運用を開始し、早くも改善効果が出ている。同社でも同様に顧客問い合わせ窓口に眠っていた数百万件の情報を、マイニング技術を活用して、「生きた情報」へと転換、そこから200近い課題を導き出し、すでに50以上の部分で製品の改良やサービスの改善を行った。
同社が短期間にこれだけの成果を上げることができた背景には、BIを効果的に運用するための組織作りに力を注いだことが見逃せない。3カ月に1回の定例の改善会議や、部門ごとに責任者を置いて全社レベルで意識改善を行うことなど、全員参加型の意識徹底に力を注いでいる。定例の会議では、顧客サービスの品質向上を担当する部門が、事前に抽出した課題を提示し、それを会議で部門ごとに対応策を検討するように指示するという仕組みだ。
BI導入の成功例の1つといえるが、その一方で、「新製品の立案という点での効果はまだまだ先になるだろう」という。
課題解決型の場合は、取りまとめる部門が課題を提出することで対策が打てるが、新製品開発となると、やはり現場部門が自主性を持つ必要が出てくるからだ。
「新製品開発へつなげること、あるいは経営判断へ反映させるには、まだまだ時間がかかる。BIツールの良しあしも重要だが、それにも増して、組織作り、仕組み作りの方が重要だと思っている」と、同金融大手の関係者は語っている。
BIの導入といえども、最終的な目標である企業経営の改革というゴールまでにはまだ時間がかかる企業が多いというのが実情といえそうだ。
BIベンダも使い方の提案に注力
BIツールを提供する各社も、この点にはすでに気が付き始めている。
それを裏付けるように、BIの普及が加速するに伴い、各社が力を注ぎ始めているのがコンサルティングチームの強化である。
「最終的に経営を改革するというアクションまで実現してこそ、BIの導入メリットがある」とするコグノスでは、昨年3月にコンサルティング部門を立ち上げ、3人の専任担当者を置いているほか、社外のコンサルティングファームなどとも連携して、グローバルな対応ができる体制を作っている。
コグノス マーケティング本部 山田和昭副本部長
「誤解を恐れずにいえば、情報システム部門は、構築部分は手慣れているが、社員の意識をどう高めるかには不慣れ。Web化の進展によって、エンドユーザーのリテラシが上がったことで、情報システム部門も、以前ほど教育に時間をかける必要がなくなったが、現場自らが利用して、考えることを徹底させる仕組み作りに時間をかける必要がある。それがBIの成功につながる」(コグノス・マーケティング本部・山田和昭副本部長)という。
SPSSでも、ビジネスインテリジェンス事業部の下にコンサルティングチームを5人体制で配置したほか、コンサルティングパートナー企業との連携を強化している。
SPSS ビジネスインテリジェンス事業部担当 村田悦子上級副社長
「コンサルティングチームの増員計画は、すでに年初の予定枠を超えるペースだが、まだ加速させたい。ワールドワイドでも3倍規模に人員を増やす計画」(SPSS・ビジネスインテリジェンス事業部担当・村田悦子上級副社長)という。
さらに同社では、マーケティングエグゼクティブセミナーを随時開催し、大学教授などで構成されるアドバイザーを通じて、ユーザー企業にBIに関する考え方、実際の導入事例を紹介し、マーケティング現場での活用を訴えている。
SASインスティチュートでも、「BIを成功させるためには、ユーザーは、BIの技術的な点や、構築手法や操作方法の容易さばかりに目を向けるのではなく、ビジネスの問題をかみ砕くことができる仕組みになっているか、経営者が使いやすいものになっているかを重視すべき。そして、それに合わせたビジネス定義を行い、効果を出すための仕組みを社内に作ることが重要。例えば、優良顧客の定義は何か、という点を明確にできていなければ、課題や結論を導き出すことができず、BIの効果を引き出すことができない」と話す。
同社では、今年春に「通信・金融」「製造・流通・サービス」「官公庁」という3つの業界別組織に、営業部門とコンサルティングを再編、さらに営業1に対して、技術(コンサルティングを含む)2というこれまでの構成比率を、営業1に対して技術4の構成へと変更することで、より業界別に特化した専門的なソリューション提供を行う体制を確立する考えだ。また、業界に特化したパートナーが、再販パートナー、技術パートナーを含めて20社以上あることから、これらのパートナー企業で蓄積したノウハウを、ユーザーに提供していく考えだ。
このように各社は、コンサルティングの強化などによって技術的な差別化策から、運用の観点における差別化へとBI戦略を移行し始めている。
BIの発展形──CPM
ところで、今後のBIはどうなるのだろう。その発展形態として業界内で話題となりつつあるのが、「CPM(Corporate Performance Management)」である。
これは、米ガートナーグループが提唱した考え方で、BI最大手といわれるコグノスでも、次世代のBIの形としてCPMの方向を模索している。
ガートナーによると、「CPMは、企業のビジネス、パフォーマンスを監視・管理するうえで用いる方法論、基準、プロセス、システムのこと」と定義。「BIは、CPMを実現する戦略的な展開の1つといえる」と位置付ける。そして、「すでに数多くの企業がCPMを構成する諸要素を取り入れている。しかし、そのほとんどは全社的に統合した形で導入されていない」と指摘する。
コグノスでは、CPMを実現するためには、その前段階として、BIの導入が重要だとし、CPM実現に向けたBIソリューションの導入においては、以下の要件をクリアしている必要があるとした。
その要件とは次の6項目である。
ビジネス戦略のための計画と予算管理を可能にすること
スコアカード機能により評価基準戦略と業績測定に合わせた調整を行うこと
ビジネスに対する共通の見通しを築くこと
ナレッジワーカーのだれもが必要な情報を簡単に入手できること
職能やビジネスラインに関係なく、一貫した情報を配信すること
すべての人がKPI(主要業績指標)のトップに位置すること
企業がより戦略的に情報インフラを活用し、経営者から現場までが適切な情報をハンドリングできることが、経営判断の速度を高め、競合他社に比べて優位性を持つことになるとみられる。
そうした意味で、今後、CPMが注目されるのは間違いないだろう。そのCPMの重要なツールがBIであるというのが、当面、ベンダ各社が共通に訴えるキーワードとなるはずだ。後は、実体を伴った成果が早期に出てくることが、企業への浸透速度を左右することになるだろう。
business intelligence / BI
企業内外の事実に基づくデータを組織的かつ系統的に蓄積・分類・検索・分析・加工して、ビジネス上の各種の意思決定に有用な知識や洞察を生み出すという概念や仕組み、活動のこと。また、そうした活動を支えるシステムやテクノロジを含む場合もある。
この言葉は、ガートナーグループのアナリスト、ハワード・ドレスナー(Howard Dresner)氏が1989年に使ったのが最初だといわれている。彼は、経営者や一般のビジネスパーソンが、情報分野の専門家に頼らずに自らが売上分析、利益分析、顧客動向分析などを行い、迅速に意思決定することの実用性を説き、そのコンセプトをビジネス・インテリジェンスと呼んだ。
ドレスナーの考えるビジネス・インテリジェンスにはデータマイニングは含まれなかったようだが、今日では意思決定支援システム(DSS)、データウェアハウス、OLAP、アドホックなクエリツール、レポーティングツールなどとともに、データマイニングもBIテクノロジ、BIツールと位置付けられることが一般的となっている。
重要性が認知され始めた
BIの市場動向
IT化に積極的な企業の次のターゲットとして、BI(ビジネスインテリジェンス)があらためて注目されている。情報システムをより戦略的に活用するとともに、効率経営へとつなげ、そして企業体質を転換するツールとして、BIの重要性が浸透してきたためだ。今回は、あらためてBIにスポットを当て、企業におけるBIの重要性、そして主要ベンダ各社の取り組みを通じた市場性などについて探ってみることにした
大河原 克行
2002/7/17
ビジネスインテリジェンスが注目される背景
景気低迷などの経済環境の悪化を背景に、多くの企業は経営体質の転換を余儀なくされている。もちろん、国際競争力の強化、迅速な意思決定、コラボレーション型経営の推進といった経済環境とは別の観点からも、企業体質の転換は進められているといえるだろう。
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こうした企業体質の転換には、情報システムの果たす役割が欠かせない。多くの経営者も、その点では意見が一致する。だが、情報システムを戦略的に、そしてより効果的に活用する手法を知る経営者は、わずか一握りといわざるを得ない。BIが注目を集めているのは、まずこの点にある。
まず、最初に、BIとは何か、という基本的な部分をおさらいしてみたい。
BIとひとくちにいっても、ベンダ各社が指す範囲はそれぞれに異なる。また、各社が得意とする技術を背景にBIのポイントをアピールするために、BIの狙いやメリットが微妙にずれているという点をまず理解しておくべきだ。
例えば、SPSSの場合は、同社が培ってきたデータマイニング技術による優位性をアピールし、この部分を差別化ポイントとして、ユーザーに訴える。コグノスは、多次元型データベースを活用したOLAP(On-Line Analytical Processing)と、そこから取り出される多彩な切り口のデータをどのような指標で読み取るかをひとつの強みとして掲げる。また、SASインスティチュートの場合は、データ・アクセスから各種分析に至るトータルソリューションのアプローチで、その中でもエンタープライズの領域あるいは業界別ソリューションによる優位性を強調し、BIの導入促進を図ろうとする。
このように、各社のアプローチは少しずつ異なるが、BIによって各社が共通に目指しているのは、膨大な企業情報データを統合的に管理し、これを戦略的経営ツールとして活用し、企業の競争力を高めるという点だ。
企業におけるデータ量は急速な勢いで拡大している。例えば、ガートナーグループの調べによると、全世界のストレージの市場規模は、2001年には年間約100ペタバイト(1ペタバイト=1024テラバイト)であるのに対して、2005年には年間約4000ペタバイトものストレージが出荷されると予測されている。つまり、それだけ、世の中に流通するデータ容量が急速な勢いで拡大することの証左でもある。これらの情報すべてが企業情報でないにしろ、この数値を見ただけでも、企業における情報量が継続的に、そして飛躍的な勢いで増加することが裏付けられるだろう。
この背景には、インターネットの普及が見逃せない。インターネットの広がりとともに、企業が取り扱う情報量は飛躍的に拡大している。エンタープライズとしての情報量の増加とともに、部門ごとに独自に活用する情報量も急増しており、このデータの管理だけでも大変な労力と投資が求められるようになっている。
また、異なるデータベースの統合も依然として多くの企業における課題となっている。部門ごとに分散化した顧客データや、ERPシステム、CRMシステムで蓄積された各種データ。さらに、外部企業から入手したデータや過去のデータベースなど、企業が活用するデータはさまざまな形で存在する。
問題は、データは存在するのにそれが十分に活かされていないという点だ。
データの「統合」「分析」「レポ-ティング」
企業内のあちこちに蓄積されながら、ほとんど活用されない膨大なデータをいかに戦略的な情報に変えることができるか──これが、BIの目的だ。
企業情報の中には、分析や解釈のやり方次第で売り上げ拡大やコスト削減に結び付くデータが数多く眠っている。BIでは、こうした企業情報をいったんデータウェアハウスやデータマートの形に吸い上げ、これを基に有益な知識を読み取っていくことになる。
BIの第一歩は、このデータ統合から始まる。
SPSSでは、この部分を「データソース」「データの準備」「データの蓄積」という3つのフェイズに分類して、ユーザーへの提案活動を行っている。各社もほぼ同様のアプローチでBIソリューションの提案を進めている。
ひとくちに統合といっても、もともと統合することを目的に作られてない、形式や構造がまったく異なるデータをどのように統合するか、ここがまず1つのテーマとなる。データのコンバートや編集が必要なのだ。基幹システムなどからデータを取り出してきて、データウェアハウスを構築するツールとしては、ETL(Extract, Transform, Load)ツールと呼ばれるものがある。また、特定のERPや業務アプリケーションに対応していて、そこからダイレクトにデータを取り込めるようになっているBIツールもある。
データが統合できたら、分析が行えるようになる。BIを支える分析テクノロジは、OLAPとデータマイニングだ。最近では、テキストマイニングに対する需要が高まっている点も見逃せない。
デーマイニングで実績のあるSPSSでは、CRISP-DMという手法を用い、「ビジネス状況の把握」「データの理解」「データの準備」「モデル作成」「評価」「展開/共有」という6つのフェイズを繰り返し行うことで、経営者から現場までのあらゆるレベルのユーザーに対して、適切な情報を迅速に導き出すことが可能になると説明している。
次の段階で求められるのが、レポーティングである。導き出された情報が経営者の意思決定や経営判断に使えるレポートとならなくては意味がない。また、情報によって、共有情報としての活用を求められるものもある。各社とも最近では、Webを活用したレポーティングを用意しており、経営者自身が直接操作して中長期的なビジネス判断や、日々の業務に役立つ情報を入手することが容易になってきている。
ここでは、クリスタルディシジョンズの「Crystal Reports」などが有名だ。コグノスも、OLAPツールとレポーティングソフトを1つにまとめた「Cognos Web BI Suite」を取り扱う。
これらの情報を最終的に、今後の企業の方向性や、経営判断における意思決定、さらには問題の事前察知といった点に活用するための分析ツールも注目を集め始めている。バランススコアカードを用いた経営分析などがその最たるもので、BIにおける重要なファクタとなりつつある。
コグノスは、市場調査会社大手ガートナーが提唱するCPM(Corporate Performance Management)に取り組む。CPMとは「企業のビジネス・パフォーマンスを監視・管理する上で用いる方法論、基準、プロセス、システム」と説明されているが、つまりビジネス戦略それ自体とその実行度合いを全社的に評価していこうというものだ。
SASインスティチュートでは、こうしたBIにおける一連の流れを逆三角形として示し、情報価値や重要性が増大してくことを表現した提案手法を用いていることが特筆される。これは同社のBIに対する基本的な考え方の表れだといえる。
図1 SASインスティチュートが示すBI
この図では、社内にある基幹系アプリケーションや基幹系データベース、インフラストラクチャ、そして部門ごとに存在する各種データを最も小さな三角形として定義、その上に、インテリジェントアーキテクチャとして、データの統合/接続、データウェアハウスの構築、OLAPなどによるデータ活用を示し、さらに、その上に、カスタマインテリジェンス、オーガニゼーションインテリジェンス、サプライヤインテリジェンスを定義し、分析/レポーティングツールや、グループ経営のためのソリューションツール、データマイニングを活用した情報分析ツールを用意している。そして、最も大きな部分にエンタープライズインテリジェンスを定義、スコアカードを活用した戦略的業績管理の提案を行っている。
データ統合から、最終的には企業の方向性および問題の事前察知などを知る手段を図案化したものだが、BIにより、情報の価値が高まっていることを分かりやすく示したものだといえるだろう。
BI導入が遅れる日本
では、BIの市場規模はどうなっているのだろうか。
先ごろ、米IDCが発表したBIツールの市場規模は、2006年には全世界で75億ドル(約9000億円)に達すると予測した。これは、IAT(情報アクセスツール)市場動向調査の中で、BIの市場性を示したものだ。
ここでは、BIツールをクエリ/レポーティング、多次元解析、データマイニング、データウェアハウス、ESIソフトで構成しており、経済環境が悪化している中でも、企業はBIに高い関心を寄せており、BIに関連するそれぞれの分野が引き続き成長するとみている。
主要ベンダの売上高からもそれは分かる。
IDCの最新調査において、BIツールで最大シェアを獲得した加コグノスは、2003年度第1四半期の業績が、前年同期比11%増の売上高1億2013万USドル、純利益は990万USドルと、前年同期のマイナス210万USドルから一転して大幅な利益を計上したと発表した。中でも、BIに関する売上高は、前年同期比13%増の1億1160万USドルと堅調な伸びを見せている。
BIに関しては、米国陸軍予備軍、マテル、ヒュート・アソシエイツ、スターバックスの4社から100万ドルを超える大型案件を獲得、そのほか、20万ドルを超える案件を42件、5万ドルを超える案件は337件獲得したという。
このように、昨今の経済環境の悪化という状況にありながらも、BIに対する需要は引き続き根強いものがある。
一方、国内においては、どうだろうか。
ガートナージャパンのデータクエスト部門が発表したITサービスにおける日本の市場規模は、2001年の7兆8750億円から2005年には約10兆5864億円に達すると予測した。だが、こうした産業全体の成長が見込まれる中、BIの成長が米国のように見込まれているかというとそうではない。
実は、同社の別の調査では、現時点では、まだBIを導入している企業の比率は10.8%と低い。また、今後3年間にBIの導入を予定している企業の比率もそれほど高くはないのが実態だ。
だが、企業の情報化投資に関しては、ROIが不透明な情報化投資を避ける傾向が強いこと、既存のIT資産を最大限に活用する意向が強いこと、さらに効率化やコスト削減といった方向性を持った情報化投資が優先されていることなどの理由から、今後、BIが注目を集める可能性が高い。経営者がBIの有効性を理解すれば、米国並みに導入が促進されるのかもしれない。
ビジネスインテリジェンス導入を
巡る日本の課題
Part1「重要性が認知され始めたBIの市場動向」の後半でも触れたが、BI(ビジネスインテリジェンス)の市場は、米国においては、驚くべき勢いで伸張しようとしている。日本ではまだ顕在化していないが、主要なBI関連ベンダの声をまとめると、昨今の経済環境による体質改善が求められていること、市場競争が激化している点、さらに、グローバル化の進展といった企業が置かれた立場が大きく変化していることで、BIに関する関心が高まり始めている様子が分かる。つまり今後は、日本でもBIの成長が見込まれることになりそうだ
大河原 克行
2002/7/30
危機感もデータもツールもあるが……
SPSS ビジネスインテリジェンス事業部担当 村田悦子上級副社長
SPSSのビジネスインテリジェンス事業部担当・村田悦子上級副社長は、企業がBIに関心を寄せ始めている理由として、「ユーザー企業自身が、顧客の顔が見えなくなっている、という危機感を持っていることが大きく作用している」と話す。
「企業は、顧客の動向を把握するために、数々のITを導入し、多くの情報を手に入れることに成功した。だがその結果、企業内には数多くの情報がはんらんすることになり、とても処理ができないほどのデータが蓄積されることになった。顧客を知るために蓄積したはずのデータが処理できずに、結局は顧客の顔が見えないというジレンマに陥っている」というわけだ。
コグノスのマーケティング本部・山田和昭副本部長も、「販売、仕入れ、マーケティングにかかわるデータだけを見ても莫大なデータ量が企業に蓄積されている。この数字を束ねて、あらゆる角度から検証し、迅速に結果を導き出すことが求められている。顧客起点の経営手法を現実のものにするという意味で、BIの導入を加速させる企業が出てきた」と話す。
データ量の増大は、直接、顧客動向を把握することにはつながらない。この点ではまさに、BIの導入によって解決する側面が出てくることになりそうだ。
また、国際会計基準への準拠、四半期ごとの業績評価、国際競争力を高めるという点も、BIの導入が推進される要因の1つとなりそうだ。
一方、経営者の意識の変化も作用している。
経営者の元には現場から数々の情報が上がってくるが、それらの情報を見ても、経営判断には生かしにくいという実態がある。部門偏重型のデータであったり、一部には現場意向を尊重した形でバイアスがかかった報告書が出てきたりする可能性もあるからだ。さらに、過去の傾向を分析するだけにとどまっているデータ利用を超えて、今後噴出するであろう課題を事前に予測したり、市場の変化を先読みしたりするといった経営判断支援型の情報を求める声もある。
つまり、経営判断指標となるような経営者向けの情報が欲しいという要求が出始めているのだ。部門ごとの意思決定では不可能であった、経営全般の視点からの意思決定支援システムを求めており、この点でも、BIの重要性が認識されつつあるといえるだろう。
SASインスティチュート マーケティング本部 安藤秀樹本部長
だが、SASインスティチュートのマーケティング本部・安藤秀樹本部長は、こんな指摘をする。
「経営者の間にも、BIに対する認識が高まり、BIによるIT武装をしなくてはならない、という危機感もある。だが、実際に導入を検討する段階になると、自社の場合はどうしたらいいのか、何を導入すればいいのか、という点が分からない例が多い。経営者の経営に対する問題意識はある。そして、優れたBIツールもそろってきた。だが、その間をつなぐことができない経営者があまりにも多い」
そこで、SASインスティチュートでは、一気に成果を求めるのではなく、まず段階的な取り組みを提案する。
「社内にBIを活用するノウハウの蓄積がない段階や、情報を扱うための業務設計ができていなければ、BIの効果は十分に発揮できない。データを活用して事業を推進していく考え方やそのための定義、ビジョンなどを策定し、社内に定着させる必要がある」と訴える。段階的に第1フェイズ、第2フェイズというような形で、企業体質を転換していくことがBIの成功につながるという。
すでに、各社はこの辺りに知恵を絞り始めている。BIの導入に関する事例を積極的に紹介し始めたり、コンサルティングチームの増強などに力を入れ始めたりしているのも、その表れの1つだといえるだろう。
使い勝手がポイント
「データマイニングが、BIの頭脳部分」と位置付けるSPSSでは、「データウェアハウスの導入が浸透していることで、企業におけるデータがきれいな形で整備されている点がデータマイニングを行いやすい環境につながり、BIの導入を強力に後押しすることになっている」と話す。
データマイニングやテキストマイニングを行いやすいデータ環境を整えるには多大な時間がかかる。だが、ここ数年のCRMやERP、さらにWebから得られる各種データなどの蓄積された情報がデータウェアハウスとして、分析しやすい状態で保存されていることは、BI導入の障壁を大きく引き下げることにつながっている。
同時に、データマイニングツール、統計解析ツール、OLAPツールなどの操作性が高まっていることも見逃せない。SPSSでは「Clementine」を提供しているが、「統計解析の専門知識を持たないユーザーでも利用できる操作性の高さを訴えている」という。
SPSS ビジネスインテリジェント事業部営業部 多川真康マネージャ
「3~5年前に、データマイニングツールを導入したものの、一部の統計知識を持つ専門家向けのものであったことから、かなり苦労をしたというユーザーの声も聞く。だがClementineでは、専門家以外でも活用でき、それにより経営改革を実現したという事例も出てきている。あまりにも過大に万人向けのツールになっているといういい方をすると誤解が生じるが、統計解析の専門家による運用でなくても導入成果が出ているという実績を積極的にアピールしていく必要があるだろう」とSPSSのビジネスインテリジェント事業部営業部・多川真康マネージャは話す。
Clementineは、世界的に見ても日本での販売実績が最も大きく、「使いやすいデータマイニングという点にフォーカスした展開が成功の要因」と同社では、自己分析している。
SASインスティチュートでも、「操作性の高さは重要な視点」(SASマーケティング本部マーケティングコミュニケーション部・平尾正裕マネージャ)と前置きしながらも、「操作性だけでなく、企業内に蓄積されたデータを加工して、企業全体で情報を共有できるところまでをスムーズに行える統合環境の提供も重要だ」と訴える。BIバリューチェーンを標ぼうする同社ならではの視点だといえるだろう。
同社では、「使いやすさとともに、どれだけ効果があるかを訴えることが早道」ともいう。
「統計解析は難しいといった意識が根底にあり、これが導入の障壁になっている点も見逃せない。専門知識が必要ではないといった壁がなくなっている点を強調するとともに、実際に効果がこれだけ出たという実績を示した方が理解しやすい」と、異口同音に話す。
コグノス マーケティング本部 山田和昭副本部長
OLAPツールの使い勝手で高い評価を得ているコグノスでは、今後、OLAPのWeb対応を強化することで、経営トップから現場レベルまで、BIを活用できる環境を提供する考えだ。
コグノスの山田副本部長は、「BIは一部の人間しか活用できないというのでは意味がない。現場レベルが日々の活動の中で手掛かりをつかむためのツールにならなくてはいけない。ERPやCRMの浸透によって、活用できるデータはそろってきている。さらに、ハードウェアの低価格化によって導入コストも低減してきた。また、Webの普及で、Webに対するリテラシーも上がってきている。こうしたさまざまな環境を考えると、経営者から一般社員までの各層において、BIを積極的に活用できる仕組みが出来上がっている」と話す。
同社では、Webサービスへの対応なども視野に入れて、展開していく考えだ。
BIの投資対効果には独自の指標を
では、BIのROI(投資対効果)に対する考え方はどうなのだろうか。
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BIは、人員削減型や期間短縮などを前提とした情報化投資ではないことから、ROIが推し量りにくいというのが実際のところだ。
そのため、導入に成功したユーザー企業もROIの数値目標を明確に掲げていない場合が多いといえる。
「だが、BIは使う人によって、ROIが大きく変化することを知るべきだ」とSPSSの村田上級副社長は警告する。
「分析者のノウハウや知識によって、どんな結果が導き出せるか、あるいはいかに的確な経営判断につなぐことができるかは大きく変化する。それによってROIも、当然変化する」
SPSSでは、導入を前に実際のデータを活用したプレ分析サービスを用意して、データマイニングの活用による実績を具体的な事例として見せている。
「導入目的が明確でないといった、漠然とした意識の企業は失敗する公算が強い。自分の会社は、どんなところに問題があると考えているのか、BIによって何をしたいのか。当社では単にBIツールを売りっ放しにするのではなく、その解決に向けて、ユーザー企業、パートナーと一緒になって取り組ませてもらっている」(SPSS・多川マネージャ)と強調する。
SASインスティチュートでは、ROIを、あえて「リターン・オブ・インテリジェンス」と定義し、インテリジェンスからいかにリターンを得るかというBIの根本的な考え方を訴える。
「単に、業務効率をお金に換算するという従来型の考え方ではなく、インテリジェンスに投資し、それによって企業の体質を変えたり、強化したりといったことが必要になる。BIのROIは、そうあるべきだ」と話す。
BIにおいては、従来の基幹系情報システムとは大きく異なったROIの考え方を導入すべきというのが、ベンダ各社に共通した意見といえる。
BIツールの向こうにある
ビジネスインテリジェンス
エンロンやワールドコムの不正会計・破たんといった米国大手企業の問題は、米国経済の低迷を長期化させる要因となっているが、これは、同時に日本の経済環境の不透明感をさらに長期化させることにもつながっている。長いトンネルは、まだまだ出口が見えないというのが現状であろう。こうした不透明な環境下において、企業はIT投資によって、不透明な経済環境を見据えるための「行灯(あんどん)」を模索しようとしている。その1つの回答がBI(ビジネスインテリジェンス)といえまいか。だが、BIの導入がスムーズにいっている企業ばかりではない。問題点が幾つか蓄積していることも事実である。そして、BIは、今後はどの方向に向かおうとしているのか?
大河原 克行
2002/8/10
BIが成果を上げられない理由
BIが注目を集める背景には、企業が置かれる立場が大きく変化していることが挙げられるのは、Part2「ビジネスインテリジェンス導入を巡る日本の課題」で触れたとおりだ。
製造業といえども、製品力だけでは差別化できない時代が訪れ、顧客の声を直接反映した製品作り、顧客満足度を追求した体制作りが模索されている。
ここ数年、大手企業が顧客の声を集め、それを製品化に反映させようという取り組みを積極化させているのも、その表れの1つだといえる。
ところが、企業内は顧客満足度向上のために集めた数多くのデータを処理し切れずに、実際の製品作りやサービス向上に生かし切れていないという実態がある。いや、それを処理し切れないばかりか、莫大なデータを前に、何も手が付けられない、という状態となっている例が少なくない。
それを解決する手法の1つとして、BIによるソリューション提案が存在するわけだ。
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しかし、企業がそれに気が付き、BIの採用に乗り出したとはいえ、すべてが成功につながっているわけではない。その背景には、BIツールを導入しただけでは成功しないという根本的な問題点を分かっていないこと、あるいはそれを知っていても、実行に移せていないという企業が少なからず見受けられるからだ。つまり、BI市場に参入しているベンダが優れた製品を投入し、サービス/サポート体制を構築しても、企業側の体制変化がそれに追いつかないという問題が発生しているのだ。
例えば、ある大手製造業企業は、昨年BIを導入したが、導入後1年を経過しても、本来掲げていた目標が達成されないままである。
同社では、顧客相談窓口に寄せられた問い合わせ内容を分析し、それを新製品開発などに結び付けようという狙いがあった。年間数百万件に上る問い合わせデータを、テキストマイニングおよびデータマイニングツールを活用し、そこから顧客の需要動向や要求を判断するとともに、一般に提供されるニュースなどの各種外部情報、系列店の販売情報などを分析して、新たなコンセプトの製品作りに結び付けるとともに、全社的な経営判断にも活用しようというわけだ。
だが、同社の場合、顧客情報などを取り入れる仕組みを活用したものの、実際の活用を現場サイドにゆだねたため、結果としてそのスキルの育成と体制作りが追いつかず、明確な効果まで生むことができなかった。
同社の関係者によると、「当初は、興味本位でデータをいじってみる部門もあったが、結局、目的の情報を得るまでに時間がかかること、効果的な情報が得られない、という悪いイメージが早い段階で定着してしまったことで、いままで積極的な利用にはつながっていないのが実情」と明かす。
つまり、現場が自由に活用して、効果を得られる情報を獲得するまでの情報リテラシがないままに運用を開始してしまったことが、“使われない”という結果につながっている。
「残念ながら、BIによって、新たな製品が開発されたり、経営の方向性に影響を及ぼすといった成果はいまのところ見られない」(同社関係者)という。
成功事例もまだ道半ば
全社員が自由に情報を閲覧できるようになり、そこからビジネスに必要な新たな答えを導き出す仕組みは有効といえるが、それを使いこなす能力を社員が持たなければならない。しかも、数百万件というデータを現場や経営者が直接ハンドリングするのはあまり現実的でないといえるだろう。まずは、こうした業務を専門的に担当する人材を配置して、ある程度の情報まで加工してエンドユーザーに提供するという段階的な導入も必要といえそうだ。
ある金融大手では、今年春から運用を開始し、早くも改善効果が出ている。同社でも同様に顧客問い合わせ窓口に眠っていた数百万件の情報を、マイニング技術を活用して、「生きた情報」へと転換、そこから200近い課題を導き出し、すでに50以上の部分で製品の改良やサービスの改善を行った。
同社が短期間にこれだけの成果を上げることができた背景には、BIを効果的に運用するための組織作りに力を注いだことが見逃せない。3カ月に1回の定例の改善会議や、部門ごとに責任者を置いて全社レベルで意識改善を行うことなど、全員参加型の意識徹底に力を注いでいる。定例の会議では、顧客サービスの品質向上を担当する部門が、事前に抽出した課題を提示し、それを会議で部門ごとに対応策を検討するように指示するという仕組みだ。
BI導入の成功例の1つといえるが、その一方で、「新製品の立案という点での効果はまだまだ先になるだろう」という。
課題解決型の場合は、取りまとめる部門が課題を提出することで対策が打てるが、新製品開発となると、やはり現場部門が自主性を持つ必要が出てくるからだ。
「新製品開発へつなげること、あるいは経営判断へ反映させるには、まだまだ時間がかかる。BIツールの良しあしも重要だが、それにも増して、組織作り、仕組み作りの方が重要だと思っている」と、同金融大手の関係者は語っている。
BIの導入といえども、最終的な目標である企業経営の改革というゴールまでにはまだ時間がかかる企業が多いというのが実情といえそうだ。
BIベンダも使い方の提案に注力
BIツールを提供する各社も、この点にはすでに気が付き始めている。
それを裏付けるように、BIの普及が加速するに伴い、各社が力を注ぎ始めているのがコンサルティングチームの強化である。
「最終的に経営を改革するというアクションまで実現してこそ、BIの導入メリットがある」とするコグノスでは、昨年3月にコンサルティング部門を立ち上げ、3人の専任担当者を置いているほか、社外のコンサルティングファームなどとも連携して、グローバルな対応ができる体制を作っている。
コグノス マーケティング本部 山田和昭副本部長
「誤解を恐れずにいえば、情報システム部門は、構築部分は手慣れているが、社員の意識をどう高めるかには不慣れ。Web化の進展によって、エンドユーザーのリテラシが上がったことで、情報システム部門も、以前ほど教育に時間をかける必要がなくなったが、現場自らが利用して、考えることを徹底させる仕組み作りに時間をかける必要がある。それがBIの成功につながる」(コグノス・マーケティング本部・山田和昭副本部長)という。
SPSSでも、ビジネスインテリジェンス事業部の下にコンサルティングチームを5人体制で配置したほか、コンサルティングパートナー企業との連携を強化している。
SPSS ビジネスインテリジェンス事業部担当 村田悦子上級副社長
「コンサルティングチームの増員計画は、すでに年初の予定枠を超えるペースだが、まだ加速させたい。ワールドワイドでも3倍規模に人員を増やす計画」(SPSS・ビジネスインテリジェンス事業部担当・村田悦子上級副社長)という。
さらに同社では、マーケティングエグゼクティブセミナーを随時開催し、大学教授などで構成されるアドバイザーを通じて、ユーザー企業にBIに関する考え方、実際の導入事例を紹介し、マーケティング現場での活用を訴えている。
SASインスティチュートでも、「BIを成功させるためには、ユーザーは、BIの技術的な点や、構築手法や操作方法の容易さばかりに目を向けるのではなく、ビジネスの問題をかみ砕くことができる仕組みになっているか、経営者が使いやすいものになっているかを重視すべき。そして、それに合わせたビジネス定義を行い、効果を出すための仕組みを社内に作ることが重要。例えば、優良顧客の定義は何か、という点を明確にできていなければ、課題や結論を導き出すことができず、BIの効果を引き出すことができない」と話す。
同社では、今年春に「通信・金融」「製造・流通・サービス」「官公庁」という3つの業界別組織に、営業部門とコンサルティングを再編、さらに営業1に対して、技術(コンサルティングを含む)2というこれまでの構成比率を、営業1に対して技術4の構成へと変更することで、より業界別に特化した専門的なソリューション提供を行う体制を確立する考えだ。また、業界に特化したパートナーが、再販パートナー、技術パートナーを含めて20社以上あることから、これらのパートナー企業で蓄積したノウハウを、ユーザーに提供していく考えだ。
このように各社は、コンサルティングの強化などによって技術的な差別化策から、運用の観点における差別化へとBI戦略を移行し始めている。
BIの発展形──CPM
ところで、今後のBIはどうなるのだろう。その発展形態として業界内で話題となりつつあるのが、「CPM(Corporate Performance Management)」である。
これは、米ガートナーグループが提唱した考え方で、BI最大手といわれるコグノスでも、次世代のBIの形としてCPMの方向を模索している。
ガートナーによると、「CPMは、企業のビジネス、パフォーマンスを監視・管理するうえで用いる方法論、基準、プロセス、システムのこと」と定義。「BIは、CPMを実現する戦略的な展開の1つといえる」と位置付ける。そして、「すでに数多くの企業がCPMを構成する諸要素を取り入れている。しかし、そのほとんどは全社的に統合した形で導入されていない」と指摘する。
コグノスでは、CPMを実現するためには、その前段階として、BIの導入が重要だとし、CPM実現に向けたBIソリューションの導入においては、以下の要件をクリアしている必要があるとした。
その要件とは次の6項目である。
ビジネス戦略のための計画と予算管理を可能にすること
スコアカード機能により評価基準戦略と業績測定に合わせた調整を行うこと
ビジネスに対する共通の見通しを築くこと
ナレッジワーカーのだれもが必要な情報を簡単に入手できること
職能やビジネスラインに関係なく、一貫した情報を配信すること
すべての人がKPI(主要業績指標)のトップに位置すること
企業がより戦略的に情報インフラを活用し、経営者から現場までが適切な情報をハンドリングできることが、経営判断の速度を高め、競合他社に比べて優位性を持つことになるとみられる。
そうした意味で、今後、CPMが注目されるのは間違いないだろう。そのCPMの重要なツールがBIであるというのが、当面、ベンダ各社が共通に訴えるキーワードとなるはずだ。後は、実体を伴った成果が早期に出てくることが、企業への浸透速度を左右することになるだろう。
サプライチェーン/デマンドチェーンマネジメント
用語解説
サプライチェーンもデマンドチェーンも、供給者から消費者までを結ぶ一連の流れをいう。サプライチェーンはサプライヤから見た商品の流れ、デマンドチェーンは小売店舗などから見た流れとなる。商品ごとの販売管理と消費者の購買パターンの仮設・検証のサイクルにより、商品の品揃えや発注の最適化を図るシステムを、サプライチェーンマネジメント、デマンドチェーンマネジメントと呼ぶ。消費者ニーズの多様化、高度化、企業間競争の激化を背景に、消費者ニーズを的確にとらえ、売れ筋商品を確実に消費者に提供するとともに、商品の開発、製造、流通の効率化が期待されている。
用語解説
サプライチェーンもデマンドチェーンも、供給者から消費者までを結ぶ一連の流れをいう。サプライチェーンはサプライヤから見た商品の流れ、デマンドチェーンは小売店舗などから見た流れとなる。商品ごとの販売管理と消費者の購買パターンの仮設・検証のサイクルにより、商品の品揃えや発注の最適化を図るシステムを、サプライチェーンマネジメント、デマンドチェーンマネジメントと呼ぶ。消費者ニーズの多様化、高度化、企業間競争の激化を背景に、消費者ニーズを的確にとらえ、売れ筋商品を確実に消費者に提供するとともに、商品の開発、製造、流通の効率化が期待されている。