名 称 |
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MetLife, Inc. |
所在地 |
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米国ニューヨーク市 |
設 立 |
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1868年 |
代表者 |
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ロバート H.ベンモシェ (会長兼社長兼CEO) |
従業員数 |
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米国内3万6,107人
全世界4万8,512人(2002年末現在) |
売上高 |
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約331億ドル(2002年12月期) |
url |
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http://www.metlife.com/ |
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米国の大手保険会社メットライフは、これまでの積極的な企業買収によって、組織が肥大化し複雑化するとともに、多くの異種システムを抱え込むことになった。同社は逆に、そうした巨大組織の強みを生かしながら、顧客第一主義に基づいたサービスの創出に向け、全社のあらゆるビジネス・プロセスとシステムを統合する取り組みを進めている。本稿では、「豊富なサービスがそろった躍動的な金融サービス企業」に生まれ変わるべく、徹底したIT統合に取り組むメットライフの事例を紹介する。
ステファニー・オーバビー text by Stephanie Overby
複雑化した組織を作り直す
保険会社大手のメットライフで、事業およびITを統括する執行副社長のダニエル・カヴァナー氏は、全社的な統合イニシアチブをスタートさせたとき、会社が大きく変わると実感した。 photo by Steven Vote
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保険会社大手のメットライフが本拠を置くマンハッタンのオースティア・ベル&クロック・タワーは、ニューヨークでも屈指の建築物として1909年に竣工したが、その後の高層ビルの乱立によって、すっかり影が薄くなってしまった。とはいえ、保険契約総額2兆4,000億ドルを誇る生命保険会社最大手のメットライフを象徴する巨大な本社ビルとして、今でもマディソン・スクエア・パークの重要なモニュメントであり続けている。
メットライフとその系列会社は、米国内に1,200万人の個人契約者を有し、3,300万人以上が所属する企業(フォーチュン100社の88社を含む)や団体と契約し、米国以外でも12カ国で約800万人の顧客ベースを持つ。2002年末現在の従業員数は、米国内で3万6,107人、全世界で4万6,154人に上り、2002年の売上高は331億ドルに達している。
創業134年の歴史を持つ同社は、企業規模が巨大化しただけでなく、組織形態も複雑化していった。調査会社METAグループの保険情報戦略担当副社長、チャック・ジョンストン氏の言葉を借りれば、まさに「保険業界のGE」ということになる。
メットライフがここまで巨大化した背景には、旧経営陣による積極的な買収戦略がある。同社は、数十億ドルの売上規模を持つ大企業から中小の販売会社まで、保険業界のあらゆる領域の企業を買収してきた。しかし、こうした急速な拡張路線によって、同社の情報システムは、数十年前に構築されたレガシー・システムとともに、互換性のない膨大なシステムやプロセスを抱え込み、身動きの取れない状態に陥ってしまった。
1998年には、「堅実な保険会社」という古いイメージから、「豊富なサービスがそろった躍動的な金融サービス企業」に生まれ変わるべく、CEOにロバート H.ベンモシェ氏を迎え入れた。同氏はまず、メットライフの数百万に上る顧客サービスを全社的な視点でとらえ直し、巨大企業の強みを最大限に生かした経費削減策に着手した。同時に、経営陣は米国証券取引委員会(SEC)の手続きに基づいて、株式を公開することを決定した。こうした一連の組織改革は、メットライフのIT部門に「システム統合」という課題を突きつけることになる。
ダニエル J.カヴァナー氏は、1999年3月にベンモシェ氏から事業とITの両方を統括する執行副社長に任命されたとき、会社に大きな変化が訪れようとしていることを実感したという。同氏には、5人のCIOと1人のCTO(最高技術責任者)をリーダーとするIT組織と、9億9,000万ドルの予算が与えられた。
CIOたちから「会長」の名で親しまれているベンモシェ氏が、メットライフの各ビジネス・ユニットの業務を支援するITスタッフに求めたのは、巨大保険会社の強みである「規模の経済」を最大限に生かせるように、子会社のすべてのシステムを統合することだった。
個人ビジネス・ユニット担当のCIOで上級副社長のトニー・キャンディート氏は、「ウォールストリートで株式が初値を付けたとき、今こそがスケール・メリットの収穫期だとだれもが確信した。このときを境に会社のすべてが一変した」と感慨深げに語る。
カヴァナー氏はまず、各ビジネス・ユニットのITを担当する5人のCIOと1人のCTOによってITガバナンス委員会を組織することから始めた。委員会は月1回の割合で開催され、メットライフ全体のIT統合とビジネス・ユニットの個別プロジェクトについての議題を決定し、その議題について納得いくまで議論した。
まずは財務統合から着手
メットライフの上級副社長として個人ビジネス・ユニット担当CIOを務めるトニー・キャンディート氏は、ビジネス・プロセスや企業文化の改革に比べればアプリケーションの展開はきわめて容易な作業だと力説する。 photo by Steven Vote
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最初の統合プロジェクトは財務業務の整理・統合である。その重責は、上級副社長としてコーポレート・システム担当のCIOおよび最高eビジネス責任者を兼務するペギー・フェッチマン氏が担うことになった。同社の財務プロセスとシステムは、2000年4月に株式が上場された後も、子会社ごとにそれぞれ異なるものが使われていた。
各子会社は、メットライフの監査を担当するフロリダ州タンパの会計事務所に宅急便や郵送、電子メールなど、それぞれ勝手な方法で財務情報を送っていたため、四半期ごとに帳簿を締めるのにかなりの時間を必要とした。「今なら笑い話で済んでしまうかもしれないが、当時は笑いごとではなかった」と、フェッチマン氏は述懐する。
フェッチマン氏が財務業務の標準化と統合に向けて最初に着手した取り組みは、メットライフの本社と子会社の財務プロセスの統合について、IT管理職と子会社の担当者が協議する運営委員会を組織することだった。同委員会は、まず総勘定元帳、売掛台帳、資産管理のシステム統合が不可欠であると判断し、パッケージ・ソフトウェアを導入する計画を立て、その候補としてオラクル、ピープルソフト、SAPのパッケージ製品を挙げた。
メットライフは最終的にピープルソフトの「Enterprise Profitability Management(EPM)」システムを選定し、導入プロジェクトには2年間で8,000万ドルの予算が計上された。パッケージ製品の選定について、フェッチマン氏は、「ベンダー各社の製品を徹底的に分析した結果、ピープルソフトの製品を選定した。1995年に人事部でピープルソフトのパッケージを導入した実績を評価する声もプラスに作用した」と説明する。
パッケージ・ソフトの選定が終わったら、次のステップは、導入計画の展開だ。2002年4月にメットライフ本社(フェッチマン氏は母体の意味を込めて「マザー・メット」と呼んでいる)で導入を開始したのを皮切りに、5月に有力子会社数社の導入プロジェクトをスタートさせ、6月からはメットライフ・セキュリティーズなど中堅子会社への導入を開始し、全社への導入を進めていった。
パッケージ・ソフトの展開にあたって、フェッチマン氏と運営委員会は、コードのカスタマイズを5%以下に制限することで合意した。これは、かつてピープルソフトの人事パッケージを導入した際に、40%以上のカスタマイズを行って苦労した経験があったからだ。この大規模なカスタマイズによって、人事システムではパッチの適用やアップグレードといった膨大な作業を継続的に行う必要があった。現在、ベリングポイントやアウトソーサーとして知られるコグニザントの協力を受けて、パッケージ・ソフトのバージョンアップに対応するという難題に取り組みながら、同時にカスタマイズ比率を下げる作業を進めているという。
パッケージ・ソフトの選定と展開、カスタマイズの方針が決定すると、いよいよ最難関の財務プロセスの標準化と統合の作業に入ることになる。フェッチマン氏は、監査会社とビジネス・パートナー、子会社の代表者との間で緊密な協力関係を築くために、毎週木曜日にフロリダ州タンパに出向き、帳簿処理のすり合わせのためのミーティングを繰り返した。
その結果、ITガバナンス委員会は、全社の会計基準を決定する際に、すべてを本社のやり方で統一するのでなく、全社的に見て最も効率的なやり方で基準を策定するという合意に達した。この点について、フェッチマン氏は次のように説明する。
「最初から本社のやり方を押し付けるという考えはなかった。現場の勘定処理を1つ1つ検討し、どのようなやり方が最も効率的であるかを判断するようにした。その際には、ビジネスの手法についての新たなモデルを定義して、ビジネス・プロセスを再構築する必要があった」
この作業は、神経の磨り減るきわめて困難なものとなった。フェッチマン氏は、「ビジネス・プロセスの調整だけにとどまらず、文化的な調整も必要になった。長年の間に身につけたやり方に慣れてしまうと、なかなかそれを変えようという気持ちは起きないものだ」と作業の難しさを吐露する。
また、自前で経理部門を抱える子会社では、財務処理が本社で一括管理されるようになると、自社の経理部門の仕事が奪われてしまうのではないかという懸念が広がり、緊張が一気に高まった場面もあったという。
「各子会社の事情を考慮しながら、将来的にどのようなやり方が望ましいのかを、関係者全員で検討した。我々にとって幸運だったのは、IT部門とビジネス部門が強固なパートナーシップを築いていたことだ。そうした言い方は、どの企業でも同じだと思われるかもしれないが、これは決して誇張ではない。我々にとっては、これこそが成功の大きな要因となったのだ」(フェッチマン氏)
メットライフの本社と子会社のほとんどが、EPMシステムに移行したことにより、財務プロセスの標準化と統合が図られた今、財務にかかわるあらゆる業務が効率化され、四半期決算も迅速かつ正確に行われるようになった。
同社の次なるステップは、同社の財務分析やビジネス・プランニングの手法をビジネス・パートナーに普及させることだという。
顧客情報を一元化する
メットライフの最初のIT統合の課題は財務システムの統合であった。このプロジェクトの責任者には、コーポレート・システム担当のCIO、ぺギー・フェッチマン氏が任命された。 photo by Steven Vote
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メットライフがアプリケーション・レベルの統合への取り組みを開始した理由は、株式公開のためだけではない。メットライフを顧客志向の会社にしたいという会長自身の強固な意志が大きな原動力となった。
CIOの1人であるキャンディート氏は、「メットライフのような巨大企業では、どうしても顧客1人1人に対する対応がおろそかになりがちだ。顧客のロイヤリティや満足度を高めるには、販売した商品が何であるかにかかわらず、顧客との関係を総合的に管理するための全社的なシステムの構築が不可欠だ」と、顧客情報の一元管理の重要性を強調する。
これまでは、顧客が引っ越しをする場合には、自動車保険、歯科保険、投資といったメットライフ内の異なる顧客サービスセンターにそれぞれ住所変更の電話を入れる必要があった。これではどんな顧客でも嫌気がさしてしまう。また、顧客情報を商品やビジネス・ユニットごとに別々に保管していたため、営業部門が他の商品をクロスセリング、もしくはアップセリングしたいと考えても、手間がかりすぎて実現できなかった。
METAグループのジョンストン氏は、あらゆる顧客情報の一元化は、メットライフに限らず保険業界全体が直面する課題だと指摘する。
「現在、保険業界では法人顧客情報の一元管理について活発な議論が行われている。しかし、議論するだけなら簡単だが、実際に方針を定めて実行に移すとなると、さまざまな障害に突き当たる」(同氏)
メットライフにおいて一元的な顧客データベースを構築しようという案は、もともとIT畑出身の会長自身が経営委員会に図って策定したものであり、キャンディート氏が計画と実行を担当することになっている。同氏が担当する業務のうち8割がアプリケーションの統合にかかわるものだ。同氏は、メットライフの「Client Information File(CIF)」と呼ばれる顧客データベースの構築に向けて意見を求めるために、顧客企業のCIOたちとミーティングを重ねてきた。メットライフでは、2010年をめどにこのデータベースに1億件の顧客データを格納する予定で、それが実現すれば、保険業界で最も大規模で複雑なデータベースとなる。
「データベースが複雑になる理由は、データ・サイズが巨大なだけでなく、データの取得先が膨大な数に上るためだ。過去に構築された情報ネットワークとしては最も複雑な部類に入るだろう」(ジョンストン氏)
キャンディート氏は、社内の他のCIOと協力して、CIFシステムの投資効果をビジネス・ユニットごとに算出した結果、カナダのDWLが提供するソフトウェア「DWL Customer」を導入することに決定した。これは、メットライフのソース・データ(30種類のシステムに格納)と各アプリケーションを結ぶミドルウェアの役割を果たし、使い勝手、コスト性、リアルタイム可用性に優れた顧客情報の「ゴールド・コピー」を生成する。メットライフのレガシー・システムともXMLインタフェースを介して連携し、顧客データ・ファイルはストレージ・システム「IBM Shark」に格納される。
キャンディート氏は、業界標準を使ってデータ・モデルを開発するとともに、データの集中的な管理を担当するグループを結成した。また、実装前にDWLと協力してデータの実体と属性を定義し、ベンチマークのためのパフォーマンス/ボリューム・メトリックを作成した。
「DWLのモデルを拡張し、メットライフの広範な事業に対応できるようにした。プロジェクトの規模を考えると、事前のデータ分析も不可欠な作業だった」(キャンディート氏)
2002年の春には、新規顧客のみを対象としたパイロット版の顧客情報ファイルを構築。6月には基盤となるソフトウェアとデータ・モデルに加え、顧客獲得プロセスの初期段階で顧客情報を収集するためのビジネス・ルールなど、CIFのコア・コンポーネントの実装に着手した。キャンディート氏によると、2003年からメットライフ本社のビジネス・システムをCIFシステムに移行し始め、ビジネス・ユニット全体のシステムの移行を順次進めていくという。
ピープルソフトへの移行の場合もそうであったように、アプリケーションの展開そのものは比較的容易に行うことができる。むしろ苦労するのは、ビジネス・プロセスや企業文化の改革である。例えば、キャンディート氏のチームは、現在、ビジネス・ユニット単位で処理されている顧客サービスの全社展開に向け、顧客管理部門を一元化すべきかどうかの検討を進めている。しかし、ビジネス・ユニットからはそうした移行に対して不安の声も上がっているという。
「いくつかの有力なビジネス・ユニットの顧客管理部門に意見を聞いたところ、彼らは一元化の方向性自体は正しいと認識しているものの、顧客管理が自分たちの手を離れることには抵抗があるという」(キャンディート氏)
もう1つの課題は、人事異動によって従業員の部署換えがあった場合にも、プロジェクトのビジネス・ゴールを見失わないようにすることだ。法人ビジネス・ユニット担当のCIOで上級副社長のマーク・ハマースミス氏は、「我々のビジネスは1年でまったく様変わりしてしまう、顧客情報ファイルの構築は1年では実現できない」と指摘する。同氏の管理下にある3,300万人分の顧客情報は、CIFシステムへの移行を予定している。
アーキテクチャの統合に挑む
メットライフの上級副社長兼CTO、スティーブ・シャインハイト氏は、「現在、メットライフで進めている統合作業の中で最も難しいのは、CIFおよびピープルソフトのプロジェクトに伴うアプリケーションとデータの統合だ」と指摘する。同氏はできるだけ自分の負担を少なくしようと努力しているが、統合作業のほとんどが自分の役回りになってしまうという。同氏は、デスクトップからメインフレームに至るITインフラストラクチャ全体の責任者であり、3億ドルの予算と7拠点、1,100人のスタッフを抱えている。
シャインハイト氏は、「私が着任した際には、ベンダーの選定はすでに終了していたし、担当者のすべてが統合の意義を理解していた。あとは実際に統合を進めていけばよかった」と着任当時を振り返る。同氏は、着任してすぐに、各ビジネス・ユニットの代表者を集めてエンタープライズ・アーキテクチャ・プログラムとガバナンス・カウンシルを立ち上げた。
「各部門が力を合わせることで、大きな効果を得るにはどうすればよいかについて答えを見つけるために、ビジネス部門とIT部門の代表を集めた」(同氏)
エンタープライズ・アーキテクチャ・カウンシルが最初に策定したのは、ITの意思決定指針となる7項目の方針だ(囲み記事「高度な統合を実現するための7つの鉄則」を参照)。
「これは、IT化の行動原理となる価値基準だ。当たり前の理念に見えるかもしれないが、これまで無視されてきたことばかりだ。そこで、あえて方針として明確にし、それぞれの項目の意味を理解させるとともに、各方針の根拠と意味を説明しようと考えた」(シャインハイト氏)
同カウンシルは、技術標準書を作成し、社内イントラネット上で頻繁に更新している。また、5人のCIO、アプリケーション開発グループ、CTO、そして彼自身のインフラストラクチャ・グループをいかに統合するか、チェック&コントロールの機能をどう確立するかといったことを定めたテクノロジー・プロジェクトのロードマップも公開した。
シャインハイト氏は、「統合の原則をここまで明確化した企業はそんなに多くないのではないか。テクノロジーがさらに分散している企業では、社内のさまざまな部門でそれぞれやり方が異なり、メットライフのように明確な原則を定めてない場合が多い」と語る。メットライフもつい2、3年前まではそのような状態だったのである。
シャインハイト氏のチームは、2001年の戦没者追悼記念日の週末、買収したニュー・イングランド・フィナンシャルとゼネラル・アメリカン・フィナンシャルの各データセンターをメットライフのデータセンターに統合し、さらなるコスト削減と効率改善を実現した。シャインハイト氏は、「まさに統合プロジェクトの金字塔を打ち立てたと言える。ビジネス環境がより成熟し、拡張性の高いものになったことにより、コストを40%削減することに成功し、サービスも向上した」と強調する。
同氏は、これらの統合イニシアティブを今後も継続して管理していく考えだ。
「今日の時点でインフラストラクチャの統合度が80%であったとしても、目標は常に変化しており、数日後には70%に、あるいは90%に変化してしまっているかもしれない。そのため、統合度を常に80%程度のレベルに保ちながら、さらに上を目指すというのが現実的なやり方だと言える」(シャインハイト氏)
進行中の本格統合プロジェクト
メットライフは、事業再編の一環として今後も統合プロジェクトを継続していく計画だ。
ビジネス・ユニットのCIOらは現在、3年かけてレガシー・システムを簡素化し、それにかかるコストを2年で回収する「Project LESS」と呼ぶプロジェクトを進めている。この取り組みによって、レガシー・システムを整理し、不要なシステムを引退させるという。プロジェクトの目標は、重複するビジネス・プロセスを解消し、メンテナンス・コストの削減に向けて、あらゆるシステムを共通のプラットフォームに統合することである。また現在、2億ドルを投資し、インターネットのセルフサービス・イニシアチブの取り組みも進めている。
各ビジネス・ユニット内でも、規模は小さいながら多数の統合プロジェクトが進行している。
メットライフのブローカー/ディーラー&投資担当副社長でCIOのトニー・コリャンドロ氏と彼のスタッフは、4つのブローカー/ディーラーすべてのフロント/ミドル/バックオフィス機能の統合に取り組んでいる。彼らは、統合の実現を目指しながら、ブローカーそれぞれの既存システム内でベストなソリューションを探している。
また、法人ビジネス・ユニット担当CIOのハマースミス氏は、「MyBenefits.com」および「MetDental」というセルフサービス・ポータルを構築するために、1億2,000万ドルの投資を行った。構築期間は数年に及んでおり、これによって法人顧客向けのレガシー・システムが相互接続されることになる。メットライフ・オート&ホームの副社長でCIOのリチャード・スモール氏は、1999年にセントポールから買収した個人顧客部門(保険総額11億ドル)を統合するために4,000万ドルの投資を行った。メットライフでは当面、こうしたビジネス・ユニットごとのプロジェクトや全社的プロジェクトが続くことになるだろう。
「まだやるべきことは多く残されている。サポートしなければならないレガシー・システムはまだ多数あり、今のところはミドルウェアによってなんとか接続しているにすぎない。つまり、すべてが統合しているように見せるためにビニールをかけている状態にすぎない。だが、今後は、本当の意味でのシステム統合を実現していきたい」(シャインハイト氏)
METAグループのジョンストン氏は、メットライフに限らず、米国のいかなる保険会社も、少なくとも2006年か2007年までは完全なシステム統合は実現できないと見ている。
しかし、メットライフほどシステム統合に長期的な投資を行っている企業はまず見られない。
「メットライフは、統合なくして経営効率の改善は実現できないと判断し、本気で統合に取り組むことにした。1年や1年半の短期間で投資効果が表れないプロジェクトに投資することは、相当に勇気のいることだ」(ジョンストン氏)
カヴァナー氏は、メットライフの統合戦略について、「我々は、常に新しいビジネス分野に参入し、既存のビジネスについても従業員から次々と新しいアイデアが生まれてくるため、統合は半永久的に続くと考えている。これからもさらに多くのビジネスやアイデアを統合していきたい」と語る。
メットライフにとって、統合のための永続的な取り組みは、きわめて当然のことだと言えそうだ。