SCMパッケージソフト 開発勉強日記です。
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日立製作所/薄型テレビ事業、世界5極組立体制でSCM推進
日立製作所(株)の古川一夫社長は5月28日のマスコミ・アナリスト向け説明会で、同社が掲げる「協創と収益の経営」の進捗状況を説明、薄型テレビ事業の組立生産拠点を世界5極に拡大し、SCM整備を推進すると報告した。
これまで、同社の薄型テレビ事業は宮崎工場でパネルを製造、岐阜、メキシコ、中国の3拠点で組立を行っていた。
これに加えてマレーシア工場が2007年春、チェコ工場が同年夏から組立拠点として稼働を開始、世界5極での組立生産体制が整う。また、宮崎工場でのプラズマパネル生産能力を年間400万台体制に引き上げる。
組立拠点の拡大とともに、効率的な納品体制を整備するため、宮崎工場と5極の組立拠点間でSCMの整備を急ぐもの。
日立製作所(株)の古川一夫社長は5月28日のマスコミ・アナリスト向け説明会で、同社が掲げる「協創と収益の経営」の進捗状況を説明、薄型テレビ事業の組立生産拠点を世界5極に拡大し、SCM整備を推進すると報告した。
これまで、同社の薄型テレビ事業は宮崎工場でパネルを製造、岐阜、メキシコ、中国の3拠点で組立を行っていた。
これに加えてマレーシア工場が2007年春、チェコ工場が同年夏から組立拠点として稼働を開始、世界5極での組立生産体制が整う。また、宮崎工場でのプラズマパネル生産能力を年間400万台体制に引き上げる。
組立拠点の拡大とともに、効率的な納品体制を整備するため、宮崎工場と5極の組立拠点間でSCMの整備を急ぐもの。
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日本郵船関連会社/RFID利用の倉庫内位置管理システムで船舶海洋工学会賞
日本郵船(株)関連会社の(株)MTIは、RFIDを利用した自動倉庫内ロケーション管理システムで、日本船舶海洋工学会の「平成19年度日本船舶海洋工学会賞(開発)」を受賞した。
このシステムはYRPユビキタスネットワーキング研究所、(株)エヌ・エー・ピーラボとともに2003年頃から開発を進めてきたもので、倉庫内の床に設置した無線ICタグを利用し、貨物の保管場所情報を自動更新・管理する仕組み。
受賞について、同社は「作業効率の改善を実証実験を通じて検証できたことに加え、(株)大島造船所によるシステムの試験的導入が実施されたことが、物流分野でICタグが有効に利用される先駆的な事例として評価された」と説明している。
授賞式は5月24日、サンシャインシティ文化会館で行われ、YRPユビキタスネットワーキング研究所の坂村健所長、エヌ・エー・ピーラボの中川一位社長らが参列、MTIの田中康夫取締役が代表して受賞した。
同システムの開発に際しては、ICタグ防護シートも考案。フォークリフトなどでICタグが踏み潰されることがないようにするもので、MTIと住友化学(株)の関連会社である住化ケムテックス(株)が共同開発した。
MTIは今後、同システムを物流ソリューションの中核のひとつとして、顧客企業に提案していく。
日本郵船(株)関連会社の(株)MTIは、RFIDを利用した自動倉庫内ロケーション管理システムで、日本船舶海洋工学会の「平成19年度日本船舶海洋工学会賞(開発)」を受賞した。
このシステムはYRPユビキタスネットワーキング研究所、(株)エヌ・エー・ピーラボとともに2003年頃から開発を進めてきたもので、倉庫内の床に設置した無線ICタグを利用し、貨物の保管場所情報を自動更新・管理する仕組み。
受賞について、同社は「作業効率の改善を実証実験を通じて検証できたことに加え、(株)大島造船所によるシステムの試験的導入が実施されたことが、物流分野でICタグが有効に利用される先駆的な事例として評価された」と説明している。
授賞式は5月24日、サンシャインシティ文化会館で行われ、YRPユビキタスネットワーキング研究所の坂村健所長、エヌ・エー・ピーラボの中川一位社長らが参列、MTIの田中康夫取締役が代表して受賞した。
同システムの開発に際しては、ICタグ防護シートも考案。フォークリフトなどでICタグが踏み潰されることがないようにするもので、MTIと住友化学(株)の関連会社である住化ケムテックス(株)が共同開発した。
MTIは今後、同システムを物流ソリューションの中核のひとつとして、顧客企業に提案していく。
「垂直分裂」とは何か---『現代中国の産業』を読んで
中国の製造業を20年にわたって研究なさってきて,当社のセミナーでも講演をお願いしたことのある東京大学教授の丸川知雄氏がこのほど『現代中国の産業~勃興する中国企業の強さと脆さ』(中公新書,2007年5月25日発行)という本を出された。さっそく読ませていただいた。
「はじめに」の部分で丸川氏は,中国は多様で一筋縄では理解することは難しいが,「本書で提示する『垂直分裂』という切り口によって,中国の全身を貫く共通の構造を提示するとまではいかなくても,『胴体を輪切り』にするぐらいはできるのではないかと考えている」と書いている。書店でこの部分を立ち読みしていて「はて? 『垂直分裂』とは何だろう」と疑問に思ったことも本書を読んだきっかけだったが,現代中国の製造業の生々しい姿が描かれているように感じて,この土日に一気に読了した。
丸川氏はまず,1990年代の初めには高かった日本の大手電機メーカーの日本ブランドのシェアが同年代後半になって低下し,中国メーカーがシェアを上げた要因を分析し,その要因を3つ挙げている。すなわち,(1)生産管理能力が向上し品質が向上した,(2)生産規模の拡大によりコスト低減を図った,(3)販売網やサービス網を充実させた,の3点である。しかし,実はそれ以上に重要な第4の要因があり,それが「垂直分裂」と呼ぶ現象だという。
その「垂直分裂」とは,「経営学や経済学でいう垂直統合の逆の現象が起きていることを指す」(本書p.14)。つまり,コンピュータ産業で起こったように,製品の上流から下流に向かうバリューチェーンの各要素(例えばIC,コンピュータ,OS,応用ソフト,販売)のすべてを一つの企業が手掛けていたものが,バラバラに分離されて,おのおの別の企業が担うようになる現象である。
「なぜメディアは『水平分業』というのか」
そこまで読んで,これってわざわざ「垂直分裂」とか言わなくても,「水平分業」という言葉がすでにあるではないか,と思いながら読み進むと,その直後になんと次のような記述があったのである(本書p.20-21)。
日本の電機業界やマスメディアの中では同じ現象を指す言葉としてなぜか「水平分業」という言葉がよく使われている。この表現は日本の一部ではすっかり定着しているようで,私が「垂直分裂」という言葉を用いて説明しようとしても「水平分業」に「訂正」されてしまうということを何度か経験した。だが,「水平分業」という言葉は,国際貿易論で,国家間で工業製品を相互に輸出する貿易を行っている状況を指す言葉としてすでに定着しており,同じ言葉を用いてコンピュータ産業などで起こっている構造変化というまったく別の現象を指すのは混乱のもとである。
筆者はまさに「水平分業」という言葉をよく使ってきたメディアの1人だ。この連載コラムでも,「スマイルカーブの『両端』と『中央部』---水平分業時代の競争力を考える」という文章を書いたばかりである。スマイルカーブは,横軸にバリューチェーンの各要素を,縦軸に利益率をとるカーブである。スマイルカーブという概念そのものは,バリューチェーンの各要素がバラバラになり各企業間における分業が進んだために生まれたと言われている。
「垂直産業」と「水平産業」
一方で,電機業界では「垂直産業」と「水平産業」という言い方がよくされる。例えば,以前にソニーの社長だった出井伸之氏は,『迷いと決断~ソニーと格闘した10年の記録』(新潮新書)という本の中で,盛田昭夫氏が亡くなる直前の1993年に行った最後のスピーチの中の言葉「われわれは,もういっぺんアメリカを勉強しなおすべきではないだろうか」について,盛田氏が言わんとしていたことは,「垂直産業と水平産業の違いだった,と考えています」と述べている(本書p.48)。
出井氏は,各部品のレイヤーごとに分業できる産業(例えばパソコン産業)を「水平産業」と呼び,1990年代に日米の経済が一気に逆転した背景には,米国のIT産業は「水平産業」の重要性にいち早く気づいて対応したが,日本は「垂直産業」の中をグルグル回っていて対応が遅れたことがあったとする。
さらに出井氏は,その後もさまざまな分野で「垂直産業」から「水平産業」への転換が起きているのに,日本企業は「垂直産業の思考」の中にとどまっていると書く。典型的な「垂直産業」である自動車産業についても,「自動車産業が本格的にバッテリーカーにシフトするとき,産業全体が『水平化』の方向に大転換していくのは間違いありません」と警告するのである(本書p.49)。
このように電機業界では,垂直産業における各要素がバラバラになって,各企業間で分業するようになる状況そのものを「水平(産業)化」や「ヨコ型」と言っている。しかも出井氏のように日本企業にとっても最も重要な視点であるという見方が多い。言い訳をするわけではないが,こうした水平産業における分業を「水平分業」と呼んでしまっているのは仕方のないことかもしれない。
「垂直分業」から「水平分業」へ
とはいえ,例えば,以前のコラムで紹介した『帝国主義論』などを読んでいると,例えば,日本とアジアの間の貿易は,「垂直分業」から「水平分業」に移っている,という正しい用法に基づく記述があって,確かに同じ製造業の産業構造を表す言葉として,まったく違う使い方があるのは混乱のもとであるのは確かだとも思った。
ここでいう「垂直分業」は,多国籍企業の企業内分業をきっかけに始まったこともあって,同一製品内での工程間分業という色彩が強い。先ほどのスマイルカーブの中である国がある部分を担当し,別のある国が別の部分をを担当しているという状況といってもよいだろう。これに対して「水平分業」は,同じジャンルの部品や製品を各国で並行的に生産することを指す。そして現状のアジアにおける「水平分業」では,グレード別の特化が進んでいる(『帝国主義論』のp.160)。例えば,アジア諸国で中・低グレードのものを生産し,日本では高級グレードを生産する,といった具合である。
日本とアジア諸国の関係が,「垂直分業」から「水平分業」に移っている背景には,アジア各国の生産技術が高まってきて,産業集積も進んできたことから,上流から下流まで一貫生産する機運が高まってきたことがある。つまり,それだけアジア諸国がバリューチェーンの1要素だけではなくて,ある製品のバリューチェーン全体を担当できるようになってきたわけで,確かにこうした現象を正しく理解するためにも,言葉の使い方をはっきりさせなくてはならないと反省させられた。
それにしても,丸川氏の言う「垂直分裂」は,「垂直統合ではない」ということを言っているだけなので,なにかもっとズバリと指すいい言葉はないものだろうか,とも思う。単に「(国際)分業」とするか,「アウトソーシング化」といったところだろうか。「垂直統合以外は何でもあり」ということなら,やはり「垂直分裂」という言葉がいいのかもしれない。
中国政府の「垂直分裂化戦略」
さて,言葉の話はともかく,丸川氏の本を読ませていただいて強く感じたのは,「垂直分裂化戦略」を推進する中国政府のしたたかさである。以前のコラムでは,欧米の多国籍企業がしかけた国際分業という波に中国がどちらかというと受動的に飲み込まれているという状況についてみてみたが,もう一つの側面として中国が国際分業の方向を「垂直分裂」をキーワードに推し進めた能動的な態度がこの本では明らかにされている。
「垂直分裂化」のルーツは,中国の伝統的な計画経済にあるという。1970年代に家電製品の本格的な生産がスタートしたが,各地方政府が出資した国有企業は,少額の投資で参入できて投資回収の早い最終製品の組み立てに飛びつき,一方で初期投資額の大きい基幹部品の生産は中央政府の分担という最初から分業を意識した政策をとったためである。
こうして中国の電機メーカーは,基幹部品を外から調達するという方式で急成長したが,充分に資金力がついた後でも基幹部品を内製して垂直統合化する志向は低いという。基幹部品の差異化で製品の品質や機能を高めるよりも,基幹部品を複数メーカーから競争的に調達することによって製品価格を安く抑える戦略の方が中国市場では利益を上げやすかったからである。
そのために,各社の基幹部品を互換化し,どの会社の基幹部品でも使えるようにした。それは例えば,テレビ受像機における基幹部品であるブラウン管の場合,テレビメーカー側で各社のブラウン管に対応した回路を用意するという技術的な工夫のほか,無理やり使って多少画質が劣化しても目をつぶるという割り切りによって実現したのである。基幹部品によっては日系メーカーの技術を移転またはコピーすることによって中国の互換部品メーカーも登場した。こうして互換性のある基幹部品を外部の複数の専門メーカーに大量につくらせることによって規模の経済性が働き,より低コスト化が可能になったのである。
基幹部品と完成品をバラバラに認可
「垂直分裂」の戦略は,日本企業が中国に進出する際の対応に如実に表れた。垂直統合志向の強い日本メーカーに対して,完成品や基幹部品の拠点をバラバラにつくるように進出の認可を与えたのである。結果的に日本企業は,基幹部品では中国メーカー向け出荷が好調だが,完成品についてはハイエンド市場のみに追いやられるという状況になっている。
こうした戦略は自動車産業でもとられた。中国政府は2000年ころまで,エンジンの生産は認めるが,完成車については認可を頑として出さなかったのである。
例えばトヨタ自動車は,1996年にエンジンの合弁工場を設立したが,完成車の生産を始めたのは2002年になってからだった。その間,エンジン工場を遊ばせておくわけにはいかなかったので,そこで作られたエンジンは中国の自動車メーカー6社に売られることになったのである。三菱自動車についても,1997年にエンジンの工場を中国に設立したはいいものの完成車の認可が下りず,そのうち本体の経営状況が悪化するという環境の中で,エンジンを中国自動車メーカーに外販することで危機を脱した。同工場では現在,26社の中国メーカーにエンジンを供給しており,しかも顧客の要求に合わせてエンジンの設計を調整しているのだという(本書p.220)。
「垂直分裂」の行き着く先
もちろん,中国のこうした「垂直分裂」の動きには問題点も多い。基幹部品の互換品が主流を占めるということは,どの製品も同じような「同質化」をもたらす,と丸川氏は本書で書いている。同質化の行き着く先は,果てしない価格競争,または薄利多売の世界である。その同質化が行き着く先が,パソコン業界に見られる違法コピーを競争手段とするようなノーブランドメーカーの乱立である。
さらに筆者が思ったのは,同質化の果てにあるものは差異化の消滅であり,資本の永久運動の停止をもたらすということである。「垂直分裂」とは,あくまで「垂直統合」あってのものだとしたら,日本メーカーなどが作り出した「垂直統合」の製品が出るのを待って,出るや否やそれをバラバラにするという宿命から永遠に逃れられない,ということかもしれない。
ただし「垂直分裂」の現象の理解が一筋縄でいかないと思うのは,こうした限界が指摘される一方で,「垂直分裂」がもたらす新しいイノベーションの可能性があるということである。それは,「垂直統合」が生み出す技術革新というよりは,中国市場とブラックボックス化された既存技術の組み合わせによって達成される。丸川氏は,そうしたイノベーションを「脇道のイノベーション」と呼び,中国で市場を作ったビデオCDとPHSの事例を紹介している。
「モジュラー化」と「垂直分裂」
もう一つ注目したいのは,製品のアーキテクチャがモジュラー化することと「垂直分裂」の方向が同じという点である。特にパソコン分野では,前述のようなノーブランドメーカーの問題はあるものの,中国ブランドのシェアが拡大したのは,中国の戦略と製品のアーキテクチャがうまく合致したからである。
自動車や家電製品の一部などインテグラル型の製品については,中国の製造業は疑似的に無理やりモジュラー型に転換しているだけで,基本アーキテクチャは変化していないと見られている(これについて触れた過去のコラム)。しかし,インテグラル型の牙城と見られる自動車にしてもモジュール化が進展し,共通プラットフォーム化が進展するに伴い,モジュラー化の兆しは見られる。製品アーキテクチャがモジュラー化したとたんに,「垂直分裂」に強みを発揮する中国の競争力が一気に増す可能性がある。いずれにせよ,「垂直分裂」の世界から何が飛び出してくるのか,目が離せないということのようである。
「垂直分裂」に日本企業はどう対応
では,「垂直分裂」戦略を進める中国で日本企業はどう対応したらよいのか。丸川氏の指摘で特に重要だと思った視点を2点紹介したい。一つは,今後中国は自主ブランド志向をますます強めるために日本ブランドで完成品を売ることがますます困難になるという指摘である。そうなると,基幹部品を売る戦略がもっとも適しており,中国の互換化戦略に対抗していかに付加価値を留保し,獲得するかが重要になる。
もう一つは,中国の垂直分裂的産業構造は,日本の中小企業に新たな可能性を開くのではないかという指摘だ。日本の中小企業は,垂直統合的産業構造が主流の日本では,大手企業とのクローズドな取り引き(丸川氏は「閉じられた垂直分裂」と呼ぶ)が中心で,例えば最終製品に進出することは難しかった。これに対して垂直分裂の世界では基幹部品を調達して最終製品を手掛けることもできるし,高い技術力を背景に部品を主導的に供給できる可能性もある。オープンな「垂直分裂」の世界に積極的に飛び込むことで,一芸に秀でた中小企業の強みが発揮できるという指摘は,閉塞感に覆われている日本の中小企業に一つの夢を与えるものではないかと思う。
中国の製造業を20年にわたって研究なさってきて,当社のセミナーでも講演をお願いしたことのある東京大学教授の丸川知雄氏がこのほど『現代中国の産業~勃興する中国企業の強さと脆さ』(中公新書,2007年5月25日発行)という本を出された。さっそく読ませていただいた。
「はじめに」の部分で丸川氏は,中国は多様で一筋縄では理解することは難しいが,「本書で提示する『垂直分裂』という切り口によって,中国の全身を貫く共通の構造を提示するとまではいかなくても,『胴体を輪切り』にするぐらいはできるのではないかと考えている」と書いている。書店でこの部分を立ち読みしていて「はて? 『垂直分裂』とは何だろう」と疑問に思ったことも本書を読んだきっかけだったが,現代中国の製造業の生々しい姿が描かれているように感じて,この土日に一気に読了した。
丸川氏はまず,1990年代の初めには高かった日本の大手電機メーカーの日本ブランドのシェアが同年代後半になって低下し,中国メーカーがシェアを上げた要因を分析し,その要因を3つ挙げている。すなわち,(1)生産管理能力が向上し品質が向上した,(2)生産規模の拡大によりコスト低減を図った,(3)販売網やサービス網を充実させた,の3点である。しかし,実はそれ以上に重要な第4の要因があり,それが「垂直分裂」と呼ぶ現象だという。
その「垂直分裂」とは,「経営学や経済学でいう垂直統合の逆の現象が起きていることを指す」(本書p.14)。つまり,コンピュータ産業で起こったように,製品の上流から下流に向かうバリューチェーンの各要素(例えばIC,コンピュータ,OS,応用ソフト,販売)のすべてを一つの企業が手掛けていたものが,バラバラに分離されて,おのおの別の企業が担うようになる現象である。
「なぜメディアは『水平分業』というのか」
そこまで読んで,これってわざわざ「垂直分裂」とか言わなくても,「水平分業」という言葉がすでにあるではないか,と思いながら読み進むと,その直後になんと次のような記述があったのである(本書p.20-21)。
日本の電機業界やマスメディアの中では同じ現象を指す言葉としてなぜか「水平分業」という言葉がよく使われている。この表現は日本の一部ではすっかり定着しているようで,私が「垂直分裂」という言葉を用いて説明しようとしても「水平分業」に「訂正」されてしまうということを何度か経験した。だが,「水平分業」という言葉は,国際貿易論で,国家間で工業製品を相互に輸出する貿易を行っている状況を指す言葉としてすでに定着しており,同じ言葉を用いてコンピュータ産業などで起こっている構造変化というまったく別の現象を指すのは混乱のもとである。
筆者はまさに「水平分業」という言葉をよく使ってきたメディアの1人だ。この連載コラムでも,「スマイルカーブの『両端』と『中央部』---水平分業時代の競争力を考える」という文章を書いたばかりである。スマイルカーブは,横軸にバリューチェーンの各要素を,縦軸に利益率をとるカーブである。スマイルカーブという概念そのものは,バリューチェーンの各要素がバラバラになり各企業間における分業が進んだために生まれたと言われている。
「垂直産業」と「水平産業」
一方で,電機業界では「垂直産業」と「水平産業」という言い方がよくされる。例えば,以前にソニーの社長だった出井伸之氏は,『迷いと決断~ソニーと格闘した10年の記録』(新潮新書)という本の中で,盛田昭夫氏が亡くなる直前の1993年に行った最後のスピーチの中の言葉「われわれは,もういっぺんアメリカを勉強しなおすべきではないだろうか」について,盛田氏が言わんとしていたことは,「垂直産業と水平産業の違いだった,と考えています」と述べている(本書p.48)。
出井氏は,各部品のレイヤーごとに分業できる産業(例えばパソコン産業)を「水平産業」と呼び,1990年代に日米の経済が一気に逆転した背景には,米国のIT産業は「水平産業」の重要性にいち早く気づいて対応したが,日本は「垂直産業」の中をグルグル回っていて対応が遅れたことがあったとする。
さらに出井氏は,その後もさまざまな分野で「垂直産業」から「水平産業」への転換が起きているのに,日本企業は「垂直産業の思考」の中にとどまっていると書く。典型的な「垂直産業」である自動車産業についても,「自動車産業が本格的にバッテリーカーにシフトするとき,産業全体が『水平化』の方向に大転換していくのは間違いありません」と警告するのである(本書p.49)。
このように電機業界では,垂直産業における各要素がバラバラになって,各企業間で分業するようになる状況そのものを「水平(産業)化」や「ヨコ型」と言っている。しかも出井氏のように日本企業にとっても最も重要な視点であるという見方が多い。言い訳をするわけではないが,こうした水平産業における分業を「水平分業」と呼んでしまっているのは仕方のないことかもしれない。
「垂直分業」から「水平分業」へ
とはいえ,例えば,以前のコラムで紹介した『帝国主義論』などを読んでいると,例えば,日本とアジアの間の貿易は,「垂直分業」から「水平分業」に移っている,という正しい用法に基づく記述があって,確かに同じ製造業の産業構造を表す言葉として,まったく違う使い方があるのは混乱のもとであるのは確かだとも思った。
ここでいう「垂直分業」は,多国籍企業の企業内分業をきっかけに始まったこともあって,同一製品内での工程間分業という色彩が強い。先ほどのスマイルカーブの中である国がある部分を担当し,別のある国が別の部分をを担当しているという状況といってもよいだろう。これに対して「水平分業」は,同じジャンルの部品や製品を各国で並行的に生産することを指す。そして現状のアジアにおける「水平分業」では,グレード別の特化が進んでいる(『帝国主義論』のp.160)。例えば,アジア諸国で中・低グレードのものを生産し,日本では高級グレードを生産する,といった具合である。
日本とアジア諸国の関係が,「垂直分業」から「水平分業」に移っている背景には,アジア各国の生産技術が高まってきて,産業集積も進んできたことから,上流から下流まで一貫生産する機運が高まってきたことがある。つまり,それだけアジア諸国がバリューチェーンの1要素だけではなくて,ある製品のバリューチェーン全体を担当できるようになってきたわけで,確かにこうした現象を正しく理解するためにも,言葉の使い方をはっきりさせなくてはならないと反省させられた。
それにしても,丸川氏の言う「垂直分裂」は,「垂直統合ではない」ということを言っているだけなので,なにかもっとズバリと指すいい言葉はないものだろうか,とも思う。単に「(国際)分業」とするか,「アウトソーシング化」といったところだろうか。「垂直統合以外は何でもあり」ということなら,やはり「垂直分裂」という言葉がいいのかもしれない。
中国政府の「垂直分裂化戦略」
さて,言葉の話はともかく,丸川氏の本を読ませていただいて強く感じたのは,「垂直分裂化戦略」を推進する中国政府のしたたかさである。以前のコラムでは,欧米の多国籍企業がしかけた国際分業という波に中国がどちらかというと受動的に飲み込まれているという状況についてみてみたが,もう一つの側面として中国が国際分業の方向を「垂直分裂」をキーワードに推し進めた能動的な態度がこの本では明らかにされている。
「垂直分裂化」のルーツは,中国の伝統的な計画経済にあるという。1970年代に家電製品の本格的な生産がスタートしたが,各地方政府が出資した国有企業は,少額の投資で参入できて投資回収の早い最終製品の組み立てに飛びつき,一方で初期投資額の大きい基幹部品の生産は中央政府の分担という最初から分業を意識した政策をとったためである。
こうして中国の電機メーカーは,基幹部品を外から調達するという方式で急成長したが,充分に資金力がついた後でも基幹部品を内製して垂直統合化する志向は低いという。基幹部品の差異化で製品の品質や機能を高めるよりも,基幹部品を複数メーカーから競争的に調達することによって製品価格を安く抑える戦略の方が中国市場では利益を上げやすかったからである。
そのために,各社の基幹部品を互換化し,どの会社の基幹部品でも使えるようにした。それは例えば,テレビ受像機における基幹部品であるブラウン管の場合,テレビメーカー側で各社のブラウン管に対応した回路を用意するという技術的な工夫のほか,無理やり使って多少画質が劣化しても目をつぶるという割り切りによって実現したのである。基幹部品によっては日系メーカーの技術を移転またはコピーすることによって中国の互換部品メーカーも登場した。こうして互換性のある基幹部品を外部の複数の専門メーカーに大量につくらせることによって規模の経済性が働き,より低コスト化が可能になったのである。
基幹部品と完成品をバラバラに認可
「垂直分裂」の戦略は,日本企業が中国に進出する際の対応に如実に表れた。垂直統合志向の強い日本メーカーに対して,完成品や基幹部品の拠点をバラバラにつくるように進出の認可を与えたのである。結果的に日本企業は,基幹部品では中国メーカー向け出荷が好調だが,完成品についてはハイエンド市場のみに追いやられるという状況になっている。
こうした戦略は自動車産業でもとられた。中国政府は2000年ころまで,エンジンの生産は認めるが,完成車については認可を頑として出さなかったのである。
例えばトヨタ自動車は,1996年にエンジンの合弁工場を設立したが,完成車の生産を始めたのは2002年になってからだった。その間,エンジン工場を遊ばせておくわけにはいかなかったので,そこで作られたエンジンは中国の自動車メーカー6社に売られることになったのである。三菱自動車についても,1997年にエンジンの工場を中国に設立したはいいものの完成車の認可が下りず,そのうち本体の経営状況が悪化するという環境の中で,エンジンを中国自動車メーカーに外販することで危機を脱した。同工場では現在,26社の中国メーカーにエンジンを供給しており,しかも顧客の要求に合わせてエンジンの設計を調整しているのだという(本書p.220)。
「垂直分裂」の行き着く先
もちろん,中国のこうした「垂直分裂」の動きには問題点も多い。基幹部品の互換品が主流を占めるということは,どの製品も同じような「同質化」をもたらす,と丸川氏は本書で書いている。同質化の行き着く先は,果てしない価格競争,または薄利多売の世界である。その同質化が行き着く先が,パソコン業界に見られる違法コピーを競争手段とするようなノーブランドメーカーの乱立である。
さらに筆者が思ったのは,同質化の果てにあるものは差異化の消滅であり,資本の永久運動の停止をもたらすということである。「垂直分裂」とは,あくまで「垂直統合」あってのものだとしたら,日本メーカーなどが作り出した「垂直統合」の製品が出るのを待って,出るや否やそれをバラバラにするという宿命から永遠に逃れられない,ということかもしれない。
ただし「垂直分裂」の現象の理解が一筋縄でいかないと思うのは,こうした限界が指摘される一方で,「垂直分裂」がもたらす新しいイノベーションの可能性があるということである。それは,「垂直統合」が生み出す技術革新というよりは,中国市場とブラックボックス化された既存技術の組み合わせによって達成される。丸川氏は,そうしたイノベーションを「脇道のイノベーション」と呼び,中国で市場を作ったビデオCDとPHSの事例を紹介している。
「モジュラー化」と「垂直分裂」
もう一つ注目したいのは,製品のアーキテクチャがモジュラー化することと「垂直分裂」の方向が同じという点である。特にパソコン分野では,前述のようなノーブランドメーカーの問題はあるものの,中国ブランドのシェアが拡大したのは,中国の戦略と製品のアーキテクチャがうまく合致したからである。
自動車や家電製品の一部などインテグラル型の製品については,中国の製造業は疑似的に無理やりモジュラー型に転換しているだけで,基本アーキテクチャは変化していないと見られている(これについて触れた過去のコラム)。しかし,インテグラル型の牙城と見られる自動車にしてもモジュール化が進展し,共通プラットフォーム化が進展するに伴い,モジュラー化の兆しは見られる。製品アーキテクチャがモジュラー化したとたんに,「垂直分裂」に強みを発揮する中国の競争力が一気に増す可能性がある。いずれにせよ,「垂直分裂」の世界から何が飛び出してくるのか,目が離せないということのようである。
「垂直分裂」に日本企業はどう対応
では,「垂直分裂」戦略を進める中国で日本企業はどう対応したらよいのか。丸川氏の指摘で特に重要だと思った視点を2点紹介したい。一つは,今後中国は自主ブランド志向をますます強めるために日本ブランドで完成品を売ることがますます困難になるという指摘である。そうなると,基幹部品を売る戦略がもっとも適しており,中国の互換化戦略に対抗していかに付加価値を留保し,獲得するかが重要になる。
もう一つは,中国の垂直分裂的産業構造は,日本の中小企業に新たな可能性を開くのではないかという指摘だ。日本の中小企業は,垂直統合的産業構造が主流の日本では,大手企業とのクローズドな取り引き(丸川氏は「閉じられた垂直分裂」と呼ぶ)が中心で,例えば最終製品に進出することは難しかった。これに対して垂直分裂の世界では基幹部品を調達して最終製品を手掛けることもできるし,高い技術力を背景に部品を主導的に供給できる可能性もある。オープンな「垂直分裂」の世界に積極的に飛び込むことで,一芸に秀でた中小企業の強みが発揮できるという指摘は,閉塞感に覆われている日本の中小企業に一つの夢を与えるものではないかと思う。